名機転生!現代のセミアコシーンに一石を投じる EDWARDS「E-TORROCCO-CTM」

[記事公開日]2021/7/24 [最終更新日]2021/7/24
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

EDWARDS E-TORROCCO-CTM

エドワーズ(EDWARDS)「E-TORROCCO-CTM」は、上位ブランドESP(Navigator)の黎明期、70年代に作られていたセミアコモデル「TORROCCO(トロッコ)」を復刻したギターです。当時のトロッコは上等な木材をふんだんに使い、精緻な指板インレイや木製バインディングなど装飾も豪華で、セミアコの本家Gibson ES-335よりも高価だったと伝えられます。

現代によみがえったE-TORROCCO-CTMは、現代のセミアコシーンに一石を投じるさまざまな仕様をまとった、高級国産ギター「トロッコ」の名に恥じない一本です。今回は、このエドワーズ「E-TORROCCO-CTM」に注目していきましょう。

EDWARDS「E-TORROCCO-CTM」の特徴

名機の形状をそのまま継承した、高級感のある意匠

E-TORROCCO-CTM:ネック

E-TORROCCO-CTMでは、特徴的なヘッド形状、グラマラスなボディトップのアーチ形状など、名機TORROCCOの形状がそのまま再現されています。ヘッドに配されたワンポイントのインレイも、オリジナルの意匠を引用しています。パーツカラーこそシックなシルバーですが、真っ黒なエボニー指板とブロックインレイ、そして何より5層のヘッドバインディング、ボディバインディングが高級感を演出しています。

特にヘッドバインディングにおいては、突起部分で5層のバインディング材を5層ともぴったりつなげるという職人芸を見せてくれます。日本製のギターは作りが良いといわれますが、こういうところはその作りの丁寧さ、技術の高さが分かりやすいポイントです。

軽量で響きの良いボディ

E-TORROCCO-CTM:ジャック

通常のセミアコでは、メイプル合板をプレス整形してボディを作ります。これに対してE-TORROCCO-CTMでは、ボディトップ&バックをメイプル単板の削り出しで作ります。

合板に比べ単板はどうしても高額になりますが、振動体として優れており、軽量で響きが豊かです。鳴りの良いホロウボディはハウリングの危険が付きまといますが、これについてはトップ材の厚みを調整したり、やや重いメタリック塗装を採用したりといった工夫で調整しているものと考えられます。

センターブロック材にバスウッドを採用しているのも、ほかのセミアコではなかなか見られない面白いポイントです。バスウッドは軽量で柔らかく、クセのない音響特性を持っています。これに加え、ハイエンドなソリッドギターで「メイプルトップ&バスウッドバック」という木材構成が高く評価されている昨今の流行もあり、メイプルとバスウッドの相性の良さを高く評価しての起用と考えられます。

剛性の高い、しっかりしたネック

ローズ指板のついたマホガニーネックをセットインします。マホガニーネックの音の良さに疑う余地はありませんが、動きやすさと折れやすさが泣き所です。これに対してE-TORROCCO-CTMでは、エボニー指板のついたメイプル3Pネックをセットインします。表も裏もカッチカチです。反りやねじれに強く、また弦振動を吸収しにくいため、豊かなサスティンが得られます。

実績ある名ピックアップを採用

E-TORROCCO-CTM:ピックアップ

ピックアップはリア/フロントともに、ESP「LH-200」が採用されています。LH-200は80年代のデビュー以来今なお現役の、国産最長クラスの歴史を持つハムバッカーです。厚みのある中低音と高域のマイルドなキャラクターが持ち味で、豊かなサスティンも得られます。

ESP「ロン・ウッド・シグネイチャー(ブルース&ロックンロール志向)」、エドワーズ「E-SNAPPER(万能志向)」、同「ランダムスターE-RS(メタル志向)」の採用例に見られるように、ブルースからメタルまで幅広く使用できます。

ビグスビー&ロック式ペグ

ビグスビー

柔らかな音程変化と、何よりもゴツくてクールなルックスで評価の高い、ビグスビー・トレモロユニットが採用されています。表現の幅が広がるのはもちろんですが、軽量なボディに重いビグスビーが載ることで、重量バランスが調整されます。ビグスビーの使いやすさも考え、アウトプットジャックはボディサイドに設けられています。

ペグは、GOTOHのロック式です。チューニングの安定が泣き所と言われるビグスビーとの組み合わせにより、チューニングの狂いが大幅に軽減されます。サムホイール式で重量がありますからサスティンの確保にも寄与し、また弦交換の時短にもなります。

個性的な2色でラインナップを展開

E-TORROCCO-CTM:ラインナップ METALLIC GRAY、METALLIC BORDEAUX

E-TORROCCO-CTMは、クラシックカーの色調を意識したというメタリック・ボルドー、メタリック・グレーの2色でラインナップを展開しています。エレキギターの塗装に自動車のイメージを持ってくるのはよくあることですが、ホロウボディのモデルにこのようなメタリックなカラーリングは、かなり新しい発想だと言えるでしょう。


以上、エドワーズ「E-TORROCCO-CTM」をチェックしていきました。名機の復刻と言いつつ決してノスタルジックなヴィンテージモデルではない、新しいアイディアを取り入れた現代の楽器として仕上がっています。オーソドックスなセミアコの延長ととらえることもできますが、豊かな胴鳴りを持ちながらもハウリングに強いこと、またメタル用ギターにも採用例のあるハムバッカーを搭載していること、こういうこともあって、ガッツンガッツンのロックバンドで使用することもできます。ショップで見かけたら、ぜひ手にとってみてください。

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