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SUGI DS496 BSBK:ヘッド部分
「Sugi Guitars(スギ・ギターズ。以下Sugi)」はルシアー杉本眞氏により2002年に設立されたハイエンドギターのブランドで、長野県松本市に工房を構えています。
少人数での運営により生産台数こそ少なめですが、ブランド立ち上げ当初から徹底して高品質オリジナルモデルにこだわり続け、製品の美しさと品質、楽器としての弾きやすさや音の良さで今や世界的な支持を集めています。
今回はこのSugi Guitarsに注目していきましょう。
情報協力:Sugi Guitars (Sugi Musical Instruments Inc.)
名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。
webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。
Sugiを立ち上げた杉本眞(すぎもと・まこと)氏は、若かりし頃に米国エルガー社にてリペアとメンテナンスを学び、帰国後フジゲンに入社、スティーヴ・ヴァイ氏やパット・メセニー氏ら名だたるプレイヤーのシグネイチャーモデルをはじめ、多くの有名ブランドの製品開発を手がけています。
また米国フェンダー社が企業買収によって工場を失った1985年には「技術支援チーム」の一員として渡米しており、日本が誇る名工の一人として知られています。
フジゲンの職人として素晴らしいキャリアを積み上げてきた杉本氏でしたが、自身の理想よりも発注元の意図が優先されることに限界を感じ、また注文通りの製品を作っただけでは業界における自分の足跡としては不十分だという思いがつのっていたと言います。
「自身の理想を結実させた設計で20〜30年後には銘器と称されるような製品を作り、皆に弾いてもらいたい」という一念で生み出されたラインナップは、杉本氏が永らく蓄積してきたアイディアが注がれており、また少数のクラフトマンによる丁寧な仕上げも相まって、内外で高く評価されています。
訪問インタビュー:
《将来ヴィンテージと呼ばれるギターを創りたい》Sugi Guitars 訪問インタビュー
Sugiのギターは、良材を惜しみなく使用する贅沢かつ丁寧な作り、良好な状態を長期間維持できる安定性、抱え心地や演奏性に優れる高性能な設計、ジャンル横断的に使用できる素直な音色、これらを高いレベルでまとめあげています。
DS496M(Ocean Cave Blue Light:2017サウンドメッセ展示モデル)
フラッグシップモデル「DS496(BSBK)」:最高グレードのエキゾチック・メイプル・ボディ
角度によって杢が動いて見えたり、光の反射によって立体的に見えたり、杢の溝に当たる部分が輝いて見えたりと、様々な表情を見せる
Sugiのギターは木材に対する深いこだわりを反映させた、見た目の美しさが第一の特徴。
エキゾチックなメイプルや希少なホンジュラスマホガニーといった有名な銘木に加え、地図の等高線を思わせる模様の美しい希少材(=スポルテッドメイプル)、指板材にはインド産ローズウッドに加えニカラグア産ローズウッド(=ココボロ)らが工場にストックされており、製品に惜しみなく使われます。
これらの銘木は眼福でもありますが、「木材は音を作るものである」と言う考えから音を作るための十分な厚みで使用されます。
Sugiでは美観や希少性で木材にグレードを付けていますが、ギターの材料としての基準を満たしているならばそこに材料としての優劣はない、という考えです。
入荷が困難になってしまった木材もありますが、その時に使用できる良質な材料で、最良の楽器を製作することを常に意識しています。
アクアティンバー・ネック(5P)
AT(アクアティンバー)メイプルは立ち上がりの良さが魅力だったが、コロナパンデミックの渦中で湖からの材料引き上げ業務が休止になり、現在も安定供給の見込みはない。
Sugiは木材の個体差に影響されにくい根本的なバランスをとった設計に到達しており、どのモデルでもヘッド落ちしない、良好な重量バランスを達成しています。
またボディバランスは本体の音響性にも影響するという考えから、ボディ設計はSugiの音の重要な要素であり、製法や搭載する部品が変更されることはあってもボディ設計自体は今後も変更の予定がありません。
Sugiのギターはよく「タッチへの反応が敏感」と評されます。
ピッキングした通りの音が出ることで、上級者ならば繊細な音楽表現が可能。初心者ならばピッキングのバラつきがそのまま音として出てくるので、上達が早まります。
こうした敏感な楽器を作るために必要なのは、各工程の加工精度だと言われています。
ネックとボディが精度よく加工され、また弦を張った時の張力まで考慮した仕込み角で接続されることで、計算通りの弦振動が得られるわけです。
また、丁寧に組み込んだギターはボディとネックがしっかり共鳴し、木の良さが伝わってくる豊かな鳴りを得ることができます。
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ネックグリップについても評価が高く、指板やフレットのエッジが美しく処理されており、いつまでも弾いていたくなるプレイアビリティがあります。
また、Sugiでは弦高を極力下げて出荷しています。
弦高が高いままで出荷した場合、下げたいと思っても無理が生じる場合があります。しかし極力下げて出荷すれば、低いのが好みならそのまま弾でよいし、逆に高いのが好みなら上げのはたやすい、という考えです。
Sugiでは各モデルのコンセプトに合わせ、ピックアップも自社開発しています。
それぞれに個性はありつつも全てSugiのギターとしてローやトレブルの暴発を制御し、中域のおいしい所が豊かに主張してくる聞きやすいサウンドを持っており、ロックやポップスに限らず、ソウル/ファンク、ジャズ/ブルース、カントリー/ロカビリーなどあらゆる音楽で使用可能。
素直なキャラクターからエフェクターとの相性も良好でサウンドの汎用性が高いため、スタジオミュージシャンのように色々なジャンルを演奏するプレイヤーに特に重宝されます。
ムックはメタル/ハードロックを基調とし、エレクトロニカや民族音楽、ダンスミュージックなど、多岐に渡るジャンルのサウンドを展開しています。このバンドのギタリストであるミヤ氏は6弦と7弦を使い分けるスタイルですが、6弦ではSugiをメインに使用しています。
デビューから3年足らずで幕張メッセ2デイズ公演を実現させた勢いのあるバンド「ゲスの極み乙女。」を支える安定したベーシスト、休日課長。オーダーメイドのベースを使用しており、工場に視察に行った様子が雑誌でレポートされています。
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Sugi Guitarsでは、デタッチャブルネック&ソリッドボディ仕様の「DS」シリーズ、セットネック&ホロウボディ仕様の「SH」シリーズの両面を軸にラインナップを展開。ほとんどのモデルで、色や木材を指定するカスタムオーダーが可能です。
長野県松本市の工房で作るメイドインジャパンが基本ですが、杉本氏の盟友ティム・ウィルソン氏の工房で製作するUSAモデルも厚く支持されています。
Sugiの主軸「DS」シリーズは、その基本設計である「デタッチャブルネック&ソリッドボディ」がモデル名の由来です。
モダンな雰囲気を帯びたギターですが、ネックは弦長628mm (24.7″) のミディアムスケール、指板はやや丸みを帯びた250R、という組み合わせです。
この組み合わせを主軸においているメーカーは極めて珍しく、Sugi の大きな個性にもなっています。
「SH」シリーズはその基本設計である「セットネック&ホロウボディ」をモデル名の由来にしており、シングルカッタウェイ&5WAYセレクターの「SH485」、ダブルカッタウェイ&3WAYセレクターの「SH605」の2面で展開。
いずれもメイプル&マホガニーボディとマホガニーネック、弦長24.7インチ&305R指板です。
Fホールこそありませんがボディには空洞が設けられており、軽量で取り回しが良く、アコースティックな響きが得られます。
共通して採用される「LH-MF」ハムバッカーは繊細でクリーンなサウンドをイメージした、出力を抑えた設計です。
「RAINMAKER GUITAR(RMG)」は、DSシリーズのボディに弦長25.5インチのネック、コンパウンド・ラジアス指板、片側6連のヘッド、というアレンジを施したモデルです。
弦長を延長したことで弦振動にハリが出ることから、特にコード弾きを多用するスタイルのプレイヤーに良好ですが、コンパウンド・ラジアス指板はテクニカルなリードプレイにも大変良好です。
従来USAモデルとして長らく支持されてきましたが、国内の生産体制が整ったことから2025年、日本製「RAINMAKER GUITAR Japan(RMGJ)」が発表されました。
こちらはUSAモデルと全く同じコンセプトで作られており、カスタムオーダーも可能です。
基本的な加工を済ませた、RMGJのボディ&ネック。
弦長25.5インチの強めな弦張力はピックアップ3基の磁力の影響を感じさせないことから、カスタムオーダーや後からのピックアップ交換/増設を見越した、HSH配列のキャビティが掘られている。
「Too good to be…(=…のくせに、品質が良すぎる)」は「好奇心は持っているだけじゃもったない」をテーマに、自由な発想で今までに無い楽器を作るために立ち上げられたプロジェクト。
今のところヒラマミキオ氏とのコラボレーションで完成した「Corsair」と、敢えてスタンダードなスタイルに挑戦した「Stargazer」の2モデルがリリースされています。
Sugi USAは、杉本氏の設計したギターを、氏と永年の親交を重ねるティム・ウィルソン氏がカリフォルニアの工房で製造する、ギター版日米同盟です。
ティム・ウィルソン氏はJacksonブランド立ち上げに参画するなどエレキギターの歴史における重要な人物であり、同ブランドのアイデンティティでもある「コンパウンド・ラジアス指板(コニカル・フィンガーボード)」は氏の発案であると言われています。
ラインナップは今のところ、日本での生産も始まったRAINMAKER GUITARと、レトロな雰囲気が持ち味のSWINGSTANGです。
以上、現代の憧れのブランド、「Sugi Guitars」についてチェックしていきました。
木材に深いこだわりを持つ高級なギターですが機能や性能、安定性に優れる大変優秀なギターでもあり、音楽に対して高いモチベーションを持つプレイヤーに特に厚く支持されています。
生産数の少ない珍しいギターでもありますが、各地の展示会に出展することは多く、また地元長野県のショップには高確率で展示されています。
ぜひ実際にチェックしてみてください。
取材記事:
《オーダーメイド体験》Sugi Guitarsにギターをオーダーする:前編
Sugi Guitarsを…
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