Balaguer Guitars 伝統と革新が共存するアメリカのギターブランド

Balaguer Guitars（バラゲール・ギターズ）は、「モダンなデザインとヴィンテージのインスピレーションが出会う場所」を標榜し、トラッドな雰囲気と現代的なサウンドや演奏性を併せ持つギターをリリースしているアメリカのブランドです。立ち上げて10年にも満たない新しいブランドでありながら製品をグローバルに供給する体制を構築しており、世界中に多くの愛用者を獲得しています。今回は、このBalaguer Guitarsに注目していきましょう。

Atreyu – Watch Me Burn
1998年結成のメタルコアバンド「Atreyu（アトレーユ）」。Balaguerのギターは特にラウド／ヘヴィ路線のプレイヤーに支持されている。

Balaguer Guitarsとは、どんなブランドなのか？

Balaguer Guitarsの創設者ジョー・バラゲール氏は、2009年にギタークラフト・アカデミーを卒業、ロサンゼルス（西海岸）でヴィンテージ楽器のリペアマンを務めてキャリアを蓄積した後、2015年に独立、ペンシルバニア（東海岸）にBalaguer Guitarsを設立します。

現在では米韓の二か国に事務所を置き、最高グレードのギターをアメリカで製作、普及モデルをアジアの提携工場で製造しています。このほかネットからオーダーするシステムまで構築しており、ボディ形状だけでも17種類という膨大な選択肢から自分だけのギターを注文できる体制を確立しています。Balaguerにはさまざまなバリエーションがありますが、ここでは日本で流通しているモデルから、スタンダード・シリーズとセレクト・シリーズに共通する特徴を見ていきましょう。アーティストのシグネイチャーモデルでは、各々こだわりを反映したいろいろな仕様が採用されます。

デザイン性の高いヘッド形状

このような塗り分けのほか、ナチュラルのままにしたり塗りつぶしたりと、ヘッドのカラーリングだけでもバリエーションがある。

Balaguerではさまざまなヘッド形状が採用されますが、ブランドロゴを配置する部分を一段掘り下げる「2トーン・ヘッドストック」が基本スタイルです。この設計にはヘッド側の重量調整や強度を操作する意図も若干含まれるかもしれませんが、新しいのにどこか懐かしさを感じさせる意匠になっています。
またペグはギア比18:1のロック式が基本で、チューニングの精度と安定性に優れます。

ローステッドメイプル製ネック＆ステンレス製フレットが基本

サイドポジションには畜光素材が使用される。

ローステッドメイプル製ネック、ミディアムジャンボサイズのステンレス製フレット、16″（406mm）指板R、という現代的な組み合わせのネックが基本です。ローステッドメイプルは近年の流行で、温度や湿度で変形しにくい高い安定性とウォームでクリアなアタックの得られる音響性能が注目されています。ステンレス製フレットは弦との摩擦が少なくスイスイ運指できるほか、極めて錆びにくいので弾きやすさが長期的に維持されます。

ハイポジションの演奏性が高い

「Espada」のジョイント部。

ネック接続はプレートレスの4点留めボルトオンジョイントを基本とし、丸みのあるヒールに対して斜めにヒールカットを施しています。またカッタウェイ裏にスクープカットも施しており、ハイポジションへのアクセスは非常に良好です。ヒールの形状やカットの施し方は、ボディ形状ごとにさまざまです。

バリエーション豊富な自社製ピックアップ

ハムバッカーとシングルコイルが中心だが、ジャズマスター用やミニハムまである。

ピックアップのバリエーションも豊富で、PAFタイプのハムバッカー5種、フェンダースタイル（ストラト用、テレキャスター用、ジャズマスター用）のシングルコイル5種に加え、P-90もミニハムもあります。それぞれ単体でのキャラクターをしっかりと持ちながら、ハムバッカーならばコイルタップ時のサウンドまで考慮し、シングルコイルならばハムバッカーとの組み合わせまで考慮した、総合力のある製品群を構築しています。

なお普及モデルに搭載されるピックアップも、製造する工場こそ違えどUSAモデルと同じレシピで作られています。

Balaguer Guitarsのラインナップ

ではここから、Balaguer Guitarsのラインナップを見ていきましょう。日本で流通しているのは今のところ、比較的手に入れやすい価格帯の普及モデルとアーティストモデルです。Balaguerの普及モデルは実績ある工場と提携することにより、膨大とも言える仕様の組み合わせによって豊かな製品群を展開しています。なお、Balaguer社製ハムバッカー搭載機には全てコイルタップ機能が実装されます。

Espada

Espada Standard

「Espada（エスパーダ）」はJMスタイルのオフセットボディで、低音側のホーンからつながっているかのような独特のエルボーカットが特徴です。「Espadaスタンダード」はアルダーボディ、ローステッドメイプル指板、Hipshot社製固定式ブリッジで、トラスロッドはネックエンド側に開口しています。フロントにTスタイルの「Astral」シングルコイルをピックガードマウント、リアにパワーのある「Feral」ハムバッカーをエスカッションマウントするSH配列です。

写真はEspada Black Friday Select（後述）。バックコンターとヒールカット、カッタウェイのスクープカットが確認できる。

Espada Rustic Select

Espada「Rustic（ラスティック）」セレクトは、ボディ材に採用したアッシュ材の木目を生かしたラスティック・フィニッシュが特徴です。バインディングされたエボニー指板とブロックインレイも相まって、精悍な顔つきです。トラスロッドはヘッド側に開口、適度なパワーを持つ「Evergreen」ハムバッカーを2基備えるHH配列になっています。

Espada Ambient Select

Espada「Ambient（アンビエント）」セレクトは、Fホールを持つアルダー製セミホロウボディとJMスタイルのトレモロユニットが特徴です。トラスロッドはヘッド側に開口、ボディは表裏ともにフラットでバインディングを施し、2基の「Evergreen」ハムバッカーは網目のカバーをかぶせた、レトロ感のある意匠になっています。

ボディは表も裏もフラットで、ヒールカットは非採用。

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Thicket

Thicket Standard

「Thicket（ティケット）」はシングルカッタウェイのオフセットボディを持つスタイルです。「Thicketスタンダード」ははアルダーボディ、ローステッドメイプル指板、Hipshot社製固定式ブリッジで、トラスロッドはネックエンド側に開口しています。パワフルな「Feral」ハムバッカーを2基備えるHH配列で、リアがダイレクトマウントになっておりEspadaと違ったニュアンスが得られます。

写真はThicket Black Friday Select（後述）。バックコンターとヒールカット、カッタウェイのスクープカットが確認できる。

Thicket TM Travis Miguel Signature Model

メタルコアバンド「Atreyu」所属、トラヴィス・ミゲル氏のシグネイチャーモデルは、5層ネックをセットインしたマホガニーボディ、弦長24.75″（ギブソンスケール）＆音域24フレットという本体に、EMGピックアップとFRTを装備しています。

メイプル＆ウォルナットの5層ネックをセットイン。

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Diablo

Diablo Standard with Hipshot Hardtail Bridge / with Evertune Bridge

「Diablo（ディアブロ）」はスリムなボディに大きなカッタウェイを設けた、音域24フレットのスーパーストラトタイプです。「Diabloスタンダード」はフレイムメイプルをあしらったマホガニーボディ、エボニー指板で、トラスロッドはネックエンド側に開口しています。Hipshot社製固定式ブリッジを備える「with Hipshot Hardtail Bridge」とチューニングが狂わないEVERTUNEブリッジを備える「with Evertune Bridge」の2タイプがあります。

ダウンチューニングでの使用に良好な「Truenobucker」ハムバッカーを2基ダイレクトマウントするHH配列で、5WAYセレクタースイッチでコイルタップが利用できます。

ヒールまで大きくえぐる、大胆なスクープカット。

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Black Friday Select

Diabloのヘッド形状やThicketのエスカッションマウントなど、スタンダードとはちょっと違う仕様になっている。

「ブラックフライデー・セレクト」は、アッシュボディの木目を生かしたラスティック・フィニッシュとブラックパーツ、エボニー指板で揃えた黒ずくめのモデルです。Espada、Thicket、Diabloの3機種はいずれもパワフルな「Feral」ハムバッカーを2基備えるHH配列で、トラスロッドはヘッド側に開口しています。

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Baritone

弦長を延長したバリトン仕様は、ダウンチューニングでヘヴィかつブライトなサウンドが得られます。

Growler Select Baritone

Growler （グロウラー）は、Espadaと共通のシルエットにオーソドックスなエルボーカットを施したモデルです。「Growler Select Baritone」は、ラスティック・フィニッシュで木目が感じられるアッシュボディに弦長27インチのローステッドメイプルネックをボルトオンジョイントしたモデルで、ダウンチューニングで威力を発揮する「Truenobucker」ハムバッカーを2基備えています。

Diablo Select Baritone 7 Run

Diablo「Select Baritone 7 Run」は弦長27インチの7弦ギターで、スワンプアッシュボディ、ローステッドメイプルネック、エボニー指板という本体に、セラミック磁石を使用した「Hypernova」ハムバッカーを2基ダイレクトマウントしています。

The Woodman BB Baritone Beau Burchell Signature Model

ロックバンド「Saosin」所属、ボウ・バーチェル氏のシグネイチャーモデルは、オーソドックスなTスタイルに弦長26.5インチの5層ネック、Balaguer社製シグネイチャーピックアップ「Beaubucker 」とEVERTUNEブリッジという組み合わせです。「Beaubucker 」は高出力を維持しつつ低域と中域を整理しており、アグレッシブなサウンドもクリーンなサウンドも良好に響貸せることができます。

The Espada T-BAR 2.0 Tony Pizzuti Signature Model

トニー・ピズッティ氏（EX.THE WORD ALIVE）のシグネイチャーモデルは、Espadaのマホガニーボディ、弦長を26.5インチに延長、音域を24フレットに拡張、パワフルな「Feral」ハムバッカーを2基備える、可愛らしいカラーリングとは裏腹のメタルマシーンに仕上がっています。セレクタースイッチが手元の位置にあるのもちょっとしたポイントです。

Tony Pizzuti – The Word Alive – Jam Session

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その他のシグネイチャーモデル

The Growler TM Travis Miguel Signature Model

メタルコアバンド「Atreyu」所属、トラヴィス・ミゲル氏のもう一つのシグネイチャーモデルは、Growlerのフラットなマホガニーボディに弦長24.75インチのローステッドメイプルネックをセットインした、固定式ブリッジのギターです。やはりEMGピックアップを備え、コイルタップは非採用です。

現代的な設計ながらトラッドな雰囲気を帯びる、セットネック仕様。

The Toro AW Andy Williams Signature Model

プロレスラーでもあるアンディー・ウィリアムス（ex.Every Time I Die）氏のシグネイチャーモデルは、アルダーボディにローステッドメイプルネックをボルトオンしたスリムなストラトタイプで、指板はエボニーです。Balaguer社製固定式ブリッジを備え、リアの「Hypernova」ハムバッカー、フロントの「Thunderlips」シングルコイルともにクロームメッキを施したカバーが被せられます。

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以上、Balaguer Guitarsのギターをチェックしていきました。トラッドな雰囲気を帯びた現代的な設計のギターとしてまとまっており、さまざまな仕様を組みあわせて豊かなラインナップを構成しています。公式サイトではエンドースするアーティストを大募集していますから、我こそはと思わん人はぜひチェックしてみてください。

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