ダウンチューニングならこの弦を使え!ドロップチューニング対応のギター弦特集

[記事公開日]2021/9/15 [最終更新日]2021/9/20
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

ダウンチューニング

6弦のチューニングを1音下げる「ドロップチューニング」は、5弦6弦のパワーコードが指一本で押さえられること、また新しいコードの押さえ方を見つけることができること、そして何より「ふつうのギターでは不可能なヘヴィな音が手に入る」というメリットがあります。チューニングを下げれば下げるほどヘヴィなサウンドになっていくと思いきや、弦が張力を失って情けない音になることも。そんなわけで今回はドロップチューニングに注目するとともに、各種ドロップチューニングに適した弦を考えていきましょう。


hide with Spread Beaver – ROCKET DIVE
故hide氏の名曲「ROCKET DIVE」。この曲では、ドロップDチューニングが使用されています。「指一本でパワーコードが弾ける」という利点を活かし、この曲のように動きの多い低音リフを作ることができるのも、ドロップチューニングの強みです。

チューニングはどこまで下げられる?

まずは定番のゲージをチェック!

アーニーボールの「スリンキー」シリーズから、定番のゲージ(各弦の太さ)をチェックしてみましょう。

ERNIE BALL Slinkyシリーズ 太さの単位はインチ。「p」はプレーン弦、「w」はワウンド(巻き)弦の意。

9-42(ゼロキューヨンニー)」と「10-46(イチゼロヨンロク)」はエレキギター弦の王道中の王道で、どのメーカーのラインナップにも、この通りの弦があります。もっと細い「8-」ともっと太い「11-」については、メーカーごとに「何弦がどれだけ」みたいなわずかな違いが見られます。

「9-42」は半音、「10-46」は1音下げまでが目安

8-38」のゲージはノーマルチューニングができる物理的な限界だと言われており、ここから下げると張力不足が懸念されます。だいたいの目安として「9-42」は半音下げまで、「10-46」は1音下げまではできるけど、もっと下げようと思ったらゲージを上げる必要がある、という考えが一般的です。

太い弦は、けっこうな低さに設定できる

ここで注目したいのは、「8-38」の2,3弦、「11-48」の1,2弦の直径の一致です。これは、「11-48」の1弦はBまで、2弦はGまで下げても使い物になることを示しています。しかし1弦のBに合わせて2弦をF#まで下げると、2弦は張力不足が起きるかもしれません。よってこのゲージ弦は、1弦C(2音下げ)まではまあまあ行けそうだが、1弦B(2音半下げ)は調整次第かな、と推察できるわけです。

ドロップチューニング使いの救い主「ヘヴィ・ボトム」

ERNIE BALL Heavy Bottom

再びアーニーボールのラインナップより、今度はいわゆる「ヘヴィ・ボトム」弦に注目してみましょう。「ヘヴィ・ボトム」とは、低音弦(ボトム)のゲージをアップした弦のことです。アーニーボールでは「9-46(ハイブリッド・スリンキー)」や「10-48(ウルトラ・スリンキー)」などがこれに該当し、高音弦はチョーキングがしやすく、いっぽう低音弦は張りが強いので、ドロップチューニングに伴う張力不足が食い止められます。ズムズム弾きたいけどリードプレイも弾きたい、という人はこうした弦を選ぶといいでしょう。

ドロップチューニングに必要な調整は?

ドロップチューニングを利用する場合、弦の状態がノーマルチューニングとは異なることから、相応の調整が必要になる場合があります。弦張力が下がるので、ネック調整が必要になるかもしれません。また、トレモロの位置を正しく維持できるようにする必要もあります。弦を大幅に太くするのなら、ナット調整も必要です。

「ネック剛性」は重視すべき?

1本のギターで、曲によって6弦をDに下げたりEに戻したりすると、弦張力の影響を受けやすいしなやかなネックは僅かに順ぞり/逆ぞりするため、他の弦のチューニングが影響を受けてしまいます。だからといってしなやかなネックのギターにはそれだからこその音があり、決してダメなギターではありません。ただし、そのギターで使うチューニングはひとつに決めて、あまりチューニングを変更しないようにするのが上策でしょう。

いっぽう弦の引っ張りにびくともしないようなカッチカチのネックは、6弦のチューニングを1音上下させるくらいでは他の弦に影響しません。1本のギターでノーマルチューニングとドロップDを頻繁に切り替えるような人は、ネックの頑丈なギターを選ぶと良いでしょう。
ネックの材質・形状について

《チューニング別》おすすめギター弦のラインナップ

では、さまざまなドロップチューニングごとに、お勧めの弦を見ていきましょう。特に注目するべきは、各弦のゲージです。触感やサウンドはブランドごとに違いますが、同じようなゲージならダウンチューニングしたときの張力もだいたい同じです。ここを参考に、ぜひ自分にぴったりの弦を探し当ててください。

ノーマルチューニング←→全弦半音下げチューニング/ドロップD

ノーマルチューニングを基本としながらたまに半音下げチューニングドロップDチューニングにする、という使い方ならば、「09-42」「10-46」また「09-46」といったスタンダードなゲージが良いでしょう。ドロップDで固定するなら「09-46」や「10-46」がお勧めです。そして現代ギター弦のスタンダードといえば、以下の3つになるでしょう。

Ernie Ball「Slinky」シリーズ

3弦をプレーン弦とするエレキギター弦は、アーニーボールが初めて製品化しました。アーニーボールの歴史はエレキギター弦の歴史でもあり、競合他社のゲージもアーニーボールを出発点としています。「スリンキー」シリーズはその超定番ど真ん中の弦で、遠くに甘さを感じるブライトなトーンと、柔らかな感触が持ち味です。

「Slinky」シリーズを…
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D’Addario「XL Nickel」シリーズ

アーニーボールと双璧を成すダダリオは、15世紀イタリアの町サッレに住む弦職人ダダリオを始祖とする歴史あるブランドです。定番モデル「XLニッケル」は張りと芯のある硬質なトーンが持ち味で、フラットな特性からギターやアンプの個性をしっかり引き出してくれます。

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Elixir「OPTIWEB」シリーズ

コーティング弦

エリクサーは「コーティング弦」というイノベーションで業界を震撼させた、この分野のパイオニアです。ラインナップの全てがコーティング弦という専門ブランドですが、最新作「オプティウェブ」は極薄のコーティングによりふつうの弦と代わらないブライトな音と感触を持ち、しかもおそろしく長寿命です。

《美しい音を長くキープ》エリクサーOPTIWEBコーティング弦とは?

ドロップC#、ドロップCチューニング

全弦半音下げチューニングで6弦を1音下げるのが「ドロップC#」、全弦1音下げで同じことをするのが「ドロップC」です。だいたいここからオーソドックスな10-46の張力では物足りなくなってきます。「10-52」などのヘヴィ・ボトムや「11-50」など、1段階太いゲージがお勧めです。

SIT「POWER WOUND」シリーズ

ミディアムライトは3弦用に巻弦とプレーン弦が収められており、選べる。

SIT(エスアイティー)は「Stay In Tune(チューニングが安定している)」を社名に冠する、チューニングの安定度を最大の売りにしているブランドです。同ブランド定番モデル「パワー・ワウンド」はクセの無さとパワフルな出力が持ち味で、ヘヴィ志向のミュージシャンに厚く支持されています。他ブラントと比べて各弦のゲージが緻密にセレクトされているのも面白いところで、ゲージは「08-38」から「13-58」まで幅広くリリースされています。

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Jim Dunlop「Heavy Core」シリーズ

ジム・ダンロップの弦は、柔らかな弾き心地とダークでロック的なサウンドが特徴で、メタルアーティストのシグネイチャーモデルもリリースされています。ダウンチューニング専用弦としてリリースされた「ヘヴィ・コア」は芯線(コア)を通常より太く(ヘヴィ)したその名の通りの設計で、ダウンチューニング時にちょうどよいテンションが得られます。ゲージは10-48(HEAVY)、11-50(HEAVIER)、12-54(HEAVIEST)の3段階で、価格が抑えられているので試しやすい弦だと言えるでしょう。

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ドロップB、ドロップBbチューニング

全弦1音半下げチューニングで6弦をさらに1音落とすのが「ドロップB」、全弦2音下げチューニングで同じことをするのが「ドロップBb」です。ここまで来ると1弦は「11」か「12」が欲しくなってきます。また、6弦の「B」や「Bb」をキレイにズムズム言わせるには、「50」以上の太さが必要になってきます。

DR「DDT」シリーズ

「ドロップ-ダウン・チューニング」略してDDT!

DR(ディーアール)は、デジタル化や自動化が礼讃される現代に於いて「手巻き」製法による音の良さを主張し続けているブランドです。ダウンチューニングとドロップチューニングを想定した「DDT」シリーズは、特許技術ACTによるタイトな巻きつけで、ドロップチューニングであっても「不気味な程に、安定するチューニング」を実現しています。ゲージは「10-46」から「13-65」まであります。

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ROTOSOUND「MAS11 MICHAEL AMOTT SIGNATURE」

ROTOSOUND(ロトサウンド)は英国のブランドで、ジミ・ヘンドリクス氏、ブライアン・メイ氏、ジャコ・パストリアス氏、ポール・マッカートニー氏ら名だたるギタリスト/ベーシストに支持されています。メロディック・デスメタルバンドArch Enemy(アーチ・エネミー)に所属するマイケル・アモット氏のシグネイチャー弦は、2音下げチューニングでの使用を想定した「11-59」のゲージです。高音弦は柔らかでテクニカルな演奏がしやすく、低音弦はしっかり太くてズムズムのヘヴィリフがしっかり立ちます。

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ドロップA チューニング

全弦2音半下げチューニングで6弦をさらに1音落とすのが「ドロップA」です。このチューニングでは、1弦が「12」か「13」で始まるゲージが適切です。またバリトンギター用の弦が使用できるほか、ここまで来ると7弦ギターの音域に達しますから、7弦用の弦から1弦を外して使うのも良いでしょう。

La Bella「Drop Tune」シリーズ

ラベラはダダリオと同じくイタリアの町サッレにルーツを持つ、歴史あるブランドです。「ドロップ・チューン」は、ダウンチューニング/ドロップチューニングを想定して低音弦のゲージをアップしたシリーズで、「10-70」「11-70」「13-60」「13-70」という、6弦「70」に深くこだわった4タイプがリリースされています。。

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Ernie Ball「Nickel Wound Custom Gauge」シリーズ

アーニーボール「ニッケルワウンド・カスタムゲージ」は、定番モデル「スリンキー」の弦で太くパワフルなセットを組んだシリーズです。3弦がワウンド弦になっているので、コードやリフを多く弾く人に良いでしょう。これに好きな1弦を追加したら、7弦のセットを作ることもできます。ゲージは「10-50」「11-52」「12-54」「13-56」の4タイプです。

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多弦ギターのダウンチューニングに対応する弦

多弦ギター用のダウンチューニング対応ゲージとなると、かなりレアな存在です。どうしても好きなものが見つからない時は、6弦用の極太ゲージに1弦を追加するなどの工夫が必要です。なお、「70」以上のゲージは普通のペグ穴を通らない可能性があります。この場合、適応するペグに交換するかペグ穴を拡大するなどの対処が必要です。

D’Addario「NYXL」シリーズ

ダダリオの「NYXL(ニクシル)」は、定番の地位を築いた自社製品の金属自体を見直すことから開発した、次世代のギター弦です。強靭で音抜けが良く、チューニングが安定し、力強く太いサウンドが得られます。高級な弦ですが、スタンダードな弦に親しんできたギタリストならその違いが感触で分かります。ゲージは幅広くラインナップされていますが、7弦用は「10-59」「11-69」の2モデルが、また8弦用に「9-80」「10-74」の2モデルがリリースされています。

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ghs「BOOMERS」シリーズ

ghs「ブーマーズ」シリーズは1964年の発売以来、同社を代表するモデルです。独自開発の金属「ダイナマイトアロイ」を使った力強く明るいサウンドから「パワーストリング」の異名を持ち、さまざまなゲージで展開しています。7弦用は「9ー58」「9ー62」「10ー60」「11ー64」「13ー74」、8弦用に「9ー72」「10ー76」「9ー74」「10ー80」「11ー85」と、それぞれ5モデルずつリリースしているので、目的に合ったゲージがきっと見つかります。

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以上、ドロップチューニングに注目し、いろいろな弦を見ていきました。各チューニングに対する推奨されるゲージは、24.75″から25.5″までのオーソドックスな弦長のギターを想定しています。近年ではダウンチューニングを想定して弦長を伸ばしたギターが多数リリースされていますが、こうしたギターではゲージを上げなくても弦張力がじゅうぶん得られます。自分のギターで、使いたいチューニングのために、どんな弦がちょうど良いのか、いろいろ試して満足いく弦を探し出してください。

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