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2017年サウンドメッセ
「スイスの工業製品」と聞くと、何を思い出しますか?腕時計ではロレックス、オメガ、タグ・ホイヤーなど、多くの高級ブランドがスイスで作られます。またナイフやマルチツールのビクトリノックスもスイス発です。そんなわけで、われわれ日本人には「スイスと言えばギター」というイメージがありませんでした。それだけに、ほかのどれとも似ていない「RELISH Guitars(レリッシュ・ギターズ)」の登場は衝撃でした。今回は「アルプスの少女ハイジ」の国からやってきた、レリッシュのギターに注目していきましょう。
Eucalypt Mary 2019 Demo with Stig Trip | Relish Guitars Switzerland
まずはどんな音がするのかをチェックしてみましょう。丸っこくてかわいらしいデザインで、美しいサウンドです。しかしその中身は、本格的なアコギの音が出せて、ピックアップセレクターはタッチパネルで、ピックアップ高を調整するネジがなくて、ボディ裏をカンタンに取り外し、内部は金属でできていて、ピックアップを数秒で交換しちゃうという、今までのエレキギターから考えると良い意味で非常識。なんだこれは。
レリッシュのギターは、
の二人から始まりました。「エレキギターのボディ構造に、60年以上変化がない」ことに疑問を感じ、アルミフレームを使用した全く新しい構造を考案、試作とテストを重ねて製品化しました。2010年に「レリッシュ・ギターズ」として会社を設立、クーエン氏は社長に就任、ギガー氏はのちに独立して設計やデザインの会社を設立しています。現在レリッシュの製品開発は、ギガー氏の会社「Peppertree Visions」とのコラボレーションで行なっています。
現在のレリッシュは社長含む8人で運営、加工精度で名高い「スイス製」の名に恥じない高い品質でギターを作っています。木材については、入手困難な絶滅危惧種に手を出さず、安定的に入手できるスイスの木材を使用します。
レリッシュの特徴は、エレキギターの伝統にある程度は立脚しながらも、全く新しい設計でできている点です。その構造上の特徴を見て行きましょう。
レリッシュ最大の特徴は、「アルミフレームを木製のトップ&バックで挟む」という独特のホロウボディ構造にあります。エレキギター本体に金属を使用するのは、日本国内ではTOKAIのTALBOやEVO以外ではかなり珍しい設計です。しかし金属を本体に使用するギターは他にも無数に作られていて、決して新しいわけではありません。レリッシュの新しさは、「アルミと木材の組み合わせでホロウボディを作る」ところにあります。ネックとブリッジはアルミフレームに固定されますが、ピックアップなど電気系はトップ材に固定されます。そのため、ボディ内部を通るアルミフレームの振動を邪魔するものはなく、豊かな鳴りと、人類未体験の音の伸びが得られます。
レリッシュのギターはネックジョイントはセットネックのように見えるし、ピックアップの高さ調節ネジは見当たらず、弦を通す穴すら見当たらない、つるんとした外観です。これはすべて、「バック面がネジや接着剤ではなく磁石で留められており、カンタンに着脱できる」ことの恩恵です。
バック面を外すと内部構造が一望でき、ネックがアルミフレームにネジ留めされていることが確認できます。この状態で電池交換、弦交換、ピックアップの交換や調整まで行ない、フタをしてしまうわけです。
「メアリー」と「メアリー・ワン」2機種においてはトップとバックをアルミフレームに密着させない「フローティングサンドイッチ構造」を採用しています。これによりアルミフレームをできるだけ自由に振動させ、「ピアノのようだ」と表現されるたいへん豊かなサスティンを実現しています。
2019年モデルから新たに採用された「ピックアップ・スワッピングシステム」は、「専用の枠に固定したピックアップを磁石で設置する」という新しいシステムです。これによりピックアップ交換のハードルが大いに下がり、工具もハンダも使わずに数秒でピックアップ交換が可能です(公式サイトで言うように2秒で交換するには、それなりの練習が必要)。
出荷時にはレリッシュオリジナルの「レリッシュバッカー」が搭載されますが、交換用としてセイモアダンカン社製3タイプ、ベアナックル社製4タイプがリリースされています。ピックアップの枠には調整用のツマミもついており、高さと傾きの調整ができます。
「ジェーン」と「メアリー」の2機種には、17段階の「タッチコントロール」が搭載されます。タッチパネルの触り方で、
まで操作するもので、ブレンド具合はフロント100%からリア100%まで、17段階あります。
https://www.youtube.com/watch?v=AtN1GSsWLBQ&feature=youtu.be
This Is The 2019 Guitar Revolution Relish Guitars Switzerland
30秒近辺で、17段階のタッチコントロールを実演しています。両端がフロントやリアの100%、中間部分に設定するとフロント/リアのブレンド具合を調整し、指二本でタッチするとコイルタップが起動します。
指板の材料にはどのメーカーも頭を悩ませている昨今ですが、レリッシュはここに竹を採用し、特許を取得しています。この「バンブー(竹)フレットボード」は独自の技術で竹の密度を高めて作るもので、「ハカランダの美しさでエボニーの弾き心地」と表現されます。ローズウッドを60%上回り、エボニーを凌駕したという硬さはEU規格で最高の耐久性を達成し、ステンレス製フレットとあいまって、大変豊かなサスティンを生じさせます。また温度や湿度の影響をほぼ受けず、メンテナンスに神経を使う必要がありません。また竹は成長が早く、材料が枯渇する心配がありません。
木製のトップ/バックは、5枚重ねのアッシュ表裏にもう一枚ずつ木材を貼り合わせた「7層構造」をとっており、薄いのに大変頑丈です。外側の一枚は、フィギュアドメイプルやウォルナットで彩られることもあります。ジェーンの緩やかな曲面やメアリーのボディ外周のような立体的な構造は、高精度なプレス成型で行われます。薄いとは言え7枚重ねの木の板をプレスして、アルミフレームの外周に誤差なく合わせられるという、恐ろしく高精度な加工が施されています。
このレリッシュで見られるように角度の付いたヘッドを採用する場合、普通は木材を「へ」の字に切り出します。こうして作るネックでは木目がヘッドを斜めに貫くように走るため、転倒させてしまったらこの部分から容易に折れてしまう危うさがありました。やらかしてしまったら修理するのも大変です。
これに対してレリッシュの「ベント(曲げる)ネック」は、まっすぐな1ピースメイプル材を「へ」の字に曲げて作る、全く新しい工法です。これによりヘッドの先からネックの根元までが統一され、音響性能と頑丈さが飛躍的に向上します。
サドルにピエゾピックアップが仕込まれ、アコギのサウンドを得ることができます。レリッシュはギター本体の鳴りが良く、しかもホロウ的な構造ですから、一般的なエレアコと同じクオリティのリアルでふくよかなアコースティックサウンドが得られます。
エレキのサウンドと好きな配合で使用することもでき、ステレオのケーブルを使用すればエレキとアコギの音を送るアンプを別々にすることもできます。またトーンポットを引くと、ピエゾのサウンドにミッドブーストをかけられます。
Relish Guitars Jane Sound Demo RB XV & GHOST Piezo (Clean & Crunch)
旧モデル使用ですが、ゴーストピエゾ、ピエゾのミッドブースト、レリッシュバッカーそれぞれのサウンド、混ぜた時のサウンドを聞くことができます。ピエゾの音は決してペラくない、目をつぶっていたらエレアコと区別できないリアルなサウンドです。
レリッシュのアルミフレームや7層のトップ/バックなど、重要な部品はスイスの加工技術が傾注され、高い精度で作られます。「スイス・メイド」の高精度を誇りとしているレリッシュですが、精度の高いチューニングの要(かなめ)となるパーツ「ペグ」に、日本のゴトー(GOTOH)製が採用されているのは、大いに注目するべきです。
では、レリッシュのラインナップをチェックしていきましょう。かつてバリエーションとして木製フレームを採用したモデルもありましたが、現行ラインナップでは全モデルがアルミフレーム機となっています。
レリッシュのギターは全機種共通のネック仕様を持ち、ボディと操作系でバリエーションを出しています。まずはネックの仕様を見てみましょう。
演奏性としては、標準的なロングスケール(25.5″)よりごくわずかに長い弦長、やや丸みを残した指板R、というところに特徴こそ見られますが、ネックグリップに違和感なくステンレス製フレットの滑りの良さもあいまって、いきなりスムーズに演奏できます。なお、特別なドレスアップを施した「プラチナ」シリーズでは、ニッケルシルバー製フレットが使用されます。
つるんとしたかわいらしいボディ形状が特徴の「ジェーン(JANE)」は、がっつり削り込んだアルミフレームによる柔らかい感触のサウンドが持ち味です。トップとバックはアルミフレームに密着しており、バック面を閉じると一般的なホロウボディと同じ状態になります。トップとバックは、表層の木材やカラーリングでいくつものバリエーションがあります。
ツマミ類が少ないのも特徴で、
二つのボリュームでマグネット/ピエゾをブレンドします。
Stig Trip Demos The 2019 Jane | Relish Guitars Switzerland
空洞部分を多くとることによる柔らかい感触の音色が、ジェーンの特徴です。演奏中にピックアップを替えちゃうなんていうところまで見せてくれますが、確かにサウンドのニュアンスが変化したのが分かりますね。このようなバリエーションが得られるのは、特にレコーディングで重宝することでしょう。
JANEと比べれば平面部分の多いトップ面を持つ「メアリー(MARY)」は、ボディ内部を縦横に走る太めのアルミフレーム構造による、芯の強いサウンドが持ち味です。トップとバックがアルミフレームに密着しない「フローティングサンドイッチ構造」をとっているので、ホロウボディというよりトップ/アルミフレーム/バックの3枚それぞれが振動する新しい設計ではありますが、フルアコっぽいJANEに対してセミアコっぽいMARYと思ったほうがイメージしやすいでしょう。JANEと同様、トップの表層に銘木を使用することで、外観にはいくつものバリエーションがあります。
JANEとの操作系の違いは、ミニスイッチの操作で
を切り替えることができる点にあります。サウンドを派手に切り替える必要のある人にとっては、こちらのほうが好都合です。
Eucalypt Mary 2019 Demo with Stig Trip | Relish Guitars Switzerland
金属量の多いフレーム形状による芯の強いサウンドが、メアリーの特徴ですぜひジェーンの動画と聞き比べてみてください。
レリッシュの大きな特徴である「タッチセンサーによるピックアップ切替」は、操作の面白さやサウンドバリエーションにおいて人類未体験の革新的な操作法です。しかし「タッチパネルを目で確認しないと操作できない」という最大の泣き所を抱えています。その点で言えば、物理的にレバーをパチパチと操作する従来のセレクタースイッチは「いちいち見なくても操作できる」という大きなアドバンテージを持っています。
「メアリー・ワン(MARY ONE)」はMARYに3WAYセレクタースイッチを装備させ、意匠にも変化を持たせた、特にライブで威力を発揮するモデルです。
MARY ONEの基本的な仕様はMARYを踏まえていますが、ボディトップはソリッドボディの外周を斜めにカットしたような、直線的な仕上げになっています。これを利用して中央の平面と外周の曲面とでカラーリングを分けた、高いデザイン性も特徴です。
JANEやMARYはトップの化粧板やカラーリングにより「スノー・ジェーン」「ユーカリ・メアリー」などのような有機的な名前が付けられます。これに対してMARY ONEでは、「メアリーワン#003」のように、あえて無機質なモデル名を設定してクールなイメージを演出しています。
Stig Trip Demos The 2019 Mary ONE | Relish Guitars Switzerland
メアリー・ワンとメアリーでは基本構造が共通で同じサウンドを持っていますが、セレクタースイッチの操作性に大きな違いがあります。ボディのカラーリングにも違いが設けられているので、慣れれば一瞬で見分けられます。
「プラチナ(PLATINUM)エディション」は、スイスメイドの高精度な革新的ギターをイタリアのセンスで彩った、デザイン性の非常に高いモデルです。イタリアはバレンチノ、D&G、ベルサーチ、ブルガリなど、大胆なデザインを売りとするハイブランドを多く輩出しています。それだけにプラチナ・エディションのデザインは大胆なものが多く、
というように、ドレスアップの手法もかなり大胆です。
ボディトップの形状はMARY ONEに準拠していますが、こちらはセレクタースイッチではなく、タッチコントロールを備えています。
Relish Guitars Platinum Edition with Pick Up Swapping
視線を奪うインパクトあるデザインに、ツヤッツヤの仕上げ。ここまでデザイン性が高いと、ステージで見せびらかすのも写真を撮るのも、もちろん弾き倒すのも思いのままです。
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