ハンマリング/プリングの練習と、実践的な使い方

[記事公開日]2020/2/11 [最終更新日]2020/2/11
[編集者]神崎聡

ハンマリング/プリング

「ハンマリング・オン」と「プリング・オフ」は、右利きなら左手の動作で音程変化を作るテクニックです。フル・ピッキングと比べて滑らかな表現ができるほか、ピッキング1回で2つも3つも音を出すことができるので、速弾きにも盛んに利用されます。まずはそれぞれがどんなものなのかをチェックしてみましょう。

ハンマリング・オン

ハンマリング・オン ハンマリングのTab譜表記

ハンマリング・オンは「ハンマリング」と略して呼ばれ、ピッキングした弦のフレットを叩き付けるようにして音を出すテクニックです。あまり力をこめずに押さえる/他の弦をミュートするために指を立てるのがコツです。力まず、軽く、そして勢いよく押さえること、また隣の弦を道連れにしないよう、指先を立てるのがコツです。譜面上では、譜例のように「スラー」のみで書かれたり、スラーに「H」の字が添えられたりします。


はじめてのハンマリング・オン練習

  • Ex.1
  • Ex.2
  • Ex.3
Ex. 1:0:25〜
ex1_last
Ex. 2:1:25〜
ex2_last
Ex. 3:2:25〜
ex3_last

ハンマリングのコツ

弦を上から叩くように意識してみましょう。斜めや横から指が当たるとピッチ(音程)が不安定になる時があります。リズムのズレにも気をつけましょう。

ハンマリング・オンの練習 その2

  • Ex.1
  • Ex.2
  • Ex.3
Ex. 1:Aマイナーペンタトニック
ハンマリング・オンの練習 その2:Ex.1
人差し指をセーハしたままだと他の弦の音が鳴ってしまいます。弦移動の時に、人差し指はその都度ポジション移動して、1弦ずつ鳴らすのがポイントです。
Ex. 2:0:57〜 Cメジャースケール
ハンマリング・オンの練習 その2:Ex.2
指をバタつかせずに。押さえた後、人差し指・中指はそのまま押弦をキープ。弦移動の時にポジション移動するのがポイントです。
Ex. 3:2:36〜
ハンマリング・オンの練習 その2:Ex.3
ブラッシングを交えて「ギター博士のテーマ」風に

プリング・オフ

プリング・オフ プリングのTab譜表記

「プリング・オフ」は略して「プリング」とも呼ばれ、譜例のようにスラーのみが書かれることも、スラーに「P」が添えられることもあります。譜例で基本動作を確認してみましょう。まず、7フレットを薬指で押さえてピッキングします。このとき、まだ5フレットを押さえる必要はありません。「プリングするぞ!」と思った時にはじめて5フレットを押さえ、プリングを受け止める準備をします。そして、弦をひっかくように、空中に向けて薬指を離します。隣の弦までひっかいてしまわないように注意しましょう。

はじめてのプリング・オフ練習

  • Ex.1
  • Ex.2
  • Ex.3
Ex. 1:0:18〜
プリング・オフ Ex.1
Ex. 2:0:30〜
小指を使ったプリングの練習プリング・オフ Ex.2
0:45〜:プリングとピッキングを交互に弾いています
ex3

プリングのコツ

プリングは、押さえた弦をただ離すだけでは音は出ない。弾く(はじく)ことがポイントです。

プリング・オフの練習 その2

  • Ex.1
  • Ex.2
  • Ex.3
Ex. 1:Aマイナーペンタトニック
プリングの練習 その2:Ex.1
Ex. 2:0:56〜 Cメジャースケール
プリングの練習 その2:Ex.2
弦移動の時は、次のフレーズのために先に指を用意してから弾くのがポイント
Ex. 3:2:35〜
ブラッシングを織り交ぜたフレーズ
プリングの練習 その2:Ex.3

ハンマリングやプリングって、使い道あるの?

このハンマリングとプリング、ギター博士はリズムや強弱の音楽表現にとって、とても大事な役割を持っていると考えているようです。自分なりのフレーズを作ることを目指したやや難しめの内容ですが、博士の動画からその考え方をチェックしてみましょう。


ハカセって何でそんなにプリング/ハンマリング多用するの?《奏法解説》

ハンマリング/プリング・Tab譜

EX.1:ピッキングする位置でフィーリングが変わる

ハンマリング/プリング:Ex1

ハンマリングとプリングは滑らかなサウンドになるため、その前のピッキングがアクセントのように聞こえます。博士はこれを利用し、ピッキングするタイミングを音符のふたつ目やよっつ目に来させることが多いようです。こうすることで、フレーズに拍をまたぐ「うねり」のようなフィーリングが生じると考えているのです。
また「指技を使わないフル・ピッキングには、押し出しの強さがある」という考え方から、次のフレーズを呼び込む「接続詞」のようなイメージで、わざとフル・ピッキングを使用する箇所を設けています。

EX.2:クロマチック・フレーズ

EX.2の前半で博士は、次々と隣のフレットにハンマリングしています。これは1フレットずつ移動する「クロマチック(半音)フレーズ」です。これを平行移動させて独特の雰囲気を作っていますが、ピッキングの位置とハンマリングの向かう先とで、Aメロディックマイナー・スケールのフィーリングを意識しています。
クロマチック・フレーズは、調性や和音を破壊してしまう可能性もあります。しかし、このようにスケールを意識することで、あやしい雰囲気をかもし出しながらも音楽にマッチしたフレーズを作ることができるのです。

ポリリズムの演出

ハンマリング/プリング:Ex2

さきほどのクロマチック・フレーズは、「6音のフレーズ」を並べているところが、もう一つのポイントです。ピッキング位置で言うと「3音のフレーズ」が並んでいると見ることもできます。1拍に4つ入る16分音符でコレを並べると、4拍子のビートと異なる区切りが生まれます。このように異なるリズムが同時に鳴ることを「ポリリズム」と言い、強いうねりを生み出すことができます。

EX.3:特定の音を目立たせる

ハンマリング/プリング:Ex3

ハンマリング/プリングにより、ピッキング音が引き立ちます。EX.3ではこれを利用して音階から外れた音(C#)をピッキングで目立たせ、緊張感を生んでいます。そこから収まりの良い音(C)に落ち着くことで、独特の解決感を演出しているのです。後半では4弦13フレットのEb(b5th)をピッキングして緊張感をかもし出し、ハンマリングでEに収めています。


以上、基礎から博士流の使い方までを見てきました。ハンマリング/プリングは細かく連続させると「トリル」になり、右手も駆使すると「タッピング(ライトハンド)」へ発展できます。またしっかり習得することで、音が滑らかにどんどんつながっていく「レガート・プレイ」にも挑戦できます。
しかし「滑らかな音程変化」と「音数を増やせる」ことだけが、ハンマリング/プリングのメリットではありません。ピッキングが引き立つことから、リズムにうねりを加えたり、フレーズに豊かなニュアンスを含ませたりと、音楽表現を深める道具として使うことができるのです。
たいへん重要なテクニックですから、この機会にぜひ基本をマスターしてください。自分でフレーズを作ることができる人は、ピッキングの位置で主張するフレージングに挑戦してみてください。

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