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手ごろな価格のヴィンテージモデル「Vintera(ヴィンテラ)」シリーズ展開から4年、フェンダーはそのコンセプトを前進させ、「Vintera II」シリーズを発表しました。半世紀を経てなお愛されるスタイルとサウンドを持ちながら、現代のプレイヤーが弾きやすく感じられる演奏性と手に取りやすい価格も併せ持っています。今回は、このフェンダー「Vintera II」シリーズに注目していきましょう。
Vintera II: Through the Years | Fender
各年代を反映したネックシェイプとクラシックなカラーリング。定番機に加えてマニアックなモデルも。
50年代式はソフトVシェイプ。メイプル指板ならスカンクストライプも入る。
ストラトキャスターならば、50年代はソフトVシェイプ、60年代はCシェイプ、70年代はUシェイプ、というように、それぞれ各年代のネックシェイプが採用されます。ネック裏はグロス(ツヤあり)塗装で、適度なグリップ感が得られます。
このほか、50Sストラトキャスターならばストリングガイドとプラスチックパーツで1956年仕様を再現、60Sテレキャスター・シンラインならばペグはFキーなど、予算の範囲内で可能な限りの再現に挑んでいます。
また一方で、歴史上さまざまな変遷を見せた操作系を現代仕様にまとめ、ペグのギア比を上げてチューニング精度を高め、フレットを若干高くするなど、現代の楽器としてのアップデートも施されています。
Vintera II 60s Stratocaster(Olympic White)
ファン待望のローズウッド指板。濃淡など色調のばらつきは、木材の個性として好意的に解釈される。
近年では日本製以外のフェンダー普及価格帯モデルにローズウッド指板はなく、代わりにパーフェローやローレルが使われてきました。そんな中、このVintera IIシリーズで遂にローズウッド指板が復活を果たしています。
さすがに黒々とした色調のものは上位モデルに回されているようで、Vintera IIで使われるローズウッドは色みが薄めだったりまだらだったりしています。しかし、こうした指板はむしろその個体だけの唯一無二の個性であり、上位モデルにはない味わい深さがあります。
なお、Vintera IIのローズウッド指板はすべて、平面同士を貼り合わせる「スラブ貼り」です。指板Rに合わせた曲面同士を貼り合わせる「ラウンド貼り」よりローズウッド材の厚みが得られ、音響面で指板材の特徴がより反映されやすいと考えられています。
低弦高のセッティングではチョーキングが使えないというデメリットから、現代では平滑な指板が主流。
フェンダーのヴィンテージ・スペックで無視できないのが、7.25″(184.1mm)Rという丸みを帯びた指板形状です。丸い指板は握るようなフォームで押弦したり、2~3本しか鳴らさないカッティングをしたりといった演奏において平たい指板より遥かに有利です。チョーキング時の音詰まり予防として若干高めの弦高でセットアップされますが、美しくコードを響かせるにはむしろ好都合です。
また、細くて低いフレットがヴィンテージ・スペックですが、現代の感覚では基礎的な押弦をはじめチョーキング、またビブラートに不利だと考えられています。これに対してVintera IIでは、オリジナルのヴィンテージよりちょっとだけ高さを増した「ヴィンテージ・トール・フレット」を採用し、演奏性を高めています。
加えて、丸い指板にヴィンテージ・トール・フレットを打ち込み、ナット幅が42mm、また各年代の特徴を再現したネックシェイプ、こうしたネック回りの主だった仕様が上位シリーズ「American Vintage II」と同じであるという点は、注目に値します。
Vintera II 50s Jazzmaster(Desert Sand)
「デザート・サンド」と名付けられたボディカラーは、ヴィンテージ市場でもなかなかお目にかかれないレアカラー。
Vintera IIシリーズでは普及価格帯だからこそ許される遊び心も見られ、現代のギターとは一味違う面白味のあるラインナップを展開しています。レアカラーの採用や、50年代のノーキャスター、70年代の黒いブロックインレイ仕様のジャガーといったマニアックなモデルも投入しており、テレキャスター・デラックスにシンクロナイズド・トレモロユニットを取り付けてしまうアレンジモデルまであります。
Vintera II 60S BASS VI(Fiesta Red)
弦が6本でトレモロまで付いて、それでも「自分はベースです」と言い張る個性派モデル「BASS VI」も久々の登場。チューニングはギターの1オクターブ下(6弦からEADGBE)。
では、フェンダーの新シリーズ「Vintera II」のラインナップをチェックしていきましょう。Vintera IIの価格帯は前シリーズ「Vintera」とほぼ同じで、MIJ Traditional各シリーズより上、MIJ Hybrid IIシリーズよりわずかに上、American Vintage IIシリーズのだいたい半額、という立ち位置です。
Exploring the Vintera II Stratocaster Models | Vintera II | Fender
定番機の王道ストラトキャスターは、50/60/70各年代のモデルをリリース。
50S/60S/70Sの3モデルがリリースされているストラトキャスターは、それぞれ各年代の特徴を再現しつつ現代仕様の操作系を採用しています。3機種とも5WAYセレクタースイッチを備え、トーン1がフロント&ミドル、トーン2がリアにかかります。
左から、Ocean Turquoise Metallic、Black、2-Color Sunburst。
50年代のストラトキャスターは、メイプル製1ピースネックと8点留めピックガードが外観上の大きな特徴です。Vintera II 50s Stratocasterは、アルダー製ボディに50年代中盤のソフトVネックシェイプを採用、3色のカラーバリエーションで展開しています。
本モデルは、ヘッド部のストリングガイドとプラスチックパーツがちょっとしたポイントです。バタフライ型ストリングガイド、アルダーボディ、Vネックといった仕様が採用されたのが1956年、ミントグリーンのプラスチックパーツを採用したのは1957年です。Vintera IIでは具体的な年式までは追及していませんが、白いプラスチックパーツが採用されていることから、50年代式ストラトは1956年式に最も近い、と言えるわけです。
バタフライ型ストリングガイドは、1956年に採用された。
50年代フェンダーの大発明「シンクロナイズド・トレモロユニット」は、当時のスペックをしっかりと再現。
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左から、3-Color Sunburst、Lake Placid Blue、Olympic White。
60年代のストラトキャスターは、ローズウッド指板と11点留め3層のピックガードが外観上の特徴です。ローズウッド指板のスラブ張りは1959年から1962年までなので、Vintera II 60s Stratocasterはこのあたりの年式に近いと言えるでしょう。CBS社に買収(1964)される前のブランドロゴが使われているところからも、それがうかがえます。
指板が変わるだけで、ずいぶんとイメージが変化する。50年代と同じスパゲティロゴは1964年以前の仕様。
3層ピックガードは、エッジ部のストライプがキリっとした印象。
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左から、Vintage White、3-Color Sunburst、Surf Green。ボディカラーに応じて指板材が設定されている。
70年代のストラトキャスターは、象徴的なラージヘッド、3点留めのジョイントプレート、ネックの仕込み角を調節できるマイクロティルト機構、トラスロッド開口部のブレットナット、「F」が刻印されたペグ「Fキー」など、さまざまな特徴をしっかり押さえています。
本機では、ピックアップのポールピースが高さに変化のあるスタガード仕様になっているのがポイントです。1974年以降はしばらくフラットポールピース仕様なので、Vintera II 70S Stratocasterは1973年以前のモデルに近いと言えます。
ネックの3点留めは70年代の証。
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Exploring the Vintera II Telecaster Models | Vintera II | Fender
テレキャスターは4モデルをリリース。
4モデルがリリースされているテレキャスターは、ノーキャスターとテレキャスター・デラックスで特に遊び心が感じられる布陣です。テレキャスターの操作系は歴史の中でいろいろな変遷を遂げていますが、Vintera IIでは現代的な「3WAYセレクタースイッチ&1V1T」が採用されています。
Blackguard Blonde(上)、2-Color Sunburst(下)
「Nocaster」は1951年、改名を強いられた「Broadcaster」が新しい名前のデカールができるまでの間、475本ほど生産されたレアギターです。正確には「モデル名非表示のブロードキャスター」なのですが、現在ではノーキャスターの愛称が定着しています。
「Vintera II 50s Nocaster」は、肉厚な「Early-’50s Thick “U”」ネックシェイプ、5点留め単層ピックガード、ブラス製3連サドルといった50年代の仕様をしっかり再現しています。
また、ほぼすべての箇所にマイナスネジを使っています。今これを使おうとすると電動工具が使えないので、生産性が大きく損なわれます。普及価格帯のモデルにこの仕様を投入するには、マイナスネジを締め込める電動工具を開発したのか工場の工員が頑張って締めているのか、とにかくこのモデルに対するフェンダーの本気度が伝わってきます。
ブランドロゴのみ&皿型ストリングガイド。これぞノーキャスター。
目に入るすべてのネジがマイナスネジ。フェンダーは本気だ。
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Fiesta Red(上)、Sonic Blue(下)
60年代仕様のテレキャスターは、ローズウッド指板と8点留め3層ピックガードを外観上の特徴とし、現代の標準的な握り心地に近い「Early-’60s “C”」ネックシェイプを採用しています。スラブ貼りのローズウッド指板は1962年までなので、「Vintera II 60s Telecaster」は1960~1962年あたりのイメージだと言えるでしょう。
トラスロッドは、指板の接着面に溝を掘って埋設する。スカンクストライプのない、つるんとしたネック裏。
60年代前半と言えばネジのらせんを刻んだ「スパイラル・サドル」だが、本機では現代の楽器としての性能を考えてか、弦を受け止める溝の刻まれた鉄製サドルに改められている。
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3-Color Sunburst(上)、Black(下)
「Vintera II 60s Telecaster Thinline」はアッシュ製セミホロウボディ、60年代後期の「Late-’60s “C”」ネックシェイプ、独特のデザインの4層ピックガード、1967年から導入されたペグ「Fキー」の採用と、当時の面影を現代によみがえらせる設計となっています。
従来のテレキャスターと違い、60年代のシンラインはフロントピックアップの高さ調節ができる。
Fホールに象徴されるホロウ構造により、弦振動にアコースティックなテイストが加わる。
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Vintage White(上)、Surf Green(下)
「Vintera II 70s Telecaster Deluxe with Tremolo」は、フェンダーの歴史上でも異彩を放つテレキャスター・デラックスにトレモロユニットを装備したアレンジモデルです。オリジナル同様、背面にコンター加工を施し、また他モデルより平たい9.5″(241 mm)指板Rを採用する、一味違ったテレキャスターです。搭載される2基のワイドレンジ・ハムバッカーは、肉厚な音圧の中にフェンダーらしい高域を豊かに含んでいます。
同時代のストラトキャスターと同仕様のラージヘッド。
モダンな印象のブロックサドルだが、当時のテレキャスター・デラックスにも採用されていた。
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Exploring the Vintera II Offset Models | Vintera II | Fender
ジャズマスター、ジャガー、ムスタングの3モデルは、そのボディ形状から「オフセット・モデル」に分類されている。
ボディのくびれ位置が左右で非対称になっている「オフセット・ウェスト」は、3モデルがリリースされています。Vintera IIでは.009-.042ゲージ弦で出荷されますが、こちらのオフセット・モデルではブリッジ部での「弦落ち」予防や弦長による張力不足への対策として、.010-.046でセットアップされます。
Desert Sand(上)、Sonic Blue(下)
「Vintera II 50s Jazzmaster」は、デビューした1958年から翌年まで足掛け2年採用された、アノダイズド・ピックガードが印象的なモデルです。アルマイト処理ともいわれるアノダイジング処理は、人工的に酸化皮膜を生成し、アルミニウムの耐食性を高める働きがあります。アルミニウムは電気を通しますが酸化皮膜は絶縁体ですから、ノイズ対策というより美観と頑丈さを重視した採用だったと考えられます。
このほかネジの溝を切った「スパイラル・サドル」やソロ/バッキングやスイッチング奏法などに使用できる「リズムサーキット(プリセットスイッチ)」など、在りし日のジャズマスターをしっかり再現しています。
フロントピックアップのプリセットができる、リズムサーキット。
滑らかなビブラートを可能とする、フローティング・トレモロユニット。アームは差し込むだけでOKの、プッシュイン方式。
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Black(上)、Vintage White(下)
「Vintera II 70s Jaguar」は、メイプル指板、ネックバインディング&ブラックのブロックインレイによってキリっとしたオーラを帯びるモデルです。ジャズマスター同様のフローティング・トレモロユニットやリズム回路に加え、低域をカットするスイッチまでしっかり再現されています。ナット幅はそのままで弦長24インチというショートスケールを採用しており、比較的ラクチンにコードを押さえることができます。
精悍なルックスを演出する黒いブロックインレイ&ネックバインディング。クローの付いたピックアップもしっかりと再現。
3基が並ぶスライドスイッチは、ネック側からフロントON/OFF、リアON/OFF、低域をカットする”Strange”サーキットのON/OFF。
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Competition Burgundy(上)、Competition Orange(下)
ナナメに走る「コンペティション・ストライプ(レーシング・ストライプ)」が目を引く「Vintera II 70s Mustang」は、70年代初期のCシェイプ、ナット幅42mm&弦長24インチ(ショートスケール)、音域22フレットというネックに、可動域の広いダイナミック・ビブラートとミックス時にフェイズサウンドが使用できるスライド式スイッチを備えています。60年代式と異なり、ボディ裏にコンター加工が施されるのもポイントです。
ボディ背面にはコンター加工が施され、座奏時の抱え心地が良好。
上にも下にも幅広い可動域を持つ、ダイナミック・ビブラート。
Nirvana – Smells Like Teen Spirit (Official Music Video)
レーシングストライプのムスタングと言えば、かのカート・コバーン氏が名高い。氏のムスタングはマッチングヘッド仕様だった。
Fender Mustang:フェンダーのショートスケール・ギター
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以上、伝統的なスタイルに現代的なアップデートを施した「Vintera II」シリーズに注目していきました。フェンダーの製造技術や加工精度は半世紀前と比べて飛躍的に進歩しており、Vintera IIシリーズについては、フレットの仕上げやセットアップなど細かいポイントについても高い満足度が得られると伝えられます。ぜひ実際にチェックしてみてください。
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