エレキギターの総合情報サイト
突然ですが、あなたはピックにどんなこだわりがありますか?ギタリストにとってピックは肉体の一部ですし、弾き手によってはピックを持ち替えるだけでギターを替えたかのような変化が得られます。今回はピックの素材として非常に注目度の高い「ウルテム」にフォーカスし、実際に様々なウルテムピックを取り寄せてチェックしてみました。
名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。
webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、”プレイヤーにとって役立つ情報提供”を念頭に日々コンテンツを制作中。
「ウルテム(ULTEM)」は、1980年代初頭に開発された高性能プラスチック「ポリエーテルイミド(Polyetherimide、PEI)」の商品名で、強度と耐熱性に優れる「エンジニアリング・プラスチック」をさらに上回る強度と耐熱性を持つ「スーパー・エンジニアリング・プラスチック」に属する物質です。
高温に耐えられかつ軽量なため、金属の代わりに航空機や自動車の部品に使われます。また薬品にも強く、繰り返しの洗浄や殺菌に耐えられることから、医療器具にも使用されるほか、現代では3Dプリンターで造形する材料にも使われます。
琥珀色の半透明という素材の色味が美しいため、調色せずそのまま使うのが一般的です。その一方で黒い塗料を混ぜ込んだブラック・ウルテムが作られるほか、他の色の試みも繰り返されています。
ピックに使うプラスチック系素材としては、ウルテムは最強の硬さと削れにくさを持っており、余程のことが無ければ割れることもありません。弦との摩擦が非常に弱いので、高BPMの高速カッティングや地獄のような低音リフなど、エクストリームなプレイで特に有利です。
また弦に食いつきにくいことからピッキングノイズは抑えられ、丸みと艶のある独特のアタックが得られます。弦の上を滑るような独特の感触は高級素材ベッコウによく似ていると表現され、机に落とすと響く「カラカラッ」という乾いた音は、良い音で弾けそうな気分にさせてくれます。
ウルテムピックの感触を確かめるなら、全く逆の個性を持った「セルロイド」と比べるのがお勧めです。
1980年代以前にウルテムはなく、エレキギターのピック材と言えばセルロイドが当たり前で、かのジミ・ヘンドリクス氏もランディ・ローズ氏もセルロイドのユーザーでした。セルロイドは弦にしっかりと食いつくので摩耗は早いですが、「ザッ」という派手なピッキングノイズに合わせ、力強く景気の良い「パチン」というアタックが得られます。生音のアタックが大きめに響くところに、使いやすさを感じる人も多くいます。
セルロイドは弦との摩擦が強いため、ピッキングに必要な筋力やピッキング時に手に伝わるアタック感が、ウルテムのそれと大きく異なります。弦に食いついてバシバシ鳴らすセルロイド、弦の上を滑るように行き来してコロコロ鳴らすウルテム、という感触の違いが分かると非常に面白いので、こうしたピック素材による感触の違いは、夏休みの自由研究に強烈にお勧めです。
ウルテムの持ち味である硬さと強靭さ、これが過剰でないこと。すなわち薄ければしなる、分厚ければ踏ん張る、というピック素材としての絶妙な硬さもポイントです。厚さ1.2mmのピックの硬さ、厚さ0.6mmのピックのしなり
具合、こういった感触はセルロイド・ピックのそれにだいたい当てはまります。
形状やエッジ処理の違いで、ウルテムピックはさまざまなキャラクターを持ちます。素材の硬さを活かしてシャープなエッジ処理や刺さりそうな尖った先端形状を採用するウルテムピックは多く開発されていますが、これはピッキングのエネルギーを1点に集中させることで大きな弦振動を生じさせる効果があります。
そしてさらに、表面の処理がマットなのかツルツルなのか、これがサウンドにも影響するのが面白いところです。ウルテム自体は硬質で弦に食いつかない性質を持っていますが、マットな表面は微細な凹凸が弦に食いついて派手に「パチン」と鳴らす効果を生みだします。
しかし、こうした表面の処理やエッジの形状についてメーカーが詳細なデータを公開することはほぼありません。あまり高額なものでもありませんから、ひとまず買って、試してみて、を繰り返してみてください。
ここからウルテムピックのラインナップをチェックしていくとともに、実際に使ってみたレビューも添えていきます。
クレイトン(CLAYTON)は、世界で初めてウルテム製ピックを作ったメーカーとして知られる、この分野の第一人者です。定番の「ULTEM」シリーズは、表面をマットに仕上げた丁寧な作りが持ち味です。ベッコウ製ピックの音に近いとも、爪の感触に近いとも言われます。
ラインナップは、トライアングル、スタンダード(ティアドロップ)、スモール・ティアドロップの3タイプそれぞれに.38mm / .45mm / .56mm / .72mm / .80mm / .94mm / 1.07mm / 1.20mmという8段階のゲージを設けています。
クレイトンはなぜか、他のウルテムピックとどこかが違う、音色がオーガニックなニュアンスを帯びている気がします。ややデコボコ感の残るエッジの処理は独特で、他にはなかなか見られません。
ギターグッズ大手ダンロップ(Dunlop)は、「ウルテックス(ULTEX)」名義でウルテムピックを多数リリースしています。基本となる「ULTEX」シリーズはトライアングル、スタンダード(ティアドロップ)、シャープ(ティアドロップ)の3タイプあり、いずれもマットな表面とシームレスで滑らかなエッジの処理が持ち味です。ゲージはクレイトンと絶妙な違いを設けており、トライアングルとスタンダードで.60mm / .73mm / .88mm / 1.0mm / 1.14mm、シャープで.73mm / .90mm / 1.0mm / 1.14mm / 1.40mm / 2.0mmです。
マットな表面と滑らかなエッジ処理で、粒立ちの良いアタックを整然と並べることのできるピックです。同社の定番TORTEXシリーズとわずかにシェイプを変えていて、こだわりを感じさせます。スタンダードモデルは長期的な流通が見込めるので、安心して使えます。
Dunlop Ultex Guitar PIcks
ダンロップの名作「JAZZ III」の材料を置き換えた「Ultex® Jazz III」は、通常モデルとやや大きめモデルの「Ultex® Jazz III XL」が厚さ1.38mm、ブラックウルテムを使った「Ultex® Jazz III 2.0」が厚さ2.0mmです。マットな表面と滑らかなエッジの処理に加え、滑り止めになるレリーフ状の文字がポイントです。ウルテムピックは「インジェクション成型」が基本であるため、このような立体的な成型が可能なのです。
レリーフ状の文字が良い具合に滑り止めになってくれる、弾きやすいピックです。「Ultex® Jazz III 2.0」は外側に行くにしたがって薄くなっていく設計で、通常のJazz IIIより一回り小さめに感じます。先端は鋭利で、鋭いアタック感が得られます。
「John Petrucci Trinity Pick」は、プログレッシブ・メタルバンド「ドリームシアター」所属、ジョン・ペトルーシさんの最新シグネイチャーモデルです。Jazz IIIより一回り小さいトライアングル型という個性的な設計で、厚さは1.4mm。トライアングル型の広い角度を持ちながら先端部はしっかり尖っているので、弦離れが良く明瞭なアタックが得られます。
弦離れがとてもよく、また鋭利な先端でしっかり弦を鳴らすことができます。滑り止めがあって弾きやすく、音数の多いギターソロ、特にスウィープ奏法でかなり有利です。一方で、ティアドロップやジャズ用ピックの裏技だった「尖っている方を持ち、丸い音を出す丸いピックとして使う」という使い方はできません。
「なぜココでアコギのブランドが?」と驚く人もいるかもしれません。しかしウルテムピックを語るのなら、このK.ヤイリのウルテムピックは決して外せません。なぜならこのピックは極めて珍しい、「非研磨」仕様だからです。非常にブライトな響きを生む極めて鋭いエッジと、指に吸いつくかのようなホールド感が得られるツルッツルに滑らかな表面。この二つを両立させながら普通のピックと同じ価格に抑えられたのは、インジェクション成型して研磨せずバリだけ取って出荷する「非研磨」だからです。
バリエーションはトライアングル型の0.6mm厚のみで、デザインにエンジェルとK.YAIRIロゴの2タイプがあります。
とにかく非常に明瞭でブライトな響きが得られる個性的なピックで、0.6mm厚のオニギリしかバリエーションが無いのが大変惜しく感じられます。ちなみに先端部分の非常に鋭い感じ、持つ指に吸い付く感じ、この二つの大きな特徴は新品の時に最も顕著です。
アコギに最適ですが、エレキギターをアコギ的に演奏するのにも、普通に演奏するのも大丈夫です。エッジが鋭いので、ピックスクラッチが恐ろしく鳴り響きます。
モントルー(Montreux)のウルテムピックは、ウルテムピックの元祖、CRAYTON社とのコラボレーションモデルです。バリエーションはトライアングル型(URT)に .56mm / .72mm / .80mm / .94mm / 1.07mm、スタンダード型(US)に.72mm / .80mm / .94mm / 1.07mm / 1.20mmです。形状と厚みはCRAYTONのラインナップに準拠しており、使用感についてはほぼ同じ。白いプリントのCRAYTONに対し、こちらは黒いプリントが採用されています。
クレイトンと変わらない使用感とサウンドという第一印象でしたが、比べていくうちにこちらの方がわずかながらブライトかつ軽い感じという感想に至りました。エッジの処理も同じようにわずかにデコボコしていることから、クレイトンと同じ作り方をしているのだと考えられます。
マスター8ジャパン(MASTER 8 JAPAN)の提唱する「INFINIX-U」は、同社が強みとしている新素材「INFINIX」に対してウルテムを黄金比で配合した、全く新しいハイブリッド素材です。INFINIXのドライブ感やアタック感と、ウルテムのタイトでブライトなタッチが見事に調和しています。カラーバリエーションが出せるのも大きなメリットで、見た目に華やかです。
INFINIX-Uは滑り止めの付いたハードグリップ仕様で、3つのシェイプそれぞれに3つのゲージを用意しています。トライアングルとティアドロップは 0.73mm / 0.88mm / 1.0mm、ジャズタイプは 0.88mm / 1.0mm / 1.2mmです。
鮮やかなカラーバリエーションが目に嬉しいです。先端が鋭く、とてもブライトなアタックが得られます。ハードグリップのザラついた感触は新しい印象で、また滑り止めとして頼もしく感じました。
【最新型ウルテム®︎ピック】GUITAR PICK DISCOVERY vol.3 by MASTER 8 JAPAN
ギター博士の10周年を記念した限定オリジナルピックは、ブラック・ウルテムで統一した4枚セットです。ブラックウルテムはウルテムに真っ黒な色素を加えた素材で、触り心地や弾き心地、机の上に落とした時のカラカラっと言う乾いた音も、通常のウルテムと変わりません。
ピックの材料として考えた場合、ブラック・ウルテム最大のメリットは、ウルテムの性能はそのままに、表裏に異なるプリントができることにあります。10周年記念ピックは4枚とも、表側にそれぞれのデザイン、裏側に10周年記念ロゴをプリントした、ゴージャスなデザインです。シルクスクリーン印刷なので、がっつり弾いてもすぐに消えてしまうことはありません。
0.8mmトライアングル2枚、1.0mmティアドロップ1枚、1.0mmジャズ型1枚という4枚セットで、MASTER 8 JAPANで名高い池田工業に依頼した、メイドイン・ジャパンの確かな仕上がり。滑らかかつシャープなエッジが明瞭なアタックを生む、音楽の道具としてガチなピックです。シャープなエッジがまん丸になり果てるまで、ぜひ使い倒してください。
4枚ともエッジの処理が滑らかで、ピックスクラッチが気持ちよく鳴り響きます。また巻弦にしっかり食い込むらしく、角度調節次第で低音弦がゾリゾリとワイルドに鳴り響きます。先端部分はたいへん鋭く尖っていて、かなり鋭利だと言われるINFINIX-Uと同じかもう少し上、くらいの印象です。これほどの鋭さだからなのか、軽いタッチで確かな弦振動が得られます。
ギター博士 10周年記念ブラック・ウルテム・ピック – 4枚セット – エレキギター博士 公式 BASE SHOP
以上、ピック素材として無視できない存在「ウルテム」にフォーカスしました。硬くて長寿命な素材の性能だけでなく、厚みや形状など設計の工夫によりさまざまなバリエーションが生まれています。肉体の一部になる頼れる1枚として、またちょっと味変させる隠し玉として、ぜひ実際にチェックしてみてくださいね。
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