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「フリーダム・カスタムギター・リサーチ(Freedom Custom Guitar Research)」の「EZa(イーザ)」は、「The Future Vintage(未来のヴィンテージ)」を合言葉に、フリーダムC.G.R.設立20周年となる2018年、NAMMショウにて発表されました。開発コンセプト「Back to the Basic(基本に立ち返る)」のもと、フラッグシップモデル「HYDRA(ハイドラ)」をシンプルにまとめることで、同社の生み出す楽器の「本質的な良さ」に触れられるベーシックモデルとして仕上がっています。今回は、この「EZa」に注目していきましょう。フリーダムC.G.R.社長の深野真(ふかの・まこと)氏よりコメントをいただいているので、ところどころで紹介していきます。
「EZa」のモデル名は、日本創世の神「イザナギノミコト」に由来しています。「Back to the Basic」ということで、とことんまで原点回帰したわけです(笑。また、「イザ」という言葉は「いざ行かむ」のように、これから旅立つとか、決意を表すとか、そういう前向きなイメージがあります。
この「EZa」では、
といったフリーダムC.G.R.製品の「根本的な良さ」を、なるべく多くの人に届けたいと思っています。「30万円近辺」という価格設定はけして安いものではありませんが、フリーダムC.G.R.の中では最も低いところまで抑えています。
基本的な外形寸法はHYDRAと共通で、非対称のボディとオリジナルのヘッドシェイプを採用しています。
EZaの基本仕様は
といった伝統的なスタイルを踏まえています。極めてシンプルでなじみやすく、ここにフリーダムC.G.R.のギター作りに対するコンセプトが余すところなく反映されることから、このタイプのギターを検討している人にとって、他社製のギターとフリーダムC.G.R.との違いを比べやすくなっています。
SSS&ローズ指板モデル。非常にシンプルにまとまっていますが、一目でフリーダムのギターだと判るデザインになっています。
EZaの木材構成は、
というエレキギターとしてはスタンダードなものです。
ネックグリップはフリーダム標準の「Uシェイプ」で、細すぎず太すぎない、まさに「適度」な握り心地です。サイドポジションマークには蓄光素材が使われており抜群の視認性ですが、メイプル指板モデルでは黒い枠付きのものを使用することで、より見やすくしています。ネック塗装はツヤが控えめなので、「光が反射して見えにくい」ということもありません。
また、トレモロスプリングを覆うバックパネルは、非搭載が標準です。
1フレットぶん指板を延長した「ツバ出し」ネックとなっているのもポイントです。これは逆に「ネックが1フレットぶん短い」ともいえるもので、ネックポケットがフロントピックアップを収めるキャビティ(穴)とやや離れることで、この部分の剛性を確保する設計です。
フリーダムのお家芸というべき「ステンレスフレット」と「指板エッジの処理」は、EZaでも採用されています。ステンレスフレットはフリーダムC.G.R.オリジナルのもので、立ち上がりに優れる「SPEEDY」と従来のフレットに寄せた「WARM」の2種類をラインナップしている中から、EZaには「WARM」を採用しています。
一般的なステンレスフレットは「音がカタくなりがち」な傾向がありますが、フリーダムC.G.R.では硬すぎず「柔らかい」オリジナルステンレスフレットを採用することでこれを解消するとともに、音楽的な響きが得られるようになっています。ステンレスフレットは半永久的に美しい輝きを維持することができるため、くすんで弾きにくくなるようなことが起きません。また弦との摩擦が少なくなることから、指の運びがスムーズになり、力まずに演奏できます。
指板のエッジ部分はそれとなくなめらかに仕上げられます。この処理はネックを握る手にやさしくフィットし、新品のギターなのに弾きこまれたオールドギターのような感触をもたらします。
ピックアップ配列にはSSSとSSHの二種類があり、いずれもフリーダムC.G.R.オリジナルピックアップが搭載されます。
SSSモデルは現代のストラトキャスター・タイプとしての標準的な操作系ですが、SSHモデルには「タップコントロール」が付き、リアピックアップを図太いハムバッカーサウンドから歯切れのよいシングルコイルサウンド、そしてその中間のサウンドまで自由自在に調整ができます。
シングルコイルの基本モデル「ST Vintage」は、その名が示すように鈴鳴り感のあるヴィンテージスタイル、「ST Vintage FAT」はそこに中音域の押し出しを追加、サウンドを太くしています。
従来のハイブリッド・ハムバッカーは、出力が抑えられたヴィンテージ志向のものでした。今回EZaに載せられたものは出力を上げ、現代的なサウンドを作りやすいものにアレンジされた新開発のもので、パワーのあるシングルコイルVintage FATとうまくマッチングします。
スタンダードなシングルコイルサンドを放つST Vintageは音抜けが良く、EZaが持つ芳醇な倍音感を見事に音のニュアンスとして再現してくれます。そして、ST Vintage FATと新しいHybrid Humbuckerのコンビネーションはドライブサウンドに最適で、ピッキングニュアンスを出しつつも、音の芯を簡単に前へと押し出してくれます。
シンクロナイズドトレモロは、弦間ピッチを10.8㎜でセットできるWilkinson社製のもの。
トレモロブロックに弦を通す穴が一直線になっていないのは、サドルの標準的な位置を考慮してのもの。
ベーシックなモデルとしては、同社のラインナップにはすでに、伝統的なスタイルをふまえた「Retrospective(レトロスペクティブ)」シリーズがあります。EZaはこのレトロスペクティブを含む、フェンダースタイルの伝統的なギターとはいろいろな点で違いのある、まさに現代的なギターに仕上がっています。フリーダムC.G.R.ではこのオリジナルモデルEZaを、「新しいベーシックモデル」として展開してゆく考えです。
非対称のボディシェイプが最も分かりやすい違いですが、演奏性に直接関係する「寸法」の面でも、大きな違いが二つ確認できます。
フェンダースタイルの弦長は「25.5インチ」が基本ですが、EZaではそれより0.5インチ短い「25インチ」を採用しています。弦長25インチという仕様はPRSでの採用が最も有名ですが、フェンダー(25.5インチ)からもギブソン(24.75インチ)からも持ち替えがしやすいというメリットもあり、近年ではいろいろなメーカーで採用されてきています。
弦どうしの距離を「弦間ピッチ」と言います。フェンダーの伝統的な寸法では、ブリッジにおける弦間ピッチは「11.3mm」となっており、ギブソンの「10.5mm」より広くなっています。弦間ピッチは、
と考えられています。
フロイドローズ・トレモロシステムなど現代的な仕様のブリッジでは「10.8mm」が採用されていることもあり、EZaではこの「10.8mm」を採用しています。
ダブルカッタウェイにボルトオンジョイント、「ストラト・タイプ」のギターで「弦長25インチ」を採用しているのは、今のところ弊社だけだと思います。ナットまでの距離が近い、フィンガーストレッチがやりやすいなど、25インチの演奏性にはすごい可能性があると思っています。
フリーダムC.G.R.公式サイトより引用
フリーダムC.G.R.のオリジナルケア用品として市販もされている「Polish Cloth」は、マイクロファイバー製クリーニングクロスで、同社工場内でのギター・ベース製作における最終仕上げにも使用されています。油脂の汚れに食いつく能力が高く、油脂汚れの存在が「手に伝わる引っかかり」でわかります。これが感じられなくなるまで拭けば、汚れはきれいに除去できるわけです。EZaに限らずフリーダムC.G.R.のギターを新品購入すると、このクロスが同梱されます。
弊社の「Polish Cloth」は、セーム革のような柔らかな触り心地がとても気持ち良いので、新品の状態でぜひ顔に当ててみてほしいです。毛足が長く、汚れを除去する効果が長期間維持できるとともに、繊維は細かくてもたいへん丈夫ですから、洗濯して繰り返し使えます。
1cmくらいの切れ目を入れたらまっすぐに引き裂くことができますが、そこからほつれてこないような繊維の組み合わせ方をしています。4分の1くらいにカットすると、眼鏡を拭くのに最高に良いですよ。
以上、フリーダムC.G.R.社長の深野さんに解説していただきながら、同社の新しいベーシックモデル「EZa」に注目していきました。エレキギターの伝統に根ざしたスタイルでありながら、現代のスタンダードたりえるギターとして仕上がっています。基本構造がシンプルなだけになおさら、フリーダムのギターがどういうものなのかが感じられることでしょう。ショップで見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。
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