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「American Performer(アメリカンパフォーマー)シリーズ」は、2019年のNAMMショーで発表された、メイドインUSAでは最も求めやすい価格帯の「アメリカンスペシャル・シリーズ」を引き継ぐラインナップです。新シリーズ発表に伴い、これまでのストラトキャスター&テレキャスターのみならず、ジャズマスターとムスタングまで、ベースではプレシジョンベース、ジャズベース、ムスタングベースまでカバーする、豊かな製品群を構成しています。今回はこの中からストラトキャスターに注目し、その特徴をチェックしていきます。
Curt Henderson Introduces The American Performer Stratocaster | American Performer Series | Fender
オーソドックスなルックスを持ちながら、サウンドバリエーションが確保され、なおかつ音量バランスが良い、現代的な多様性を持ったストラトキャスターです。
ではさっそく、伝統を引き継ぎながら現代的なアレンジが加えられていると言う「アメリカンパフォーマー・ストラトキャスター(以下、パフォーマー・ストラト)」の特徴をチェックしていきましょう。
パフォーマー・ストラトのヘッドは、ラージヘッドに二つのストリングガイド、ヘッド側に開口したトラスロッド、70年代風のロゴとモデル名表示という、1970年代を象徴するデザインでまとめられています。これは前身のアメリカンスペシャル(以下、アメスペ)を引き継いだ意匠ですが、
と言う点が改められており、特に色調を変更した新しいロゴマークは新鮮な印象です。
パフォーマー・ストラトのネックは、
となっており、アメスペの仕様をそのまま引き継いでいます。指板材は「サンバースト+ローズ指板」、「ブラック+メイプル指板」というように、ボディカラーとの組み合わせで決まっています。
ジャンボフレットを採用しているレギュラーモデルのストラトキャスターが、今のところこのパフォーマー・ストラトのみ、となっているのも興味深いところです。
図:フェンダーのフレット仕様(左から、パフォーマー・ストラト、アメリカン・エリート、アメリカン・プロフェッショナル、アメリカン・オリジナルのもの)
ジャンボフレットって言うけど、どれくらいデカいんでしょうか?そんなわけでフェンダーの仕様書から、主なフレットの仕様をピックアップしてみました。幅の広い順に、
となっています。それぞれどういう大きさなのか、ヴィンテージ・サイズを基準として考えてみましょう。
フレット名 | 高さの比 | 幅の比 |
ジャンボフレット | 1.222 | 1.325 |
ミディアム・ジャンボ | 1.022 | 1.240 |
ナロー・トール | 1.2 | 1.132 |
ヴィンテージ・サイズ | 1 | 1 |
表:ヴィンテージ・サイズを1とした場合の、フェンダー主要フレットのサイズ比
ジャンボフレットは、ヴィンテージ・サイズに比べて高さは2割増、幅は3割増と言うことが分かりますが、高さではナロー・トールが近く、幅ではミディアム・ジャンボがまあまあ近い、と言うことも分かりますね。一般に「幅が広い方が、スライドがしやすい」、「背が高い方が、押弦やチョーキング、ハンマリング、プリングに有利」と言われます。ジャンボフレットは演奏上のメリットがこれほど際立っている、ということが数値で分かりました。
弦が押さえやすく指技に有利なので、ジャンボフレットは比較的経験の浅い人、あるいはリードギター、テクニカルなギターソロを演奏する人にお勧めです。また、ジャクソンやアイバニーズなど、ジャンボフレット仕様のギターをメインにしていて「ストラトも欲しいよね」と感じた人にとっては、メインギターに近いフィーリングでフェンダーのストラトが使える、有力な選択肢になります。
フェンダーでは新しいモデルにはたいがい新しいピックアップが開発され、電気回路への並々ならないこだわりが発揮されます。パフォーマー・ストラトでは、シングルコイル、ハムバッカーともに、新開発のピックアップが投入されています。
ミドル・ピックアップの極性を反転させているため、ハーフトーン時にはノイズが軽減されます。これに加え、リアのトーンポットを押し引きすることで特殊配線を起動できます。特殊配線の機能はピックアップ配列により異なります(後述)。
パフォーマー・ストラトのトーン回路は、
という、なかなか個性的なものです。現代的なモデルではTone2を「ミドル+リア」のトーンにするのが浸透してきたところで、最近ではTone1を「フロント+ミドル」にするモデルが出てきました。
リアのトーンに仕込まれる「グレースバケット」回路は、トーンを絞っても濁らずクリアで、かつ音量が保たれます。リアの音を丸く太くしたり鋭く尖らせたりできるのに、迫力は失われないわけです。
ピックアップ配列 | ボディカラー | ピックガード | 指板 |
SSS | Honey Burst | Mint Green | Rosewood |
Arctic White | Black | Rosewood | |
Penny | Black | Maple | |
Satin Lake Placid Blue | Mint Green | Maple | |
HSS | 3-Color Sunburst | Cream | Rosewood |
Aubergine | Mint Green | Rosewood | |
Black | Black | Maple | |
Satin Surf Green | Mint Green | Maple |
表:パフォーマー・ストラトのカラーバリエーション
ボディカラーを基準としたコーディネートには、一つのこだわりが見られます。SSSモデルで4色、HSSモデルで4色あるボディカラーに「被り」はなく、同じピックアップ配列どうしなら、ピックガードと指板材の組み合わせにも被りがありません。
パフォーマー・ストラトは現代的な弾き心地と特徴的な電気系を持った新しいギターですが、その一方で金属パーツをクラシカルなものに統一することで、ヴィンテージ・スタイルっぽい感じを演出しています。ペグにはチューニング精度を向上させたクルーソンタイプ、ブリッジには6点留めのシンクロナイズド・トレモロユニットに、鉄板を曲げて作るベントサドルというヴィンテージ・スタイル王道の構成です。機能的に最新とはいえ「ちょっと古くてかっこいい感じ」を演出できるのは、歴史あるフェンダーの無視できない強みです。
It’s a Fender American Performer Stratocaster thing
ジミ・ヘンドリクス氏の影響を強く感じさせる、ブルージーなプレイ。ヘンドリクス氏も、ラージヘッドのストラトをアイコンとしていた一人でしたね。パフォーマー・ストラトはトラッドな雰囲気もしっかり残しているので、このようなオールドスクールなプレイにも説得力があります。
では、パフォーマー・ストラトのラインナップをチェックしてみましょう。オーソドックスな3シングルモデルと、リアをハムバッカーにしたHSSモデルの2タイプがリリースされています。
共通する基本仕様は
となっており、ピックアップ配列と特殊配線、そしてカラーリングで違いを出しています。
American Performer Stratocaster | American Performer Series | Fender
各ポジションの音量差が全く気にならないこと、グレースバケット回路によって、リアはトーンを絞っても迫力を失わないことが良く分かります。これはバンドで使いやすそう。
ポジションごとの音量差をキレイに整えているという「Yosemite(ヨセミテ)」シングルコイル・ピックアップを3基そなえたストラトキャスターです。それぞれのポジションに適切な出力に設計された上、ハーフトーンに至るまでしっかりバランスを取ったセットアップを受け、出荷されます。ストラト使いにとって、各ポジションの音量差に心配が無いのは大きなアドバンテージだと言えるでしょう。
トーン2のツマミは特殊配線の起動スイッチを兼ねています。これを引き上げると「フロントピックアップが常時ON」となり、通常のストラトでは不可能だった「フロント+リア」、「ピックアップ全部」のサウンドが得られます。
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リアピックアップを「ダブルタップ・ハムバッキング」に変更した、HSS配列のストラトキャスターです。このハムバッカーは「Yosemite(ヨセミテ)」シングルコイルと音量を合わせており、上記SSSモデル同様に、ポジションごとの音量差を心配することなく演奏できます。
また、トーン2のスイッチを引き上げるとリアのハムバッカーがコイルタップされます。通常のコイルタップは出力が半減するところ、この「ダブルタップ・ハムバッキング」はタップ時にも音量差が出にくいような設計になっており、ピックアップを切り替えても歪みエフェクターの反応に違いが出にくいので、音量差に悩まされることなく純粋にサウンドの違いを楽しむことができます。
なお、このトーン2は引き上げやすいようにピックガードからやや距離を取ったセッティングになっています。しかし伝統的なストラトキャスターのルックスを守るためとはいえ、ハットノブはつまんで引き上げやすい形状とは言いにくく、コイルタップの操作には若干の慣れが必要です。手が滑ってやりにくいと言う人は、ギザギザの付いた金属製ノブなど、引き上げやすいノブへ交換してもいいでしょう。
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以上、フェンダーのアメリカンパフォーマー・ストラトキャスターをチェックしていきました。メイドインUSAでは最も低価格なモデルであり、現在ではMJモダン・ストラトキャスターなど、国産やメキシコ製でもこれより高額のストラトがあるくらいです。とはいえこのパフォーマー・ストラトは安くて買いやすいだけのストラトではなく、弾きやすさと使いやすさを追求した最新式のギターです。
USAとしては手ごろとはいえ、入門機よりはしっかり高額で「グレードの高い楽器」ですから、入門機からのステップアップにちょうどいいギターです。また、ジャンボフレット採用というところが隠れたポイントで、ジャンボフレットを採用している他社製ギターをメインにしているギタリストにとって、演奏に違和感の少ないセカンドギターになりえます。ショップで見かけたら、最新式ストラトキャスターの性能をチェックしてみてください。
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