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芸術的な木工加工や優れた組み込みにより「楽器好きによる、音楽好きのための、トップクラスの楽器製作」といわれる「メイワンズ(Mayones)」。楽器にこだわる数多くのミュージシャンに愛用され、ヨーロッパの音楽シーンを支えるブランドとして注目されています。日本でも満を持して上陸したとたん、大きな話題となりました。
多弦ギターの完成度が極めて高いこと、また2ハムを主体としたラインナップ、ポジションマークのない指板といった仕様の特徴から、ハードロック/ヘヴィメタル志向のプレイヤーに特に人気があります。またいわゆる「仕事ギター」っぽくないロック的なデザインでありながら、弾きやすくオールマイティに使える高機能なところが、他のジャンルのギタリストからも注目を集めています。今回は、このメイワンズの魅力に迫ってみましょう。
[MV]Get Back the Hope / Fear, and Loathing in Las Vegas
通称「ラスベガス」所属ギタリストTaikli氏は国内ではいちはやくMayonesに注目し、「Regius」を長らく愛用しています。この演目では、ボーカリストSo氏も途中からOrmsby「Goliath」で間奏に参加しています。
ポーランド共和国は中央ヨーロッパに位置し、親日国であること、また美人が多いことで知られ、多くの名曲を遺したピアニスト、フレデリック・ショパン氏を輩出した国でもあります。メイワンズはこのポーランドにOEM楽器メーカーとして1982年に創業、以来少数生産ながら優れた製作技術で高い評価を得ています。
多くのブランドのギター生産を手掛けるなかで、メイワンズは大量に仕入れる木材の中から最良のものを採用することができます。
という生産体制で、品質の高いギターを安定的に供給することに成功しています。豊富な知識と確かな木工技術は様々な要求にフレキシブルに対応できるカスタム・オーダーにも存分に活かされており、 ユーザーの強い拘りを反映させた夢のギターを実現させることができます。
Mayones Duvell Qatsi – John Browne signature models
ジョン・ブラウン氏自身が、自らのシグネイチャーモデルを紹介している動画です。26秒あたりですが、「マヨネーズ」って言っていますね。「Mayones」というブランド名は本来「マヨネーズ」と読むようなのですが、日本に上陸する際に「メイワンズ」と読み替えたようです。
メイワンズのギターは全モデル受注生産であり、店頭に並んでいるものは日本の業者がメイワンズにオーダーしたショップオーダーものです。受注生産だからこそ、基本モデルにさまざまな仕様やパーツの変更を加えることで柔軟なモデル展開が実現できています。しかしその反面でラインナップにはメイワンズの持つギターへのこだわりが随所に反映されており、なんでもかんでも作るというわけではないようです。
ではどんな特徴があるのか、かいつまんでチェックしてみましょう。
左から、4Aキルテッドメイプル、アイ・ポプラ、フレイムメイプルのトップ。何とも美しい。
メイワンズはオリジナルブランドとしては新興であることもあり「このギターはこの木材でなければ」といったこだわりに縛られない、幅広い木材構成を採用しています。一方で工場の創業から40年という年月で木材の入手経路をしっかりと構築していて、良質な木材が潤沢に使用できます。
本体に使用する木材は、アルダーやスワンプアッシュ、マホガニーなどの王道から、ブラックリンバ、ウェンジ、アマザコエ(オバンコール)などエキゾチックなものまでさまざまです。ボディトップ材については各種フィギュアドメイプルや各種バール材、コアやレッドウッドなど希少材のバリエーションが豊富です。逆に塗りつぶしカラーの作例が極めて少ないのも特徴で、良材の木目や杢を愛でてニヤニヤするのがメイワンズの楽しみ方のひとつになっています。
ストラトタイプ「Aquila」で積極的に使用されるT.E.W.(Tonally Enhanced Wood)は、圧力や熱を加えて人工的に経年変化を進行させた木材です。まるでヴィンテージギターのような倍音豊かな生鳴りが得られ、ネックや指板のメイプルのほか、ボディに使用するスワンプアッシュにも採用されます。
Regiusの背面。11層を成すネックの美しいストライプが確認できる。
ほとんどのモデルで、ネックには硬質な木材による積層構造が採用されます。その木材構成はモデルごとにさまざまで、メイプル&マホガニーの5層、ウェンジ&パープルハートの5層、メイプル&マホガニー&アマザコエ&ウェンジの11層など、補強に頼らず木材の組み合わせで必要な音響性能と強度を確保しています。またネックプロフィールについても、モデルごとに幅や厚みで少しずつ違いを出して、それぞれの個性を出しています。
なお、弦長については全モデル645mm(25.4″)に統一されており、オプションで27″や28″といったバリトンスケールが用意されています。フレットも全モデル共通でステンレス製のエクストラ・ジャンボフレットが打ち込まれます。
各モデルのジョイント部。Aquilaはひし形状に、Duvellは台形状に4点、Hydraは放物線状に6点留め。Legendはセットネック、Regiusはスルーネック。
モデルごとの個性は、特にジョイント部に現れます。ヒール形状とジョイント方式はモデルごとに決められており、それぞれの音響性能と剛性、またハイポジションでの演奏性が高く設定されています。
Regius 6 MM 4Ever TT
ブリッジは、エレキギター本体のアイデンティティを左右しうる重要部品です。メイワンズでは、ロック式トレモロならFloyd Rose(USA)やSchaller(ドイツ)、シンクロトレモロならGOTOH(日本)、ハードテイルならHipshot(USA)、ヘッドレス用ならABM(ドイツ)やSOPHIA(USA)というように、一流メーカー各社からさまざまなブリッジを取り寄せています。
チューニングを自動修正することで話題となった「Ever Tune」やシャーラーがグラフテック社と共同開発した高性能ブリッジ「Hannes」といった、他にはなかなか見ることのできないユニットが搭載されるのも、量産体制をとっていないがゆえの強みになっています。
カスタムショップ製「Duvell Elite QM4A 6」。シャーラーの「Hannes(ハネス)」ブリッジは各弦を独立させることで弦振動の干渉を防ぎ、クリアなサウンドを生むことができる。
メイワンズでは基本モデルに各種の特別仕様を盛り込み、モデル名に反映させています。代表的な特別仕様を見ていきましょう。
左:Schaller社製「LockMeister tremolo bridge」、右:GOTOH社製「510」トレモロブリッジ
「PRO」は6弦ならSchaller社製「LockMeister tremolo bridge」、7弦ならFloyd Rose「Original 7-String Tremolo System」を搭載した、FRT仕様機です。「V24」と「V22」はGOTOH社製「510」トレモロブリッジを搭載したトレモロ仕様機で、数字はフレット数を意味します。いずれもブリッジ底面が掘り下げられており低弦高のセットアップが可能で、アームアップもできます。
上:Elite(4A Quilted maple)、下:Gothic
「Elite(エリート)」はキルテッドメイプルやアイ・ポプラなど見栄えの良いトップ材を使用したモデルです。「Gothic(ゴシック)」は、アッシュの木目が際立つ仕様です。天然の模様を活かしているため同じものは二つとして無い、主張のあるボディトップになります。
Jakub Zytecki : Wait
8弦という広大な音域を縦横に駆け巡るポーランドの至宝、ジェイコブ・ザイデッキ氏。氏の構えるRegiusは、中央だけ青い逆バーストのアイ・バールが独特の雰囲気を演出しています。
上から6弦、7弦、8弦。弦が増えるごとに傾きは緩やかになっていく。
メイワンズではファンフレットのことをVフレットと呼び、「VF」はそのVフレット仕様機を意味します。メイワンズのVフレットは6弦でも7弦でも8弦でも、1弦の弦長を25.4インチ、最も音の低い弦の弦長を27インチに設定しています。これにより弦が増えていくにしたがって、フレットの傾きは緩やかになります。
PARADISE LOST – Victims Of The Past (Live in Plovdiv)
ゴシックメタルの雄「パラダイス・ロスト」。メイワンズには、いかつい男性ギタリストを惹きつける何かがあるようです。
メイワンズのギターは、「自分たちの製作した楽器を愛しているだけでなく、それが必要とされる音楽をも同時に愛している」といわれるように、各モデルそれぞれに考え抜かれたコンセプトが設定され、ヨーロッパならではのセンスが注がれて完成されます。溢れんばかりの個性は独特ですが奇抜ではなく、そこはかとない美しさを感じさせます。ほとんどのモデルでそれぞれにヘッドデザインが違っているのもメイワンズの特徴で、ヘッドデザインからその楽器が志向するサウンドが暗示されます。では、具体的にどんなギターがあるのか、チェックしてみましょう。
Regius FM4A(Custom Shop)
「Regius(レジアス)」は、ヘッド/ボディ共に左右非対称のシルエットを特徴とする、メイワンズの代表機種です。厚い支持に応えるように多様化しており、ボディトップの削り方にバリエーションがあるほか、ブリッジ仕様も多用です。なお、現在のメイワンズにおいて8弦仕様はこのRegiusからのみリリースされています。
スルーネック構造による抜群の演奏性とロングサスティーンが持ち味で、ボディ材はスワンプアッシュを基本に、オプションでマホガニーも選択できます。スワンプアッシュは「モダンハイゲインとの相性が良い」と言われており、その意味でもヘヴィ志向のギタリストにマッチしています。ヴォリューム/トーンポット、セレクタースイッチなどマウント部分が滑らかに落とし込まれ、プレイの邪魔になりにくくなっています。またブリッジについてもブリッジプレートがボディにめり込むように落とし込まれているためボディからの弦高が低く、テクニカルなプレイをそれとなくバックアップします。凛としたトップ面と裏腹に、バック面はていねいに角を落とした加工が施されており、プレイヤーの身体に優しくフィットします。
左から、Regius 6、Regius Gothic 6、Regius Pro 6、Regius 4 Ever 7、Regius VF BKP 8。
基本モデルとなる「Regius」のトップは、気品の漂う緩やかな曲面を描きます。HH配列のベアナックル社製ハムバッカー・ピックアップとHipshot社製固定式ブリッジを基本にしつつ、アッシュの木目が主張する「Gothic」、FRT搭載の「Pro」、Ever Tune搭載の「4 Ever」、ファンフレット仕様の「VF」、GOTOH社製「510」トレモロブリッジ搭載機「V24」と幅広くバリエーションを展開しています。
左から、Regius、Regius Core、Regius Core Classic。トップ面の違いだけで、全く違うギターのような印象を受ける。
「Regius Core」と「Regius Core Classic」はトップのカーヴィングで一層の存在感が演出されるモデルです。Regius Coreのトップ面は、ボディ中央のフラット部分と外周へ落ちていくベベル部分との境界が明確な削り方が特徴です。Regius Core Classicのトップ面は外周に向かって滑らかに落ちていき、外周の手前でわずかに沈み込む削り方が特徴です。
左から、Regius V24 6、Regius V24 7、Regius Core V24 7、Regius Core V24 6、Regius Core Classic V24 7。
GOTOH社製「510」トレモロブリッジ搭載の「V24」仕様はRegiusの6弦と7弦、Regius Coreの6弦と7弦、Regius Core Classicの7弦、以上5タイプでリリースされています。
左から、Aquila、Aquila Elite 6、Aquila Elite S 6。
スーパーストラトをメイワンズ流に仕上げた「Aquila(アクイラ)」は、メイワンズのラインナップ中で最もオーソドックスなスタイルを持つ、その意味で異彩を放つモデルです。Aquilaはネックと指板に、Aquila Elite 6とAquila Elite S 6はボディにT.E.W.を使用しています。
Mayones Aquila FM 6 — sound samples by Marcin Wadolowski
現代的なプレイアビリティでトラッドなプレイやサウンドが映えるモデル。
メイワンズ内での際立った特徴は、ネック仕様にあります。他モデルが総じて3層から11層の多層構造を取る中、AquilaのネックはハードロックメイプルT.E.W.やウェンジのワンピース・ネックにグラファイトの補強を仕込んだ設計です。厚みを残したネックシェイプと丸みのある12″指板Rも手伝い、トラッドなギターに慣れたプレイヤーが受け入れやすくなっています。
ネジをひし形状に配置する、独特のジョイント部が印象的な背面。
左から、Legend V22 6 SSH、Legend V22 6 HH、Legend T22 6、Legend T22 6 SH、Legend F24 7。
「Legend(レジェンド)」は、トラッドな雰囲気をベースに独自のアレンジで仕上げたモデルです。シングルカッタウェイモデルではありますがネックの低音弦側は18フレットでボディと接続しており、滑らかなヒール形状も手伝い、ハイポジションのアクセスはトラッドなストラトキャスターよりも遥かに良好です。
メイワンズ内で唯一の22フレット仕様機があり、トップにメイプルをあしらったアルダーボディのテレキャスターをほうふつさせる雰囲気でありながら、メイプル&マホガニーの5層ネックをセットインする斬新な設計になっています。
Mayones Guitars Legend & Regius 7 Presentation!
左から、Duvell BL 6、Duvell Elite 7、Duvell Elite Gothic 6、Duvell Elite VF BKP 7、Duvell Elite PRO 6、Duvell Elite V24 7。
「Duvell(ドゥヴェル)」はシャープかつスリムなスタイルで、ヘヴィ志向のギタリストを直撃する攻撃的なモデルです。トップにアイ・ポプラやアッシュをあしらったマホガニーボディを基本とし、「BL」はブラックリンバ製ボディを採用しています。ここにウェンジ&パープルハート5層ネックをボルトオンジョイント、指板はエボニーでネック部は非常に硬質です。HH配列、3WAYセレクタースイッチ、そして弦から話した位置にボリュームポットという鋼鉄の精神を体現した操作系ですが、ボリュームポットにはコイルタップ起動スイッチが仕込まれており、多様な音色を利用できます。
Mayones Duvell — John Browne Monuments – The Alchemist playthrough
左から、Hydra BL 6、Hydra Elite 7、Hydra Elite Gothic 6、Hydra Elite PRO 6、Hydra Elite VF FSH 7。
「Hydra(ハイドラ)」は、人気モデルDuvellを出発点に開発されたヘッドレスギターです。そのため木材構成やネック寸法、カッタウェイやジョイント部の形状、操作系の仕様など多くの特徴が共通で、「V24」以外はバリエーション展開も共通しています。
唯一のヘッドレスギターを開発する上で、高人気でさまざまなジャンルで使用されるRegiusではなくメタル方向へ振り切ったDuvellを出発点に設定するあたり、メイワンズ開発陣の深いこだわりが伺えます。
左から、Regius BB – MBC 2021、Duvell Buckeye Burl – MBC 2016、Regius CoreGuard – MBC 2018、Legend T Aged Silver – MBC 2012、Hydra Elite CR MBC 2019。
「MBC(マスタービルダー・コレクション)は毎春発表される特別仕様の1点物です。イレギュラーなトップ材、レギュラーモデルにはないボディカラーやセミホロウなどの仕様で、美しさだけでなく楽器としても特別な逸品です。生産台数が少ない上にファンが多いことから、入手は極めて困難です。
以上、ポーランド発メイワンズのギターについてチェックしていきました。現代的なプレイアビリティや作りの良さもさることながら、木材やボディラインの芸術点の高さで弾き手を魅了するハイエンドなギターです。ぜひ実際にチェックしてみてください。
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