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一昔前まではワイヤレスシステムというと、横長のラックにアンテナが付き、セッティングも煩わしいという、本当に必要な人以外は使わないといった類の代物でした。しかし昨今、技術の進化もあってか、ギター用ワイヤレスシステムは小型化/簡略化/高音質化が進み続けています。現在では片手に収まる程度のものが安価に手に入るということも珍しくなくなりました。
そんなギター用ワイヤレスシステムのカテゴリにおいて、エフェクター界の王者であるBOSSが参入、2018年7月に「WL-50」「WL-20」「WL-20L」をリリースしました。今回は標準モデルである「WL-20」を実際に使用してみたので、気になっているという人は是非チェックしてみて下さい。
パッケージを開けるところから見ていきましょう。
こちらが内容物・一番左に見えるのが、充電に使うUSBケーブル。
「WL-20」の本体はトランスミッター、レシーバーの2点です。どちらもほぼ同じサイズと重さで非常に小さく、10cmに満たない横幅に60gの軽量ボディと携帯性も抜群です。
左がレシーバー、右がトランスミッター。モノとしてはこれだけ。とてもシンプル!
レシーバーがバッテリー式となったことで、ケーブルが無駄に一本増えたり、アダプター経由での電源確保を考えずに済むようになりました。充電は付属のMicroUSBケーブル一本で可能。一回の充電で10時間の連続使用に耐えられます。
本体底面
続いてレシーバー、トランスミッターそれぞれについて詳しく見ていきましょう。
レシーバー
LEDライトを2つ搭載しているのがレシーバーです。レシーバーにはトランスミッターを接続するためのジャックが付いており、そこにトランスミッターのプラグを差し込む(ドッキングする)ことでワイヤレス接続を確立します。
トランスミッターとドッキングさせるためのジャックを装備している
裏面。「アンプに繋ぎます」とイラストで描いてあるのでわかりやすい。
プラグの根元の突起物が押し込まれることで、装着を認識するようになっている
レシーバーをアンプに繋いだ様子
トランスミッター側面
トランスミッターは接続されていることを表示するLEDが付いている程度で、レシーバーに比べてさらにシンプルです。USBの差し込み口はこちらにも存在し、レシーバーと別々に充電することもできます。
ジャック部
トランスミッターをギターに繋いだ様子
トランスミッターをレシーバーにドッキング。10秒間ほどで自動で最適なワイヤレス接続を確立する。
実際にレシーバーとトランスミッターをドッキングし、10秒待ってアンプとギターに接続すると、そのまま何の問題もなく音が出ます。「シールドのように使える」というBOSSの触れ込みは全く嘘ではなく、そのスムーズさに拍子抜けするほど。
スマホを充電するように、USBケーブルで充電する
ちなみに2つをドッキングしたまま充電することで、両方を一度に充電することもできます。
ちなみに電源などはなく、1時間無信号状態が続くと自動でスタンバイ状態に移行するオートパワーオフ式を採用しています。スタンバイ状態でも微量の電力を消費するため、弾かない時は抜いておくという使い方を推奨とのことです。
メーカーの公式サイトでは、見通しの良い範囲で15mまで可能ということになっています。実際に実験してみると、電波の届く限りは確かに接続はされていますが、7mぐらいでレイテンシーが発生します。弾いてから一瞬遅れて発音されるように聞こえ、はっきりとした違和感を感じるようになるので、違和感なく使える距離は5~6mぐらいと思って良いでしょう。通常の演奏として、シールドは5m程度のものを使っているギタリストが多いと思いますので、その距離までは十分に問題なく使えるということになります。
通常の中規模なライブハウスなどでステージ上で演奏する分には特に問題はない距離ですが、大きめのホールでアンプから距離があるとか、客席に躍り込んで演奏するパフォーマンスなどではそれなりのレイテンシーを感じることがありそうです。
「WL-20」は電波の干渉が起こりやすいと言われる2.4GHz帯で動作しますが、実際に使用しながらスマートフォンでの通信通話や電子レンジなどの家電を動かしてみたところ、特に音が途切れたりノイズが乗ったりということもありませんでした。
実際のライブなどでは、多数の観客がいる中で、誰の電話が鳴るかわからない状態のもとで演奏することになりますので、これは最低限安心できる材料と言えるでしょう。ちなみに、壁越しに鳴らした時に電波が遮断されてしまうことがあるため、注意が必要です。
実際に高品質なケーブルを繋いだ場合と、ワイヤレスの場合で、クリーントーンを使っての録音を行い、リスニングテストを行いました。
「WL-20」にはケーブル・トーン・シミュレーションという機能が付いていますが、これは実際に3mシールドケーブルで接続した際の音質の変化を再現するというもの。これの甲斐もあってか、一聴した感じの不自然さはほぼありません。ただ、実際に録音されたものを精細に聴き直すと、シールド接続との比較では、若干ですが中域の損失が認められます。この辺りはやはり有線と無線での差と言うべきものですが、今回、高品質なケーブルを使っての実験というのもあり、低価格帯の長いケーブルでの比較だとまた違った結果が出ている可能性もあります。
この差をどう見るかは人それぞれだと思いますが、多少の音質劣化を気にしない日常的な家での練習や、ステージでの身軽さというメリットが、少々の音質劣化というデメリットを上回るであろうロックバンドのライブ演奏などでは、十分に導入価値があると言えるでしょう。
BOSS WL-20を…
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WL-20には使用用途に応じて、「WL-20L」と「WL-50」という姉妹機が存在します。それぞれWL-20と何が違うのでしょうか。
WL-20に付属するケーブル・トーン・シミュレーション機能が排除されたものが「WL-20L」です。モデル名のLはローインピーダンスの”L”だと思われますが、ローインピーダンス出力を持つアクティブ・ピックアップのベースや、プリアンプを搭載したアコースティックギター、またはラインレベルの出力を持つショルダーキーボードなど、ケーブルによる影響を受けにくい楽器に対して使うことが推奨されています。通常のパッシブタイプのエレキギターにも勿論使用可能ですが、その場合、ケーブルを通した時の音の変化がシミュレートされません。
「WL-50」は、BOSSのコンパクトエフェクターとほぼ同サイズの、ペダルボード設置に特化したワイヤレスシステムです。トランスミッターは「WL-20」と全く同じですが、レシーバーのみがコンパクトエフェクター然としたものになり、大幅に違う機能を持っています。
トランスミッターを接続して、ワンタッチで接続を確立する機能はそのままながら、USBでのバッテリー駆動には対応せず、単3電池あるいはACアダプターでの駆動がメインとなりました。
ACアダプターを使用する場合、他のエフェクターへの電源供給ができるパワーディストビューターとしても機能します。ケーブル・トーン・シミュレーションはショート、ロングと、ケーブルの長短2種を切り替えることができ、使わない場合にはオフにも出来る仕様です。伝送範囲は公称20mと少し長くなり、ステージでのパフォーマンスに特化して強化されています。機能が多い分大型ですが、価格は変わらないため、純粋な使用用途で選び分けると良いでしょう。
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現在はさまざまなメーカーからワイヤレスシステムが発売されていますが、そこはやはりエフェクター界を代表するBOSSだけあり、必要十分にきれいにまとめてきた印象を覚えます。一聴して全く違和感のない優れた音質と安定した接続、最長10時間以上という長時間のバッテリーを装備して、使い勝手はトップクラス。ケーブルの煩わしさから解放されるワイヤレスシステム。食わず嫌いの方が多いカテゴリですが、一度試してみてはいかがでしょうか。
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