Fender Player II Modified シリーズ:Player IIを出発点にさらに高機能となったモデル

[記事公開日]2025/5/21 [最終更新日]2025/5/25
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

Fender Player II Modified シリーズ

フェンダー「Player II Modified(プレイヤーII・モディファイド)」シリーズは、好評を博しているPlayer IIシリーズを出発点とした高機能モデルです。比較的求めやすい価格帯に収まりながらも、多様な音色や高度な表現が要求される現代の音楽に一軍起用できる高性能なギターに仕上がっています。今回は、このPlayer II Modifiedシリーズに注目していきましょう。

小林健悟

ライター
ギター教室「The Guitar Road」 主宰
小林 健悟

名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。

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コンテンツ制作チーム

webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。

Player II Modifiedシリーズの特徴

クラシカルなスタイル&現代的な演奏性

Fender Player II Modified シリーズ:ボディ裏
コンターもヒールカットもない、これぞヴィンテージ・スタイル。

ストラトキャスター、テレキャスターともに、歴史と実績あるフェンダーのスタイルをそのまま現代に伝えるクラシカルな基本設計を継承しています。4点留めのジョイント部はヒールカット非採用のヴィンテージ・スタイル。レキャスターのボディ裏はフラットで、コンター非採用です。

その一方で、モダンCシェイプのメイプル製ネックにはサラッサラのサテンフィニッシュが施され、引っ掛かりの無いスムーズなポジション移動が可能。9.5″Rを基本とした指板はエッジが丸く整えられ、ミディアムジャンボ・フレットの組み合わせにより、現代的なあらゆるスタイルの演奏に良好です。全モデルで音域は現代的な22フレットです。また、ピックガードは一般的な3層より厚手の4層になっています。ボディからの弦高を相対的に下げることで、ボディに指を立てるスタイルのピッキングに有利です。

ノイズレス・ピックアップ&特殊配線

ノイズレス・ピックアップ
シングルコイルはノイズレス仕様、ハムバッカーは3点留め。

フェンダーは世界有数のギターメーカーであると同時に、世界有数のピックアップメーカーでもあり、新しいギターのために必ず新しいピックアップを開発します。このシリーズのために開発された「PLAYER II NOISELESS」ピックアップは伝統的なフェンダーの歯切れのよいナチュラルなサウンドを、ノイズに悩まされることなくクリアにアウトプットします。

Player II Modifiedシリーズでは、全モデルのボリューム・ノブに「トレブル・ブリード回路」を装備。音量を絞っても高音域が残されるため、音抜けを維持したままゲイン調整が可能です。またサウンドバリエーションを増強する特殊配線も強みです。トーンノブのプッシュ/プルにより、各モデルに合わせた追加のサウンドバリエーションが利用できます。

アップグレードしたハードウェア

ロッキングチューナー
サムホイール式ロッキングチューナー。

Player II Modifiedシリーズでは、ハードウェアのグレードも上がっています。ロック式ダイキャスト・ペグはチューニングの安定度を高め、重量が増すのでサスティンも得られます。また短めに設定したストリングポストによりナットへの弦角度が確保され、張りのある弦振動が得られます。ブリッジはブロックサドルを基本とし、安定度とサスティンを確保、ストラトキャスターではトレモロブロックの形状を見直すことで可動範囲を拡大、大胆なアーミングを可能にしています。

ステージ映えするカラーリング

カラーバリエーション
左から、Olympic Pearl、Dusk、Harvest Green Metallic、Sunshine Yellow。
赤系がないところも、こだわりを感じさせる。

フェンダーの現代仕様モデルは、その新しさにふさわしい鮮烈なカラーリングも魅力です。Player II Modifiedシリーズもその例にもれず、光を美しく反射するメタリック系を中心とした、鮮やかなカラーバリエーションを展開しています。

ステルス性の高いサンバーストを全機種で確保しながら、逆に全機種でブラックやソニックブルーなど往年の定番色をのきなみ非採用としているのは興味深いポイント。テレキャスター王道の定番色「バタースコッチ・ブロンド」まで非採用となっており、カラーリングに対する強い信念を感じさせます。

Player II Modifiedシリーズのラインナップ

Player II Modified Stratocaster

Player II Modified Stratocaster

Player II Modifiedシリーズ、SSS配列のストラトキャスターは、ロック式ダイキャスト・ペグと2点支持シンクロナイズド・トレモロユニットの組み合わせにより、チューニングの安定度とアーミングによる表現の幅の両立を達成しています。トレモロブロックを面取りする(Chamfered Tremolo Block)ことで可動範囲が拡張されており、よりアグレッシブなアーミングが可能です。

操作系は5WAY&1V2Tで、トーン1はフロント&ミドルに、トーン2はリアにかかります。トーン2のスイッチでフロントピックアップを起動できるため、標準的なストラトでは不可能だったフロント&リア、フロント&ミドル&リアという組み合わせが得られます。

Player II Modified Stratocaster HSS

Player II Modified Stratocaster HSS

リアを専用ハムバッカーに換装したHSS配列のストラトキャスターは、SSS配列と一味違ったカラーリングでラインナップを展開しています。リアに配置したPlayer II Modified Humbuckerピックアップは、3つのネジでマウントする方式により縦にも横にも傾きの微調整が可能。トーン2の特殊配線はリアピックアップのコイルタップです。

Player II Modified Stratocaster HSS Floyd Rose

Player II Modified Stratocaster HSS Floyd Rose

FRT(フロイドローズ・トレモロシステム)装備のHSSストラトは、普通のストラトキャスターでは決して到達できない大胆なアームアップが可能です。このほかFRT独特の響きやサスティン、理論上最強と言えるチューニング安定性が得られます。指板はこのFRTに合わせた12″R、トーン2の特殊配線はリアピックアップのコイルタップです。

Player II Modified Telecaster

Player II Modified Telecaster

Player II Modifiedシリーズのテレキャスターは、表も裏もフラットな昔ながらのボディに現代的な機能と演奏性を盛り込んだ、現代的な高機能モデルに仕上がっています。トーンノブのプッシュ/プル式スイッチで「シリーズ・モード」が起動でき、ミックスポジションでフロントとリアを直列でつないだ疑似ハムバッカーの太いサウンドが得られます。

Player II Modified Telecaster SH

Player II Modified Telecaster SH

SH配列のテレキャスターはフロントにPlayer II Modified Humbuckerを装備、凶暴なリアと艶やかで太いフロントの組み合わせで幅広いサウンドバリエーションが得られます。ハムバッカーは3つのネジでマウントされるため、縦にも横にも傾きを調節できます。トーンノブの特殊配線は、ハムバッカーのコイルタップです。

他シリーズとの違いは?同価格帯ストラトとの比較

近いコンセプトのモデルと見比べることで、「Player II Modified」シリーズのアイデンティティを探してみましょう。ここで比べるのは、

  • Made in Japan Hybrid II Stratocaster(通常価格 ¥149,600 )
  • Player Plus Stratocaster(通常価格 ¥159,500)
  • Player II Modified Stratocaster(通常価格 ¥165,000)

以上にPlayer II Modifiedの出発点となったPlayer II Stratocaster(通常価格 ¥121,000)を加えた4本です。どれも「実績あるフェンダーの代表機種に、現代的なアップデートを施す」という大きなコンセプトは共通で、カラーリングや細かな味付けに個性を持たせています(価格はいずれも2025年5月時点)。

ボディ仕様の比較


Player II Stratocaster Transparent Cherry Burst (Chambered)

ほとんどのシリーズで、ボディ材には一般的なアルダーが使われています。しかしPlayer IIシリーズのみ、ボディカラーに応じてチェンバードアッシュ(White Blonde)とチェンバードマホガニー(Transparent Cherry Burst)が使われている点で異彩を放っています。「チェンバード構造」は音響のためではなく重量調整を目的として内部に空洞を設けます。アッシュは軽やかに、マホガニーは暖かく響きます。

電気系の比較

シリーズ名 ピックアップ 特殊配線 トーン回路
Player II Player Series Alnico 5 Strat® Single-Coil なし Tone 1. (Neck/Middle Pickups), Tone 2. (Bridge Pickup)
MIJ Hybrid II Hybrid II Custom Voiced Single Coil Stratocaster® なし Tone 1. (Neck Pickup), Tone 2. (Bridge/Middle Pickup)
Player Plus Player Plus Noiseless™ Strat® フロントピックアップ起動 Tone 1. (Neck/Middle Pickups), Tone 2. (Bridge Pickup)
Player II Mod. Player II Noiseless™ Strat® トレブルブリード回路内蔵&フロントピックアップ起動 Tone 1. (Neck/Middle Pickups), Tone 2. (Bridge Pickup)

Player Plus、Player II Modified両シリーズではノイズレス・ピックアップが採用され、トーン2のスイッチでフロントピックアップを起動させることで「フロント&リア」と「ピックアップぜんぶ起動」というサウンドバリエーションが得られます。ボリュームノブに仕込まれるトレブルブリード回路は、音量を絞った時の音抜けを向上させます。

現代仕様のストラトキャスターではリアピックアップにもトーンが効くように結線しますが、Made in Japan Hybrid IIのみ、リアとミドルでトーンを共有しています。

ネック仕様の比較

シリーズ名 指板R フレット ナット幅 ナット素材
Player II 9.5″ (241 mm) Medium Jumbo 1.650″ (42 mm) Synthetic Bone
MIJ Hybrid II 9.5″ (241 mm) Narrow Tall 1.650″ (42 mm) Bone
Player Plus 12″ (305 mm) Medium Jumbo 1.685″ (42.8 mm) Synthetic Bone
Player II Mod. 9.5″ (241 mm) Medium Jumbo 1.650″ (42 mm) TUSQ™

ネック仕様については、ネック本体と指板の木材構成、適度な厚みのあるモダンCネックシェイプ、ネック裏のサテンフィニッシュ、音域22フレット、といった基本仕様が共通です。ここにバリエーションが設けられていないあたり、フェンダーの考える弾きやすい現代的なネックとはこういうものだ、ということが推察できます。適度な握り心地でポジション移動がラクで、現代音楽に十分な音域を持っています。

Player Plusは僅かに幅広い平滑な指板が採用された、よりリードプレイを意識した設計です。Made in Japan Hybrid IIは細めのフレットと牛骨ナットで、ヴィンテージ系のフィーリングが得られます。Player II Modifiedは標準的な演奏性を確保しつつ、人工象牙TUSQ製のナットによりチューニング安定性を一段階向上させています。

ハードウェアの比較

シリーズ名 ペグ ブリッジ ピックガード
Player II Fender® ClassicGear™ 2-Point、Bent Steel Saddles 3-Ply
MIJ Hybrid II Vintage-Style Locking 2-Point、Vintage-Style Stamped Steel Saddles 3-Ply
Player Plus Deluxe Cast/Sealed Locking (all short posts) 2-Point、Block Saddles 3-Ply
Player II Mod. Deluxe Cast/Sealed Locking (all short posts) 2-Point、Block Saddles、 Chambered Tremolo Block 4-Ply

ハードウェアでは、電気系の次に有意な相違が見られます。Player IIではヴィンテージ・スペックを基本に、トレモロを2点支持にすることで操作性と安定性を向上させ、Made in Japan Hybrid IIではペグにロック機構を設けてチューニング安定度を向上させています。

Player Plusのペグはロック機構を持つダイキャスト型で、ストリングポストを短くすることでナットへの弦角度を確保。ブリッジ側のブロックサドルと相まって、サスティンの持続性も確保しています。Player II Modifiedではこれに加えてトレモロブロックに面取り加工を施し、可動範囲を広げています。また僅かに厚みを増したピックガードは、ボディに指を立てるスタイルのピッキングに良好です。

Player II Modifiedのアイデンティティとは

今回はSSS配列のストラトキャスターに絞った比較でした。グレードの優劣だけでは語れない興味深い違いが見つかりましたが、それでもPlayer II Modifiedは全体的に性能が高いと読み取ることができます。またリードプレイにおける演奏性を狙ったPlayer Plusに対し、Player II Modifiedではジャンルや演奏スタイルから解放された、より広範囲に使用できる設計になっています。

ハイポジション演奏性と引き換えに強度や音響性能を失いかねないヒールカットは非採用としつつ、厚めのピックガードでテクニカルなピッキングをサポートする、上級者の要求にも耐えうるギターとしても仕上がっています。


以上、プレイヤーの表現を次のレベルに引き上げる、Player II Modifiedシリーズのギターをチェックしていきました。実績あるクラシックな本体に現代的な演奏性を持たせ、チューニングの安定やサスティン確保、サウンドバリエーション増強など性能面も強化させたギターです。2本目、3本目のステップアップや上級者のサブギターとして、強烈におすすめです。ぜひ実際にチェックしてみてください。

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