ツマミ操作のマルチエフェクター BOSS ME-90 レビュー!!

[記事公開日]2023/8/1 [最終更新日]2024/6/23
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

BOSS ME-90

エレキギターでいろいろな音を出すのに便利なのが、1台の中にいくつものエフェクターを内蔵する「マルチエフェクター」です。コンパクト・エフェクターを1つずつ買い足していくのはなかなか大変ですし、「アレが要る!」となってから調達するのも面倒な話です。しかしマルチエフェクターならクリーンな音もダーティーな音も、あんな音もこんな音も1台で実現できます。またいろいろなエフェクターの効果や使い方、組み合わせまでを体験できるので、エレキギターのサウンドメイキングを知るのにとても便利です。

この分野に歴史と実績のある「BOSS(ボス)」から、エフェクター未経験者でも操作できる、それでいて優れた音質を持ったマルチエフェクター「ME-90」がリリースされました。今回はこのBOSSの新製品「ME-90」に注目していきましょう。


ツマミ操作のマルチエフェクター BOSS ME-90 を弾いてみた!

BOSSマルチエフェクター「ME」シリーズとは?

BOSS ME-8名機と呼ばれた「ME-8(1995)」は、「メハチ」の愛称で親しまれた。「ME」は「Multiple Effects」の略

BOSSの歴代「ME」シリーズはこれまで30年以上、シンプルな操作感と必要十分なサウンドバリエーションが持ち味のマルチエフェクターとしてギタリストを支えてきました。

1973年に発足したBOSSは、CE-1 Chorus Ensemble(1976)、OD-1 Over Drive(1977)、DD-2 Digital Delay (1983)など、コンパクト・エフェクターの分野で次々と名作をリリースしていきました。そして満を持した1988年、さまざまなエフェクターから8種を厳選して1台にまとめたマルチエフェクター第1号「ME-5」がリリースされます。

BOSS ME-50 「ME-50(2003)」から、MEシリーズはツマミ操作がメインとなった。

以後、MEシリーズは時代の流行やプレイヤーの動向に合わせてさまざまな姿を取ってきました。

BOSS「ME-90」の特徴

専有面積はA4用紙の長さを1.5倍したくらい。ほどよく使いやすいサイズ感だがギターケースのポケットには収まらないので、運搬には別途ケースが必要。2.9 kgという本体重量は、平均的な大人の猫よりやや軽いくらい。軽量だが外殻は金属製で、かなり頑丈にできている。

そして今回登場した最新の「ME-90」は、ツマミ操作を軸とするシンプルで直感的なコントロール系、そしてフラッグシップモデルから継承した高音質、この二つを併せ持つ、初めての人から現場主義のプレイヤーまで使用できる懐の深いマルチエフェクターに仕上がっています。

ツマミ操作だけで、音作りが完結できる

整然と並ぶツマミとスイッチ。割り当てられた機能がそれぞれに記載されており、操作は迷いにくい。

ME-90はツマミの操作を中心とする、手を伸ばせば即座に音色を調節できるシンプルさとスピード感が大きなメリットです。ツマミは機能ごとに設置されておりコンパクト・エフェクターの状態に近く、パラメータを呼びだしたりメニューから操作を選んだりといったステップは不要。液晶画面が苦手な人でも直感的にサウンドメイクできます。またカラフルなLEDで、エフェクトのON/OFFといった状態が一目でわかります。

あらかじめ用意されている音色は9つのプリセット・バンクに4つずつ。作った音色は9つのユーザー・バンクに4つずつ、最大36個まで保存でき、簡単に呼び出すことができます。

8基のペダル・スイッチとエクスプレッション・ペダル



演奏中は、8基のペダル・スイッチと右端のエクスプレッション・ペダルを操作します。音色の切り替え法にはパッチ単位で切り替える「MEMORYモード」、エフェクトを個別にON/OFFする「MANUALモード」の2つがあり、[MEMORY/MANUAL]ペダルで切り替えます。

音色を一気に変える「MEMORYモード」

MEMORYモード BANKは読み出し専用の「プリセット・バンク(1~9)」、自由に書き込みができる「ユーザー・バンク(1~9)」を順番に選択する。選んだBANKの音色が、手前に並ぶ1番から4番に割り当てられる。[CTL]ペダルの効果はアイディア次第。

「MEMORYモード」は、「BANK▼/BANK▲」ペダルの操作でファクトリー・プリセットやユーザー・プリセットのバンクを選択し、1番から4番までのペダル・スイッチそれぞれに割り当てられるパッチを選んで使います。
ユーザー・バンクでは作成した音色の設定や保存が自由にできますから、近い感じで4つ並べることも、全く違う音色を並べることもできます。また[CTL(コントロール)]ペダルを活用することで、パッチごとに別の設定を仕込むこともできます。

エフェクトを個別に操作する「MANUALモード」

MANUALモード 全てのエフェクトのON/OFFを操作可能。

「MANUALモード」のペダル・スイッチは各エフェクトのON/OFFで、奥の3つに「PREAMP」「EQ/FX2」「REVERB」、手前の4つに「COMP/FX1」「OD/DS」「MOD」「DELAY」が割り当てられます。システム設定により[REV]スイッチでセンド/リターンのON/OFFにすることもできますが、このときリバーブのON/OFFは封じられます。

表現の幅を広げるエクスプレッション・ペダル

エクスプレッション・ペダル 従来モデルよりもサイズ・アップし、操作性が向上したエクスプレッション・ペダル。

本体右側のエクスプレッション・ペダルは、通常はボリューム・ペダルとして機能します。つま先部分に体重を書けるように踏みこむとペダル・エフェクトが起動し、ワウやベンドなどさまざまな効果が得られます。

プロの要求にも応えられる高品位なプリアンプ

AIRDプリアンプ 最上位機種「GT-1000」のAIRDプリアンプを継承している。

ME-90のオーディオ的な性能は、「サンプリング・レート48kHz、AD変換24bit、内部演算32bit float」というものですが、カンタンに言うと「一般的なオーディオプレイヤーよりも遥かにクリアな音質を持ち、音割れや音質劣化が起きにくい」ことを意味します。ME-90のこの部分での性能は、最上位機種「GT-1000」に及ばずながらも、上位機種「GX-100」と同じです。

この高性能な本体に、BOSSがこれまで世に放ってきたさまざまなエフェクターが内蔵されています。特にBOSSの独自技術、「AIRD」と「MDP」を駆使したプリアンプのサウンドは注目に値します。

  • AIRD(Augmented Impulse Response Dynamics):アンプモデリングでは、ギターからスピーカーまでの各部位で起きる相互干渉まで追求する。それに加え、接続先の機器に応じて自身の挙動を微調整し、弾いた感触と出音の一致が実感できるリアリティを達成する。
  • MDP(Multi-Dimensional Processing):多次元的信号処理。入力信号に対して多次元的な処理をする、デジタルにしかできない処理。アナログの再現や後追いという従来の役割から解放された、デジタルによってのみ初めて生み出される新しい音を作ることができる。

最上位機種ゆずりの「AIRDプリアンプ」

ME-90:アンプタイプ

ME-90に収録されているプリアンプは、最上位機種「GT-1000」から厳選した11タイプです。クリーンからハイゲインまでバランス良く、また著名ギターアンプのモデリングもあるので幅広いサウンドに対応でき、またしっかり絞られているので選びやすくなっています。

  • NATURAL:素直なクリーン・サウンド
  • X-CRUNCH:すべての弦で歯切れの良さが得られるクランチ・サウンド
  • X-HI GAIN:レンジが広く心地よい分離感が得られるハイゲイン・サウンド
  • MAXIMUM:ハイゲイン化したヴィンテージ・マーシャル
  • JUGGERNAUT:大型スタック・アンプによる究極のメタル・サウンド
  • X-MODDED:過激なゲインでも芯が残るコア・サウンド
  • TWIN COMBO:Fender「Twin Reverb」
  • TWEED COMBO:Fender「Bassman 4×10″ Combo」
  • DIAMOND:VOX「AC30」
  • BRIT STACK:Marshall「1959(プレキシ)」
  • RECTI STACK:MESA/Boogie「DUAL Rectifier」チャンネル2の MODERN モード

BOSSの誇る高品位なエフェクト群

ME-90:信号の流れ エフェクトの接続順は基本この配置になっているが、各ブロックのどのエフェクト・タイプを選択するかによって自動的に順序が入れ替わるようになっている。なおSEND/RETURNはPREAMPの前段、後段を任意に選択可能。

エフェクターについては、オーバードライブやディストーション、コーラス、ディレイなどオーソドックスなものから名機のモデリング、タッチワウやアコースティック・シミュレータなど通好みのもの、またフィードバッカーやリング・モジュレータなどの飛び道具まで多岐に及びます。初めての人は、まずは好みのオーバードライブ/ディストーションを1つ探すことから始めましょう。
中にはスイッチを踏んでいる間だけ起動するエフェクトもありますが、これを使用するにはMANUALモードでは該当するエフェクトのペダルを、MEMORYモードでは現在選ばれているパッチのナンバー・ペダルを踏みます。

COMP/FX1(コンプレッサー/エフェクト1)

コンプレッサー

  • COMP:リミッターとしても機能するコンプレッサー
  • WAH UP:ピッキングに対して上方向に反応するタッチワウ
  • SLOW GEAR:ボリューム奏法(バイオリン奏法)の効果が得られる
  • DEFRETTER:フレットレス・ギターをシミュレート
  • OCTAVE:1オクターブ下と2オクターブ下を追加。単音弾き専用だが、ワザと和音を弾いてバグらせる技も
  • HUMANIZER:ギターの音を人間の声みたいに変化させる
  • FEEDBACKER:ペダルを踏んでいる間だけフィードバックする
  • AC SIM:エレキの音をアコギの音に変化させる
  • SOLO:クリーン・ブースターとして機能
  • TUNE DOWN:ギターのチューニングを下げる
  • S-BEND:ペダルを踏んでいる間だけピッチを上げたり下げたりする

OD/DS(オーバードライブ/ディストーション)

オーバードライブ/ディストーション

歪み系エフェクターの調節は「DRIVE」「TONE」「LEVEL」の3つに統一されており、シンプルに操作できます。

  • BOOST:中域に特徴のあるブースター
  • OVERDRIVE:BOSS「SD-1」
  • T-SCREAM:Ibanez「TS-808」
  • CENTA OD:KLON「CENTAUR」
  • BLUES OD:BOSS「BD-2」
  • DISTORTION:BOSS「DS-1」
  • TURBO DS:BOSS「DS-2」のTURBO=ON
  • RAT DS:Proco「RAT」
  • METAL DS:BOSS「METAL ZONE MT-2」
  • CORE:BOSS「ML-2」。高速メタルリフに最適
  • MUFF FUZZ:Electro Harmonics「Big Muff π」

MOD(モジュレーション)

モジュレーション

PITCH SHIFT とOVERTONE以外のモジュレーション・エフェクトでは、ダイレクト音の音量は固定です。

  • PHASER:位相をずらした音を加えた、クセのあるうねり
  • FLANGER:ジェット機の上昇音/下降音のようなうねり
  • TREMOLO:音量を周期的に変化させる
  • CHORUS:広がりと厚みのある揺らぎ
  • VIBRATO:普通では得られない激しいビブラート効果
  • PITCH SHIFT:±2オクターブの範囲でピッチ変更
  • HARMONIST:音階に従ってハモる。単音弾き専用
  • ROTARY:回転スピーカーの効果
  • UNI-V:「Uni-vibe」のモデリング
  • DELAY:ディレイ・タイム10~800msの標準的なディレイ
  • OVERTONE:MDP仕様エフェクト。上下の倍音を追加して新しい音を作る

DELAY(ディレイ)

ディレイ

ディレイではエフェクト群の中に、タップテンポ設定モードに切り替える「TEMPO」が盛り込まれています。

  • STANDARD:ディレイ・タイム10~800msの標準的なディレイ
  • ANALOG:アナログ・ディレイのマイルドなサウンド
  • TAPE:テープ・エコーを再現した、揺らぎのあるディレイ。揺らぎ方は固定
  • WARM:暖かみのあるデジタル・ディレイ
  • MODULATE:心地よい揺らぎを加えたディレイ。揺らぎ方は固定
  • REVERSE:逆再生のディレイ
  • TEMPO:ペダルを踏む間隔でディレイ・タイム(テンポ)を設定する
  • TERA ECHO:ピッキングの強弱に応じて変化するMDP仕様エフェクト。
  • SHIMMER:ピッチを変えた音が混ざっていく
  • PHRASE LOOP:最長38秒まで録音できるルーパー
  • +REVERB:リバーブを組み合わせたディレイ

EQ/FX2(イコライザー/エフェクト2)

イコライザー

こちらのエフェクトはそれぞれに2~3個の「MODE」が用意されています。「FX2」セクションでは「MOD」セクション収録エフェクトのほとんどが網羅されているほか、ディレイやブースターといった他セクションのエフェクトも収録されています。

Effect MODE 内容
PHASER 1: NORMAL 位相をずらした、クセのあるうねり
2: SCRIPT MXR「Phase 90」
TREM/PAN 1: TREMOLO 音量を周期的に変化させる
2: PAN 音を左右に飛ばす
BOOST 1: MID 中音域に特徴のあるブースター
2: CLEAN 単体でもパンチが得られるブースター
3: TREBLE ブライトな特性のブースター
DELAY 1: STANDARD ディレイ・タイム10〜800msの標準的なディレイ
2: ANALOG アナログディレイのマイルドなサウンド
3: TAPE テープ・エコーを再現した揺らぎのあるディレイ
CHORUS 1: MONO 広がりと厚みのある揺らぎ
2: STEREO ステレオ2相コーラス
3: CE-1 BOSS「CE-1」
EQ N/A 3バンド・イコライザー

このうち「BOOST」はプリアンプ後段からブーストさせるため、音色をほぼ変えずに音量を変化させることができます。

REVERB(リバーブ)

リバーブ

リバーブはシンプルで、ROOMの最小~最大、HALLの最小~最大、SPRINGの最小~最大を1基のツマミで操作します。最小に設定すると、リバーブOFFと同じ状態になります。

PEDAL FX(ペダル・エフェクト)

通常時にボリュームペダルとして機能するエクスプレッション・ペダルは、つま先方向に踏み込むことでペダル・エフェクトを起動できます。ワウについてはここで使用できるワウペダルのほか、上下それぞれのタッチワウ(COMP/FX1)、オートワウ(MOD)もあってワウ関連エフェクトが全種類揃っているあたり、BOSSのこだわりを感じさせます。

  • WAH:ワウペダル
  • VOICE:ヒューマン・ボイス風のサウンド
  • +1 OCT:1オクターブ上までのピッチ変化
  • +2 OCT:2オクターブ上までのピッチ変化
  • -1 OCT:1オクターブ下までのピッチ変化
  • -2 OCT:2オクターブ下までのピッチ変化
  • FREEZE:ペダルを踏み込んだタイミングでフリーズ機能がかかる
  • OSC DELAY:ディレイの発振状態を作る
  • OD/DS:OD/DS エフェクト使用時にDRIVE量を操作
  • MOD RATE:MOD エフェクト使用時にRATE量を操作
  • DELAY LEVEL:DELAY使用時にディレイの音量を操作

NS(ノイズ・サプレッサー)

[EDIT]ボタンを押しながら[BANK]ペダルの上下で、ノイズサプレッサーの効き加減を調節します。最小に設定するとOFFになります。

さまざまな機能が充実

リアパネル バックパネルには、SEND/RETURN端子のほか、Gt. AMP/LINEスイッチもある。

外部エフェクトを接続可能なSEND/RETRUN 端子

ME-90の本体背面にはSEND/RETURN(センド/リターン) 端子が備わっていて、お気に入りのエフェクターをOD/DSの次、もしくはPREAMPの次に挿入できます。SEND/RETURNのON/OFFはパッチごとに設定できるほか、MANUALモードではREVスイッチをSEND/RETURNのON/OFFとして使用できます(この場合、リバーブのON/OFFはできなくなります)。

高機能なチューナーを装備

[MEMORY/MANUAL]ペダルを2秒以上押し続けると、クロマチック・チューナーが起動します。チューニング精度は0.1Cent、半音の1000分の1単位で測定できます。また435Hz~445Hzまでのキャリブレーション設定が可能なので、アコースティック・ピアノやブラスバンドなどとのアンサンブルも心配ありません。

出力先に応じた最適なアウトプットができる

ME-90はさまざまな場面での使用を想定していて、ギターアンプやオーディオインターフェイスなど出力先に最適化させたサウンドをアウトプットできるようになっています。

まずは背面の「Gt. AMP/LINE」スイッチです。ギターアンプに接続する時には「Gt.AMP」に、PAやDI、オーディオインターフェイスなどに接続するときには「LINE」にスイッチをセットします。LINEにセットした時にはスピーカーシミュレータが起動し、実際にスピーカーから出た音をマイクで録音した時のような生々しいサウンドがアウトプットされます。このスピーカーシミュレータに使用するIRデータは、PCから変更することも可能です。

ギターアンプに接続する際に効果を発揮するのが、システム設定で操作する「OUTPUT SELECT(アウトプット・セレクト)」です。「12″スピーカーを2発搭載した真空管コンボ・アンプのINPUT端子」や「真空管スタック・アンプのRETURN端子。キャビネットは12″スピーカー4発」など12種類から適切な番号を選ぶことで、ME-90内蔵AIRDプリアンプの性能をいかんなく発揮した良い音で演奏することができます。なお実際に使用するアンプがこの12種類の中になかった場合、スピーカーの仕様が近いものを選びましょう。

タップ・テンポでディレイ・タイムやモジュレーション・レートを操作

ディレイ・タイムとモジュレーション・レートはツマミの操作だけでなく、タップ・テンポによる設定が可能です。MANUALモードでは各エフェクトの、MEMORYモードではパッチナンバーのペダルを長押しして設定を始められますから、演奏中でも設定が可能です。また「DELAY」セクションの「TEMPO」を利用すると、タップ・テンポに対して付点8分音符で返ってくるディレイも設定できます。

PCやスマートデバイスとの接続で、可能性が広がる

BT-DUAL 別売のBluetooth Audio MIDI Dual Adaptor(BT-DUAL)。ME-90にコレを装着すると、Bluetooth接続ができるようになる。

ME-90は本体背面のUSB端子からPCに接続、あるいはオプションの「Bluetooth Audio MIDI Dual Adaptor(BT-DUAL)」を装着してスマートデバイスにBluetooth接続することで、オーディオの再生ができるようになります。ME-90のヘッドホン端子から音楽と自分のギターの音を一緒に聴けるようになるので、練習に便利です。

このほか専用アプリ「BOSS TONE STUDIO for ME-90(Windows/Mac)」、「BTS for ME-90(iOS/Android)」を利用することで、エフェクトのエディットや追加エフェクトの利用、設定の保存など深い使い方が可能です。このアプリを介して、WEBライブラリ「BOSS TONE CENTRAL」からプロ・ミュージシャンの作成した音色を無償ダウンロード、またオンライン・プラットホーム「BOSS TONE EXCHANGE」でユーザー同士のライブセット共有もできます。

PCとのUSB接続ではこれに加え、専用アプリ「ME-90 IR Loader(Windows/Mac)」で外部IRデータの読み込みができるほか、DAW環境との連携でオーディオインターフェイスとして使用できます。

《資料編》アプリを介して使用できるプリアンプとエフェクト

専用アプリ「BOSS TONE STUDIO for ME-90(Windows/Mac)」や「BTS for ME-90(iOS/Android)」を介し、本体のみでは選択できないプリアンプやエフェクターを選ぶことができるようになります。これは特定のプリアンプ/エフェクターと交換する形で行なわれますが、交換はパッチ単位で行なうため、実質的に全てのプリアンプやエフェクターを利用できます。

PREAMP

「RECTI STACK」を以下のプリアンプに交換できます。

  • TRANSPARENT:周波数レンジの広い非常にフラットな特性。エレアコに最適
  • BOUTIQUE:ピッキングのニュアンスを忠実に再現できるクランチ・サウンド
  • SUPREME:4×12″キャビネットの特性を活かしたクランチ・サウンド
  • JC-120:Roland「JC-120」
  • DELUXE COMBO:Fender「Deluxe Reverb」

COMP/FX1(コンプレッサー/エフェクト1)

「S-BEND」を以下のエフェクターに交換できます。

  • D-COMP:MXR「Dyna Comp」
  • RING MOD:内部発振器とギターの音を掛け合わせた、予測不能で破壊的なサウンド
  • POLY OCTAVE:重音や和音に対応したオクターブ・エフェクト
  • T.WAH DOWN:ピッキングに対して下方向に反応するタッチワウ
  • Single > Hum:シングルコイルの音をハムバッカーの音に変える
  • Hum > Single:ハムバッカーの音をシングルコイルの音に変える

OD/DS(オーバードライブ/ディストーション)

「MUFF FUZZ」を以下のエフェクターに交換できます。

  • CLEAN BOOST:単体でもパンチが得られるクリーンブースター
  • TREBLE BOOST:ブライトな特性のブースター
  • OD-1:BOSS「OD-1
  • TURBO OD:BOSS「OD-2」のTURBO=ON
  • GUV DS:Marshall「GUV’NOR」
  • ’60S FUZZ:Arbiter「FUZZFACE」
  • OCT FUZZ:1オクターブ上の音が追加されるオクターブ・ファズ

MOD(モジュレーション)

「OVERTONE」を以下のエフェクターに交換できます。

  • SCRIPT PHASER:MXR「Phase 90」
  • STEREO CHORUS:ステレオ2相コーラス
  • CE-1 CHORUS:BOSS「CE-1」
  • AUTO WAH:フィルターを周期的に変化させるオートワウ

DELAY(ディレイ)

「+REVERB」を以下のエフェクターに交換できます。

  • CHO+DELAY:コーラスを組み合わせたディレイ
  • WARP:ペダルを踏んでいる間だけ効果がかかる、幻想的な音
  • TWIST:ペダルを踏んでいる間だけ効果がかかる、アグレッシブな回転。ディストーションと組み合わせが推奨
  • GLITCH:ペダルを踏んでいる間だけ効果がかかる、機関銃のようなディレイ

EQ/FX2(イコライザー/エフェクト2)

「EQ」を以下のエフェクターに交換できます。

  • FLANGER:ジェット機の上昇音/下降音のようなうねり
  • VIBRATO:普通では得られない激しいビブラート効果
  • PITCH SHIFT:±2オクターブの範囲でピッチ変更
  • HARMONIST:音階に従ってハモる。単音弾き専用
  • ROTARY:回転スピーカーの効果
  • UNI-V:「Uni-vibe」のモデリング
  • OVERTONE:MDP仕様エフェクト。上下の倍音を追加して新しい音を作る

以上、BOSS「ME-90」をチェックしていきました。高性能なマシンに最上位機種「GT-1000」ゆずりのプリアンプやエフェクターを多数収録、ツマミ操作によりほぼすべての操作が完結できる、性能と使いやすさを突き詰めたマルチエフェクターです。

基本操作がシンプルにまとまっていること、また主だったエフェクターが全て網羅されていることから、エフェクターを初めて手に入れる人に強烈にお勧めできます。また、設営/撤収やサウンド調整にスピード感が求められる現場主義のギタリストにも大変良好です。

価格に不釣り合いな性能やシンプルな操作感が注目されやすい製品ですが、所々にBOSS開発陣の深いこだわりを散見できるのも面白いポイントです。ME-90はエフェクトの接続順が変更できない代わりに、MODの前段で使用できるディレイやPREAMPの後段で使用できるブースターなど、各セクションのエフェクトにはいろいろな使い方が想定されています。「MOD」セクションにディレイがあり、EQ/FX2にモジュレーション・エフェクトが充実しているので、ディレイにモジュレーション・エフェクトをかけるようなセッティングまで可能です。シンプルにもマニアックにも使用できるME-90、ぜひ実際にチェックしてみてください。

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