YAMAHA 定番機種の上位モデル Pacifica Professional / Pacifica Standard Plus

[記事公開日]2024/2/24 [最終更新日]2024/8/22
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

YAMAHA Pacifica Professional

YAMAHA「Pacifica(パシフィカ)」は1990年、「グローバルな発想のギター開発」というコンセプトのもと、ロサンゼルスのカスタムショップと共同で開発されました。高い演奏性と機能性、また高いコストパフォーマンスが支持され、これからギターを始める初心者さんから第一線で活躍するプロミュージシャンまで、世界中のギタリストの手に渡っています。

新しく発表された「Pacifica Professional」「Pacifica Standard Plus」両シリーズは、YAMAHAの定番機種パシフィカをアップデート&アップグレードした上位機種です。今回はこの両シリーズの特徴を、従来モデルとの比較も交えながらチェックしていきましょう。


Yamaha Pacifica Professional – Music Demo – Overview & Tone Samples

《両シリーズ共通》新しいパシフィカの特徴

新しいヘッドデザイン


一新したヘッドデザイン。

従来のパシフィカのイメージを維持したまま、ヘッド形状とストリングガイドの位置が修正され、ロゴデザインは流麗な筆記体に。3本の音叉が交差するYAMAHAのエンブレムは金属製のメダルになり、高級感を演出しています。

極めて高い演奏性を誇るネック仕様


丸く整えた「カーブドネックジョイントヒール」で、ハイポジションがスイスイ弾ける。

パシフィカは誕生以来、幅広いジャンルを横断的に演奏できる高い演奏性を持ち味としてきました。Professional / Standard Plus両シリーズにおいてもそのこだわりに変わりはなく、滑らかな触感のスリムCシェイプメイプルネック、ストレスなく運指できるステンレス製ミディアムジャンボ・フレットはあらゆる演奏スタイルに大変良好です。新開発「カーブドネックジョイントヒール」により、ハイポジションでの演奏性も高まっています。

さらに最上位機種「Professional」では10″-14″のコンパウンド・ラジアス指板が採用されており、最高レベルの弾き心地です。

演奏性と音響性を高めたボディ設計


曲線的なエルボー・コンターは、高く構えても低く構えても弾きやすそう。

ボディも一新。右ひじ部分と背面には流線型の大胆なカットを施しており、抱えた時のフィット感が大変良好です。「アコースティック・デザイン」と呼ばれる科学的アプローチで、音響性を高めているところもポイントです。ボディに刻まれたルーティングは、最小限の加工で振動の伝達を整理し、音響性能を高める効果があります。

加工が最小限なので、価格の上昇も抑えられる。

新開発「Reflectone」ピックアップ


シングルコイルはピックガードマウントで、ハムバッカーはダイレクトマウント。

「Reflectone(リフレクトーン)」ピックアップは、レコーディング機器の名門「RUPERT NEVE DESIGNS」社と共同開発です。NEVE(ニーヴ)のコンソールは「通すだけで音が良くなる」と言われ、ヴィンテージNEVEはレコーディング界隈で神格化されています。その核心はトランス(変圧器)にあり、そのトランスは鉄心にコイルを取り付ける、ピックアップに通じる構造です。楽器メーカー世界最大手のYAMAHAと神格化された伝説の継承者RUPERT NEVE DESIGNSという頂上のコラボレーションは、大いに話題となりました。

新しいパシフィカのために開発されたReflectoneピックアップは、タイトな低域とクリアな高域を特徴とする、モダンでバランスの良い音色を持っています。ハムバッカーはコイルタップ可能で、サウンドバリエーションも充分です。


Yamaha | Pacifica Standard Plus | Clark Sims Performance
もちろん達人のタッチあってのこのサウンドだが、いつまでも聴いていたい良い音。

世界のGOTOH製ペグ&ブリッジ

機能性の高いバックロック式ロッキングチューナーと2点支持トレモロブリッジは、世界的に信頼されている日本のGOTOH製です。スムーズな操作性と抜群のピッチ安定性が強みで、弦交換も素早く行えます。

《比較》パシフィカ「600」シリーズと比べてみる

上:YAMAHA Pacifica PACP12。
下:YAMAHA Pacifica PAC612VIIFMX。
ヘッドデザインもボディラインも、ほんのりと修正されている。棒状のポジションマークも個性的。

搭載されるパーツ類は一新されていますが、それ以外にもいろいろなところに違いを発見できます。

  • ピックガードと操作系:ストラト的なイメージを残した「600」に対し、新しいパシフィカは新デザインを採用、操作系が全てボディマウントになったほか、リアピックアップがトラッドなエスカッションマウントからモダンなボディマウントへと変更。
  • トラスロッド開口:Professional / Standard Plus両シリーズでは、トラスロッドがネックの根元側に開口。ホイールキャップ採用で、必要な時にすぐ調整できる。
  • ネック寸法と、精度の高いスケール表示:「600」の細身のナット幅41ミリに対し、Professional / Standard Plusではよりグローバルにスタンダードな42ミリ。またスケール(弦長)は「600」の648ミリに対して「648.0ミリ」と表示。小数点第一位までの高精度な製造だと読み取れる。
  • ネックジョイント法:トラッドな4点留めプレートジョイントの「600」に対し、Professional / Standard Plusではプレートを介さない、4点留めブッシュジョイント。二つのジョイント法は、ネックを固定する圧力を「面」でかけるか「点」でかけるかに違いがあり演奏性や音響性に影響するが、優劣ではなく好みの範疇で語られる。

Pacifica Professional / Standard Plusのラインナップ


Yamaha I Pacifica Professional | Maple | Overdrive Sound Samples
YAMAHAとNEVEのコラボで作られたピックアップは、大いに関心を呼んだ。

YAMAHA 「Pacifica Professional」Series


左から、PACP12:スパークブルー、デザートバースト、シェルホワイト、ブラックメタリック。


左から、PACP12M:ビーチブルーバースト、スパークブルー、ブラックメタリック。


ネック裏はほんのりと飴色に染められる、「カスタムティンテッド・サテンフィニッシュ」。

最上位モデル「Pacifica Professional」シリーズは、パシフィカで唯一の日本製。ラインナップはローズウッド指板の「PACP12」に4色、メイプル指板の「PACP12M」に3色あります。日本人特有の丁寧な仕事で作られ、高い基準を通過して出荷されることで、見た目やスペック以上のクオリティを持つギターに仕上がっています。またこの「Professional」シリーズのみ、コンパウンドラジアス指板とIRA処理が採用されています。

10″-14″コンパウンド・ラジアス指板

ナット部で10インチ(254.0ミリ)R、最終フレットで14インチ(355.6ミリ)Rのコンパウンド・ラジアス指板。ローポジションではコードが押さえやすく、また弦高を下げたセッティングができる、最高レベルの演奏性が得られます。

独自技術「IRA」採用

「イニシャル・レスポンス・アクセラレーション(I.R.A.)」処理は、新品のギターに長期的に弾き込まれたような反応の良さを持たせるYAMAHAの独自技術です。完成した楽器に適切な振動を与えることでパーツ間のストレスを緩和し、レゾナンスとサスティーンを最大化させます。

YAMAHA 「Pacifica Standard Plus」Series


左から、PACS+12:スパークブルー、アッシュピンク、シェルホワイト、ブラック。


左から、PACS+12M:スパークブルー、アッシュピンク、ブラック。


「ナチュラルスムース・サテンフィニッシュ」のネック裏は、木材の色調をそのまま残している。

「Pacifica Standard Plus」シリーズのラインナップはローズウッド指板の「PACS+12」に4色、メイプル指板の「PACS+12M」に3色です。350ミリ指板R、IRA非採用という2点が「Professional」シリーズとの大きな違いですが、ボディ設計やピックアップなどそれ以外の仕様は共通しています。


以上、全パーツ、木部に至るまで刷新された新しいパシフィカ、Professional / Standard Plus両シリーズに注目しました。特にNEVEとコラボしたピックアップの注目度が高く、世界各地で高い評価を得ています。ぜひ実際に、新しいサウンドと弾き心地を体験してみてください。

従来のパシフィカも、随所にトラッドな雰囲気を残したモダンギターとして引き続き健在です。こちらもチェックしてみてください。

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