《ロック志向のLP》ギブソン・レスポール・クラシック徹底分析!

[記事公開日]2022/6/9 [最終更新日]2023/10/1
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

レスポール・クラシック

「ギブソン・レスポール・クラシック」は、1990年から生産されている

  • スリムなネック
  • オープンタイプのハムバッカーピックアップ

を特徴としたレスポールとして知られています。「レスポールのネックはある程度太いものだ」というのが常識だった当時、リードプレイに好まれやすいスリムなグリップのネックとドライブサウンドとの相性が良いオープンタイプのハムバッカーとの組み合わせは、ハードロック/ヘヴィメタル志向のサウンドに大変良好です。今回は、このレスポール・クラシックに注目してみましょう。

レスポール・クラシックの歩み

まずは、これまで流通されてきたレスポール・クラシックを追ってみましょう。現在でも中古市場で散見する「レスポール・クラシック」とは、どんなギターだったのでしょうか。

1990年、ロック専用レスポール「Classic」誕生

レスポール・クラシックの発売は1990年だと伝えられています。スリムネックを特徴とする1960年式をベースに、ピックアップカバーを外すことで高音域の存在感と出力を増す、というアレンジの加えられたレスポールが、ニューモデル「レスポール・クラシック」としてリリースされました。レスポール・クラシックはロック志向のレスポールとして好評を博しましたが、2012年にいったん生産が終了します。

ハムバッカー・ピックアップのカバーを外したら、どういう効果が得られる?


Gibson Les Paul Classic Plus
冒頭では、メタリカの名曲「エンター・サンドマン」のリフに、ジミ・ヘンドリックス氏の名曲「パープルヘイズ」のリフを被せています。やはりオープンタイプのハムバッカーには、このようなロック系のイメージがあります。

2014年、高機能化と多様化

Les Paul Classic 2014

ギブソン開業120年の節目となる2014年、レスポール・クラシックはロック志向をもう一歩突き詰めたギターとして、装いも新たに生産を再開します。「’60sスリムテーパー」と名付けられたスリムなネックとオープンタイプの「’57クラシック」ハムバッカーピックアップの組み合わせに加え、ブースターを起動するミニスイッチが追加されました。リード時にはこのブースターを起動させることにより、大幅にゲインを上げることができます。またピックアップ個別のコイルタップを備えることで、サウンドバリエーションが大幅に確保されています。


Gibson Les Paul Classic 2014 Electric Guitar – Gibson Les Paul Classic
シンプルなギターでありながらここまでのサウンドバリエーション。さまざまな音色を要求される現代の音楽では、とても助かる機能です。

Les Paul Classic 7 Strings Les Paul Classic 7 Strings

Les Paul Classic Double Cutaway Les Paul Classic Double Cutaway

このまま7弦仕様にアレンジした「Les Paul Classic 7 Strings」と、ダブルカッタウェイ仕様にすることでハイポジションへのアクセスを飛躍的に向上させた「Les Paul Classic Double Cutaway」も発表されています。翌年には自動チューニングシステム「G-Force」、自分で高さ調節ができる「ゼロフレットナット」が追加された「Les Paul Classic 2015」が発表されます。

2017年、原点回帰

Les Paul Classic 2017T Les Paul Classic 2017T

ブースターの装備によって新しい道を切り開いたかに見えたレスポール・クラシックですが、2017にいったん原点回帰します。トラディショナルモデルである「レスポール・クラシック2017T」は、ブースターとコイルタップが廃止となってシンプルなロック志向のギターへと生まれ変わり、「ピックアップカバーを外した1960年モデル」というレスポール・クラシック本来の雰囲気を強調させています。

Les Paul Classic 2017HP Les Paul Classic 2017HP

いっぽう最先端の設計を多く盛り込んだ「レスポール・クラシック・2017HP」は自動チューニングシステム「G-Force」とゼロフレットナットを備え、ハイポジションの演奏に有利なヒールカットが施され、またプラスチックパーツがすべて金属製に置き換わったことで、どこを取ってもクラシックではない最新鋭のギターとなっています。

2018年、旧タイプへ路線変更

Les Paul Classic 2018 Les Paul Classic 2018

Les Paul Classic Player Plus 2018 Les Paul Classic Player Plus 2018
存在感のあるラウンドネックとAAフィギュアドトップ、リッチライト指板を採用した「プレイヤー・プラス」シリーズから、レスポール・クラシックもリリースされています。リッチライトはエボニーの代わりとして使用される人工素材ですが、レモンオイルを塗り込むなどのケアを必要としないため、気軽に扱うことができます。ピックガードは付けられていませんが、出荷時に同梱されています。

新しい路線を歩むことになったレスポール・クラシックは、スピードプレイに有利なスリムテーパーネックグリップこそ従来のレスポール・クラシックを受け継ぎながら、リア/フロント両ピックアップに初めて「P-90」を採用しています。P-90は1957年以前のレスポールに使用されていたピックアップでしたから、まさにクラシックな仕様となっています。


Gibson Les Paul Classic 2018 Electric Guitar
やはりP-90ピックアップはクリーン/クランチで鳴らしたくなりますね。スッキリとしながら丸さのある音は、このピックアップならではのものです。

現在のレスポール・クラシック(2019年モデル)

2019 Les Paul Classic 左から、Translucent Cherry、Ebony、Heritage Cherry Sunburst、Honeyburst。

現在のレスポール・クラシックは、「改造した1960年式」という最初のコンセプトに再び回帰した、強化型レスポールです。スリムテーパー・ネックにオープンタイプのハムバッカー2基という本来の仕様を取り戻し、かつ4つのコントロールノブそれぞれにプッシュ/プル式のスイッチが仕込まれ、サウンドバリエーションが増強されています。
特殊配線については、上位モデル「レスポール・モダン」と同じ強力な内容になっています。各ボリュームは各ハムバッカーのコイルタップ、二つのトーンノブは、ミックス時に効果を発揮する「フェイズ」、ピックアップからの信号を直接アウトプットする「ピュア・バイパス」です。

1960年式との関係

「改造した1960年式」というコンセプトにならい、現行モデル「レスポール・スタンダード’60s(以下、STD)」にさまざまな仕様が共通しています。第一に「フロント61R&リア61T」というピックアップが共通で、STDはカバード、クラシックはゼブラのオープンタイプです。スリムテーパーのネックプロフィールも共通、キドニー・ノブのグローヴァー・ペグ、銀色のプレートがはめ込まれたリフレクター・ノブなど部品類も共通です。
いっぽうボディ仕様には2点の違いがあります。STDでAAグレードのフレイムメイプルが使用されているのに対して、クラシックではプレーンメイプルが使用されています。また、STDではウェイトリリーフ(重量調整)が非採用であるのに対し、クラシックでは「9ホール・ウェイトリリーフ」が施されており、本体重量が軽減されています。


以上、再び原点に回帰したレスポール・クラシックに注目していきました。レスポール・スタンダード’60sと多くの仕様を共通とするギターでありながら、軽量で高機能、ロック系と特に相性の良いサウンドを持ち、かつ価格が抑えられているモデルです。ショップなどで見かけたら、ぜひチェックしてみてください。

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