エレキギターの総合情報サイト
YAMAHAの「REVSTAR(レヴスター)」は、同社のギター製造50周年となる2016年に発表された、半世紀の集大成と呼べるギターです。その設計理念には、今だからこそ大切にしたい日本のものづくり精神に加え、バイクの改造思想「カフェレーサー」が採り入れらました。これによってREVSTARシリーズには、特定のジャンルやスタイルに縛られないアイデンティティが形成されました。2022年には全機種のアップデートが行われ、より現代的なラインナップが展開されています。今回は、このREVSTARに注目していきましょう。
「カフェレーサー」とは、YAMAHAがギターを作り始めた1960年代、ロンドンにて始まったバイクの改造スタイルです。当時はロケンローなファッションのライダーが、自慢の改造バイクでカフェに集まり、公道レースに熱中していました。彼らのバイクはそれぞれに個性がありつつも、虚飾を排して走りに特化しており、60年代の魅力的な雰囲気を帯びていました。発生から半世紀を経た今でも、カフェレーサーはクラシックなレース仕様として愛され続けています。
REVSTAR「RSP20」
全モデルにラインナップされるカラーリング「スイフトブルー(SWB)」。
カフェレーサーを開発コンセプトに据えた「REVSTAR」の名は、エンジンの吹き上がりを意味する「rev」に由来します。REVSTARは個性をしっかりと主張しながら、いらないものをそぎ落とした、シンプルさと高い基本性能、そして幅広いサウンドバリエーションを持つ機能的なギターとして仕上がっています。経験者ならばサウンドや演奏性をイメージしやすく、初心者ならギター歴のスタート地点としてたいへん良好です。
新しいギターですが、どこか懐かしい雰囲気を帯びているのもポイントです。レトロとモダン、クールさと可愛らしさを両立させる多面的なデザインは、2017年グッドデザイン賞の受賞をはじめ、各方面で高く評価されています。
R上位機種「Professional」シリーズ(右)では、漢字で「日本製」。プラスチック製ペグボタンはトラッドな雰囲気を演出するほか、ヘッド重量を軽減させて重量バランスを整える効果がある。
ヘッドの意匠は、裏にカタカナで「レヴスタ」と捺印、表側はYAMAHAの紋章のみ、というシンプルさです。こうした意匠は私たち日本人には親しみやすく、欧米人にとってはエキゾチックで最高にクールだと感じられます。
また、ヘッドの根元にはボリュート(膨らみ)が設けられ、その部分での振動を調整しています。エレキギターでは1970年代から見られたボリュート付きヘッドは、サウンドにタイトな引き締まり感と豊かなサスティンを加える効果があります。また明瞭な響きが得られ、エフェクターとの相性も良好です。
「Standard」シリーズの構造。複雑な掘り方のチェンバー・ボディと、カーボンファイバーを埋設したマホガニー製ネック。
REVSTARは全モデルでボディに複雑なチェンバー加工が施され、より向上した音響製、軽量化と重量バランスの最適化を達成しています。このボディ設計に採用された「アコースティック・デザイン」は、設計に音響解析や3Dモデリングを活用する、YAMAHAならではのアプローチです。設計したギターの性能をコンピュータ上で検証したり、また試作物の音響性能を解析したりして設計を効率化することで、大胆かつ自由な発想を活かした的確な製品開発ができる、というわけです。
「Professional」シリーズでは、ボディにもカーボンファイバーが埋設される。恐らくこれまでのどのエレキギターにもなかった、全く新しい設計。伝達される振動を整理することで、狙い通りの弦振動が得られる。
ネックは全モデル共通して、3列のマホガニー材を接着した3層構造です。木材1本の状態よりも強くなることで反りやねじれが起きにくく、サスティンが良く伸びます。これに加え、上位機種「Professional」および「Standard」シリーズには、トラスロッドを両側から挟むようにカーボンファイバーが埋設されます。
REVSTARのジョイント部。厚みを残したままで媚びていない感じの形状だが、最終フレットに余裕でアクセスできるほど、ハイポジションの演奏性は高い。重量バランスも理想的で、ヘッド落ちに悩まされることがない。
サウンドの心臓部ピックアップについては、完成までに試作品を50種類以上も作り、線材の種類、巻き方、磁石とボビンの組み合わせ、ベースプレートの種類などの組み合わせを検証しています。
「Professional」「Standard」両シリーズは、ハムバッカー「VH5」搭載機とP-90タイプ「VP5」搭載機の両面でラインナップしています。いずれもREVSTAR初号機の上位機種に搭載されていたピックアップで、アルニコ5磁石を採用した十分な出力とキメの細かさが持ち味です。
「Element」シリーズのピックアップは、ギター博士が動画で演奏した旧モデル「RS420」と同じ「VH3」です。アルニコV磁石を使った王道系のサウンドを志向しつつ、ピッキングのタッチがサウンドに反映されやすく設計されています。中上級者が弾いても楽しめますが、これからギターを始める人の上達を促進するのにもうってつけです。
「Professional」「Standard」両シリーズには5WAYセレクタースイッチが備えられ、豊かなサウンドバリエーションが得られます。コイルタップではなく、コイルの+(ホット)と-(コールド)を反転させる「フェイズシフト」を利用しているあたりに、斬新さと強力な個性が伺えます。
Yamaha | Revstar Professional RSP20 | Guitar Sound Samples – Overdrive
「Professional」「Standard」両シリーズのハムバッカー搭載機では、Position1:ネック側ハムバッカー単体、Position2:両ハムバッカーのミックス(ブリッジ側フェイズシフト)、Position3:両ハムバッカーのミックス、Position4:両ハムバッカーのミックス(ネック側フェイズシフト)、Position5:ブリッジ側ハムバッカー単体。
フェイズシフトを利用したミックスのサウンドには、シングルコイルのハーフトーンに似た感触があります。しかしコイルタップと異なり、出力の低下がありません。
Yamaha | Revstar Element RSE20 | Guitar Sound Samples – Overdrive
「Element」シリーズには3WAYセレクタースイッチを採用。サウンドバリエーションは、Position1:ネック側単体、Position2:ミックス、Position3:ブリッジ側単体。
Yamaha | Revstar Professional RSP02T | Guitar Sound Samples – Clean
P-90タイプ搭載機では、Position1:ネック側単体、Position2:ミックス(ブリッジ側フェイズシフト)、Position3:ミックス、Position4:ミックス(ネック側フェイズシフト)、Position5:ブリッジ側単体。
こちらもフェイズシフトを利用することで、一味違ったサウンドバリエーションができている。
トーンノブのスイッチで、ギターのキャラクターが変わる
「Professional」「Standard」両シリーズにはトーンポットに「フォーカス・スイッチ」が仕込まれており、トーンノブを引くことで中域の圧力を増した図太いサウンドが得られます。電池を使わないのに音が太くなる秘密は、回路に組み込まれた「電源トランス」です。電源トランスには電圧を変換する機能があり、これを起動させることでサウンドに大きな変化を及ぼすことができるわけです。
Yamaha | Revstar Series | Guitar Sound Samples – Focus Switch
「Element」シリーズのトーンポットには「ドライスイッチ」が仕込まれます。トーンノブを引き上げて回路を起動させると、ピックアップの配線はそのままに中低域が削られ、繊細なタッチを活かす鋭い音が得られます。コイルタップと異なり、ノイズに強いハムバッカー状態のままで切り替えられるのがメリットです。
Yamaha | Revstar Series | Guitar Sound Samples – Dry Switch
ではREVSTARのラインナップを見ていきましょう。現在のREVSTARは「Professional」シリーズを頂点に、「Standard」シリーズ、「Element」シリーズの3つのグレードで展開、最高グレードのProfessionalシリーズのみ日本製で、これ以降のモデルはインドネシアにあるYAMAHA直営工場で生産されます。
ドレスアップした特別仕様機「RSP20X」
最高グレードとなる日本製のProfessional(プロフェッショナル)シリーズには、以下の基本仕様を共通に、
HH配列の「RSP20」とドレスアップモデル「RSP20X」、P-90タイプ搭載機の「RSP20T」の3タイプがあります。
左から、RSP20(スイフトブルー、ムーンライトブルー)、RSP20X(ラスティブラスチャコール)。
HH配列の「RSP20」はスイフトブルー(SWB)とムーンライトブルー(MLB)の2モデル、「RSP20X」はラスティブラスチャコール(RBC)の1モデルです。ハムバッカー・ピックアップのほか馴染み深いストップテールピースを採用しているのが、P-90タイプ搭載機との違いです。ドレスアップモデル「RSP20X」はボディバインディングとレーシングストライプをゴールドに変更し、アルミ製のピックガードを搭載させた特別仕様機です。
Professionalシリーズの背面。ボディカラーに関わらず、背面は全モデル共通でチェリーレッド。デザイン性の高いバックパネルはアルミ製で、長期的に使用しても変形しにくい。
上:クリスプゴールド、下:スイフトブルー
P-90タイプを搭載する「RSP20T」はクリスプゴールド(CPG)とスイフトブルー(SWB)の2モデルで展開しています。レーシングストライプの代わりにルックス上の大きなポイントになる「カスタムレーシングテールピース」は、ボディトップにマウントする方式によりブリッジにしっかり弦張力を伝えます。
カスタムレーシングテールピースは一見トラッドな雰囲気だが、ブリッジへの弦角度が確保でき十分なテンション感が得られる。
Professionalシリーズを
R楽天で探す 石石橋楽器で探す Sサウンドハウスで探す YYahoo!ショッピングで探す
レフトハンドモデル「RSS20L」。
Standard(スタンダード)シリーズには以下の基本仕様を共通に、
HH配列の「RSS20」とレフトハンドモデル「RSS20L」、P-90タイプ搭載機の「RSS20T」の3タイプがあります。
左から、RSS20(ホットメルロー、サンセットバースト、スイフトブルー、フラッシュグリーン、ビンテージホワイト、ブラック)、RSS20L(スイフトブルー、ブラック)。
HH配列の「RSS20」はホットメルロー(HML)、サンセットバースト(SSB)、スイフトブルー(SWB)、フラッシュグリーン(FGR)、ビンテージホワイト(VW)、ブラック(BL)の6モデル、左用の「RSS20L」はスイフトブルー(SWB)、ブラック(BL)の2モデルで展開しています。
左から、スイフトブルー、ホットメルロー、サンセットバースト、ブラック。
P-90タイプを搭載する「RSS20T」は、スイフトブルー(SWB)、ホットメルロー(HML)、サンセットバースト(SSB)、ブラック(BL)の4モデルで展開しています。
背面はProfessionalシリーズ同様、カラーリングに関わらず全機種共通でチェリーレッド。
Standardシリーズを
R楽天で探す 石石橋楽器で探す Sサウンドハウスで探す YYahoo!ショッピングで探す
最も求めやすい価格帯のElement(エレメント)シリーズは以下の基本仕様を共通に、
HH配列の基本モデル「RSE20」とレフトハンドモデル「RSE20L」の2タイプがあります。バインディング非採用、ボディ&ネックの背面がボディトップと同じになるカラーリング、ドットインレイ採用、というシンプルなルックスです。
左から、RSE20(スイフトブルー、レッドカッパー、ネオンイエロー、ブラック、ビンテージホワイト)、RSE20L(スイフトブルー、ブラック)。
右用の「RSE20」はスイフトブルー(SWB)、レッドカッパー(RCP)、ネオンイエロー(NYW)、ブラック(BL)、ビンテージホワイト(VW)の5モデル、左用の「RSE20L」はスイフトブルー(SWB)、ブラック(BL)の2モデルで展開しています。
Elementシリーズの背面は、ボディカラーと同じ色になる。
Elementシリーズを
R楽天で探す 石石橋楽器で探す Sサウンドハウスで探す YYahoo!ショッピングで探す
中古市場やデッドストックで散見される旧モデルは、日本の「侘び寂び(わびさび)」を感じさせる渋い意匠が特徴です。シルエットは現行モデルそっくりですが、「アコースティック・デザイン」コンセプトとフォーカススイッチの考案される前の設計であること、またラップアラウンド式ブリッジを基本とするところが大きな相違点です。
YAMAHA PACIFICA vs REVSTAR:万能なPACIFICA 112V/112VM、滲み出る個性のREVSTAR RS420/RS320、4機種を比較してみた!
REVSTARを…
R楽天で探す
石石橋楽器で探す
Sサウンドハウスで探す
YYahoo!ショッピングで探す
※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。