エレキギターの総合情報サイト
「ギター」は中国語で「吉他」と書き、そのまま「ギター」と読みます。中国において、外来語には読みの近い漢字を充てるのが一般的ですが、「他人を喜ばせる」的な意味にギリギリ読める感じのこの宛て字を考えた人は、そうとう頑張ったんじゃないかと思われます。
個性的なヘッドレスギターが日本でも見ることのできる「CORONA」は、韓国のブランドです。アコギでもヘッドレスをリリースする変態ぶりと低価格がウけています。とはいえふつうのスタイルも作ります。
個性的な雰囲気のある無頭吉他(ヘッドレスギター)。こうしたギターはミニギターと違って普通の弦長があって普通に演奏できるのに、軽くて場所を取らないので、電車で移動するときなどではとっても助かるんですよ。
ここまでのアップに耐えることができる、なかなか良い仕上がりですね。
「折畳吉他(折りたたみギター)」を標榜する「Alp」は、ボディの金属フレームをたたんで小型化させることのできるヘッドレスギターをリリースしています。
壁掛け用のパーツも同梱されるということで、軽量で場所を取らないこともあって来場客で非常に賑わっていました。
細かいところに気を利かせた設計は、このギターがいかに深く考えられて作られたかが分かります。エフェクターを内蔵しているものもあり、エレアコモデルも7弦モデルもあって、バリエーション豊かです。
こちらはエレアコモデルにマウントされているシャドウ社製のプリアンプ。ヘッドホン端子、AUX端子が備わっているあたり、練習の強い味方になります。
中国は「コピー文化」で知られていますが、そのため日本の感覚ではちょっときわどいデザインのギターも見ることができます。
バリっとキルトにレインボーカラーで、いかにもハイエンドな雰囲気。
サーモウッドでしょうか。中国の木工技術も日増しに向上しているそうです。
こ、このインレイは…。
テーブルを多く並べ、憩いの場のような空間を演出している「Eplay」。もちろん憩うためにのみではなく、来場したバイヤーさんと商談するための場です。
テーブルの上にはこんなものが。中国の歌本です。しかし書き方が日本とはずいぶん違いますね。来場者の中には、これを開いて弾き語りを始める人もいました。
オーソドックスな構造を押さえながら、材のバリエーションも豊富にそろえています。
さまざまなアコースティックギターを生産する中国のブランドですが、ハカランダサイド&バック、エボニーブリッジ、豪華なインレイなど豪華な仕様も目立ちます。
ショーモデルは、この手の込みよう。弦高を落としたセッティングが基本で、現代的な弾きやすさにセットアップされていました。
大規模な展示を行っている「Farida」。ラインナップはオーソドックスなアコギが中心で、奥の方にはエレキギターも展示されていました。プレミアムな木材をおしみなく投入し、グラフィックやインレイで個性をアピールするカスタムモデルがお目見えしています。
カジュアルな雰囲気を醸し出している「Rainie」は、アコギとウクレレがメイン。
この「デニム感」は、保守的と言われるアコギの中でひときわ異彩を放つ、新しさを帯びていました。
サウンドホールの凝った意匠、右肘部分の滑らかな加工、こうした木工を低価格で平然とやってのけてしまうのが、中国製品の驚くべきポイントです。
何となく、日本の雰囲気に通じる気もしますね。
夜桜・・・。気のせい気のせい。
ギターが元気に跳ねまわっている感じの、ポップなディスプレイにセンスを感じさせる「Starsun」。ラインナップはオーソドックスなものが主体です。このブランドに限らず、アコースティックのデモ演奏に関しては女性プレイヤーがかなりいる印象を受けました。
可愛らしさで演出するウクレレブランド「Uma」。
ポップな可愛らしさがありながらも、ウッディな温かみのある、良くバランスの取れているウクレレです。若い女性を起用したプロモーションも、センスあるんじゃないでしょうか。
「中国ではエレキよりアコギ」という言葉は本当なのかもしれません。珍しい木材をぜいたくに使用しながら木工技術をバンバン見せつけてくれるアコギの中国ブランドが、何社も見られます。この「メソポタミア」は、木材を育てるために熱処理を加えているのをセールスポイントにしています。
大胆なインレイワーク、そしてバール材をトップに使用するなど思い切ったマテリアル、カッタウェイや右肘部分を斜めにカットする滑らかなボディラインなど、加工技術をこれでもかと見せつけてくれる「Kaima」。
日本でここまで作るといくらになるか分かったものではありませんが、こちらでは低価格で平然とやってのけている感があります。
ドレッドノート、ジャンボ、フォーク、ミニギターまでさまざまなアコギをリリースしている「LEGPAP」は、右肘部分に滑らかなカーブを描かせる「ドロップトップ」的な構造が特徴。他のブランドではなかなか見ることのできない、オリジナリティを感じさせる設計です。
ヘッドのデザインにも特徴があるほかカラーリングやトップ材の選択などの意匠で、個性を主張しにくいアコギという分野で存在感を発揮している感があります。総単板の高級モデルもリリースしていますが、合板の低価格なものに人気が集まっているのだとか。
現代クラシックギターの原形を作ったといわれるアントニオ・デ・トーレスの名を冠する「托雷斯吉他(torres guitar/トーレス・ギター)」は、韓国で生産しています。
フラッグシップだというこの一本は、バック材が2重になっており、モダンかつパワフルなサウンドが得られます。
スタッフさんが、哀愁を感じるソロギターの演奏を聞かせてくださいました。
アコギやエレキ、ベース、カホンなどさまざまな分野でラインナップを展開している「Sole」は本社を韓国に置き、中国で生産、こちらではかなり有力なブランドのようです。最も支持されているのはアコースティックギターで、最もプッシュしたいハイエンドモデルにはエルボー部分の滑らかな加工によって抱えやすく、ロッキングチューナーを採用した弾きやすさと扱いやすさを兼ね備えています。ネックにはカーボンロッドが仕込まれ、ボディトップはイングルマンスプルースを使用。木材は総単板で素直な美しい響きを持っています。12フレット部のインレイはブランド名の「S」をかたどっています。
この「Sole」はヘッド形状、カッタウェイ、ブリッジ形状で中国国内の意匠登録を取得しています。日本市場へも野心を燃やしていますが、中国製で日本の代理店が求める品質基準をクリアするのに苦労しているのだとか。
中国で設計/製造しているというウクレレ専門ブランド「Nice(ナイス)」は、手造りのクラフトマンシップを売りにしています。スパイダーのデザインを取り入れ、蜘蛛の巣状のサウンドホールそのほかところどころに蜘蛛のモチーフを取り入れたショーモデルは、軽やかな素直なサウンド。
お互いに(主にこちら側が)英語が苦手な東洋人同士のやりとりなので、「このブースでは、どれが一番人気がある楽器ですか?」という質問がうまく伝わらず、「ああ、一番人気のあるウクレレだったら、そこのコアロハさんだよ」なんて答えが返ってくる一面も。
銘木をふんだんに使用したハイエンドベース「Dtc」。中華ブランドでも高級機/ハイエンドモデルが誕生しています。
日本国内では小型で価格の安いエフェクターで認知されている「JOYO」。ギターアンプやチューナー、マルチエフェクターまでカバーする総合的なエレクトロニクスのブランドです。別のブランド名でエレクトリックドラムもリリースしています。
エフェクター、ミニアンプがずらり。つまみを誤って回してしまわないようにカバーが付いているあたり、便利にできています。練習用デジタルアンプにはアンプセレクトやエフェクターだけでなく、チューナーやドラムマシンまで備わっています。
スィートなクリーン、ホットなクランチからファットなディストーションまでカバーするスタックアンプ「バーボンストリート」。
中国では、黒いものはたいがいハイゲインです。ズムズム言わそうと思ったら、まず間違いなく黒いアンプや黒いエフェクターを選びましょう。
おそらく現在、JOYOがもっとも力を注いでいるであろうと思われる白いアンプ「KLONZ」。クリーン/ドライブの2Ch仕様で、ツヤのあるリッチなサウンドは、箱モノで鳴らしたい。ブルースやジャズにフィットするようだけど、マルチエフェクターの「受け」としてもいい仕事をしてくれそう。
「Small、Smart、Original」を標榜する「MOOER」。小型のコンパクトエフェクターで日本でも知られますが、シンプルにまとまったマルチエフェクターやアンプまで展示されていました。
コンパクトエフェクターを横一列につなげた疑似マルチエフェクターは、近年の流行。コンパクトにまとまっているので扱いに便利で、ノイズも少ないメリットが。
小さめなエフェクターを多く扱っている「ROWIN」は、日本でも見かける機会が多いのではないでしょうか。
定番サウンドの再現度の高さで知られる「VALETON」は、日本でも流通が始まっています。主要なエフェクトがまとまっている「DAPPER」シリーズに注目が集まっており、ハイゲイン志向の「Dapper Dark」はスタッフさんも愛用の品なんだとか。本体はスリッパくらいの長さで、ディストーション、コーラス、ディレイが使用でき、ブースターとチューナーを備え、センド/リターンを実装しています。
とにかくあらゆる種類のペダルを網羅する、というのが中国におけるエフェクターブランドの目標のようです。
ギターアンプは「吉他音箱」と書きます。「DURAND」では10Wから200Wまでさまざまなラインナップを展開していますが、出力を抑えた中型真空管アンプ「DAT系列」がイチオシとのこと。出力切り替えスイッチが付いているため、ライブでしっかり鳴らすことも、自宅練習の小さな音量でがっつり歪ませることもできます。
白いアンプ「DAT-40S」はブリティッシュ系のシャキっとしたキャラクター、コンボアンプ「DAT-30Combo」はブルース志向のファットなサウンド、黒い「DAT-50S」はハイゲインモデルで、カタログでは「”残酷”的粉砕性音色」と表示されるシュレッドなサウンドが得られます。この「DAT-50S」は独立2チャンネル仕様、各チャンネルには二つずつキャラクターが用意され、ワット数もチャンネルごとに設定できるので、
の組み合わせ、といったように、いろいろわがままな使い方ができます。
ブランドロゴを隠したらと思うと、「さすが中国」と感心させられます。
いろいろなピックアップを再現しているようですが、何より意匠を凝らしたデザイン性にオリジナリティを感じさせます。
ギター向けを中心に、サックスやアコーディオンなど様々な楽器のストラップを生産している「Huajin」。日本でも通販サイトなどで目にすることがあります。
中国ではかなりのシェアを誇る巨大メーカーで、デザインもシンプルなものから超個性的なものまでさまざま。デザインはカスタムもできるそうです。
どのブースでも現場に立つのは若いスタッフが中心のようで、全体的にフレッシュな雰囲気を感じさせています。
「best seat in the house(家の中で最良の椅子)」というキャッチが何かの暗示なのかどうなのか、日本人の感覚ではちょっと難解ではあります。
この楽器は「琴」という呼びかたで良いのでしょうか。こうした楽器については不勉強ながら、「さすが本場は違うなぁ」なんて生意気な感想を述べたりなんかするわけです。
中国では「木工ができるんなら、木で作るものは何でもできる」と考えられているのでしょうか。古楽器を扱っているブースにて発見した、琵琶や馬頭琴に囲まれているギターの図。
バイオリンもギターも作るよ!というノンジャンルなメーカーも。かつて日本においても、「鈴木バイオリン」というバイオリンメーカーがギターを作っていた、またコントラバスのメーカー「チャキ」がギターを作っていたなど、同様の例はいくつも見られます。
E1とE2がピアノの展示場です。これは「全身銘木」というまことにクレイジーなグランドピアノ。
お国柄を感じさせる絵。このお爺さんの腕前はかなりのもので、ついつい聴き惚れてしまいました。
全身透明の琴。しかもエレアコ(?)です。
以上、いろいろなものをご覧いただきましたが、こちらで紹介しましたのは、Music China 2017のほんの一部に過ぎません。でかい、あまりにもでかいイベントでした。
会場のそこかしこで展開するライブを見ていく限りでは、ここ中国においてはポップスやロック、ソウル、ファンクなどさまざまな音楽が愛聴されているようです。日本の音楽も伝わってはいるようで、アコースティックライブでJ-popが聞こえてきたこともありました。日本のアーティストやユーチューバーがこっちで大人気、という状況も見ることができました。
しかしこと「エレキギター」に絞ると、展示場でのライブ演奏が全てハードロック/ヘヴィメタルのアーティストによるものでしたから、こうしたジャンルに関心が集中しているのか?と思わされます。中国では文化大革命の期間中ポップスが規制対象であり、それが終わってロックが入ってきたのがようやく1980年です。ここからあらゆる音楽が一気になだれ込んできていますから、さまざまなジャンルの中で、最もインパクトの強烈なサウンドに注目が集まった、ということなのでしょう。10歳の天才少女YOYOちゃんが、イングヴェイ・マルムスティーン氏の「Far Beyond The Sun」やスティーヴ・ヴァイ氏の「For the Love of God」など、往年のメタルの名曲を弾きこなすライブ演奏がありましたが、彼女にしてみたらバッハやショパンを演奏しているような感覚なのでしょうね。
かつて「男は全員角刈り」とまで言われた中国のファッション事情ですが、各ブースのスタッフさんや来場者を見ていく限り、清潔感のある身なりの人がほとんどで、日本と区別がつかない感じになっている印象でした。私たちが取材した二日間が商談を目的とする「バイヤーズ・デイ」だったこともあってか、逆に「いかにもバンドマン風」の来場者はほぼ見当たりませんでした。また「大きめのメガネを下げ気味に掛け、小顔かつ童顔に見せる」というテクを駆使した女性が多かったように思います。
中国のいわゆる「コピービジネス」は世界的に有名ですが、今回の展示物の中にも目を疑うようなコピー商品を多く見かけました。しかしながら、今や中国国内においても意匠や商標を保護する考え方が浸透しつつあるようで、法整備も済んでいます。取材した何件かで意匠登録のお話を伺いましたし、カタログの最初のページで「意匠登録取得証明書」の写真を掲載するブランドまでありました。国内の法律で保護されていないデザインはコピーし放題である半面、世界を相手に商売をしようと思ったら何が必要なのか、多くの人が感づいてきているようです。事実、初めて見る設計や意匠のギターを見かけることが何度もあり、その発想の自由さ、ユニークさに驚かされました。
歴史上、中国人は火薬や麻雀を発明し、中国雑技団や中華料理、功夫(カンフー)などの武術といった、驚愕すべきさまざまなものを生み出してきました。世界市場を意識しだした中国から何が生まれるのか、楽しみなところです。音楽ブームの盛り上がり、中華ブランドの隆盛、中国市場へ挑戦する日本企業など、中国の面白さは決して無視できません。
以上、Music China 2017のレポートをお届けしました!
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