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エレキギターでいろいろな音を出すのに便利なのが、1台の中にいくつものエフェクターを内蔵する「マルチエフェクター」です。コンパクト・エフェクターを1つずつ買い足していくのはなかなか大変ですし、「アレが要る!」となってから調達するのも面倒な話です。しかしマルチエフェクターならクリーンな音もダーティーな音も、あんな音もこんな音も1台で実現できます。またいろいろなエフェクターの効果や使い方、組み合わせまでを体験できるので、エレキギターのサウンドメイキングを知るのにとても便利です。
この分野に歴史と実績のある「BOSS(ボス)」から、エフェクター未経験者でも操作できる、それでいて優れた音質を持ったマルチエフェクター「ME-90」がリリースされました。今回はこのBOSSの新製品「ME-90」に注目していきましょう。
ツマミ操作のマルチエフェクター BOSS ME-90 を弾いてみた!
名機と呼ばれた「ME-8(1995)」は、「メハチ」の愛称で親しまれた。「ME」は「Multiple Effects」の略
BOSSの歴代「ME」シリーズはこれまで30年以上、シンプルな操作感と必要十分なサウンドバリエーションが持ち味のマルチエフェクターとしてギタリストを支えてきました。
1973年に発足したBOSSは、CE-1 Chorus Ensemble(1976)、OD-1 Over Drive(1977)、DD-2 Digital Delay (1983)など、コンパクト・エフェクターの分野で次々と名作をリリースしていきました。そして満を持した1988年、さまざまなエフェクターから8種を厳選して1台にまとめたマルチエフェクター第1号「ME-5」がリリースされます。
「ME-50(2003)」から、MEシリーズはツマミ操作がメインとなった。
以後、MEシリーズは時代の流行やプレイヤーの動向に合わせてさまざまな姿を取ってきました。
専有面積はA4用紙の長さを1.5倍したくらい。ほどよく使いやすいサイズ感だがギターケースのポケットには収まらないので、運搬には別途ケースが必要。2.9 kgという本体重量は、平均的な大人の猫よりやや軽いくらい。軽量だが外殻は金属製で、かなり頑丈にできている。
そして今回登場した最新の「ME-90」は、ツマミ操作を軸とするシンプルで直感的なコントロール系、そしてフラッグシップモデルから継承した高音質、この二つを併せ持つ、初めての人から現場主義のプレイヤーまで使用できる懐の深いマルチエフェクターに仕上がっています。
整然と並ぶツマミとスイッチ。割り当てられた機能がそれぞれに記載されており、操作は迷いにくい。
ME-90はツマミの操作を中心とする、手を伸ばせば即座に音色を調節できるシンプルさとスピード感が大きなメリットです。ツマミは機能ごとに設置されておりコンパクト・エフェクターの状態に近く、パラメータを呼びだしたりメニューから操作を選んだりといったステップは不要。液晶画面が苦手な人でも直感的にサウンドメイクできます。またカラフルなLEDで、エフェクトのON/OFFといった状態が一目でわかります。
あらかじめ用意されている音色は9つのプリセット・バンクに4つずつ。作った音色は9つのユーザー・バンクに4つずつ、最大36個まで保存でき、簡単に呼び出すことができます。
演奏中は、8基のペダル・スイッチと右端のエクスプレッション・ペダルを操作します。音色の切り替え法にはパッチ単位で切り替える「MEMORYモード」、エフェクトを個別にON/OFFする「MANUALモード」の2つがあり、[MEMORY/MANUAL]ペダルで切り替えます。
BANKは読み出し専用の「プリセット・バンク(1~9)」、自由に書き込みができる「ユーザー・バンク(1~9)」を順番に選択する。選んだBANKの音色が、手前に並ぶ1番から4番に割り当てられる。[CTL]ペダルの効果はアイディア次第。
「MEMORYモード」は、「BANK▼/BANK▲」ペダルの操作でファクトリー・プリセットやユーザー・プリセットのバンクを選択し、1番から4番までのペダル・スイッチそれぞれに割り当てられるパッチを選んで使います。
ユーザー・バンクでは作成した音色の設定や保存が自由にできますから、近い感じで4つ並べることも、全く違う音色を並べることもできます。また[CTL(コントロール)]ペダルを活用することで、パッチごとに別の設定を仕込むこともできます。
全てのエフェクトのON/OFFを操作可能。
「MANUALモード」のペダル・スイッチは各エフェクトのON/OFFで、奥の3つに「PREAMP」「EQ/FX2」「REVERB」、手前の4つに「COMP/FX1」「OD/DS」「MOD」「DELAY」が割り当てられます。システム設定により[REV]スイッチでセンド/リターンのON/OFFにすることもできますが、このときリバーブのON/OFFは封じられます。
従来モデルよりもサイズ・アップし、操作性が向上したエクスプレッション・ペダル。
本体右側のエクスプレッション・ペダルは、通常はボリューム・ペダルとして機能します。つま先部分に体重を書けるように踏みこむとペダル・エフェクトが起動し、ワウやベンドなどさまざまな効果が得られます。
最上位機種「GT-1000」のAIRDプリアンプを継承している。
ME-90のオーディオ的な性能は、「サンプリング・レート48kHz、AD変換24bit、内部演算32bit float」というものですが、カンタンに言うと「一般的なオーディオプレイヤーよりも遥かにクリアな音質を持ち、音割れや音質劣化が起きにくい」ことを意味します。ME-90のこの部分での性能は、最上位機種「GT-1000」に及ばずながらも、上位機種「GX-100」と同じです。
この高性能な本体に、BOSSがこれまで世に放ってきたさまざまなエフェクターが内蔵されています。特にBOSSの独自技術、「AIRD」と「MDP」を駆使したプリアンプのサウンドは注目に値します。
- AIRD(Augmented Impulse Response Dynamics):アンプモデリングでは、ギターからスピーカーまでの各部位で起きる相互干渉まで追求する。それに加え、接続先の機器に応じて自身の挙動を微調整し、弾いた感触と出音の一致が実感できるリアリティを達成する。
- MDP(Multi-Dimensional Processing):多次元的信号処理。入力信号に対して多次元的な処理をする、デジタルにしかできない処理。アナログの再現や後追いという従来の役割から解放された、デジタルによってのみ初めて生み出される新しい音を作ることができる。
ME-90に収録されているプリアンプは、最上位機種「GT-1000」から厳選した11タイプです。クリーンからハイゲインまでバランス良く、また著名ギターアンプのモデリングもあるので幅広いサウンドに対応でき、またしっかり絞られているので選びやすくなっています。
エフェクトの接続順は基本この配置になっているが、各ブロックのどのエフェクト・タイプを選択するかによって自動的に順序が入れ替わるようになっている。なおSEND/RETURNはPREAMPの前段、後段を任意に選択可能。
エフェクターについては、オーバードライブやディストーション、コーラス、ディレイなどオーソドックスなものから名機のモデリング、タッチワウやアコースティック・シミュレータなど通好みのもの、またフィードバッカーやリング・モジュレータなどの飛び道具まで多岐に及びます。初めての人は、まずは好みのオーバードライブ/ディストーションを1つ探すことから始めましょう。
中にはスイッチを踏んでいる間だけ起動するエフェクトもありますが、これを使用するにはMANUALモードでは該当するエフェクトのペダルを、MEMORYモードでは現在選ばれているパッチのナンバー・ペダルを踏みます。
歪み系エフェクターの調節は「DRIVE」「TONE」「LEVEL」の3つに統一されており、シンプルに操作できます。
PITCH SHIFT とOVERTONE以外のモジュレーション・エフェクトでは、ダイレクト音の音量は固定です。
ディレイではエフェクト群の中に、タップテンポ設定モードに切り替える「TEMPO」が盛り込まれています。
こちらのエフェクトはそれぞれに2~3個の「MODE」が用意されています。「FX2」セクションでは「MOD」セクション収録エフェクトのほとんどが網羅されているほか、ディレイやブースターといった他セクションのエフェクトも収録されています。
Effect | MODE | 内容 |
PHASER | 1: NORMAL | 位相をずらした、クセのあるうねり |
2: SCRIPT | MXR「Phase 90」 | |
TREM/PAN | 1: TREMOLO | 音量を周期的に変化させる |
2: PAN | 音を左右に飛ばす | |
BOOST | 1: MID | 中音域に特徴のあるブースター |
2: CLEAN | 単体でもパンチが得られるブースター | |
3: TREBLE | ブライトな特性のブースター | |
DELAY | 1: STANDARD | ディレイ・タイム10〜800msの標準的なディレイ |
2: ANALOG | アナログディレイのマイルドなサウンド | |
3: TAPE | テープ・エコーを再現した揺らぎのあるディレイ | |
CHORUS | 1: MONO | 広がりと厚みのある揺らぎ |
2: STEREO | ステレオ2相コーラス | |
3: CE-1 | BOSS「CE-1」 | |
EQ | N/A | 3バンド・イコライザー |
このうち「BOOST」はプリアンプ後段からブーストさせるため、音色をほぼ変えずに音量を変化させることができます。
リバーブはシンプルで、ROOMの最小~最大、HALLの最小~最大、SPRINGの最小~最大を1基のツマミで操作します。最小に設定すると、リバーブOFFと同じ状態になります。
通常時にボリュームペダルとして機能するエクスプレッション・ペダルは、つま先方向に踏み込むことでペダル・エフェクトを起動できます。ワウについてはここで使用できるワウペダルのほか、上下それぞれのタッチワウ(COMP/FX1)、オートワウ(MOD)もあってワウ関連エフェクトが全種類揃っているあたり、BOSSのこだわりを感じさせます。
[EDIT]ボタンを押しながら[BANK]ペダルの上下で、ノイズサプレッサーの効き加減を調節します。最小に設定するとOFFになります。
バックパネルには、SEND/RETURN端子のほか、Gt. AMP/LINEスイッチもある。
ME-90の本体背面にはSEND/RETURN(センド/リターン) 端子が備わっていて、お気に入りのエフェクターをOD/DSの次、もしくはPREAMPの次に挿入できます。SEND/RETURNのON/OFFはパッチごとに設定できるほか、MANUALモードではREVスイッチをSEND/RETURNのON/OFFとして使用できます(この場合、リバーブのON/OFFはできなくなります)。
[MEMORY/MANUAL]ペダルを2秒以上押し続けると、クロマチック・チューナーが起動します。チューニング精度は0.1Cent、半音の1000分の1単位で測定できます。また435Hz~445Hzまでのキャリブレーション設定が可能なので、アコースティック・ピアノやブラスバンドなどとのアンサンブルも心配ありません。
ME-90はさまざまな場面での使用を想定していて、ギターアンプやオーディオインターフェイスなど出力先に最適化させたサウンドをアウトプットできるようになっています。
まずは背面の「Gt. AMP/LINE」スイッチです。ギターアンプに接続する時には「Gt.AMP」に、PAやDI、オーディオインターフェイスなどに接続するときには「LINE」にスイッチをセットします。LINEにセットした時にはスピーカーシミュレータが起動し、実際にスピーカーから出た音をマイクで録音した時のような生々しいサウンドがアウトプットされます。このスピーカーシミュレータに使用するIRデータは、PCから変更することも可能です。
ギターアンプに接続する際に効果を発揮するのが、システム設定で操作する「OUTPUT SELECT(アウトプット・セレクト)」です。「12″スピーカーを2発搭載した真空管コンボ・アンプのINPUT端子」や「真空管スタック・アンプのRETURN端子。キャビネットは12″スピーカー4発」など12種類から適切な番号を選ぶことで、ME-90内蔵AIRDプリアンプの性能をいかんなく発揮した良い音で演奏することができます。なお実際に使用するアンプがこの12種類の中になかった場合、スピーカーの仕様が近いものを選びましょう。
ディレイ・タイムとモジュレーション・レートはツマミの操作だけでなく、タップ・テンポによる設定が可能です。MANUALモードでは各エフェクトの、MEMORYモードではパッチナンバーのペダルを長押しして設定を始められますから、演奏中でも設定が可能です。また「DELAY」セクションの「TEMPO」を利用すると、タップ・テンポに対して付点8分音符で返ってくるディレイも設定できます。
別売のBluetooth Audio MIDI Dual Adaptor(BT-DUAL)。ME-90にコレを装着すると、Bluetooth接続ができるようになる。
ME-90は本体背面のUSB端子からPCに接続、あるいはオプションの「Bluetooth Audio MIDI Dual Adaptor(BT-DUAL)」を装着してスマートデバイスにBluetooth接続することで、オーディオの再生ができるようになります。ME-90のヘッドホン端子から音楽と自分のギターの音を一緒に聴けるようになるので、練習に便利です。
このほか専用アプリ「BOSS TONE STUDIO for ME-90(Windows/Mac)」、「BTS for ME-90(iOS/Android)」を利用することで、エフェクトのエディットや追加エフェクトの利用、設定の保存など深い使い方が可能です。このアプリを介して、WEBライブラリ「BOSS TONE CENTRAL」からプロ・ミュージシャンの作成した音色を無償ダウンロード、またオンライン・プラットホーム「BOSS TONE EXCHANGE」でユーザー同士のライブセット共有もできます。
PCとのUSB接続ではこれに加え、専用アプリ「ME-90 IR Loader(Windows/Mac)」で外部IRデータの読み込みができるほか、DAW環境との連携でオーディオインターフェイスとして使用できます。
専用アプリ「BOSS TONE STUDIO for ME-90(Windows/Mac)」や「BTS for ME-90(iOS/Android)」を介し、本体のみでは選択できないプリアンプやエフェクターを選ぶことができるようになります。これは特定のプリアンプ/エフェクターと交換する形で行なわれますが、交換はパッチ単位で行なうため、実質的に全てのプリアンプやエフェクターを利用できます。
「RECTI STACK」を以下のプリアンプに交換できます。
「S-BEND」を以下のエフェクターに交換できます。
「MUFF FUZZ」を以下のエフェクターに交換できます。
「OVERTONE」を以下のエフェクターに交換できます。
「+REVERB」を以下のエフェクターに交換できます。
「EQ」を以下のエフェクターに交換できます。
以上、BOSS「ME-90」をチェックしていきました。高性能なマシンに最上位機種「GT-1000」ゆずりのプリアンプやエフェクターを多数収録、ツマミ操作によりほぼすべての操作が完結できる、性能と使いやすさを突き詰めたマルチエフェクターです。
基本操作がシンプルにまとまっていること、また主だったエフェクターが全て網羅されていることから、エフェクターを初めて手に入れる人に強烈にお勧めできます。また、設営/撤収やサウンド調整にスピード感が求められる現場主義のギタリストにも大変良好です。
価格に不釣り合いな性能やシンプルな操作感が注目されやすい製品ですが、所々にBOSS開発陣の深いこだわりを散見できるのも面白いポイントです。ME-90はエフェクトの接続順が変更できない代わりに、MODの前段で使用できるディレイやPREAMPの後段で使用できるブースターなど、各セクションのエフェクトにはいろいろな使い方が想定されています。「MOD」セクションにディレイがあり、EQ/FX2にモジュレーション・エフェクトが充実しているので、ディレイにモジュレーション・エフェクトをかけるようなセッティングまで可能です。シンプルにもマニアックにも使用できるME-90、ぜひ実際にチェックしてみてください。
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