エレキギターの総合情報サイト
「Landscape(ランドスケープ)」は、ギタープロデューサー大和俊夫(おおわ・としお)氏がそのキャリアを活かし、ギターやベースをプロデュースするブランドです。ギターにはフルアコ、セミアコ、エレガットの3タイプあり、それぞれに別のコンセプトがありつつ、共通して木製楽器ならではの「オーガニック・トーン」を目指しています。今回は、このLandscapeに注目していきましょう。
プロデューサー大和俊夫氏は、1972年よりマツモク(マツモク工業株式会社。伝説的なギター工場)、1987年より荒井貿易(Aria Pro IIなどを運営)にて、製造、製品企画、リペア、アーティストリレーションなどを担当しつつ、ギター名手松原正樹氏や渡辺香津美氏のギターテックを永らく務めました。1997年に独立し、ロック/フュージョン志向の「MD」、アーチトップの「Landscape」はじめ、いくつものブランドをプロデュースしています。
ブランドやモデルのアイデンティティを象徴する、「SA-101」のヘッド。
Landscapeの提唱する「オーガニック・トーン」は、アンプやエフェクターで積極的に音を作る「エレクトリック」に対して、本体で音を作る「アコースティック」、ここに文化的な意味を内包させたコンセプトです。人類が木製楽器を作ってきた歴史の延長にあり、工法や構造など人間の叡智を受け継いだうえで、木材の鳴りが音に反映するギターの開発を目指します。
オーガニック(Organic):
有機農法や有機飼育(農業や畜産)、自然に親しみ、ゆったりと質素に暮らす(生活様式)、個々の要素に生物のような相互関連性があること(組成)、など
ピックアップのポジションごとに、さまざまな表情が味わえます。とろけるような甘さ、密度感、柔らかさの中に芯がある、人により受け止め方や表現の仕方はいろいろあることでしょう。これが、「オーガニック・トーン」です。
セミアコ「SA-101」。一般的な工法に縛られない独自設計で、オーガニック・トーンを作る。バイオリンを意識したカラーリングもポイント。
「オーガニック・トーン」の表現としてLandscapeはバイオリンに注目、バイオリン工場がバイオリンの工法で木工を担当するフルアコ(ARシリーズ)とアップライトベース(SWBシリーズ)を開発します。両シリーズには、スプルーストップ、メイプルサイド&バック、指板やテールピースにエボニーを使用するなどの木材構成、トップ材の加工法やボディ材の貼り付け法、また塗装に至るまで、バイオリンの工法が採用されています。
のちにラインナップ入りしたセミアコ(SA-101)とエレガット(SE-01N)はエレキギター工場で作られますが、バイオリンを意識したカラーリングに加え、木材の音響特性を最重視する開発理念は一貫して変わっていません。
一般的なセミアコはメイプル合板製トップだが、SA-101ではスプルース単板が使用される。
アコギやフルアコのトップ材にスプルースが使われるのは常識的ですが、Landscapeではセミアコとエレガットにもスプルースが採用され、「全モデルがスプルーストップ」となっています。
いろいろ試した結果、全機種がスプルーストップになりました。思えば、スタインウェイ(ピアノ)の天板、ストラディバリウス(バイオリンなど)のトップなど、古典楽器に由来する良い木製楽器には、必ずスプルースが使用されます。こうしたことから、スプルースは「オーガニック・トーン」の重要な要素だと考えています
– 大和俊夫氏談
「SA-101」のヘッドを正面から。このモデルはヘッドのバインディングがウッディな雰囲気だが、実は塗装の塗り分けでバインディング風に仕上げているのが、フレイム柄の濃淡からもうかがえる。
基本構造がほぼ完成したと思われるアーチトップという分野において、Landscapeの設計はオリジナリティに溢れています。アイディアは木製楽器の歴史をヒントにしているので、独自の新しい設計でありながら、受け入れやすい楽器に仕上がっています。
たとえばフルアコ(ARシリーズ)で採用されているバイオリン工法については、そもそもギブソン創始者オーヴィル・ヘンリー・ギブソン氏が、バイオリンの工法を応用してギターを作っていました。バイオリン工法の採用は、ルーツへの回帰だったわけです。
「良い楽器」を普及させたい、という思いでいます。メーカー勤務時代には極端に低価格な製品を大量に流通させたこともありましたが、買って良かったと実感でき、長く使ってもらえるギターには、高い品質が必要だと思います。弊社のギターは、使っているうちに枯れてきて、箱鳴りが豊かに育っていって、色気が出てきて、弾くほどに愛着が湧いてくることを目指しています。「オーガニック」には、そういう思いも込められています。
また、GOTOH製オリジナルペグと自社開発のピックアップにもこだわっています。GOTOHは世界一高額ですが、それゆえ世界一の精度と性能を持っています。ピックアップは弊社で設計し、地元のメーカーに依頼しています
– 大和俊夫氏談
ヴィンテージ志向のサウンドを目指してアルニコII磁石を使用した、Landscapeオリジナルハムバッカー。ヴィンテージ・PAFのサウンドを意識している。
金属部品には、世界一の精度と性能を誇る日本のGOTOH製にこだわる。黒いペグボタンはデザイン上なかなか重要な要素。
では、Landscapeのラインナップをチェックしていきましょう。セミアコ、エレガット、フルアコの3タイプは、いずれも独自の設計でオーガニック・トーンを目指しています。
カラーは上から Antique Violin Color、See-through Blue、See-through Red
「SA-101」は、はじめ松原正樹氏所有の79年製ギブソン「ES-335」の代打を務めるギターとして開発されました。一見して明らかにセミアコだと判る受け入れやすいルックス、ヴィンテージと同じ形状のセンターブロック、14度のヘッド角、オリジナルPAFに近いアルニコII使用のオリジナルピックアップなどの仕様は、オリジナルへの敬意の現れです。
これに対し、現代の材料でヴィンテージ・ギターのサウンドに肉迫しつつ、構造上の弱点を解消することを目指し、新しい設計が多く採用されています。
スプルース単板削り出しのトップに加え、センターブロックもスプルース製、また折れにくいマホガニー&メイプル5層ネックが採用されている点が、従来のセミアコと大きく異なる独自構造です。このほか良好な振動伝達を狙い、指板にはエボニーが採用されています。ブリッジはスタッドアンカーで設置されるため、長期的に良好な状態が保持されます。木製ピックガードはボディカラーとマッチし、エレガントな雰囲気を演出します。
楽器には、鳴らすためのコンセプトが必要だと思っています。それでこそ名機を真似る以上の、楽器としての進歩ができるのです。SA-101はヴィンテージの「枯れた良い音」を新品で出す、従来の設計も新しい設計も織り交ぜた、音で勝負できるギターです。みなさん音にはいろいろな好みがありますが、セミアコのおいしいところに照準を合わせながら幅を持たせているので、アンプやエフェクターの設定で好みに合わせることができます。
やはりバイオリンへのこだわりがありますから、バイオリン的な色調を打ち出しています。レッドとブルーは思い切った色調ですが、外観の派手さとは全く違う印象の、豊かな鳴りが得られますよ。シースルーにも思い入れがありますから、木目で売ろうとはしませんが、木目が整った木材を選んでいます
– 大和俊夫氏談
ギター博士「フルアコの上位機種で採用されるような材構成を採用、今まで何でなかったんぢゃ?!というくらい魅力的なスペックのセミアコぢゃ。軽快な響きと反応の良いサウンド、良好なプレイアビリティ、セッションやライブでガンガン活躍するかな♫個性的なセミアコを探している人は是非ともチェックして欲しいの!」
「SE-01N」は、エレキ出身のミュージシャンにとって「魔物」とまで言われる、ナイロン弦の問題解決に成功したギターです。演奏性とピッチの正確さがエレキギターに比肩し、それでいてジャズやボサノバなど幅広く使える、本格的なナイロン弦ギターのサウンドが手に入ります。
「SE-01N」はナイロン弦ギターでありながら、バックコンターもあって抱えやすいボディ、握りやすいスリムなネック、小型で軽量なヘッドを採用していて、エレキギターに慣れたプレイヤーが違和感なく持ち替えることができます。弦長はクラシックギターを意識した25インチであり、ネックはスリムでもナット幅は48ミリでクラシックの演奏がそのままできるほか、ゼロフレット採用により1フレットの押さえやすさと音の伸びに優れています。
また、低音側で16フレットからのネックジョイント、ヒール部の大胆なカットに加え、最大24フレットもの音域があり、通常のナイロン弦ギターでは不可能だった音楽表現が可能です。
フィッシュマン社製ピエゾ内蔵ブリッジ「Tune-O-Matic Powerbridge」は、通常のTOMブリッジ同様、全体の高さ調整と各弦のオクターブ調整が可能です。これによって今まで困難だった、良好な弦高と良好なピッチが実現しました。エレキギター並みの低弦高にセッティングできますが、ヘッド角が14度あるので弦張力はじゅうぶんです。
操作系は、マスターボリューム+3バンドEQという構成です。アコギの弦もエレキの弦も張れるギターですが、EQがナイロン弦の美味しいポイントに合わせているので、やはりナイロン弦を張ることで性能を最大限に発揮できます。なお、弦はやや硬めが良好で、出荷時にはアーニーボール社製クリアナイロン弦(Ernesto Palla Clear & Silver Nylon Classical Guitar Strings)が張られます。
基本的にはエレキギターの工法に準拠して作られるギターですが、随所に個性的な仕様が見られます。まずボディは、くり抜いてホロウ化したマホガニーに、単板削り出しのスプルースを貼りつけ、フレイムメイプルの化粧板をあしらいます。ハートウォームな粘りのある音にはスプルースが必要でしたが、アーチトップに削り出すほどの厚みがあり、かつ整った木目のあるスプルース材は、なかなか高価です。見た目で勝負はできなくてもトップ材として合格したスプルースを使うことで、現実的な価格に留めることができているわけです。
深くセットインされるネックは、ねじれにくさを狙ったマホガニー+メイプル+マホガニーの3層構造です。クラシックギターの伝統に従って、指板にはエボニーが採用されますが、指板面は真っ平らではなく大きめのRが付けられています。
メーカー時代からの課題を、遂に解決できたギターです。エレキギターみたいに弾けますから、チョーキングもできます。小型のヘッドは私がマツモク時代に担当した「ウェストン」ブランドの形状に寄せているんですが、重量バランスに加え音響性能も考慮しています。採用したピックアップは世界一安定感があり、ナチュラルでピュアな音がします。プリアンプも優秀ですから、PAに直接挿しこんでも良い音がしますよ。
「アリアのPEに似てる」とは、確かによく言われますね。私は「PE」シリーズの後継機「PE-R」を開発していて、「PE」は心の中にずっとある楽器です。しかし、容量を持たせたボディ幅、ボディトップのカーヴ、ジョイント部など、デザイン上のポイントは全て弊社のオリジナルです
– 大和俊夫氏談
AR-101
AR-101/PH
オリジナルピックアップを備える「AR-101」、高人気なKent Armstrong社製フローティングピックアップを備える「AR-101/PH」ともに、Landscapeが提唱する「オーガニック・トーン」のためのバイオリン的なアプローチが最も色濃く反映されたギターです。
トップとバックはプレス成型せず、伝統的な工法にのっとった完全な手彫り(ハンドアーチ)で作られ、ラッカー塗装されます。バイオリン工法の特徴がいちばん分かりやすいポイントは、ボディのエッジです。一般的なギターのボディは「コ」の字のように、トップ/サイド/バックともに末端部分で張りつけられ、飛び出すところがありません。いっぽうバイオリン工法では「エ」の字のように、トップとバックがサイドからややはみ出ます。楽器を抱えるプレイヤーが直接触れるのがこのはみ出し部分となり、ボックス部分の響きを邪魔しにくい、というのが最大のメリットです。
高額になってしまうのも覚悟して設計した、Landscapeを象徴するギターです。スプルース単板トップ、フレイムメイプルサイド&バック、メイプルネック、エボニー指板&テールピース、という木材構成は、バイオリンと同じです。ピックガードもエボニー製で、低音にゆとりのある、太い音が良く伸びます
– 大和俊夫氏談
以上、Landscapeのギターについて見ていきました。どのギターの設計にもオリジナリティがありますが、どれもが他の分野で実績が認められた設計理念をヒントにしており、説得力があります。Landscapeのギターが放つ「オーガニック・トーン」、ぜひチェックしてみてください。
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