エレキギターの総合情報サイト
「T’s Guitars(ティーズギター)」は、長野県塩尻市に工場を持つ有限会社ティーズギターのブランドです。
極上の木材を惜しみなく投入し時間をかけて丁寧に作られるギターは、眼福といえる美しさを放ちます。熟練工の手作業による高い加工精度、また適切なセットアップによる絶妙な弾きやすさも持ち味。
ロックやポップス、フュージョンやネオソウルといった、特に現代的なスタイルのプレイヤーに厚く支持されています。今回はこの、T’s Guitarsに注目していきましょう。
情報協力:T’s Guitars
名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。
webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。
2025年の創業40周年を記念して製作された「40th Anniversary Arc-Hollow24」。
恐ろしくグレードの高い木材と精緻なインレイや彫金に目を奪われる。インレイと彫金は植物がモチーフだが、デザインの中にT’sのロゴを忍ばせているのがポイント。そして、T’sと言えば青。
T’s Guitarsのギターは、「作りの良さと性能の高さ」というエレキギターに要求される重要ポイントのど真ん中を追及する、見た目に美しく、音が良く弾きやすい、圧倒的な格の高さが特徴です。
現代的なオリジナルデザインでありながら基本構造はエレキギターの伝統にのっとり、各工程で熟練のスタッフが高精度かつ丁寧に手作業で製造します。
また低弦高を基本とするシビアなセットアップにより、ストレスのない良好な演奏性が得られます。
それでありながらポジションを問わず豊かなサスティンが得られ、ピッチが正確で複雑なコードも美しく響きます。
佐藤竹善 / 雨のリグレット from BD/DVD「”Live With The Cornerstones ’22 ~It’s My JAOR~” Official Bootleg」
T’s Guitars 工場内の木材保管庫
T’s Guitarsではアルダー/アッシュ、ローズ/エボニーといったオーソドックスな木材のほか、キルト/フレイムメイプルやホンジュラスマホガニーといったプレミアムな木材がふんだんに投入されます。
同社はOEM生産のために木材を大量に仕入れており、木材業者との良好な関係を構築しています。本来ならT’s製品用に少しだけ仕入れるのは難しい高級材を、しっかり確保できるわけです。
希少だが最高レベルの木材として知られるホンジュラスマホガニーについては南米にチャンネルを持っていて、今後も安定した仕入れが見込めます。品質についても安定しており、創業当時と変わらない良材を手に入れられます。
OEM(Original Equipment Manufacturing):
相手先ブランド製造。他社ブランドの製品を製造すること
Arc-STD 24 VS100N Centura Blue
ネックへのこだわりはかなり深く、1弦12フレットで1.4ミリ、6弦で1.6ミリという低い弦高のセッティングで出荷できる、しっかりとした精度の高いネックが作られます。
またここまでやり込むことで、一般的に多く見られるネックのトラブルを大幅に軽減しています。
なお、ネック材は基本的に1Pで使用されます。1本の木材からネックを削り出すのはエレキギターの伝統的な工法であり、T’s Guitarsの設計で深くこだわっているポイントです。
ネックと指板については「寝かせれば寝かせるほど良い」という考えです。
木材は切削すると刃物との摩擦で熱を帯びたり切削面が空気に触れて水分の出入りがあったりして変形するので、ネックを作る時には切っては休ませ、削っては休ませを繰り返し、最低でも2か月を要します。このように時間をかけて作った単層ネックは、多層ネックより頑丈だと言われます。
ボディ外周のベベルカットとインパクト絶大のカスタムカラー。
木目で主張するアッシュボディとアノダイズド・ピックガード、そしてブロック・インレイ。
南洋の夕暮れを思わせるカスタムカラーと、ボディのホロウ構造。
T’s Guitarsでは各モデルの基本仕様こそ設定していますが、仕様変更に柔軟に応じられる生産体制の強みでカスタムメイドが多く、木材や仕様にさまざまなバリエーションが生まれています(注:カスタマイズは、完成品を自分好みに改造すること。カスタムメイドは、好みの仕様で注文して作ること)。
木材やカラー、パーツ類の変更にとどまらず、ボディ外周のベベルカットやホロウボディ化、アニバーサリーモデルでは彫金や特別なインレイなど、T’s Guitarsとしての基本理念は堅持しつつも新しい仕様を積極的に導入しています。
2020信州ギター祭り展示モデル
T’s Guitarsのこだわる「精度」には、製造段階での加工精度のほかにもう一つ、セットアップの精度があります。
いつまでも弾けるベストな弾き心地の、バラつき無く一貫したクオリティのギターを出荷することに深くこだわっているわけです。
そのためT’s Guitarsのギターは全て、社長の高橋氏が自ら最終セットアップを担当します。
リペアで送られたギターに対しても同様であり、ユーザーは理想的な弾き心地のギターを受け取ることができます。
自社開発のピックアップは王道のシングルコイルとハムバッカーの2タイプでラインナップを展開しており、磁力の付け方を調整することで弦振動を邪魔しにくくしています。
特にハムバッカーは度のモデルでもドライブ時の音程感を重視した明瞭なサウンドを目指しており、アルニコII(DH-250 )、アルニコIII(DH-350)、アルニコIV(DH-450)、アルニコV(DH-560/DH-550)、 セラミック(DH-610n/611b)というように、主だった磁石をしっかりカバーしています。
Dave Weckl Band 2019 Reunion Show Promo: The Zone
サイドマンとしても活躍するバジー・フェイトン氏。
T’s Guitarsは2003年、日本初の「BFTS(バジーフェイトン・チューニングシステム)公認ショップ」になっています。
BFTSは著名なギタリストであるバジー・フェイトン氏が考案したチューニング方法で、チューニングについて「不完全楽器」とまで言われることのあるギターの音程感を整える効果があります。
もともとギターが構造上抱えている音程のズレを解消し、あらゆるポジションでの調和をとっています。かのラリー・カールトン氏をして、「何十年もギターを弾いていて、初めてチューニングが合った」と言わしめました。
T’s Guitarsは高橋社長みずから渡米してバジー・フェイトン氏の講習を受講し、いち早くこのチューニングを製品に取り入れています。ピッチが整っていると楽器本体の鳴りも整い、コードがクリアに聞こえてサスティンも伸びます。T’s Guitarsのトーンは「澄み切っている」とよく表現されますが、楽器本体の品質に加え、このBFTSもそのトーンに寄与しています。
普通のチューニングだと、たとえばオープンコードのEとAとを比べるとどこかがずれています。
たいがいは2弦と3弦の間ですがここが曲者で、人間の耳にはあまり心地よくない、チューニングの難しいところなんです。
これがBFTSだと「平均化」されるため、どこを弾いても同じようにスッキリと響きます。
また普通はハイポジションに行くにつれて響きが濁っていき、ハイポジションでコードワークができないくらいになってしまうことは有名ブランドのギターでも珍しくありませんが、ウチのギターはポジションが変わっても違和感が起きません。
T’s Guitarsのラインナップは、
基本として構成されます。
基本仕様こそ定まっていますが、木材構成、22Fと24Fが選べるフレット数、各種ブリッジ仕様やピックアップ構成など、さまざまなアレンジでラインナップに幅ができています。
プロトタイプのArc
「Arc(アーク)」はボディトップの美しい曲面が印象的な、ダブルカッタウェイ&セットネックのモデル。
チェンバードボディ構造の「Arc-STD」、内部を大きくくりぬいたホロウボディ構造の「Arc-Hollow」はいずれも22フレット仕様が基本です。
24フレット仕様は22フレット仕様機と同じボディ形状を継承し、フレットのぶん延長したネックをセットインします。
この設計によってハイポジションのアクセスがより向上するとともに、このネックに合わせてリアピックアップとブリッジを設置するため、ブリッジ位置は若干ネック寄りになります。
イベントなど特別な場合に少数作られるという、シングルカッタウェイ版Arc
Arcのナット幅はレスポールより若干狭くなっており、日本人でも弾きやすさを感じられると思います。もともとレスポールの音が好きなんだけど、本体が重かったり、ハイポジションが弾きにくかったりするので、ヒールをなくしてダブルカッタウェイにして、ネックも細めにして、アームも付けて、内部をくりぬいて、自分の好みでフュージョンからハードロックからいろいろな音楽をできるギターにした、というものです。
ネックシェイプはちょっと違いますが、Arcは基本的にDSTと同じように弾けるギターになっています。2ハムの太く甘い音色でもスッキリとしており、雑味がありません。デッドポイントに悩まされずに使える状態が基本です。
チェンバーは、裏側から叩くと分かりやすいです。あまり広くくりぬくとハウリングが起こるので、現在の仕様では小さめになっています。しかし普通のソリッドのギターと比べると、大分違うということがわかります。軽くて疲れにくいです。内部はくりぬいていますが、このボディサイズでフルアコに負けない甘さ、エアー感を実現しています。ナットをきちんと作るなどシビアに調整しておりますので、アームを使用してもそんなに狂いません。
「DST」はディンキー型ストラトタイプに由来する、取り回しの良いデタッチャブル・ネックモデル。木材構成やパーツなど各種の仕様に自由度が高く、さまざまなバリエーションがあります。
なお、ネックジョイントにはプレート付きヒールカット、プレートレス・ラウンドカット、ヒールカット非採用プレートジョイント、の3つが選べます。
ボディトップの曲面に合わせてトップ材を曲げて貼り付ける「Drop Top(ドロップトップ)」仕様は、他社に先駆けていち早く導入した、T’s Guitarsの得意分野です。
音域は22フレットを基本とし、24フレット仕様機は1弦側カッタウェイが深くなります。
ブリッジとリアピックアップの位置が変わらないので基本的な演奏性は同じですが、フロント&ミドルピックアップが若干ブリッジ寄りに配置されるため、やや硬質なサウンドになります。
35th Anniversary DTL-Hollow
近年では、Tスタイルの「DTL」も支持が厚い。
シングルコイルはハムバッカーと併用することを考え、ヴィンテージ系のものに現代風のアレンジを施しております。6弦から1弦まで、フラットに響きますよ。ヴィンテージ系の音色を狙ったシングルもありますが、これを載せている機種は今のところありません。
一番気を使って製造しているのはネックです。ネックも一緒に共振して音色を作る、というのはヴィンテージギターの特徴ですが、これに対してティーズのネックは「振動のエネルギーを伝達する」という役目を重視しており、堅めに作っています。その結果、立ち上がりが早くて、反応があって、という楽器になっていると考えています。
DSTシリーズは仕様の自由度が高く、全てのバリエーションを把握しきれないほどです。そんなわけですから、ショップによってはモデル名の表記が混乱する場合も。そこで、T’s GuitarsとしてはDSTのバリエーションをどう分類しているかを見ておきましょう。
ここに、Hollow(ホロウボディ)、Solid Ash(トップ材のないアッシュ製ボディ)など、比較的わかりやすい仕様が付記されることもあります。
以上、長野県塩尻市から世界のモダンギタリストに高品位なギターを届けるT’s Guitarsについて、いろいろと見てきました。
現代的な機能や新しい発想を柔軟に取り入れながら、基本的な設計はエレキギターの伝統を堅固に守り、製造においては熟練工の手仕事を重視する、頑固なこだわりを持ったブランドです。
作りと性能を突き詰めた高品位なギターに、ぜひ実際に触れてみてください。
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