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「すべてのバンドマン・プレイヤーを応援するロック・マガジン」をコンセプトに、楽器の演奏方法、ライブ・レポート、アーティストインタビュー、機材解説、Tab譜付き曲解説、バンド・スコアなどの情報が掲載されている音楽雑誌GiGS(ギグス)。毎月購読しているという人も多いのではないでしょうか。
今回、Supernice!スタッフがGiGS編集部へ訪問、編集長である重松彰さんにお話を伺いました。毎号どのようにして作られていくのか、取材の裏話など教えていただきました!
──よろしくお願いします。個人的にも10代半ばぐらいからGiGSは愛読書なのですが、メインの読者層はやはり中学生や高校生ですか?
重松彰さん(以下、敬称略) それを目指しているんですけど、最近は10代から40代まで、読者層は幅広くなっていますね。
──ベース、ドラムのコーナーもありますけど、やっぱりメインはギター?
重松彰 そうですね。どうしてもギタリストが多いのでギター周りの企画が多くなってしまうんですが、なるべくベース・ドラムと全般的に、毎号盛り込むようにしています。
──GiGSのコンセプトは、やっぱりロックということになるのでしょうか。
重松彰 ロックというよりかは楽器を弾いているっていうところがポイントです。バンドが結果的に多いんですけど、ボカロPだったりシンガーソングライターだったりも含めて「楽器を持っている人」にフォーカスを当てていますね。今って昔に比べて楽器というもの自体の在り方が変わってきていると思ってて、ソフトウェアに歌を歌わせるとか、一人でかっこいいドラムを作るとか、小スペースで音楽制作が全部できるなど、昔は全くできなかったことができてしまうじゃないですか。昔以上に楽器や機材自体が素晴らしく発展/発達してきている。さらに、今はそれを発表できる場が無限にある。お金がかからず、お金を取らず、広げられる。そういう時代だからこそ、その大元になる「楽器を弾くことの楽しさ」をテーマに掲げているんです。
他の音楽雑誌だと「この楽曲の世界観は、歌詞の言葉の意味は」とかっていうインタビューが多いと思うんですが、GiGSの場合は「あの曲のあのフレーズはどうやって弾いてて、エフェクターは何使ってんの?」みたいな実作業の話が多いんですね。つまり、プレイヤー目線です。あくまでプレイと機材に焦点を当てながら、若い人に今後使ってほしいとか、演奏してほしいとか、そういった想いがメインになっているんです。楽曲をコピーしてもらいたい、楽器弾いてもらいたいっていうことを促進している本なので、「楽器弾くのっておもしろくない?すごくない?」っていうのを弊誌を通して知って、実際に自分でも体感してほしい。
──機材や材質に何を使ってるからこういう音で、とかそんなことではなく、使っている人の主観を伝えていきたいということですね?
重松彰 そうです、だからギターの説明の部分なども、アーティスト自身が語っているコメントをなるべく活かすようにしています。このギターの木材が何か/どういう機能があるのかなどのスペック的な記述よりも、アーティストの思い入れやこだわってるポイント。つまり、使っている本人がどう気に入っているかっていう部分をなるべく盛り込むようにしているんです。そういう意味でアーティストさんはすごく大事なんです。
──重松さんは普段どんなお仕事をしているか教えてください。
重松彰 編集長としては、限られたページの中にどういう企画を盛り込むか/毎月のリリースとかライブ/楽器のネタが今月はこういうのがある、というのを把握しながら、その中にどれを入れるかっていう選別を行い、取材する内容を決定し、取材を進めていくという感じですね。
──重松さん自身は、インタビューをされるんですか?
重松彰 アーティストへのインタビューはライターさんにお任せします。その上で、楽器のこだわりを聞き出すような部分は僕らが聞いたりします。ライターさんには音を聞いて楽曲の中身とかを聞いてもらって、僕らがもうちょっと実作業というか、具体的な音作りの方法や演奏方法など、より専門誌寄りのことを聞くんです。撮影の合間にコメント録りできる部分は担当します。
──作業としては取材が一番多いですか?
重松彰 月の1/3が仕込み、1/3が取材、1/3が仕上げっていう感じですね。毎回、まずは本の設計図である台割というものを作るんですけど、この設計図を元に各企画について何ページと決めていく。GiGSには僕以外の編集員が3人いるんですけど、そこからはページの争奪戦です。「ここはかなり面白いからもっと(ページ数を)欲しい」とか、「最近、これが注目されているからもっと大きく載せるべきだ」とか、それに対して僕が「いや、もっとここを面白くしたい、もっと情報量が欲しい」などと話し合いながら決めていくという感じです。
ラフのレイアウトを見せてもらった。取材後に集めた情報をどのようにページへと盛り込むのかをここで構成する
──席の取り合いという感じですね
重松彰 完全に席の取り合いですね。特にリリースが重なっている時期は。ただ、弊誌は巻頭アーティスト以外からのご出稿を無理強いしていないんです。広告を打ったから載っているっていう形ではなくて、編集部員が面白いと思った企画や、今押し出すべきだとそれぞれに思っているアーティストだから載っているっていう姿勢になっています。
──編集部の方が気に入ったアーティストを取り上げているということですか?
重松彰 気に入ったというか…今プレイヤーたちに支持されているからこのバンドを推そうとか、あのバンドが出す新曲のこのプレイが凄いとか、(メンバーの)この楽器が面白いから推そう、とか。場合によっては、アーティストに実際に新しい楽器を試奏してもらうページを作ったり、あるアーティストが最近使う楽器を変えたという話を聞いたら「じゃあ、同じブランドの他のモデルも弾いてもらおう」とか、新曲を丸ごと目の前でプレイしてもらって、直接解説してもらおう、といったノリです。実際、普段聞く音楽も(GiGSを編集していく中で耳にする)気に入ったバンドが多いですね。新しい音源を聴きこんでからじゃないともちろんインタビューなんてできないですし、中でも特に気に入ったアーティストさんのアルバムとかはガンガン聞いちゃいます。GiGSの巻頭リード(導入文)とかで「熱いな!」って感じるものは、そのページの担当者がガン聴きしている証拠です。あんまり手加減してるリードがないのは、編集部員それぞれのお気に入りが載ってるからなんじゃないかなと。
──アーティストさん側から記事を掲載して欲しいというリクエストは?
重松彰 もちろんあります、並列して考えてます。そういった場合、ただインタビューするというよりは、プレイヤー目線の企画のほうでもご協力頂く場合が多いですね。例えば「ドラム講座とかはお願いできますか?」とこちらから提案して、叩いてる姿を撮らせていただいたり。ご提案いただいた時はお互いに面白いこと、プレイヤーに届く特集をやろうよっていう形で発展させやすいです。結果、労力がかかることも多いので、毎回アーティストの皆さんには感謝しています。
──譜面はアーティストさんからいただくのですか?
重松彰 アーティスト本人に目の前で弾いてもらって、それを動画で撮って、譜面を作っていくものが多いですね。その中でもGiGSのYouTubeチャンネルには公開可能なものを乗せています。YouTubeに関しては、音楽なんで、見てもらったほうがイメージしやすいし、音をまず聞いてもらったほうがチャレンジしてくれるんじゃないか、と考えてアップしています。どんなに動画を見てもフレーズを全部は追えない…そういった場合にGiGS に掲載しているTAB譜などでしっかり確認してもらう、といった感じです。
──インタビューの際に気をつけている部分はありますか?
重松彰 予めライターさんに渡すレジュメ(インタビュー内容を要約したもの)をかなり細かく作ります。こういう流れで、締めはこういう質問でなど。このアーティストはここを聞き出して欲しいっていうGiGSならではの視点や聞き出したいポイントを、しっかりと。ただ、誌面に掲載するためには どうしても削らなきゃならない話題もあったりするんです。実際、取材現場ですごい盛り上がったギターの話とかがあったんですけど、ページ数も決まってるんで、その部分はカットせざるをえなかったりとか。誌面に全然入らないんですよ。メンバー全員へのインタビューとかだとさらに大変です。「そうだよね」っていうコメントだけで1行ですからね。でもそういう時のほうがインタビューの場では盛り上がってたりするんです。その臨場感を出すために、本当は「(笑)」とか「一同爆笑」とかを入れてあげたいんですけどね (笑)。
──Webだと特に制限がないので、いくらでも入れることができます(笑)
重松彰 1時間インタビューしても載せられる量が少なくてとてももったいないと思っていたので、最近だとオフィシャルのHPのほうに誌面で掲載しきれないものを載せるようにしました。1ヶ月に何本も出せるわけじゃないのでネットのほうも取り合い、喧々諤々です。
──取材の際に大変だったことってありますか?
重松彰 楽屋での取材の時に取材時間も限られてて、リハが押すなどで時間がなくなったりすることも多々あるんですね。で、使用機材が撮れなかったとか、この楽器が撮れなかったとか、っていう状態になった場合、元々想定していたページをどうするか?どうやって面白くするか?っていうことを改めて考え直すんです。(インタビューで)思いもよらないネタがすごい膨らんだりもするんですけど、そういう時は予め構想していたテーマをボツにして、そっちに切り換えたり。当然毎回ページの青写真を思い描きながら取材に臨むんですけど、ひっくり返った時にどうするかっていうのが大変なところであり、面白いところでもあります。
──GiGSは毎号表紙のデザインが綺麗だなと思っているのですが、何かこだわりがあるのですか?例えば、ロゴは毎回色が変わりますよね?
重松彰 表紙/巻頭取材の現場にアートディレクターが立ち会っていて、撮影した写真をすぐにPCで確認できるんですけど、現場でそれを見ながらデザイナーと毎回セッションしつつ、どの色にするかを決めます。10月号だったら撮影された写真が「黒」のイメージだったので、「これしかないよね」っていう感じで白ロゴに決めました。揉めることもあります。モノクロでいくかカラーでいくかで決めきれなくて…など。毎回迷ってますけどね。
──表紙のアーティスト写真は、どういった感じで作っていくのですか?(10月号巻頭アーティストはthe Gazette)
2015年10月号の掲載記事と、そのラフ・レイアウト
重松彰 アーティストや事務所の方と事前に話しあって決めます。音源からイメージする全体の雰囲気を決めたら、撮影場所をまず決めて、アーティストの衣装の色等を聞き出しながら、表紙はどの場所で撮るか、じゃあこれだったら照明の光はどうするか、メンバーの配置や写真の構図を事前に考えていくんです。10月号の写真は出来上がりがとても良かったので、当初の予定していた誌面レイアウトから大幅に変更しました。
──webで情報発信する時代ですが、その中でGiGSはどういった立ち位置なのか、どのようにお考えですか?
重松彰 アーティストの機材や譜面の情報って、きっちり1ヶ所にまとまっているサイトがあるかっていうと、ないと思うんですよ。例えば自分が行ったあのライブで、アーティストが使ってたあのベースは何だろうと思った時に、ライブ時の全部の機材がきっちりまとまってるとか、わざわざブックマークしなくても何ページにいけばすぐに見れるとか。そういったものに対してGiGSには「歪曲しない」情報が載っているので、 振り返りやすいしデータとしても使えるだろうと。もちろんWebにもあったりするんだけど、楽器のビジュアルとその楽器の解説、アーティストの解説と、すべてがまとまって載っているアーカイブっていうのはなかなか見当たらないと思うんです。なので雑誌っていうものはそういうデータ集としても残ってて欲しいな、と思ってるんですよ。
──確かに、Web上では掲載内容が事実と異なっているといったことが、少なからずありますね。
重松彰 そうなんですよ。ですから正確性を高めるために、毎回各方面にチェックを回していますし、いろんな人の目を通して、本当に正確な情報なのかどうか、最後の3〜4日はチェックだけに費やしたりしています。
──最後に、GiGSの今後の取り組みについてお聞かせ下さい。
重松彰 プレイヤー&バンドシーンを盛り上げようという想いが基本なので、読者のみなさんに“バンドを組みたい”“楽器をやりたい”と思わせる面白い特集を提案していくしかない。毎月毎月が力作、毎月が総力特集、というのを続けていくしかないです。
──どうもありがとうございました。
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