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ギターの弦をすべて、レギュラーチューニングの半音下に合わせるチューニングを「半音下げチューニング(全弦半音下げチューニング)」と言います。ジミ・ヘンドリックス氏が広めたと言われるチューニング法ですが、そのためもあってかロック/ブルース系のプレイヤーが採用することが多く、ポップスやジャズではあまり見られません。
6弦 | 5弦 | 4弦 | 3弦 | 2弦 | 1弦 | |
レギュラーチューニング | E | A | D | G | B | E |
半音下げ(#b混合表示) | Eb | G# | C# | F# | Bb | Eb |
半音下げ(#表示) | D# | G# | C# | F# | A# | D# |
半音下げ(b表記) | Eb | Ab | Db | Gb | Bb | Eb |
半音下げチューニングの音名
チューナーにより、#とbの混合で表示される場合と、#表示で統一されている場合とがあります。異名同音に注意してください(b表記はオマケです)。ギターチューナーでは、「半音下げモード」に設定してチューニングします。
半音下げチューニングを施したギターを弾く場合でも、プレイヤーはレギュラーチューニングのつもりで演奏することがほとんどです。バンドで半音下げチューニングを採用する場合には、ギターもベースも全員が半音下げるのが一般的で、メンバー同士はレギュラーチューニングの音名でやりとりをします。
ライブなどで半音下げチューニングの曲とレギュラーチューニングの曲を続けて演奏するときに、一番素早くできて、正確なチューニング方法はありませんか? – (2011/7/27)10~19歳 男性(高校生・中学生・小学生)
レギュラーチューニングで演奏する曲と半音下げチューニングで演奏する曲が混在するセットリストでライブを行う場合、「チューニングの切り替え」がちょっとした課題になります。
最も一般的な対処法は、「半音下げチューニングとレギュラーチューニングのギターをそれぞれ準備する」というものです。ツインギターのバンドの場合、ギター4本、ベースを2本持参しますが、弦が切れた時の備えでもう一本持って行きたくなるかもしれません。結果としてステージも楽屋も手狭になってしまいますが、これが最も確実な方法です。
「そんなにたくさんギターを運べない!」「そんなにギターを持ってない!」という人は、ひとまずギターを半音下げチューニングにしておいて、レギュラーチューニングの曲を演奏する時には「カポタスト」を使用するといいでしょう。カポタストの着脱ごとにチューニングをし直す必要はありますが、レギュラーチューニングを半音下げチューニングに、また半音下げチューニングをレギュラーチューニングにする手間を考えたら安いものです。「カポタストで対応」という技は、FRT(フロイドローズ)などで「ブリッジをフローティングにしているギターでも使用できる」という大きなメリットがあります。
カポタストの売れ筋を…
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半音下げチューニングからレギュラーチューニングへ、またはその逆へのチューニング変更を、ライブ中にステージ上で行うのはかなり危険だと考えられます。ギターの個体によっては、チューニング変更でネックの反り方が変化することもあります。ばっちりのチューニングで演奏しようと思ったら、けっこうな時間がかかってしまうのです。ステージ上でどうしてもやらなければならなくなったら、ドラムやベースのソロコーナーか、ヴォーカルのMCでつないでもらう必要があるでしょう。また、変更したばかりのチューニングは落ち着かないことが多く、演奏中に崩れてしまうこともあります。
プレイヤーが「E」のつもりでコードを鳴らすと、実際には「Eb」が響きます。「ドレミファソラシド(C,D,E,F,G,A,B,C)」のつもりで演奏すると、実際に鳴っている音は「シ、レb、ミb、ミ、ソb、ラ、シb、シ(B,Db,Eb,E,Gb,Ab,Bb,B)」となるわけです。ピアニストやキーボーディストにとっては、たまったものではありません。なぜこのような面倒なことが必要なのでしょうか。
半音下げチューニングのメリットとして、「半音下がるから歌いやすくなる」というのが頻繁に挙げられます。いちおうの説得力があるかもしれませんが、これでは半音下げチューニングがジャズやポップスではあまり使われず、ロック/ブルース系で盛んに使われる理由としては不十分です。それでは、ロック/ブルース系に特化した半音下げチューニングのメリットを考えていきましょう。
ジミ・ヘンドリックス氏が活躍していた時代にはエレキギターの弦はまだ太く、0.09~のゲージはありませんでした。ギター本体についても指板のRはまだきついものが主流だったため、現代ほど弦高を下げたセッティングはできませんでした。エレキギターの弦は、現代の常識よりもずっと硬かったのです。弦が硬いとチョーキングが大変ですが、チューニングを半音下げることで張力が下がり、チョーキングがしやすくなります。
0.09からのゲージなどの弦で半音下げチューニングにすると、張力が不足してベロンベロンのサウンドになってしまうことがあります。半音下げチューニングに合わせるときには、0.09からなら0.10からに、0.10からなら0.11からに、弦のゲージを上げるとレギュラーチューニングのときの張力に近くなります。しかし弦が太くなると、ナットの溝がきつくなる可能性があります。ゲージを上げてからナットが「キン!」と言い出したり、ナットが弦に食いつくようになったりしたら、リペアマンに依頼してナットの溝を整えてもらってください。
アームのついたギターの場合には、トレモロスプリングの調整が必要になります。調製用ネジを回して、弦の張力とバランスが取れるようにしておきましょう。
半音下げチューニングを施したギターで鳴らす「F(実音E)」とレギュラーチューニングのギターで鳴らす「E(実音もE)」は、ちょっと違って聞こえます。半音下げチューニングにすると、弦の張力が下がることで響き方が変わり、若干ダークなトーンになります。
半音下げチューニングにすることで、ギターが出すことのできる最も低い音が半音拡張され、ヘヴィな印象になります。このため現代ではさらなるヘヴィネスを求めて「1音下げチューニング」や「1音半下げチューニング」など、どんどんチューニングを下げていくムーブメントが起こっています。
ギターは「G(G,A,B,C,D,E,F#)」や「E(E,F#,G#,A,B,C#,D#)」など、「#系」のキーが弾きやすい楽器です。一方トランペットやサックスなどの管楽器は「Bb(Bb,C,D,Eb,F,G,A)」や「Ab(Ab,Bb,C,Db,Eb,F,G)」など、「b系」のキーが弾きやすく、ジャズのアドリブで聞ける名手の演奏のほとんどがこういったキーで演奏されます。ギターに半音下げチューニングを施すとことで、管楽器のフレーズをギターでコピーしやすくなるのです。
ロック系のサウンドに大変好都合な半音下げチューニングですが、「アコースティック(生)ピアノとの相性が絶望的に悪い」という大きなデメリットを抱えています。
現代のキーボードには「トランスポーズ」という機能がありますから、キーボーディストが嫌がる「Gb」や「B」といったキーを弾きやすい「G」や「C」に移調できます。しかしアコースティックピアノには当然そんな機能はありません。半音下げチューニングを採用しているギタリストが「G(実音はGb)」のキーで楽しく弾いている間、ピアニストは弾きにくい「Gb」のキーで悶絶するわけです。こうしたことから、アコースティックピアノが使われることの多いジャズやポップスというジャンルでは、半音下げチューニングがあまり使われていません。
また、音感が鋭い人にとってはレギュラーチューニングで覚えた「指板上のピッチ」と半音ずれることから、感覚が狂って弾きにくくなる可能性があります。半音下げチューニングに慣れてきたころにレギュラーチューニングに戻すと、また感覚が狂うこともあります。レギュラーチューニングと半音下げチューニングを使い分ける場合には、英語と日本語を使い分けるようなバイリンガルな感覚が必要になります。
「低音が拡張される」のは半音下げチューニングのメリットですが、反対に高音が減ることになります。ダウンチューニングでも高い音が必要な場合は24フレットよりも多いフレット数のギターを使用するか、7弦など多弦ギターを使用するのがいいでしょう。
以上、半音下げチューニングの合わせ方、バンドでの扱い方、メリットやデメリットなどを紹介しました。この半音下げに限らず、チューニングを変更することでサウンドを変化させたり違った雰囲気の音楽に挑戦できたりするのは、他の楽器ではなかなか体験できない、ギターの大きな特徴です。未体験のチューニングにトライするのはとてもクリエイティブな試みですから、ぜひいろんなチューニングの音を体感してみてください。
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