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iRigは、iPhone/iPad/iPod touch などiOSデバイスと呼ばれる機器につないでギターを演奏することができるオーディオインターフェイスです。イタリアの音響メーカー「IK Multimedia」社から2010年にリリースされ、以来シリーズ製品が次々とリリースされ、同社を代表する人気商品となりました。ギターに繋いで演奏する iRig だけでも、「iRig」「iRig HD」「iRig PRO」の3機種を皮切りに第二世代モデルまで登場する充実したラインナップとなっています。
今回、当サイトでおなじみ「ギター博士」が実際に「iRig」「iRig HD」「iRig PRO」3機種の初代モデルを使ってギターの音をレコーディングしてもらい、それぞれのサウンドクオリティについて比較してみました。
iRig を使ってギターを弾いてみたいけど、どれを買ったらいいか迷っているという人は参考にしてみて下さい。
まずは iRig/iRig HD/iRig PRO について、それぞれの違いやできることについて、ざっくりと紹介してみます。
2010年に登場した初代 iRig。大ヒットシリーズとなった iOSデバイス・インターフェイスの先駆け的存在で、iPhone/iPad のマイク入力に接続してギターを鳴らすというアナログ・スタイルの iOS専用オーディオインターフェイスです。
3つの iRig の中でも最もシンプルな使い方で、iPhone/iPad でギターを演奏すること”のみ”を目的としています。初代というと古いようなイメージですが現役バリバリ、最も安価なモデルです。
iPhone/iPad/iPod Touch を使ってギターの練習/録音
次に登場したのが A/Dコンバータ搭載、ギター入力専用端子を搭載したデジタル式オーディオインターフェイス iRig HD。初代に比べてデジタル方式を導入したことで音質面で格段にクオリティがアップしたモデルです。
iPhone/iPad で高品位なレコーディングができるだけでなく、USB接続によってパソコンでも動作するオーディオインターフェイスとなっているのが iRig HD の魅力ですね。パソコンにギター音を入れてみたいという願いに、気軽に応えてくれるアイテムです。
iPhone/iPad/iPod Touch/Mac/Windows を使ってギターの練習/録音
24bit A/Dコンバータ、高品位のマイクプリアンプを搭載した、デジタル式オーディオ/MIDIインターフェイス iRig PRO。
iRig HD に比べて拡張性を高めたモデルです。
ギターやベースなど Hi-Z 楽器やマイクなどを入力する「XLR/ 標準コンボ・コネクター」端子とMIDI端子が搭載。ファンタム電源を搭載しているので(9V電池を使うことで)コンデンサーマイクを利用して、高品位なボーカルレコーディングも可能、MIDIキーボードを接続してMIDI演奏を行うこともできます。
Macでも使えるので、予算がない人にとっての初めてのパソコン用オーディオインターフェイスとしても問題ないでしょう。
iPhone、iPad、iPod touch、USBのバスパワーで動作するので電源要らず。
前面にはゲインを調節するノブを搭載、マイクやピックアップの出力に対応しています。
購入時にLightningケーブル、Dockケーブル、USBケーブルが付属しているので、買ってすぐに色々な機器との接続がOK。
iPhone/iPad/iPod Touch/Mac/Windows を使ってギターの練習/録音
マイクレコーディング(コンデンサーマイクも可能)
MIDI楽器の演奏
左から iRig STOMP、iRig、iRig HD、iRig PRO
3製品を並べてみたのが上の画像(一番左は今回は使いませんでしたが、iRig 製品でエフェクトのon/off ができるストンプボックス iRig STOMP です)。
3つとも手のひらサイズのコンパクトで軽量なボディ、かさばらずに屋外にも気軽に持ち運びができます。
iRig/iRig HD/iRig PRO ともに基本的には電源不要、ギターと iPhone/iPad を繋いでヘッドフォンで音を聞く、という使い方です。しかしそれぞれ繋ぎ方や対応機材が微妙に違っています。それぞれどんな使い方ができるかみてみました。
iRig の手順は以下
ヘッドフォンとギターケーブルを用意するだけでOK、使い回しのよいシンプルなモデルです。
iRig HD の場合は、自分が持っている iOS デバイスに合わせて Lighting 接続ケーブル、30-pin 接続ケーブル、USB 接続ケーブルのいずれかを接続する必要があります(ケーブルは商品パッケージに同梱されているので別途購入する必要はありません)。iRig と違ってヘッドフォン・ジャックは iPhone/iPad 本体ヘッドフォン端子に直接繋ぎます。接続を認識すると本体搭載の LED ランプが点灯します。
入力信号の音量調節をできるようになったのも iRig HD からです。
iRig HD と同様、iRig PRO も付属ケーブルが必要です。ヘッドフォンも iPhone/iPad 本体ヘッドフォン端子に繋ぎます。接続を認識すると、こちらも LED ランプが点灯します。
また、コンデンサーマイク使用時にファンタム電源を供給するための 9V 電池を入れることができるようになっています。ボディ側面の「+48」スイッチをオンにすることで電源供給が開始します。
iRig/iRig HD/iRig PRO 共に、オーディオ入力対応のアプリを使えばギターの音を鳴らすことができますが、IK Multimedia 社からは iRig 専用の無料ギターアンプ・エフェクト・アプリ「Amplitube Free」がリリースされていますので、まずはこのアプリで音作りを楽しんでみました。
Amplitube Free では 3種類のギターアンプ/2種類のキャビネット/2種類のマイク/4種類のエフェクトを使って音作りすることができる他、チューナー/メトロノーム/1トラックレコーダー/伴奏用のドラム・グルーブなどの機能が搭載しているので、ギターの演奏だけでなく練習や録音のサポートもしてくれるツールとなっています。
録音したデータはすぐに Eメールで送ったり iTunes やサウンドクラウドに直接アップロードできるなどのエクスポートが可能、追加課金によって他のアンプモデルやエフェクターを楽しむこともできるようになっています。
T Amplitube Free – iTunes
デフォルトで使える 3種類 のギターアンプ。クリーン、クランチ、ディストーションに対応できます。
4種類のエフェクター、左から:ディレイ、ノイズフィルター、フランジャー、ワーミー
2種類のキャビネット、2種類のマイク
チューナー/メトロノーム機能、伴奏用のドラム・グルーブを操作する画面
ミキサー画面:楽曲の録音やエクスポートを行います
Amplitube アプリの使い方がわかってきたところで、iRig/iRig HD/iRig PRO でギターを録音して、それぞれのサウンドを比較してみたいと思います。
Sadowsky Metroline R1 CUSTOM
ギター博士に、 iRig/iRig HD/iRig PRO の3種類を iPhone に繋いでもらい、アプリ「Amplitube Free」のモデリング・アンプとエフェクトを使って「クリーントーン、クランチ、ディストーション」と3種類のギター・トーンを作ってもらい、それぞれのトーンでまったく同じフレーズを弾き、内蔵レコーダーで録音してみました(使用したエレキギターは Sadowsky Metroline R1 CUSTOM)。
3種類の iRig で音のクオリティにどのような違いがあるか、みていきたいと思います。
まずは最も変化が少なかったクランチ・サウンドからいってみましょう。
業務用モニタースピーカーでリスニングしてみました。音質はさほど違いがないように思えますが iRig はノイズが目立ちます。
iRig HD ではノイズは激減していますね。
また、iRig HD に比べて iRig PRO ではギター音がよりクリアに、生っぽさが伝わって聞こえるような気がします。
これは違いが出ましたね。まずイントロの無音部分、Amplitube 内のノイズゲートをオンにしているにも関わらず、iRig では明らかにノイズが気になります。
一方 iRig HD ではノイズは激減しよりクリアな音像となっています。そのぶん荒さは押さえられているようです。
iRig PRO では iRig HD よりもさらにノイズが減っています。イントロ部分のフレットに触れる音量も iRig HD に比べて小さいですね。音質的にもより生っぽさが際立ち、深く歪ませることでノイズの量に差がでました。
クリーントーンは、アプリ内アンプモデル搭載のリバーブとアプリ内ディレイ・エフェクトを使用して音作りしています。
パソコンやスマホ環境からの直接音だと違いがよくわからないかもしれません。また SoundCloud にアップロードした段階で音源が圧縮されてしまっているので、それも違いがわかりにくくなっている要因となっていますが、録音した直後の音源をモニタースピーカーでリスニングしたところ、3つ共に音質に大きく差が出ました。
パソコンやスマホ環境でも大音量で聞くとわかりますが、クリーントーンながら iRig は少しノイズが気になります。
iRig HD は iRig に比べてノイズは減っていますね、クリアなギターサウンドです。
そして iRig PRO ですが、iRig HD に比べてさらにノイズは減りほぼ皆無です。また音質面で iRig HD と比べてもほぼ同様のスペックのはずなのですが、全体的に(特に高音域が)よりクリアーでコシのあるサウンドに感じました。
さて、iRig/iRig HD/iRig PRO と3つのモデルで3種類の音を聞き比べてみたわけですが、音質面でいうと iRig PRO が最もクオリティが高いのは当たり前です。
しかしそれぞれに使い方が若干違ったり価格も異なるので、一概に全ての面で iRig PRO が良い!と言い切るのは遠慮しておきました。
状況に応じて iRig/iRig HD/iRig PRO どれを選ぶとよいか選択肢があると思いましたので、それぞれの総評を以下に紹介しておきます。
3つの中ではノイズも気になり最も録音品質の乏しいモデルでしたが、iRig HD/iRig PRO を使うのに必要な Lightning ケーブルや 30-pin ドックケーブルを使う必要がなく、デバイス環境に左右されず最も使い回ししやすいのが iRig の特徴ですね。値段も最も安く手に入れやすいのもメリットです。
本格的な録音作業に使わずに、iPhone/iPad でのギター演奏やギター練習を気軽に楽しみたい人には問題なく使用できるモデルではないでしょうか。
iRig に比べて音質もグッとよくなっている iRig HD。iRig では不可能な、パソコンとの USB 接続でレコーディングできるという点は、iRig HD の大きなメリットだと思います。
iPhone/iPad アプリでシンプルにギターを練習したり、パソコン、iPhone/iPad レコーディング・アプリを使って良い音でギターを録音したい人にとって最適なモデルだと思います。
iRig PRO は3つのモデルの中でサウンドクオリティは最高ですね。音質も際立って良く、超低ノイズです。エントリーモデルのパソコン用オーディオインターフェイスと遜色ない品質だと思います。
iRig HD 同様パソコンにも繋ぐことができますし、XLR 接続端子がついているのでマイクを繋いでボーカルが録音できるのがこのモデルの最大のメリット。しかも、9V電池を入れることでファンタム電源を供給し、コンデンサーマイクが使えるというのが凄いですね。
マイクだけでなく MIDI 入力端子も用意されているので、MIDIキーボードを繋いで iOS シンセアプリやパソコンのプラグインを使って演奏することもできるなど、パソコンと繋げる本格的なインターフェイスとなっています。
ギター博士が弾いたクリーントーンのクオリティから考えると、ギターのラインレコーディングに十分対応できると思います。ボーカル録りもコンデンサーマイクを使用すれば、ひょっとしたらレコーディング本番の OK テイクにも採用できるレベルかもしれません。(実際にいくつかの動画では、iRig PROを使って六弦かなでの声を収録しています)
iPhone/iPad やパソコンで、ギター/ボーカル/MIDI機材の高品位レコーディングに対応できるモデルだと思います。
モデル名 | iRig | iRig HD | iRig PRO |
対応機材 | ギター、ベース | ギター、ベース | ギター、ベース、マイク、コンデンサーマイク、MIDI機材 |
対応OS | iPhone/iPod Touch/iPad | iPhone/iPod Touch/iPad/Mac/Windows | iPhone/iPod Touch/iPad/Mac/Windows |
電源 | 不要 | 不要 | 不要(コンデンサーマイク使用時のみ9V電池必要) |
INPUT | 1/4”標準インプット | 1/4”標準Hi-Z楽器インプット | 1/4”標準Hi-Z楽器インプット、XLR/標準ジャック |
MIDI対応 | x | x | ○ |
マイク対応 | x | x | ○ |
入力ゲイン・コントローラー | x | ○ | ○ |
30-pinドック端子接続 | x | ○ | ○ |
Lightning端子接続 | x | ○ | ○ |
A/Dコンバート | 24-bit | 24-bit | |
サンプリングレート | 44.1 / 48 kHz | 44.1 / 48 kHz | |
同梱ケーブル | Lighting接続ケーブル、30-pin接続ケーブル、USB接続ケーブル | Lighting接続ケーブル、30-pin接続ケーブル、USB接続ケーブル | |
寸法 WxLxH | 22 x 22 x 71.4 mm | 30 x 21 x 99 mm | 32 x 32 x 105 mm |
重量 | ~20g | ~35g | ~40g |
発売日 | 2010年5月 | 2013年5月 | 2013年10月 |
iRig – Supernice!DTM機材
iRig HD – Supernice!DTM機材
iRig PRO – Supernice!DTM機材
今回の比較を行った2014年では3ラインナップでしたが、2017年7月現在 iRig シリーズはさらに拡張を続け、新たに
など、今回の実験で使用した3モデルの後継機種も登場し、選択肢はさらに広がっています。新定番となりそうな3機種を比較してみましょう。
iRig 2、iRig HD 2、iRig PRO I/O
モデル名 | iRig 2 | iRig HD 2 | iRig PRO I/O |
比較する旧モデル | iRig | iRig HD | iRig PRO |
旧モデルからのアップグレード | Andoroidに対応。FX/THRU切替スイッチ、入力ゲイン調整用のダイヤル、アンプ接続用の1/4インチ標準フォーンアウト端子を新たに搭載。 | iPhone7に対応。24bit/96kHz対応。ヘッドフォン出力端子、アンプ・アウトを新たに搭載。 | iPhone7に対応。プリアンプ内蔵のヘッドフォン出力端子、電源入力端子、MIDI OUT端子を新たに搭載。電池:9V1本→単3電池2本に変更。付属ソフトが充実。 |
発売日 | 2015年3月 | 2016年10月 | 2017年7月 |
iRig 2 – Supernice!DTM機材
iRig PRO I/O – Supernice!DTM機材
「iRig シリーズ」はギター用オーディオインターフェイスだけでなく MIDI に特化した「iRig MIDI」やマイク専用の「iRig Mic」など、iOS デバイスと接続できる様々なラインナップが存在します。iPhone/iPad で本格的に遊んでみたいと思っている人は、他の iRig 製品もチェックしてみるといいかもしれませんね。
IK Multimedia のDTM機材一覧 – Supernice!DTM機材
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