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「D’Angelico(ディアンジェリコ)」は、1932年に発足、ニューヨークのマンハッタンを拠点とする伝説的なギターメーカーです。ギター職人ジョン・ディアンジェリコ(1905-1959)氏の残したギターは、今や非常に価値の高いコレクターアイテムとみなされ、ピート・タウンゼント氏、エリック・クラプトン氏らビッグアーティストもオーナーに名を連ねています。近年リニューアルしたD’Angelicoは、古き良きアメリカの雰囲気を帯びた、しかし設計の新しい楽器として支持を集めています。今回は、このD’Angelicoに注目していきましょう。
Emily Elbert – True Power
最高級のジャズギターとして名を馳せたD’Angelicoは、今やさまざまなモデル展開によってポップス、ロックはじめさまざまな場面に起用されています。
D’Angelicoは、個人製作家ジョン・ディアンジェリコ氏に始まります。ニューヨークに生まれたディアンジェリコ氏は9歳の時、祖父に弟子入りしてバイオリンとマンドリンの製法を学びます。祖父の亡き後、氏は工房を継ぐことになりましたが、従業員を15人も監督するのを好まず、マンハッタンに自分の工房を建ててごく少人数でギターを作り始めます。1932年、ギターメーカーD’Angelicoがここに発足します。
ディアンジェリコ氏は、月産3~4本のペースで生涯1,164本のギターを作りました。1本1本がオーダーメイドで、それぞれが顧客に合わせて作られ、「ギターのストラディバリウス」と称されるほど、音と仕上がりが高く評価されました。
氏亡き後、「D’Angelico Guitars」の商標は企業や資本家の手に渡ります。日本の寺田楽器がD’AngelicoのフルアコをOEM生産したこともありました。現在の「D’Angelico Guitars of America」社は1999年にブランドを取得、10年以上の歳月を経た2011年に製品を発表します。エンパイアステートビルから5分という場所に本社を構え、ここで設計と開発を行ない、量産機の製造はアジアの提携工場に委託しています。フルアコについては、ディアンジェリコ氏が実際に作ったギターをMRI装置とX線に通して、正確に複製したと伝えられます。
パーツカラーやヘッド裏の着色など些少な違いこそあれ、全モデルに通じるヘッドデザイン。パールをアバロンが斜めに貫く「スプリットブロック」指板インレイは、上位機種の共通仕様。
シルエットだけでディアンジェリコだと判別できる印象的なヘッドストックは、この複雑な形状にキッチリ施される3層のバインディング、頭頂部に輝く「キューポラ」ヘッドピン、輝くブランドロゴとシールドロゴの両インレイ、アルミ製「スカイスクレイパー」トラスロッドカバー、3ステップ・ノブを特徴とするグローヴァー社製インペリアルペグ、これらゴージャスな意匠が全モデル共通仕様です。
ディアンジェリコ立ち上げ時代に流行していたアール・デコ調のデザイン、手の込んだ装飾、高級な部品が一体となって、高級ブランド「ディアンジェリコ」が象徴されています。
「アール・デコ(仏: Art Déco)」は、アメリカではニューヨークを中心に、1910年代半ばから1930年代にかけて流行したデザインです。丸や四角の図形をモチーフにすることが多く、日用品や工芸品だけでなくエンパイア・ステート・ビルやクライスラー・ビルディングなど、ニューヨークを代表する高層建築の設計にも採用されました。
ヘッドピンの名前に使われる「キューポラ(円頂塔)」は、建物のてっぺんにちょこんと乗っかるドーム状の構造物を現します。トラスロッドカバーの名前に使われる「スカイスクレイパー」は、超高層ビルを意味します。パーツ類のこうしたネーミングからも、ディアンジェリコのデザインがニューヨークの摩天楼をイメージしているのだと察することができます。
デザイン性の高い、アール・デコ調のピックガード。このモデルではコントロールノブもかわいい。また、ほとんどのモデルでボディやピックガードにビシっと多層バインディングが巻かれ、ゴージャス感が強調されている。
階段状にデザインされた「ステアーステップ・テールピース」。コレもアール・デコのイメージ。
ソリッドボディ「Atlantic(左)」とセミホロウボディ「DC(右)」のジョイント部。ソリッドモデルではヒールをバッサリとカットしているのに対し、セミホロウモデルではヒールを残してトラッドな設計を守っている。
全モデル共通して、独自の「セット・スルー」ネックジョイントが採用されます。フロントピックアップ全体をカバーするところまで、ネックが深くセットインされます。ホロウボディやセミホロウボディのモデルではジョイント部の高い剛性が保証され、ソリッドボディのモデルではヒール部のないスルーネックのような弾き心地が得られます。
なお、トラスロッドは全モデル共通でダブルアクション方式が採用されており、順反り/逆反りの両方の調整が可能です。
D’Angelicoのギターは、今のところ3つのシリーズで展開しています。各ギターはシリーズのコンセプトに基づき、共通仕様が多く設定されています。
「Premier」では価格を抑え、トラッドな「Excel」とモダンな「Deluxe」は同程度のグレード、という扱いです。各モデルの設計は、シリーズごとのコンセプトに従っています。「Mini DC」を例に挙げると「Premier」は弦長25″で14″指板R、「Excel」は弦長24.75″で16″指板R、「Deluxe」も弦長24.75″&16″指板Rで、ちょっとだけ背の高いフレットが使われるといった違いが見られます。
HH配列を大多数とする中、オフセットボディ「Bedford」はシングルコイルをからめ、ホロウボディの「EXL-1」はフローティングハムバッカー、同じくホロウボディの「59」はP-90、となっている。
ピックアップ配列はHHを主軸に据えるほかにSSH、SH、1H、P-90があり、全機種がダンカン・デザインドもしくはセイモア・ダンカン製で統一されています。このうちHH配列モデルについては、3つのシリーズで使用されるピックアップがほぼ決まっています。
同一シリーズ内のHH配列機には同じピックアップが使われますが、アッシュやバスウッドなどボディ材、ソリッドやホロウなどボディ構造、そして25インチや24.75インチなど弦長によって、各モデルの音が作られます。ピックアップ自体の品質がセイモア・ダンカン社によって保障され、各モデルの個性はギター本体の設計によって作られているわけです。
では、いよいよD’Angelicoのラインナップをチェックしていきましょう。歴史上、同ブランドはジャズ用のホロウボディ(フルアコ)やセミホロウボディ(セミアコ)で名を馳せましたが、新たにソリッドボディが開発され、ジャズ以外のプレイヤーからも支持を集めています。
D’Angelicoのギターを…
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