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1998年から工場を設備しギターの製造を行っているブランドFREEDOM CUSTOM GUITAR RESEARCH(フリーダムカスタムギターリサーチ:Freedom CGR)。同社の作るギターの保証期間はなんと「100年」。そこに込められた想いは何なのか?Freedom CGRの作るギターの特徴は?
Supernice!スタッフは今回、東京都荒川区にあるFreedom CGRの工場に訪問。ショールームにて代表の深野真さん、営業の小野さんにお話を伺うことができました!
──よろしくお願いします。さっそくですが、Freedom CGRギターの特徴について教えて下さい
深野 真さん(以下、敬称略) アリミゾワンポイントジョイントだったり弦高が低かったりステンレスフレットだったり音だったり、あとスケールがフェンダーよりちょい短くギブソンより長い25インチでできているというのもありますが、うちの楽器は「100年保証」を謳ってて、ある意味そこに集約されているかもしれません。
楽器って要素としては、音/見た目/機能、この3つの部分で語られると思うんですけど、うちは耐久性にこだわっています。いわゆるビンテージギター、エレキギター創世記のフェンダー・ギブソン・リッケンバッカー・グレッチといったアメリカンメーカーが大好きで、そこに自分がやられちゃっている(魅せられている)というのが大きいのですが、それの何たるかを知った上でモノ作りを初めて、最低でも4,50年持つ/それが持たない楽器は作らない、作るもの全部そういうギターを作りたいと思って作っています。100年持たなくてもいいと思っている人もたくさんいるでしょうが、ただ、うちは持つ楽器を作りたいっていうところは特徴的な部分じゃないかなと思います。
──100年保証って逆にいうと普通のギターはそんなに持たないんでしょうか?
深野真 そういうわけではないですが、うちは30年以上修理業務をやってきてあらゆるブランドのギターをかたっぱしから見て来たんですが、どういうギターがどういう問題の発生の仕方をするかを見て来て、量産品はアタリ/ハズレがあると感じました。自分たちはアタリ/ハズレをなくすために小規模量産という形をとっています。
代表、深野社長。とても丁寧に色々と教えていただきました。
──ギターは経年と共にどういう部分で劣化していきますか?
深野真 ネックの反りが一番多いです、一番気を使う部分ですね。またパーツの劣化は避けられません。ノブや電気ポッド、ブリッジは逆にそんな持たないですね。木と金属で考えたら圧倒的に金属が持たないですから。100年保証は、楽器として生命が失われないこと/ずっと弾き続けられるものであること、土台となる木部の部分の話です。
──土台となる木を選ぶのが一番こだわるところですか?
深野真 はい、特に竿の部分、ネックの部分です。ギターが出来上がってお客さんのところにいってから、弦のテンションに対して綺麗な一定の曲線を持ってネックのテンションに負けてくる、っていう状況をいかに作るか、っていうところに命をかけています。ネック自体が弦のテンションに対して複雑に反ってしまうとトラスロッドを使ってもそのうねりはとれない、反るにしても綺麗に同じ面でそるように心がけています。ネックの形状からして、クラシックギターは弦のテンションに対して綺麗に反りやすいんですけど、エレキギターのネックの場合は、ボディとのジョイント部分から、ナット側に向かうにつれて細くなってゆく円錐形をしていますから、例えばそこに(加工精度の問題:磨き過ぎ、削り過ぎなどで)厚い部分とか細い部分が出て来たら綺麗に反らないんですね。
指板面は押弦する部分になるので、ストレート性が要求されますが、フリーダムでは指板面と同様に、ネック裏の部分にも高い加工精度を追求しながら、狂いの出方まで考えて作っています。
また、ネックは表も裏もコンマ何ミリの世界で剛性のバランスが変わってしまうので、そういった部分に凄く気を使います。時間が経ってきたときに、細いところを中心にバズ(びびり)が出たりします。
あと木目の通り方で、こいつ性格わるそうだなって思うやつは最初から使いません。加工段階でもふるいにかけます。外からはわからない木の中身を切っていくと、例えば削ったら節が何本も入っていた、虫食いが入っているなどすると使わないです。
──ネックとボディの話、ネックのほうがよりシビアに見ていくんですか?
深野真 楽器としての命の存続は竿(ネック)に拘る部分が多いですね。こういう言い方はアレですが、ソリッドボディの場合、ボディは割れなどが起きない限り多少反っていても使えます。ネックの反りはプレイアビリティに直結ですからそういうわけにはいきません。フレットが減っても変わってきますし。
──半年以上、木を寝かせて東京の環境に慣らしているとお聞きしました。
深野真 そうしないと木材での製造はむずかしいですよね、東京の環境では。コンクリートが多いから雨が降るとすぐに湿度があがり雨がやむとすぐにひく、その差が凄い激しいですよね。これが長野とかギターのメッカになると(長野には多くのギターブランドが工場を構える場所です)生の土や木々が多いので、都市部と比べれば(一度土が吸収するので)湿度上下の幅が緩やか。東京では木材を寝かせる前に色んな加工をしてしまうと歪みが出てしまいます。
工場で見せてもらった、Freedom独自のステンレスフレット
深野真 ステンレスフレットは開発をはじめてから15年以上たちます。ステンレスフレットは錆びない、10年20年50年たっても錆びません。この輝き!絶対さびないです。ニッケルシルバーのフレットはくすんでくるじゃないですか。フレットがステンレスだと、ライブが終わったあと汗かいて拭かないままのギターをケースに入れて、10年後に開けても同じ状態のままです。常にクリーンなコンディションで弾いていられる、それが魅力です。
既存のステンレスフレットは固くて耐久性が高くて音色がブライト、減りにくい/硬度が凄く高いという特徴があるのですが、楽器としてはトゥーマッチなんです。固すぎるステンレスフレットはブライトすぎる音しか出てこない感じが嫌いだったので、自分達で柔らかいステンレスフレットを作りました。柔らかいっていうのが一番の特徴なんです。耐久性は市販のステンレスフレットより落ちるんですが、ニッケルやシルバーのフレットよりは持ちます。うちはやや硬めな「スピーディ」/すごく柔らかい「ウォーム」という2種類を出しています。固いニッケルフレットとうちのスピーディを比べるとうちのほうがちょっと固い、けど他社市販品よりは柔らかい。で音が全然違うんです。
ネジ穴の様子を、社長自ら絵に描いて説明して
いただきました
深野真 うちはネジを入れる前に塗装の面をとります。普通にネジを入れると塗装が割れるんですが、面をとっておくとネジまわりの塗装がもろけたりしない。一度これやっとくと、何回つけたり外したりしても大丈夫なんです。
ネジ穴内部に予め螺旋状の溝を切っておく
ネジ穴周囲の塗装の面を斜めにカットしている
細部に渡るきめ細やかなこだわり!
ネジ穴にはあらかじめしっかりと螺旋を切っています。下穴をあけ、木ネジを締めこんだ後に、何度かネジを上下運動させて、下穴の内部にしっかりとネジの螺旋を付けます。ネックジョイントやその他のネジに関しても同じです。ネジを一旦外して、再度締め込む際に、最初に切った螺旋と違うところに螺旋を切っていってしまうと、それを何回かくり返していくうちにネジ穴がぼそぼそになってしまうんですが、一番最初に入れた螺旋をずっと使い続けられれば、もつんです。こんなことをしなくても穴はあけてネジはつけることができますが、要はメンテナンス。ネジで止まってるイコール誰かがどこかで外す可能性がある、ピックアップ交換する時はネジを外しますよね、外して何かを調整したり。そういった時にネジ穴の螺旋が追いかけられないとグズグズになっていってしまう。あらかじめしっかりとネジ穴に螺旋を切っておけば、プロのリペアマンなど、わかっている人だと後でしっかりそれを追いかけられるんです。(ネジを下穴にあわせてから、締め込む方向とは逆方向に回してみると、あらかじめ切られた螺旋にあわせて一旦ネジが持ち上がってからカタンっとわずかに落ちるのが分かる。そこからあらためて締め込む方向に回して行けば、スムーズに内部の螺旋を追いかけながらネジを締め込んでいくことができる。)
──ネジの形に内部の溝が入っているってことですか?
深野真 そうです。うちの全ての楽器はセットアップをする段階で、「その後に誰かが触る」というのを常に想定しながら作っています。
──コストがかかりそうですね
深野真 だから高いですよ、うちの楽器・・・、すいません(笑
FreedomのHydra(ハイドラ)シリーズのギターに採用されている「ARIMIZO & One Point Joint」は、ネジの締め具合で音が変化するという斬新なネック・ジョイント方式。これもFreedomギターの大きな特徴の一つです。実際に音の違いを演奏して聴かせていただきましたが、驚くほど音の変化がありました。深野社長のコメントはこちらのページで↓↓
伝統工法を応用した斬新なジョイント法「ARIMIZO & One Point Joint」 – Freedom CGR
──ピックアップについてはいかがでしょうか
深野真 以前はVooDoo社製ピックアップを使っていましたが、ハムバッカー/ソープバー/シングルコイルを自社で開発し終えて、現在では全てのモデルにオリジナルピックアップを搭載しています。うちのギターってある意味60年代のヴィンテージギターの音にも相通ずるものがあると思っています。
──ハイドラのようなスーパーストラトはそんなふうには見えないんですが
ハイドラのギターを持って説明してくださる営業の小野さん
深野真 見た目にはそう見えるでしょ?でもそんなことはないから。バリバリ「スティーヴィー・レイ・ヴォーン」の音とかが出るようになっています。逆にノイズが少ないスタジオチックなイメージでこのギターを手にするとギャップがあるかもしれません。
──見た目には「スティーブ・ヴァイ」の音が出そうな感じがしました
深野真 そういう方向にもいけるんですけど、土台として考えるとどの楽器も60’sです。どの楽器にもハイパワーのピックアップはついてないんですよ。みんな弾き手のニュアンスをリアルに表現する楽器なので、逆を言えばアラが出やすくて技量を問われる、ある意味プレイヤーにとってシヴィアな楽器だとも思います。だけど、絶対に上手くなると思いますよ、うちの楽器は!何故かって、弾きこなすのが大変だってプロの人もおっしゃっているので。
「ロックバリバリでハイパワー」、「ヘヴィでウォームなドライブ!」っていうギタリストは、うちのギターはビンテージ寄りなんで使いずらかったりするんですよ。でもそういう人達でも曲によってアコースティカルな感じだったりメロウでクリアなことをやりたいってなると、ハイパワーギターだと色艶とか抑揚がつきづらい。うちのギターは抑揚とか色ツヤを持たせたい人向けです。
ショールーム内のアンプで、コイルタップ・ピックアップの音を聞き比べる。ARIMIZO & One Point Joint同様、こちらも目からウロコの音の違いが!以下のページで深野さんのコメントを閲覧できます↓↓
コイルタップが生きるオリジナルハムバッカーとタップコントロール – Freedom CGR
自分の理想とする音を見つける旅がある、その旅には終わりがなくサウンドの好みも変わってくる。これはプレイヤーの誰しもに待ち受けていることだと思うんですが、うちの楽器の特徴ってどのモデルも弾き手個人の好みや、やりたい事にあわせてアジャストできるようになっています。(ARIMIZOのような)楽器自体の生鳴りでさえもコントロールできる、(タップコントロールで)アンプからの出音も好きな音にコントロールできる、スタジオのアンプ特性にもあわせてアジャストできるっていう。自分だけの一本にこんなにしやすい楽器はないと考えています。
──これだけの機能が搭載されているっていうのは今日お話を伺ってはじめて知ることができました。
深野真 スタジオ系ギタリスト、現場でどういう要求をされるかわからない人にとっては最適な一本だと思います。
──2015年夏にはRRS-Braveryという新作が登場しました。こちらのモデルには「F-90 Soapbar」というピックアップが載っていますが、これはP90を意識したんですか?
フロントに「F-90 Soapbar」ピックアップを搭載したRRS Bravery
深野真 もちろんです。好きだからです、P90の音が(笑
ただ、P90の良さってシングルコイルだけどミッド/ミッドローの太さ/歪ませた時のヤンチャな感じだと思うんですけど、私からすると少しブーミー、特にフロントで歪ませた時にもうちょっとコード感/アタックのヌケが欲しい。そうさせるためにはもうちょっとドライブを抑えないといけない、けどそうするとロック的にはいなたい感じの音になりがち。「F-90 Soapbar」は、ロック的に気持ちいいクランチ、ドライブにもっていった時でも音抜けが良い/レンジ感があって埋もれない感触、音が一塊にならない感じ、「P90ぽい太さがあった上で音が分離していく感じ」です。
──今後の展望をお聞かせ下さい
深野真 土台となるようなシリーズの構築を進めて行きたいですが、多様化、マイナーチェンジといった細かいレベルアップというか ステップアップ、より痒いところに手が届くようなことを進めていく感じです、ギターにしてもベースにしても。ロックで考えるとレスポールやストラトがある、ジャズはセミアコやフルアコ?って考えると…など。音楽ジャンルで考えて、現状ではカバーできないシリーズをリリースしていく予定です。うちがメタルギター作ったらどうなるか、とかも凄い興味ありますね。
うちはメーカーなんですけど、フリーダムって言われたら何?って言われた時に、楽器という物が代表されるよりも、楽器製造に取り組むそのスタンス(イズム)だって言いたい。一本のモデルが代表作になってない、っていうのは意図してやっています。一個のモデルというよりもうちがやっているスタンスの方向性は全部一緒、「for music , for player」に対する自分たちの答えを追求する。それがfreedom custom guitar researchというブランド名に集約されています。自分達がやりたいことはfreedom custom guitar researchであって、それは究極的な一本を作るアプローチを常に探求していくことを生業とすることなんです。
深野真 また、ついこないだ同業者の皆さんと立ち上げたばかりですが、GAKKI ENGINE OF NIPPON(通称:GEN)というメイドインジャパンのエレキの竿ものをやっているブランドの集まりを始めまして、日本にこういうものがある!というのを日本中の人に知ってもらいたいし、世界中の人に知ってもらいたい、自分たちだけじゃなくて、日本にある輸入物の楽器も含めて、日本の楽器産業の凄さと、日本の楽器の底力を知って欲しいと思っています。
たとえば「一流メーカーの最高級品の中でも、凄く良いギターが欲しい」と外国の人が思った場合、その方が住んでいる国と地元地域で最上位機種の良いものが何本見れるか?って考えたときに、2泊3日で日本に来て楽器店を回ったら、東京、大阪だけでも、その人が想像を絶する質と量、市場が日本にあるんじゃないかと思います。一地域に、こんなに沢山いい楽器がある国は他にないです。楽器市場規模のオリンピックをしたら、日本は銀メダルですから。この小さな島国日本が。
そんなことも伝えていきたいですし、今後のフリーダムCGRは、でっかい工場を持って大企業になるぞ!という考えはあまりなく、国内外問わず自分たちが作ってる楽器の良さを理解して下さる方たちに、このスタイルこのスタンスで如何に小規模量産を突き詰められるか、というのをやり続けながら、提供して行ければと思っています。
──ありがとうございました。
インタビューの後に、工場でお仕事中のスタッフの皆様を撮影させていただきました!皆様、当日は本当にありがとうございました!!
取材日は10人以上のスタッフが働いていらっしゃいました
組み込み前、ARIMIZO & One Point Joint仕様の様子がわかります
ネックの削り出しの工程、セッティング微調整の最中
ステンレスフレットを指板の寸法にあわせてカットしているところ
塗装前のボディを磨き上げていく工程
ボディにパーツの組み込み中。ブルーの美しいカラーリングです
組み込み途中。こちらも美しいカラーリング!
鮮やかなカラーのピックアップ・コイル。手巻き用の巻線機と、ワイヤリング・パターンがプログラムできるNCマシンの双方でピックアップのプロトモデルを開発。
時には自ら絵を描いて説明して下さり、時にはショールーム内のアンプにギターを通して実際の音の違いを演奏によって教えていただき、Freedom CGRのギターの魅力についてお話を伺うことができました。2016年春に登場したオリジナルベース「Dulake Libero/Dulake Flat」についてもお話を伺っているので、Freedom のベースについてきになる人はチェックしてみて下さい。
オリジナルベースの新機種 Dulake Libero/Dulake Flat インタビュー
住所:〒116-0001 東京都荒川区町屋6丁目19-11
TEL:03-5855-6277
Freedom Custom Guitar Research
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