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2016年に登場したBOSS「GT」シリーズの最新マルチエフェクター「GT-1」。GTとMEシリーズの中間のような、今までに無かったコンセプトで生み出されたマルチエフェクターとなっている本機は、小型軽量でかつ音色に妥協がなく、あらゆるギタリストに対応できる、まさにマルチな逸品となっています。今回はこの「BOSS GT-1」に注目し、その特徴や実際のサウンドについて紹介していきたいと思います。
コンパクトエフェクターで培った音作りの技術をそのまま落とし込んだボスのマルチエフェクターは、MEシリーズ初号機より始まります。その後、スタジオ用のSEシリーズ、Roland GP-100などと並行して、90年代の中期にはギター用のフラッグシップモデル、GTシリーズが発売されます。GTは3、5、6、8などとバージョンアップを積み重ね、GT-100を経て、デスクトップ用のGT-001、新たに登場したGT-1と受け継がれてきました。
あくまでもエフェクターを多数内蔵しただけというコンセプトの、シンプルなMEシリーズに比べて、GTはUSBでの接続に対応しCOSMを用いた強力なアンプモデリングが搭載されており、ライブからDTMにまで幅広く使えるオールラウンドなマシンを目指して開発されてきた経緯があります。しかし、昨今MEシリーズにもUSBは標準搭載、COSM内蔵のアンプモデリングも当たり前となり、サウンド面、機能面での垣根は従来ほど感じられません。現在、両シリーズの差は主に操作性の違いであり、アンプモデリング、パッチ管理を主体とするのか(GTシリーズ)、エフェクトごとのアナログライクな操作感を重視するのか(MEシリーズ)、といった差のみになりつつあります。
BOSS GT-100
元来、MEシリーズは初心者向けのシンプルなもの、GTシリーズは中上級者向けのフラッグシップ製品というコンセプトの差があり、機能、音質、価格帯において差別化が図られていました。GT-1はその間を行く製品ととらえることができ、そのシンプルさと小型軽量は過去のMEシリーズを彷彿させるものでありながら、サウンド面においてはGT-100と同等のエンジンを積むことで、BOSS最高峰を実現しています。
その立ち位置は単純にGT-100を小型にした弟分と位置づけることもできますが、2012年発売のGT-100をハイエンドマシンよりもむしろリーズナブルな路線に寄せて改めて再発させてきた、と捉えることもできます。GT-100の音が小型軽量で安価に手に入ると思えば、このGT-1の価値はわかりやすいでしょう。
BOSS GT-100 – Supernice!エフェクター
BOSS GT-1をギター博士が弾いてみた!
アンプを通さず、GT-1のライン出力から直接レコーディング。GT-1本来の持つサウンドがよくわかる
アンプ、エフェクトともに、BOSSならではのオリジナルサウンドを踏襲したものから、他メーカーの有名な定番マシンのモデリングが数多く搭載されています。
アンプモデリングではRolandが20年も改善を続けてきたおなじみのCOSM。オリジナルのモデル8種類のほか、既存の銘機をモデリングしたリアルな20種近くのアンプサウンドを搭載しています。
エフェクト群は必要にして十分の量。BOSSコンパクト直系の歪みは、他社製のモデリングも含め充実の22種類。ディレイ7種、リバーブ8種、その他のエフェクトもコンプレッサー系、コーラス・フェイザーなどの揺らし系、シミュレーター系、もろもろ含め20種以上を搭載。その中には、GT-100 ver2.0より投入されたMDP(Multi-Dimensional Processing)技術を使った新たなエフェクトも搭載しています。
付属のペダルに割り当てられるエフェクトは、ワウだけでCrybaby、VOXをはじめ5種類。その他、ワーミー(ピッチベンド)はもちろん、アナログシンセのようにレゾナンスを動かす独特のワウも装備。また外部スイッチ、ペダルを増設することで、操作性をさらに上げることも可能です。
歪みペダル22種類(MID BOOST、CLEAN BST 、TREBLE BST 、CRUNCH、NATURAL OD、WARM OD、FAT DS、LEAD DS、METAL DS、OCT FUZZ、A-DIST、BLUES OD、OD-1、T-SCREAM:Ibanez TS-808モデリング、TURBO OD:BOSS OD-2風、DISTORTION、RAT:Proco RATモデリング、GUV DS:Marshall GUV’NORモデリング、DST+:MXR DISTORTION+モデリング、METAL ZONE:BOSS MT-2モデリング、60S FUZZ:FUZZFACEモデリング、MUFF FUZZ)
ディレイ7種類(STANDARD、PAN、REVERSE、ANALOG、TAPE、MODULATE、TERA ECHO)
リバーブ8種類(AMBIENCE、ROOM、HALL1、HALL2、PLATE、SPRING、MODULATE、DELAY)
PREAMP
NATRL CLN(NATURAL CLEAN)
FUL RANGE(FULL RANGE)
CB CRUNCH(COMBO CRUNCH)
ST CRUNCH(STACK CRUNCH)
HiGAIN STK(HiGAIN STACK)
POWER DRV(POWER DRIVE)
XTREM LD(EXTREM LEAD)
CORE MTL(CORE METAL)
JC-120:Roland JC-120モデリング
CLEAN TWIN:Fender Twin Reverbモデリング
PR CRUNCH:Fender Pro Reverbモデリング
TWEED:Fender Bassman 4×10”Comboモデリング
DxCRUNCH:Fender Deluxe Reverbモデリング
VO DRIVE:VOX AC-30TBのドライブサウンドをモデリング
VO LEAD:VOX AC-30TBのリード・サウンドをモデリングし
MATCH DRV:Matchless D/C-30の左インプットをモデリング
BG LEAD:MESA/Boogieコンボ・アンプのリード・サウンドをモデリング
BG DRIVE:MESA/BoogieのTreble SHIFT Swをオンにしたときのサウンドをモデリング
MS1959 I:Marshall 1959のインプットIに入力したサウンドをモデリング
MS1959 I+II:Marshall 1959のインプットIとIIをパラレル接続したサウンドをモデリング
R-FIER VTG:MESA/Boogie DUAL Rectifierのチャンネル2 VINTAGEモードをモデリング
R-FIER MDN:MESA/Boogie DUAL Rectifierのチャンネル2 MODERNモードをモデリング
T-AMP LD:Hughes & Kettner TriampのAMP3をモデリング
SLDN:Soldano SLO-100モデリング
5150 DRV:Peavey EVH5150のリード・チャンネルをモデリング
BGNR UB:Bogner Uberschallのハイ・ゲイン・チャンネルをモデリング
ORNG ROCK:ORANGE ROCKERVERBのダーティー・チャンネルをモデリング
FX1 / FX2
COMPRESSOR(コンプレッサー)
LIMITER(リミッター)
T. WAH(タッチ・ワウ)
GRAPHIC EQ(グラフィック・イコライザー)
PARA.EQ(パラメトリック・イコライザー)
PHASER(フェイザー)
FLANGER(フランジャー)
TREMOLO(トレモロ)
ROTARY(ロータリー)
FEEDBACKER(フィードバッカー)
TONE MODIFY(トーン・モディファイ)
GUITAR SIM(ギター・シミュレーター)
AC.GTR SIM(アコースティックギター・シミュレーター)
SLOW GEAR(スロー・ギア):ボリューム奏法
OCTAVE(オクターブ):1オクターブ下、2オクターブ下の音を付加
PITCH SHIFTER(ピッチ・シフター):± 2 オクターブ変化
HARMONIST(ハーモニスト):ダイアトニック・スケール上でのハーモニーを作成
OVERTONE(オーバートーン):MDP技術により、新たな倍音を加えて原音にない響きと厚みを作成
AC.PROC. (アコースティック・プロセッサー);エレアコ・ギターなどのピックアップの出力音を、マイク録りしたかのような豊かな音に変化
UNI-V:Uni-vibe モデリング
VIBRATO(ビブラート)
CHORUS(コーラス)
SUB DELAY(サブ・ディレイ)
PEDAL FX
CRY WAH:70年代CRYBABY
VO WAH:VOX V846
FAT WAH
LIGHT WAH
7STR WAH:7弦ギターやバリトン・ギター対応
RESO WAH:アナログシンセのフィルター系
PEDAL BND:ピッチ・ベンド
GT-1 パラメーターガイド / サウンドリスト – BOSS公式サイト
MDPとは、入力された信号を多角的に分析して分解、要素ごとに別個のエフェクトを適用するRoland独自の技術。TERA ECHO、A-DRIVE、OVERTONEなどが、MDP技術を利用したエフェクトです。TERA ECHOはピッキングの強弱に連動する独特の残響を伴う、ディレイともリバーブともつかない幻想的なもので、まさにMDP技術の賜物といえるサウンド。また、その他にもBOSSならではの定評ある空間系、CH、CEシリーズや、DDシリーズの音色も完備。どのエフェクトもステレオ出力に対応し、ステレオディレイ、パンニングディレイ、リバースディレイなど、ステレオならでのディレイモードも多岐に渡ります。
マルチエフェクターで定番のアコースティックシミュレーターはもちろん搭載。その他、無数のシミュレーターを収録し、ソリッドギターをホロウボディのフルアコ風に変えてしまうもの、あるいはシングルコイルをハムバッキングピックアップのように変えるもの、エレキに付けられたピエゾピックアップの音をアコースティックギターの音に変化させるものなど、これ以上の選択肢がないほど多数のシミュレーターを搭載しています。
BOSSのマルチエフェクターの中では、元より評価の高かったクリーントーンはもちろん、クランチ系の音も非常にパンチの効いた、生々しい音色を実現できます。以前よりマルチエフェクターの弱点でもあったハイゲインサウンドも、5種類以上のアンプ、多数のエフェクターモデルを搭載。十分にゲインを上げても太さと芯がしっかり残るハイゲインサウンドです。
アンプの編集もこれだけできる
小型軽量を目指して開発されているため、外装にはスイッチ3種とペダルが1つのみ。3つあるスイッチのうち、右側にあるCTL1スイッチは、任意でエフェクトを割り当てられる、使い勝手の良い機能を備えています。自分の好きなエフェクトを割り当てたり、ディレイタイムのタップ入力や、パッチの音量変化、ソロ時でのブーストのオンオフなど、およそ欲しい機能はほぼ割り当て可能。また、仮想エクスプレッション・ペダル・システムという機能は、オンオフしか出来ない普通のスイッチに、エクスプレッションペダルを踏み込んだような動作を割り当てるもの。これを利用し、スイッチでワウやワーミーペダルの操作を限定的ながら行うこともできます。
スイッチ関係はBOSS純正のスイッチやペダルを増設でき、最大スイッチ二つ(CTl2、CTL3)かペダル一つを増設できます。
左から:OD(歪み)、PrA(プリアンプ)、NS(ノイズゲート)、FX1、DLY(ディレイ)、FX2、FV(フットボリューム)、REV(リバーブ)、MST(マスター)、CT1(CTL1スイッチ)、EX1、…と続く
外部エクスプレッション・ペダル端子に割り当てるFXを設定できたり、ASSIGN 1 〜 6 を使って複数のエフェクトON/OFFを割り当て可能
上の画像のように、使われているエフェクトモデルはグラフィカルで分かりやすく表示。接続順はどのようにでも変更可能で、標準的ではない順番も可能なので、たとえば歪み→ワウ、ディレイ→歪みなど、さまざまなサウンドを求めて実験できます。
ここ10年ほどですっかりマルチエフェクターの定番機能となったルーパー機能も完備。最大32秒までのフレーズを録音、オーバーダブし、ループ再生できます。
右端のエクスプレッションペダルにはワウ、ワーミーの2大ペダル機能、アナログシンセサイザーのような飛び道具系の音も創出可能。また、パッチで使われる全エフェクトのパラメータを割り当てることもできるので、たとえばディレイタイムなどをペダルに割り当てリアルタイムで制御、プリアンプのゲインを足で制御することもできます。
チューナーは[▼][▲]ペダルの同時押し(ルーパーは[▲][CTL1]ペダルの同時押し)と、操作に慣れが要るところではありますが、視認性、精度も良好で必要十分なものです。
チューナーの精度も高い
PAのミキサーに直接接続してモデリングアンプのように使用、あるいは、通常のコンボアンプのリターン端子に接続して、プリアンプとして使用することで、GT-1のサウンドを全くそのままに利用できます。通常のマルチエフェクター的使用法として、アンプとギターの間に挟んで使用するオーソドックスな接続もOK。
特筆すべきは、これらの接続方法に応じたモードが専用に用意されているところ。上の画像で分かる通り、接続方法に適した出力レベルをモードで制御できます。RolandらしくJC-120は特別枠。ミキサーに直接接続の場合はLINE/PHONESを使用します。
USB端子からはPCにダイレクト接続でき、録音用のアンプシミュレーターとして使用できるほか、「BOSS TONE CENTRAL」からの音色のダウンロードに使用します。練習用としての機能も充実しており、iPhoneや各種オーディオプレーヤーの接続に対応したAUX入力とヘッドホン端子を備えています。
今までのGTシリーズに見られなかった小型軽量路線の製品であり、本体はわずか1.3kg、幅もわずかに30cm程度と、ギターのギグバッグや、ちょっとしたトートバッグ程度にも入ってしまう大きさです。電池駆動も可能なので、何かにつけてカバンに忍ばせて行くという気軽な使い方もできます。そして、実売価格がせいぜい2万円程度と、これほどの機能と使いやすさを備えながら、圧倒的な安値を実現。あるいは、競合他社であるZOOMなどの躍進を見ると、この価格で勝負する必要があったのかもしれませんが、ユーザーとしては非常に嬉しい価格帯でしょう。
高品位なプリセットにはそれぞれ簡易的にジャンル分けが施されており、どのようなジャンルでどのような音が登場するのかを、なんとなく把握することができます。
一昔前まではマルチエフェクターのプリセットなどエフェクトが掛かりすぎた超厚化粧なサウンドばかりでした。それに比べるとGT-1のプリセットには実戦に使えるものが揃っています。上の試奏動画においてもプリセットが多数登場しますが、その質の高さが感じ取れるでしょう。
ジャンル毎のバッキングに使うアンプモデル、乾いた歪みバッキングに掛かるリバーブの使い方、イコライザーで音のエッジを出す方法など、各種エフェクトの使い方は特に音作りの初心者ギタリストにとって嬉しい教材となり得ます。プリセットのサウンド一覧とカテゴリ分けは、次のサウンドリストの最終ページから確認できます。
GT-1 パラメーターガイド / サウンドリスト – BOSS公式サイト
また、BOSS公式のサウンドライブラリ「BOSS TONE CENTRAL」からは、世界中のプロギタリストが実際に制作したGT-1用のパッチをダウンロードすることもできます。
BOSS GT-1、色々と試させてもらったが、これまたとても素晴らしいマルチエフェクターぢゃのぅ!
まず音!BOSSエフェクトの技術をこれでもかと詰め込んでおり、それらを最大限に生かせるように豊富な出力バリエーションが用意されているんぢゃ!
例えばマルチエフェクターをアンプに繋いだ場合、アンプの中にアンプがあるような奥まった印象を持つ人もいるかもしれん。しかしGT-1は、OUTPUT SELECTで接続先に合った信号を送ることができ、様々な現場でヌケよくハリのある音を出すことが出来るんぢゃ!日本のライブハウスやスタジオに必ずといっていいほど置いてあるジャズコ(Roland JC-120)専用に出力があるのも嬉しいのう!
アンプモデリングを含めたエフェクト全てをスイッチ一つで切り換えることが出来るので、コンボアンプにコーラスをかけた爽やかなサウンドから、一気にスタックアンプをブーストさせた超ハイゲインサウンドに変化させることだって出来るゾィ!
そして、数種類のエフェクトを同時に変えるわけではなく、ある音色に一つだけエフェクトを加えたいという時には、パッチは変えず[CTL]スイッチにその加えたいエフェクトを割り当てることで、コンパクトエフェクター感覚でも使えるんぢゃ!例えばギターソロの時にブースターを、カッティングからアルペジオに変わる時にディレイを、という風にな。
フットペダルも付いているので、ボリュームコントロールやワウペダルなど足を使った多彩な操作も可能になっておる。
何よりこのサイズと重量、ギグバックにも入ってしまうようなこの携帯性はとても魅力的じゃな。ステージにスタジオにといつでも気軽に持ち運べるゾィ。価格もお手頃なので、初心者の人が色んなエフェクターの効果を知ってみたいという場合にももってこいぢゃの!
高いクオリティをコンパクトに収め、今までにないコンセプトで生み出された製品。これまで、BOSS GTシリーズの音と豊富なエフェクト群は、高価な値段と重い筐体とのトレードオフで手に入るものでした。そこを崩して、安価かつ小型軽量で出てきたGT-1は、あらゆるシチュエーションで使える優秀なモデル。メインでガンガン使うのはもちろん、サブとしても持っておくだけで何かと便利な一台です。
※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。
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