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ジャック・ホワイト氏はザ・ホワイト・ストライプス、ザ・ラカンターズなどのバンドやソロの活動で知られるギタリスト/ボーカリストです。カリスマ性と類稀なるセンスから「21世紀最初のロック・レジェンド」と呼ばれ、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ氏からは「最近のギタリストの中ではNo.1」といった賛辞を受けています。これまでグラミー賞は8部門にわたり12回の受賞、また30回以上のノミネートがあります。今回は、このジャック・ホワイト氏に注目していきましょう。
“Connected by Love” (Live) from Jack White: Kneeling at The Anthem D.C. [Amazon Original]
色を名前に持つホワイト氏は、活動ごとにテーマカラーを設定しています。ソロでの活動においてはブルーがテーマカラーで、ステージの照明や使うギターなど、積極的にブルーを取り入れます。かつては超軽量級ボードでしたが、現在ではかなり大規模なエフェクターボードを使っています。
The White Stripes – Seven Nation Army
下降するリフに高い中毒性がある、ザ・ホワイト・ストライプスの名曲中の名曲。ベースに聞こえるパートは、ワーミーでギターの音を1オクターブ下げて演奏しています。なおレコーディング時はKAY社のアーチトップをビッグマフで歪ませ、チューニングはオープンAとのことです。
ジョン・アンソニー・ギリス、のちのジャック・ホワイト氏は1975年7月9日、アメリカ合衆国ミシガン州デトロイトにて、スコットランド系カナダ人の父とポーランド人の母の、10人目の子供として生まれました。兄たちの影響もあり6歳からドラムを始め、小学生のころからブルースやロックを聞き始めます。
15歳から家具屋の見習いを始め、このころギターを弾き始めます。この見習い時代、著名デザイナーによるソファの裏地が僅か3点で留められていることを知り、この「最小の力で最大の効果を生みだす設計」に感銘を受けます。ここから氏の「3」への愛着が始まります。
高3で知り合ったメグ・ホワイト女史と1996年に結婚、妻の姓を名乗ったジャック氏は、昼は家具職人、夜はバンドでドラムを叩く生活を送っていました。翌年メグ女史がドラムを習い始め、夫婦で「ザ・ホワイトストライプス」を結成、2ヶ月後に初ライブ、2年後(1999)にメジャーデビューします。音楽に対してミニマリズムなアプローチが、アメリカ全土で一躍話題になりました。
2005年には二人のギターボーカルが掛けあいを披露する「ザ・ラカンターズ」を結成、2009年にはドラマーとして「ザ・デッド・ウェザー」を結成します。人気の頂点にあったホワイトストライプスでしたが2011年、「今まで築き上げてきた自分たちの音楽・アートを最高の形で残したい」という理由で解散します。
ソロアーティストとしての活動も開始、2012年にソロデビュー作「Blunderbuss」をリリースします。
The White Stripes – Jolene (Official Music video)
ジャック・ホワイト氏はブルース、カントリー、ロックンロールといった近代音楽の造詣が深く、そこに現代性を絶妙にブレンドしたギタープレイは「アメリカのルネサンス」と呼ばれます。近年では「ジミヘンのようだ」とまで評されるほど感情的なリードプレイも見られますが、ホワイト氏を名手たらしめたのは独特かつストレートなリフの演奏です。レッド・ツェッペリン、ブラック・サバス、フリーといったブルース色のあるハードロックバンドに影響されつつ、ヴォーカルと絶妙にマッチするキャッチーなリフが次々と出てきます。
ホワイト氏はヴォーカリストとしても高く評価されています。歌うというより叫んだり語ったり、つぶやいたりする歌唱法は、敬愛するボブ・ディラン氏、ロバート・ジョンソン氏、サン・ハウス氏らに影響されています。
作曲については印象的なギターリフが第一で、時にはベースとユニゾンで分厚く、時には1オクターブ上げて薄く鋭く聞かせます。ホワイト氏は歌うのが大前提で、それゆえ全く違うことをやっているように思えるヴォーカルとギターリフでも、アクセントの位置が一致するなど歌いながら演奏できるようになっています。
ギターだけにとどまらずオルガン、ピアノ、マリンバ、ドラムなど様々な楽器も演奏します。しかし、テクノロジー色が強いプログラム、コンピューター系の楽器は演奏しないという志向は貫いている様子です。
ジャック・ホワイト氏はいろいろなもへのこだわりや愛着を持っており、アーティストとしての個性をより色濃くしています。そのこだわりに、ちょっと注目してみましょう。
ホワイト氏は家具屋の見習い時代から「3」という数字に愛着を持っていて、3は「手に入れることのできない、ほぼ象徴的で神秘的な完璧さ」を現していると考えています。自身のレーベルに「Third Man Records」と名付けるほか、普段は自分のことを「Jack White III」と称しています。
Jack White – Lazaretto (Official Video)
2ndソロアルバムのタイトルチューン。この動画ではテレビに三本線が表示され、ギターアンプが3台、車の番号も3、ギターのピックアップが3つにスイッチも3つ、裏にまで三本線が入れられるなど、特に「3」への愛着が確認できます。
デジタルレコーディング全盛の現代において、ホワイト氏は70年代やそれ以前の機材を使ったアナログレコーディングを行ない、また最新作ですらレコード盤でもリリースするなど、「アナログ」にに強いこだわりを持っています。自身のレーベル「Third Man Records」では音楽制作だけではなく、レコーディング技術の研究や機材の開発を進めています。
アナログでの録音は編集や録り直しをすればするほど音質を損なってしまうため、いかに少ないテイク数で仕上げるかが勝負になってきます。そういうこともあって、ホワイト氏は「レコーディングに時間がかからないアーティスト」としても知られており、アルバム1枚の録音を2週間で済ませたこともあります。
ただしアナログしか認めないというわけではなく、ホワイトストライプスではデジテック「Whammy(ワーミー)」を積極的に使用、MVではがっつり動画編集するなど、必要なところではしっかりテクノロジーの力を借りています。
ホワイト氏は「色」へのこだわりも有名で、プロジェクトごとにテーマとなるカラーを設定、アルバムジャケットや動画、衣装やギターに反映させています。ホワイトストライプスの「赤、白、黒」に対してホワイト氏は、「ナチからコカ・コーラまで通じる、最も強力な色の組み合わせ」とコメントしています。ラカンターズでは「銅」、ソロでは「青」をそれぞれテーマカラーにしており、ギターや衣装などさまざまなところに反映させています。デッドウェザーにテーマカラーがあるのかについては情報がありませんが、「黒」をかなり意識しているのではないかと言われます。
ホワイト氏はプロジェクトごとにメインとなるギターを変更していますが、それに縛られることなくさまざまなギターを使います。エフェクターについても同様でいろいろなものを使ってきましたが、ここではホワイトストライプス時代の機材をチェックしてみましょう。
The White Stripes – Fell In Love With a Girl (Live on Top Of The Pops 2002)
1960年代に「Valco Guitar and Amplifier Company」が製造、ギブソンやフェンダーよりも安価なギターとして流通しました。
「ジャック・ホワイト・ギター」と言えば通じてしまうギターですが、愛用したブルースギタリストJBハット氏から「JB Huttoモデル」とも、販売店名から「Montgomery Airline」とも呼ばれます。
ビザールギターの代表格にして、ホワイトストライプスのメイン機をつとめた、若かりしジャック・ホワイト氏を象徴するギターです。ホワイト氏にとって弾きやすいギターだったわけではなかったようですが、「簡単に弾きたければ、新品のレスポールかストラトキャスターを買えばいい」とジョーク交じりにコメントしたように、このギターを弾く苦労を楽しんでいたようです。
ボディはメイプルの柱を「Res-O-Glas」と呼ばれるグラスファイバー製のトップとバックで挟むセミアコ的な構造で、メイプルの柱にネック、ピックアップ、テールピースが固定されます。20フレットのメイプル製ネックにトラスロッドはなく、代わりに補強用の鉄芯が埋設されます。
ハムバッカーに見えて実際にはシングルコイルで、丸くてキメの細かいキャラクターを持っています。各ピックアップのすぐ隣にそれぞれのボリュームとトーンのノブがあり、ジャックのすぐ近くにマスターボリュームがあります。
このギターは2001年より、EASTWOOD社から「AIRLINE 59 2P」として復刻されています。トラスロッド付きのネック、マホガニーボディ、ハムバッカー2基という全く違う仕様のギターではありますが、むしろ現代の感覚で使いやすいギターにアレンジされています。
Electro Harmonix 「BIG MUFF Pi」、Digitech 「Whammy 5」
ホワイトストライプス時代のエフェクターボードは、エレクトロハーモニクス「ビッグマフPi」とデジテック「ワーミー」、そしてチューナーのみ、という超軽量級でした。
ビッグマフはラウドなロック系サウンドでは決して外すことのできない、王道中の王道ファズです。これにワーミーをからめるのがホワイト氏の独特なところで、1オクターブ下げてベースの用に使ったり、ギターソロを1オクターブ上げて、刺さるようなサウンドを作ったりします。
Electro Harmonix BIG MUFF Pi
Digitech Whammy 5 – Supernice!エフェクター
The White Stripes – Dead Leaves and the Dirty Ground (Live @ VH1 9/23/2005)
ステージ奥に2台のギターアンプが確認できます。向かって左側がフェンダー「ツイン・リヴァーブ」、右側がシルバートーン「1485」です。両者とも左下部分に赤い三本線が配され、「3」への深い愛着が伺えます。
現在メインで使用しているフェンダー「’65ツイン・リヴァーブ」は、極上のクリーン&クランチが得られることであまりにも著名な、定番中の定番機種です。ホワイト氏は、このアンプのスプリングリヴァーブもお気に入りと言います。
ホワイトストライプスで盛んに起用されたヴィンテージのシルバートーンは、100Wの出力がある1485ヘッドと10インチ6発のキャビネットとの組み合わせで、唯一無二の分厚いクランチが得られます。こちらにもリヴァーブは備わっていますが、ホワイト氏としてはお気に召さないようです。
Fender 65 Twin Reverb – Supernice!ギターアンプ
ホワイトストライプスから現在のソロに至るまで、ホワイト氏は数多くのアルバムを発表しています。コラボなど客演も多い積極的な活動ぶりですが、ここではその代表的なものをいくつかピックアップしていきましょう。
全てはここから始まった。2ピースのシンプルなバンドアンサンブルが奏でるアグレッシヴなブルーズは、この時点で充分に完成されています。本当に二人だけ、本当にベースがいない、二人だけのアンサンブルだからこそ発せられる、何だかわからないパワーと緊張感がたっぷり味わえます。ロバート・ジョンソンやボブ・ディランのカバーも収録。
ホワイト・ストライプスの5枚目にして、最高傑作と名高い作品。パート数の少ないソリッドなサウンドだからこそ活きる、強力なリフはやはり健在。ピアノやキーボードを積極的に使い、鍵盤楽器の整ったサウンドとギターの暴力的なファズトーンとの融合とも対比とも言えるマッチングが楽しめます。ホワイト氏のヴォーカルは表現の幅を広げ、さまざまに歌い上げます。
The White Stripes – Blue Orchid (Official Music Video)
これを強力なリフと言わずして何と言おう。この演目ではMXR 「M103 Blue Box」を使って、ギターとベースのユニゾンを表現しています。
ホワイト・ストライプス最後のスタジオアルバム。前作よりさらにアグレッシブにロックしつつ、オルガンやバグパイプの導入などバラエティに富んだ楽曲群に仕上がっています。オルガンとギターが同時に鳴るなどライブでの再現が不可能な曲もありますが、ラウドという点では同時代のロック系アーティストのなかでも最強クラスで、しっかりと芯が詰まった重量感のある作品です。
The White Stripes – Icky Thump (Official Music Video)
音楽の喜びとエネルギーに満ちた演奏からは、これを最後に解散するバンドだとはとても思えません。今まで二人が築き上げてきた音楽が、最高の形で残ったわけです。
旧友4人で結成したというラカンターズは、ジャック・ホワイト氏とブレンダン・ベンソン氏という二人のギターボーカルによる勢いの良い掛けあいが楽しめます。とことんシンプルだったホワイト・ストライプスから一転、ラカンターズではバイオリンやオルガン、またホーンセクションやピアノも採り入れるなど、サウンドの幅と厚みを大幅に増強しています。2枚目となる本作は、アルバムを通してハードなアレンジのガレージロックやロックンロールのナンバーがずらりと並ぶ代表作です。
The Raconteurs – Salute Your Solution (Official Music Video)
ホワイトストライプスに慣れた目では新鮮に感じる、バンドで演奏するホワイト氏。自分以外にベースもギターもいるので、ホワイト氏はライブでがっつりギターソロを弾くことができます。
スーパーグループ「ザ・デッドウェザー」でのホワイト氏は、ヴォーカルも務めながら主にドラムスを担当、女性ヴォーカルアリソン・モスハート女史をメインに据えています。ギターもベースもグレッチ・ホワイトファルコンを使い、キーボードも積極的に使用するという編成で、古き良きハードロックのサウンドを現代に蘇らせています。「現代のジミ・ヘンドリクス」とまで呼ばれるホワイト氏ですが、スティックを振る姿はジョン・ボーナム(レッド・ツェッペリン)氏を思わせます。
The Dead Weather – “Be Still” – Live Performance Video
まさかこの「エレキギター博士」でドラマーの紹介をする日が来るとは。ジャック・ホワイト氏のドラムセットは、全ての打面が水平かつ同じ高さになっているのが特徴です。演目によってはギターを担当するため、背後にはギターが立てかけてあります。
ギターの裏に三本の線を描き、自身を「Jack White III」と名乗る、「3」にこだわる男のソロ3作目。ソウル、ファンク、ブルース、ロックを軸に、ヒップホップ系のミュージシャンを多く起用して新たなグルーヴを取り込んだ作品。これまで忌避していたデジタルレコーディングを初めて採用したことも手伝って、聴きやすい現代的なサウンドが作られています。しかし、ホワイト氏のルーツであるブルース/ロックンロールはしっかりと健在。そのちょうどよいブレンドが楽しめます。
Jack White – Over and Over and Over
ホワイトストライプス時代から温めていたということで注目された演目。古くからのファンも納得のソリッドなサウンドに、円熟した現在のホワイト氏のテイストが華を添えます。
ホワイト・ストライプスの音源を…
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