Kemper Profiler Player レビュー。Profiler Headとの違いを比べてみた

[記事公開日]2024/6/28 [最終更新日]2024/7/2
[ライター]森多健司、エレキギター博士コンテンツ制作チーム [編集者]神崎聡

Kemper Profiler Player

2024年3月に満を持して発売されたKemper Profiler Player。この新しいKemperはフロアタイプとしてボードに組み込めるサイズで登場しました。今回エレキギター博士コンテンツ制作チームが実機に触れ、従来機種Profiler Headと比べてみました。本ページでは新機種Profiler Playerについての他、Kemperシリーズそのものについても改めて深堀りしています。Kemper Playerそのものが気になっている人、そもそもKemperのことを詳しく知りたい人、ぜひチェックしてみてください。


  1. Kemper Profilerとは何か
  2. Kemper Profiler Playerの特徴
  3. Kemper Profiler Player本体の操作
  4. Kemper Head/Rack/Stageとの違い
  5. IK Multimedia TONEX Pedalとの比較
  6. Kemper Profiler Playerの理想的な使い方は?

Kemper Profilerとは何か

細やかなアップデートにより、発売当初のものとは別物

Kemper Profiler Head
Kemper Profiler Head

Kemperは2011年、”Profiling Amplifier”(後にProfilerに改称)という正式名称とともに彗星のごとく市場に登場しました。既存のアンプの特性をそのままコピーする「プロファイリング」は、マルチエフェクターに使われる「アンプモデリング」とは似て非なる独自技術で、その革新的な発想は後のギターアンプシミュレーティングの世界に大きな影響を及ぼしました。プロファイリングは自分の機材でライブを頻繁に行うプロギタリストにとって特に都合の良い機能であったため、ツアーであちこちを巡るようなギタリストが広く活用しだしたことで、Kemperの名が一躍知れ渡ることとなりました。ハイエンド向けでありながら、なんとか手が届く値段であることもあってか、現在ではプロ・アマ問わず多くのギタリストに使用されています。

Kemperは発売以来15年近くもハードウェアのバージョンアップが行われていませんが、ソフト部分については細やかなアップデートが行われています。現在のバージョンでは豊富な付属エフェクトの数々やリキッドプロファイルなど、様々な要素が継ぎ足され、発売当初のものとは別物と言ってよいほどの充実ぶりを見せています。

アンプの出音自体を正確に写し取る「プロファイリング」

Kemperを形作る「プロファイリング」は、演算によってアンプをシミュレートするモデリングとは違い、その出音自体を正確に写し取るという原理で動作しています。その動作は”構築”ではなく”転写”といった方が近く、例えばアンプとキャビネットを通して発音された音をマイクで拾った音をプロファイリングすると、そのアンプのセッティング、キャビネットとマイクを含めたトータルな出音そのものを正確に写し取って出力します。プロファイリングされたデータは「リグ(Rig)」と称し、Kemper用の音色データとして扱われています。リグには前述のようにアンプ、キャビネット、マイキングの工程をパッケージングしたもの、アンプだけのもの、はたまたエフェクトを含んだものなど、様々な形態のものがあります。

プロファイリングの弱点はパラメータの自由な変更に弱いことです。たとえばゲインとEQがすべて12時の状態でプロファイリングされたデータは、その音色をデフォルトの状態として保持しています。パラメータの変更はKemper本体の機能として後付けで行われるため、オリジナルからかけ離れたセッティングを行うと、音色に不自然さを伴うことがあります。その反面、特定の工程でコピーされた音を同じセッティングで使う限り、ほぼ同じ音を得ることが可能なため、無理なセッティングさえしなければこの上なく優秀な機材となります。自分のアンプとキャビネットとマイクを複数持ち、ツアーでそれを使用するプロギタリストが真っ先に飛びついた理由はここにあります。

しかしこの弱点についてはリキッドプロファイルの登場により緩和されています。リキッドプロファイルについては後の項をごらんください。

現行のKemperラインナップ

Kemper Profilerには数種類のラインナップがあります。メインの位置づけであるHead、スタジオユースを視野に入れたRack、そしてステージでのパフォーマンスに特化したStage、今回登場した小型のPlayerです。

商品 最安価格 特徴 サイズ 重量

Head
キャビネットの上に置くのに適したデザイン。
Kemperのシリーズでは最もオーソドックスで、シリーズ中唯一ホワイトモデルが存在する。
パワーアンプを内蔵したPower Headがあり、600Wの出力を持つアンプとして利用できる。
H21.7 x W37.8 x D17.3 cm 5.32kg
6.5kg (Power head)

Rack
3Uサイズに装備できるラック型。
機能はHeadと同じ。
600Wパワーアンプを内蔵したPower Rackもラインナップ。
H13.9 x W48.3 x D22 cm 5kg
6.18kg (Power rack)

Stage
マルチエフェクターのように足元に置けるモデル。
デザインもエフェクター然としており、フットスイッチやペダルなどを多く装備。
そのままライブパフォーマンスが行える。
H8.5 x W47 x D26 cm 4.6kg

Player
プロファイリング機能を持たない小型モデル。
大きめのコンパクトエフェクターほどのサイズでKemperの優れた機能を扱えるのが魅力。
H6.8 x W14.5 x D16.6 cm 1.11kg
コンテンツの誤りを送信する

充実のアップデート

Kemperは登場当時、アンプ部分は優秀ながらエフェクトが弱いという評価でしたが、度重なるアップデートにより徐々に充実していき、現在では歪み系、ディレイ、リバーブに至ってはそれぞれ10種類以上を搭載し、モジュレーションやワウなどもかなりの数が含まれるようになりました。王道のものはもちろん、時代とともに新たに登場してきたアンビエンス系リバーブなども装備し、クオリティも単一のエフェクトペダルに遜色ないレベルを保持しています。

NAMM 2019ではPCでのエディットができるProfiler Editorが発表され、2024年現在、本体のバージョン9.0および10.0で、待ち望まれたUSBオーディオインターフェース機能、そしてリキッドプロファイリングが実用化されました。後発の製品に遅れを取ることなく、細やかなアップデートがなされてきているのはKemperの特徴でもあります。

リキッドプロファイル

リキッドプロファイルは、前述した弱点「プロファイリングされた状態のセッティングから離れすぎると不自然さを生む」という箇所に対してのKemperなりの回答です。アンプのパラメータ変化に対する音色の動きがデータとして提供されており、それを適用することでつまみを回した際の挙動をオリジナル同様に自然なものにします。実機を超えるゲインを得るなど裏技のような使い方はできなくなりますが、前述した弱点をカバーできます。2024年現在ではフェンダーやマーシャル、VOX、メサブギーなどの定番のアンプについてデータが提供されており、今後このデータは広く増えていくことが予想されます。

ダウン・チューニング可能なエフェクト「Transpose」

実際のチューニングを変えることなく、即座に出音を変えられるピッチシフト機能がアップデートにより後発で搭載されるようになりました。Kemperに備えられたTranspose機能はノイズゲートと同じインプットセクションに設置され、エフェクトスロットを消費しない上、セッティングもワンタッチ。レイテンシーはほぼ存在せず、音質もナチュラルで、特に低音のリフ演奏などでは違和感がほぼ出ないほどの完成度です。

Kemper Profiler Playerの特徴

Kemper Profiler Player

リグが充実しプロファイリングの必要性が薄れるとともに、「プロファイル機能は必要ないから、再生に特化した機器を」という声が大きくなり、満を持して登場したのがKemper Profiler Player(以下Playerと表記)です。エフェクターボードの一角を担えるサイズ感と軽量を実現し、音質は上位モデルと全く同じレベルを維持しています。

サウンド

アンプ

上位モデルと同じ音質を実現しており、非常に高品質なアンプモデルをそのまま持ち運ぶことができます。世界中で投稿されているリグは、無料のもの、あるいは有名なギタリストや業者からリリースされている有料のものまで、幅広いジャンルのアンプが膨大な量揃っており、これらを取り込むことで、サウンドライブラリはほぼ無限に広がります。

無料のリグは非常に高品質なものもありますが、数が膨大なため、自分の望む最良のものを探すには忍耐が必要です。有料のものは一定以上のクオリティを担保しているため、探すのが面倒な方は買ってしまうのもいいかもしれません。音を探すのに楽しみを感じられる方は、無料リグの海を渡っていくのも良いでしょう。

エフェクト

エフェクトもアンプ同様、上位モデルと同クオリティを持っています。度重なるバージョンアップを経てブラッシュアップされてきたKemperのエフェクトは今ではかなりのクオリティとなっており、単一の機種にも引けを取らないほどです。ただし、Playerでは使えるエフェクトはかなり限られており、使用に伴う柔軟性も上位モデルに比べて大幅に制限されています。ちなみに外部からリグを取り込んだ際、Playerに存在しないエフェクトが入っていた場合、そのままバイパスになります。

管理、編集に必須の専用アプリ「Rig Manager」

Rig Manager iOS
iOS版Rig Manager

本体で行える操作は全体のほんの一部のみに限られ、音色の作り込みや各リグの組み合わせなどを操作するのに、専用アプリのRig Managerは必須です。リハーサルやライブ本番などではスマートフォンでのワイヤレス運用がメインとなることもあり、モバイル端末その接続方法にはBluetooth、WiFiの二種が準備されていますWiFiの電波は本体が発するものを直接スマートフォンで受けて接続するため、接続困難になることはまずありません。アプリも非常に優秀で、画面の大きなPC版と比べても操作性や視認性は全く劣りません。

リグの追加や管理にはPC版

Kemper Playerが本体に保存できるリグは50。5つのスロットが10バンクごとに割り当てられています。世界中のユーザーが作る有償、無償のリグを割り当てて、自分なりのライブラリを構築できます。ちなみにリグを追加する際にはPC版のRig Managerが必要です。

他の特徴的な要素

エフェクトの配置

Kemper Player Rig Manager
PC版Rig Manager

エフェクトはアンプの前後段にそれぞれ2つずつ割り当てることができます。この構成を崩すことはできず、たとえばディレイ、リバーブ、モジュレーションの3つをすべて後段に置くといったような運用はできないようになっています。ポストエフェクトはディレイとリバーブという名前になっており、公式にも「リバーブを設置するのに最適」などと謳ってはいるものの、他のエフェクトを当てることも可能です。

常時点灯のチューナー

上位のKemperと同じく、常時チューニングのLEDが点灯しているため、演奏からシームレスに微調整ができます。細かいところながら、練習やレコーディングでは重宝するでしょう。ただし、ライブ中に出音をミュートしてのチューニングを行う場合、チューナーモードに入る必要があります。

他の機器との接続

接続はモノラル入力、ステレオ出力、外部ペダル接続、ヘッドフォンとなっており、エフェクトループなどはありません。ステレオ出力を活用することで空間系はフルにその効果を発揮できます。入力がモノラルなので、キーボードなどの入力は想定されていないようです。

アンプのリターン端子

ギターアンプのリターン端子に送る場合は、キャビネットはオフにしておきます。キャビネットのオンオフは本体にあるKONEというスイッチでワンタッチに操作できます。接続は大抵の場合モノラルになるでしょう。

ミキサー、PC(オーディオインターフェース経由)

ミキサーにそのまま送る場合はキャビネットシミュレーターはオンにしておきましょう。オーディオインターフェースを経由してPCに通す場合も同じです。ステレオ出力を利用するのもよいでしょう。

PC(USB接続)

PlayerはUSB-Bを介してオーディオインターフェースとして動作させることができます。オーディオ入出力をUSBを通して行うため、直接にデジタルレコーディングが可能です。特にリアンプ機能はこれによって飛躍的に使いやすくなり、USBケーブル一本で、PCから受けた信号をそのまま内部アンプを通して送り返すことができるようになりました。Kemperのオーディオインターフェース機能はサンプリングレートが44.1khzに固定されており、これは上位モデルと同じです。

Kemper Kabinetへの接続

Kemperが発売している専用キャビネットにはKEMPER Kornという特殊なスピーカーが内蔵されています。これにはギター用として使われる様々なスピーカーの動作をデジタルでシミュレートする機能が備わっており、製造元であるCelestionのモデルをはじめ、歴史的に希少なスピーカーまで、様々なサウンドを真似ることができます。Playerのキャビネット設定を”Korn”にすることで、このスピーカー・インプリントを行えるようになり、任意のスピーカーをシミュレートしたサウンドを得ることができます。

機能拡張

Kemper Profiler Player:接続端子

外部フットスイッチ、エクスプレッションペダル

フットスイッチやエクスプレッションペダルを外部に増設できます。ただし、接続端子は一つしかないため、両方の接続は不可能です。フットスイッチは本体に装備される3つのスイッチの延長として、全く同じ機能を割り当てることができます。ペダルについてはワウ、ボリュームペダルとして使用可能で、特にワウペダルについては内蔵エフェクトの種類も多く力が入れられています。

MIDI

MIDIの送受信が可能ですが、装備されている接続端子がUSBであり、9pinのMIDI端子やTRS端子ではありません。外部MIDIコントローラーからのリグ切り替えなどの運用を行う際、コントローラー側にMIDI端子しかない場合USB-MIDIインターフェースが必要となります。MIDIの使用によって、リグやバンクの切り替えをはじめとした様々な動きを外部から操ることができるようになり、多スイッチのマルチエフェクター並みの操作性に近づけることができます。

ちなみに、コントローラーでの操作を行う際には本体のUSB-Aポートを使用し、PCからの接続によりスレーブとして使用する場合、USB-Bポートが対応します。PCとの接続ではUSB Type B-C変換ケーブルが必要になるかもしれません。MIDIの接続は複雑なため、詳しくはマニュアルをご参照ください。

Kemper Profiler Player本体の操作

ダイヤルとLEDでの操作

ディスプレイを持たない機械的で堅牢なルックスである反面、本体だけでできる操作は最低限にとどまります。数字やアルファベットの表示ができないため選択中のバンクはLEDの色での判断となり、バンクをまたいだ任意のリグへのワンタッチの移動は不可能、エフェクトのパラメータは二種類のみしか操作できないなど、他製品では当たり前のようにできることまで潔く削ぎ落とされています。

できること 詳細
マスター、リグボリューム設定 Player全体の音量、及び選択中のリグのボリューム変更
EQ設定 Bass、Middle、Trebleの設定
ノイズゲート、ゲイン設定 ゲインノブは押しながら回すことでノイズゲート設定に
エフェクトパラメータのセッティング 4つのうちの任意の二種類のエフェクトについて、パラメータ2つだけが変更可能

本体だけでできる主なセッティング

フットスイッチの操作

3種類のフットスイッチはユーザーが機能を自由にアサインできます。デフォルトでは両端のスイッチがリグの順送り、逆送りに設定されていますが、選択中のバンクに含まれる5つのリグのうち任意のスロットを割り当てることもできます。

フットスイッチは踏み心地も反応も良好で、音切れなどは全くと言ってよいほどありません。ただし、2つのスイッチを同時に踏むコンボスイッチ機能をオンにしていると、2つのスイッチが同時に踏まれたか判別するために、シングルスイッチの反応は若干遅れる傾向にあります。

Effect Button I~IIIIの運用

Effect Buttonは一つのボタンにエフェクトのオンオフやパラメータ変化をアサインすることができる機能で、物理スイッチの少なさを補うために大きな役割を果たします。複数のエフェクトを一括でオンオフすることで、ソロ時にブースターとディレイを一括で掛けるなども可能。エフェクトのオンオフ以外にも内部のパラメータを切り替えることもできるなど、応用性が高く、Playerを使いこなすためのキーになり得る機能です。Playerには4つのEffect Buttonを設定でき、本体の3つのスイッチ、コンボスイッチ、また外部スイッチにも割り当てることができます。

Kemper Head/Rack/Stageとの違い


Playerと、Head/Rack/Stageとの違いを見ていきましょう。

プロファイリングはできない

プロファイリング機能の有無は上位のKemperとの最大の差です。手持ちのアンプを取り込むことはできません。出力に特化したモデルということでPlayerと名付けられています。

エフェクトの制限

搭載エフェクトの数

すでに述べた通り、エフェクトが4つのみ、しかもアンプの前後段に2つずつとルーティングも固定されており、自由度は非常に低いです。エフェクトの種類自体もかなり削られており、エフェクト運用はかなり限られたリソースで行うことになります。
ちなみにTransposeとノイズゲートについてはインプットセクションに装備されており、エフェクトスロットは消費しないようになっています。

カテゴリ 主に搭載されるエフェクト 上位モデルから省かれたもの
ドライブ TS-808系、BOSS DS-1系、Big Muff系、ピュア・ブースター BOSS OD-1系、Klon Centaur系、Timmy系オーバードライブ、トレブル・ブースター等
EQ グラフィック・イコライザー、アコースティック・シミュレーター パラメトリック・イコライザー等
モジュレーション コーラス、トレモロ、フェイザー、フランジャー、ヴィブラート等 Hyper Chorus(6バンドの複雑なコーラス)等
ピッチシフター Transpose、オクターバー クロマチック・ピッチシフター、ハーモニック・ピッチシフター等
ディレイ シングル・ディレイ、2タップ・ディレイ(ピンポンディレイ) デュアル・ディレイ、リズム・ディレイ、ピッチシフト・ディレイ等
リバーブ スプリング、Easy Reverb(ルーム~ホール)、エコー・リバーブ(ディレイとリバーブのセット) Cirrus Reverb、Formant Reverb,Ionosphere Reverb、Space等


左:Kemper Head – Rig Manager
右:Kemper Player – Rig Manager
リバーブ・エフェクトの比較。Playerではかなりの数が制限されている

パラレル・ルーティングできない

Ver2.3のアップデートより搭載されているエフェクトのパラレル・ルーティング。たとえばディレイとリバーブを直列で接続した際に、両者が相互に影響を受けないようにウェット音を別々に出力しアウトプットに混ぜるといったような方法を指し、レコーディングにおけるミックス時に近い掛け方となります。Playerにはこの機能も搭載されておらず、エフェクトを使っての音の作り込みにはやや柔軟性が欠けます。

センドリターン端子を持たない

エフェクトループを持たないため、外部ペダルを併用する際、本体の前後のどちらかに置く以外に方法はありません。本体のアンプセクションとディレイセクションの間に外部エフェクトを挟む、などといった設置は不可能です。

IK Multimedia TONEX Pedalとの比較

TONEX Pedal

2023年に発売されたIK Multimedia社のTONEX Pedalは、Kemper Playerとほぼ同じサイズのフロアタイプ製品で、アンプの音を取り込みそれを忠実に発音する、プロファイリングと近い原理での再生(IK Multimedia社は”Capture”と呼称)を可能にしているという点で、明確な競合製品と位置づけられます。

TONEX Pedalはアンプ、キャビネット部に特化しており、エフェクトはほとんど付属しません。また、それなりに歴史のあるKemperについて、今までに多様なミュージシャンがその使用を公言してきているため、音色や安定性などについての信頼度は新参のTONEX Pedalの比ではありません。反面、価格はKemper Playerが大幅に上回り、TONEX Pedalは半額程度に抑えられています。下では機能面についての差を列挙しています。

操作性、拡張性

TONEX Pedalにはディスプレイがあり本体の視認性はやや上。フットスイッチの数はいずれも3つですが、TONEXは機能が固定されており、柔軟性ではPlayerが秀でています。
外部機器との接続端子はほぼ共通ながら、TONEX Pedalが9pinのMIDI端子を備え、使いやすさで上回ります。また、TONEX Pedalは必要電力が9V、320mA (Kemper Playerは9Vで2.5A) と少なく、通常のパワーサプライから他のペダルと同時に無理なく供給できます。

付属ソフトウェア

ソフトメーカー発祥のIK Multimediaが、付属製品にAmplitube 5、TONEX Maxをつけている点で大きく優位。優秀なDAWプラグインが同時に手に入り、非常にお得感があります。ただしハードウェア本体との連携という点だけで見ると、細かな音作りやリグの入れ替えなど、使いやすいKemperのRig Managerに比べ、TONEXの操作性は明らかに見劣りします。またTONEX Pedalはモバイル端末での調整が不可能なので、現場での音色修正は本体だけで調整する必要があります。

両者とも世界中にあふれるリグを自由にダウンロードできるという触れ込みは共通しているものの、その数は歴史10年以上を数えるKemperが圧勝しており、2024年の現時点では比較にならないほどの差があります。

IK Multimedia TONEX Pedal – Supernice!エフェクター

Kemper Profiler Playerの理想的な使い方は?

本機の魅力はKemperの凄まじくハイクオリティなアンプモデルを身軽に持ち運べるというところにこそあります。ライブでの運用では、エフェクトをあまり多用しない小規模なセットであるとか、またはそのそもエフェクトをあまり使わないシンプルなスタイルを信条とするギタリストである場合、一台だけでも十分なステージがこなせるはずです。エフェクトや音色をある程度以上使いたい場合では前後に別の機器を置いて複合的なボードを組む、MIDIを使いスイッチングの柔軟性を上げるといった一手間が必要になりそうです。

意外にも活躍できそうなのが自宅でのDAWにおける運用で、十分すぎるスペックに圧迫感の無いサイズで「たまに持ち運ぶ練習用プリアンプ兼オーディオインターフェース」といった立ち位置にまさに最適。DAWで使用する場合、エフェクトはコンプレッサーやブースター、EQがあれば十分で、アンプ部分のクオリティこそが問われるため、Kemperの持ち味をフルに発揮することもできます。ケーブル一本でリアンプができるところも非常に助かるポイントです。

全体的にかなりコンパクトである反面、操作はアプリを前提としており、アナログライクな操作性を好むギタリストにはあまり適さず、あくまでプロファイリングされたアンプを持ち運ぶという運用にフォーカスされているところから、他社のマルチエフェクターのように一台で何でもできるという立ち位置でもない、現代においては個性の強い尖った製品ですが、うまくシステムの中枢に活用することができれば、この上ない武器となって長く活躍してくれそうです。

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。