おすすめのオーディオインターフェイス機能付マルチエフェクター

[記事公開日]2021/5/19 [最終更新日]2025/8/12
[ライター]森多健司 [編集者]神崎聡

オーディオインターフェイス機能付きマルチエフェクター Line 6のマルチエフェクター/ギター・プロセッサー「HX Stomp」

ギターの音や、その他のアナログ楽器の音をPCに取り込むために欠かせないオーディオインターフェイス。単品では1万円程度のものから数十万もする高級品まで様々な製品がありますが、ギターのマルチエフェクターにその機能が搭載されているものが多数存在することはご存じでしょうか。レコーディング機材としても活躍する、オーディオインターフェイスとしての利用が可能なマルチエフェクターについて特集しましょう。

オーディオインターフェイスって何?

HX Stompの接続端子。USB端子からパソコンとケーブルで繋いで、オーディオインターフェイスとして動作させることができる

オーディオインターフェイスとは、エレキギターから出力されたアナログの信号を、コンピューターで処理できるようデジタルの信号に変換する、アナログデジタルコンバーター(変換器)とも呼べる機能を持った機器のことです。オーディオインターフェイスが単なるコンバーターと違う点は、オーディオ用途に特化している点であり、ほぼ全ての製品にマイクプリアンプが内蔵され、製品によっては複数の入出力を利用した多チャンネルの録音機能、ミキサーの機能を持ち合わせていたりするものもあります。

PCにも、外部の音声を取り入れるMIC INやLINE INが付いているものは珍しくありませんが、これはあくまで取り込めるというだけのことで、オーディオ用途としては到底実用レベルにありません。

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ギターのマルチエフェクターに搭載されたオーディオインターフェイス機能は、音を取り込みつつそれをリアルタイムで聴く、そしてPCからの音源の再生という一連の部分をカバーしているものが一般的です。PC専用エディターやアプリと連携して細かく音作りできるモデルも多く登場しています。

オーディオインターフェイス付マルチエフェクターを使うメリット

パソコンに繋いで手軽に録音できる

HX Stompとパソコン HX Stompをパソコンに繋いだ様子。手軽に録音開始できる

一番のメリットは、やはり手軽であることでしょう。特にパソコンでの録音経験があまりない初心者が、「オーディオインターフェイスは持っていないがマルチエフェクターならある」という状態であることは多く、こういう場合にPCへの録音を気軽に試すことができます。金銭的にも余計な出費を抑えられ、気軽に宅録に踏み込めるのは、非常に大きな利点です。

ギター博士

エレキギター博士「DTM(パソコンで音楽制作)する場合、オーディオインターフェイスは必須アイテムなんじゃが、特にギタリストが『ギターだけ録音したい』っていう場合、この機能を搭載したマルチエフェクターがあれば、PCに直接つなぐだけですぐに制作をはじめられる。これは大きなメリットじゃな!」

音質が良いことが多い


Line 6のマルチエフェクター/ギター・プロセッサー「POD Go Wireless」

マルチエフェクターそのもののインターフェイス機能を使うことで、その機器本来の音をロス無くそのままデジタル信号に変換できるため、音質劣化を最小限に抑えられます。オーディオインターフェイス専用機をすでに所有している中上級者の場合は、エフェクターにインターフェイス機能が内蔵されているかどうかはあまり問題にならないケースが多いものです。

しかし、アンプモデリングを含めしっかりと音を作り込んだ場合、外部のインターフェイスに一旦アナログで送るより、直接デジタルでPCに送り込む方が、より誤差の少ない音で録音できます。特にギタープロセッサー系高級機に内蔵されるインターフェイス機能は、専用機のそれを凌ぐほどの高音質を実現している場合もあり、これを使わない手はないと言えます。

オーディオインターフェイスとアンプモデリング

アンプとキャビネット、そしてマイキングをシミュレートできる機能を一般的にアンプモデリングと呼び、エフェクター単体で「アンプを鳴らしてマイクで拾った音」に近いものを出力するために、なくてはならないものです。エフェクターに内蔵されたオーディオインターフェイス機能は、出力された音をそのままダイレクトにレコーディングするため、アンプモデリングが必須。アンプモデリング機能のないエフェクターに、オーディオインターフェイスが付いていないものが多いのはそれが理由です。

活用シーン

宅録での活用(DAWとの接続例)

オーディオインターフェイス機能付きマルチエフェクターは、マルチエフェクター → パソコンとUSBケーブル1本で接続でき、複雑な配線や別機材の用意が不要。接続方法もシンプルです。
DAW(Logic Pro、Cubase、Studio Oneなど)のオーディオ設定で「入力デバイス」と「出力デバイス」をマルチエフェクターに設定すれば、マルチエフェクターで作ったギターサウンドをモニタースピーカーやヘッドホンからリスニングすることができます。

配信での活用(SNS・YouTube Liveなど)

ライブ配信では、オーディオインターフェイス機能付きマルチエフェクターを使うと、ギターサウンドとマイク音声をまとめて高音質で送信できます。
接続の流れは宅録とほぼ同じですが、配信ソフト(YouTube Liveなど)側で「オーディオ入力デバイス」をマルチエフェクターに設定します。ステレオ配信なら「ステレオ」、トークを重視したい場合や回線負荷を下げたい場合は「モノラル」に設定すると安定します。

音声バランスを取るには、配信ソフトのメーターを確認しながらギターとマイクの音量差を-6dB以内に収めるのが目安です。過大入力を避けるため、マルチ側の出力レベルも少し余裕を持たせましょう。

スマートフォンに直接繋げるモデルも!

NUX MG-300 MKIIなどのモデルでは、PC だけではなくスマートフォンでも USB オーディオインターフェイスとして使用できることをアピールしています。
また製品によっては、公式に「スマホ対応」と記載がなくともスマートフォンに対応できるという報告もあるため、所有しているマルチエフェクターにスマホ対応の有無が書かれていない場合でも、試してみる価値はあります。

オーディオインターフェイス機能つきマルチ一覧

オーディオインターフェイス機能の有無に価格帯はあまり関係なく、低価格帯から最高級機まで幅広く存在します。
また近年のマルチエフェクターのほとんどがオーディオインターフェイス機能を搭載しています。
ここでは特に自宅での使用に適したモデルを中心に紹介していきます。

ZOOM GCE-3

ZOOM GCE-3

GCE-3は、マルチエフェクターというよりもマルチエフェクター機能のついたオーディオインターフェイスという、ユニークな立ち位置で登場したZOOMの製品。従来のZOOMの機材で可能だった機能や、サウンド面はほぼそのまま継承しており、Guitar Labという専用のPC用エディターにも対応します。
片手に収まって余りある小さなサイズは、ノートパソコンで動かす前提から低負荷を謳っており、出力にはヘッドフォン端子のみという潔い仕様。ZOOMらしく低価格で手が届きやすく、CUBASE LEが付属しているので手に入れたその日から宅録にチャレンジできます。

ZOOM GCE-3 – Supernice!エフェクター

ZOOM MS-80IR+

ZOOM MS-80IR+

ZOOM MS-80IR+ は、コンパクトながら多彩な機能を詰め込んだアンプシミュレーター/マルチエフェクター。ZOOMのコンパクトマルチ「MSシリーズ」の直感的な操作性を継承しつつ、23種類のアンプモデルとIRローダー機能を搭載。宅録でもリアルなアンプサウンドが得られます。

アンプ + キャビネットシミュレーターのほかに、アンプサウンドを整える12種類のエフェクトを搭載。最大3種類(アンプ含めて)を同時使用可能、マルチエフェクターというよりアンプシミュレーターの性質が強い製品です。

USBオーディオインターフェイス機能により、PCやスマホと直接接続してのDAW録音や配信にも対応。低レイテンシーでモニタリングできるため、宅録環境をシンプルに構築できます。
ステレオ入出力、外部コントロール端子も装備しており、特にモバイル環境では大いに活躍するでしょう。

ZOOM MS-80IR+ – Supernice!エフェクター

BOSS GT-1

BOSS GT-1

GT-1は、エフェクター界の王者 BOSS が生み出したベストセラーモデル。音質、サイズに価格のバランスが非常に良く、GT-100の音質や使い勝手をベースとしながらも、ボディの質感などをやや落とすことで低価格を実現しました。
搭載された4つのフットスイッチとエクスプレッションペダルは、通常の演奏において必要十分であり、幅30cm、1.3kgの小型軽量で持ち運びにも苦になりません。USBでPCと接続して専用ソフトウェアのTONE CENTRALとの連携ができ、オーディオデバイスとして設定することでオーディオインターフェイスとしても機能します。
操作性などがしっかりと練られており、立ち位置はライブ向けの機材ではありますが、家に置いて宅録のお供としても十二分に活躍できます。

BOSS GT-1000/GT-1000CORE

BOSS GT-1000

BOSSのフラッグシップ・マルチエフェクター「GT-1000」。BOSSがリリースするギタープロセッサー型の高級機で、上に挙げたGT-1の最終進化形とも呼べる大型のエフェクターです。
自社製の高品質なアンプモデル、BOSSの得意分野でもある優れた空間系エフェクトなど、総数145ものエフェクトを内蔵。Bluetoothによるスマートフォンからの設定や、非常に柔軟に使い方を設定できるフットスイッチなど、操作性という点では練り尽くされており、多機能でありながら、あらゆるシチュエーションにおいてトップクラスの使いやすさを誇ります。

USB接続においてオーディオインターフェイス、あるいはMIDIインターフェイスとしても機能します。同価格帯の大型機と比べると、3.6kgの重量は比較的軽く、サイズが小型に抑えられているのも魅力的な点です。

Line 6 POD Expressシリーズ

POD Expressシリーズ

Line 6 POD Express Guitar は、シンプルな操作性と高音質を両立したコンパクトマルチエフェクターです。
ノブ中心の直感的なUIを採用し、アンプ、歪み、モジュレーション、ディレイ、リバーブなど厳選されたエフェクトを素早く呼び出せます。小型ながらLine 6ならではの豊かなアンプモデリングを搭載、ライブにも十分に対応できるサウンドクオリティです。

USBオーディオインターフェイス機能により、PCやiOSデバイスと直接接続して高音質録音が可能。バスパワー駆動にも対応しており、モバイル環境や宅録でも手軽に使えます。軽量コンパクトなボディに必要十分な機能を凝縮した、初心者から経験者まで扱いやすい1台です。

Line 6 HX Stomp/HX Stomp XL/Helix LT/HELIX

HX Stomp XL

かつてPODで革命を起こしたLine 6のギタープロセッサー「Helix」。シリーズには通常のコンパクトエフェクターに近い感覚で使える「HX Stomp」、HX Stompにフットスイッチを増やして操作性を飛躍的に向上させた「HX Stomp XL」、大型のHelix(Floor、Rack)に、ディスプレイを削って少し小型に抑えた「Helix LT」の3種が展開されていますが、70を越えるアンプモデリングや200種類近いエフェクト数やその音質にほとんど差はなく、使い勝手と用途によって使い分ける前提で開発されています。

「Helix」と「Helix LT」については、タッチ・フットスイッチやハンズフリーでのエフェクト設定など、独特の操作性を持っており、購入の際の決め手ともなり得るでしょう。3製品とも24bit、96khz仕様のUSBオーディオインターフェイス、MIDIインターフェイスとして動作します。オーディオインターフェイス使用時には通常の録音だけでなく、リアンプも可能です。


Line 6 HX Stomp XL:オーディオインターフェイス機能はもちろん、フットスイッチの操作によってパソコンのキーボード操作ができるなど、可能性を秘めた機材となっている。

Line 6 POD Go Wireless

POD Go Wireless

「POD Go」は、Line 6のフラッグシップモデル「Helix」のサウンドを継承し、最高レベルのサウンドクオリティを使い勝手よく、手に入れやすい価格で実現したアンプ/エフェクト・プロセッサー。そして POD Go にワイヤレス機能を搭載したのがこの「POD Go Wireless」です。

ワイヤレス機能によってギターケーブルから解放され、自由なパフォーマンスを実現。パソコンとUSB接続した場合は、ギターケーブルを1本も用いずに演奏・録音が可能です。

NUX MG-300/MG-30

NUX MG-300

中国のエフェクターブランドNUXから2020年10月にリリースされたマルチエフェクター「MG-300」。25種類のアンプモデル、24種類のIRキャビネットシミュレーター、4種類のマイク、30種類以上のエフェクト、ルーパー機能/ドラムトラック/リアンプ機能/オーディオインターフェイス機能など多彩な機能を収録。接続端子が少し頼りない印象ですが、スタンダードな単体のコンパクトペダルと同等の価格という高いコストパフォーマンスを誇るマルチエフェクターです。

NUX MG-300 MKII
NUX MG-30 – Supernice!エフェクター

HOTONE AMPERO/AMPERO ONE

HOTONE AMPERO ONE

極小のエフェクターやXTOMPなど、アイデア溢れる製品を送り出すHOTONEのフラッグシップモデル「AMPERO」。250種を越えるエフェクト、アンプモデルなどを内蔵し、タッチパネルで直感的な操作を可能にした新世代のマルチエフェクターです。USB接続により専用のエディターソフトウェアとの連携、そしてオーディオインターフェイスとしても機能します。録音の際には、そのままの音色の他、エフェクトを掛かっていないドライ音を同時に録音しておくことができ、録音された後の状態での音色調整(リアンプ)に対応します。100を越えるリズムパターンや120秒ルーパーも内蔵され、アコースティックギター専用の入力も用意されており、楽曲を作り込む際にも大いに助けとなるでしょう。

2020年4月に登場した「AMPERO ONE」は、AMPEROのサウンドをそのままに、さらにコンパクトでリーズナブル、カンタン操作を実現したモデルです。

HOTONE AMPERO
HOTONE AMPERO ONE – Supernice!エフェクター

MOOER GE200/GE300

MOOER GE300 MOOER GE300

安価モデルよりスタートしながら、現在では中国製ブランドの代表的存在へと進化したMooer。2017年、小型軽量にして、優れた音質や多数の機能を盛り込んだマルチエフェクターとして、GE200が発売されました。そして、上位モデルでもあるGE300は10のフットスイッチに30分録音可能なルーパーなどが内蔵され、後述のHelixのような佇まいを持つ大型モデル。いずれもUSB接続でオーディオインターフェイスとして機能し、優れた音質をそのままにPCへ取り込むことができます。GE200はこの価格帯において珍しく外部のIRデータ取り込みを可能としており、録音においてアンプ以上に重要となる「キャビネットの響き」の部分において、妥協のない作り込みができるのは特筆すべき点でしょう。

MOOER GE200
MOOER GE300 – Supernice!エフェクター

Kemper Profiler Player

Kemper Profiler Player

Kemper Profiler Player は、Kemperの高精度なプロファイリング技術をコンパクトサイズに凝縮した新世代のアンプ&エフェクトユニットです。
大型のKemper Profiler同様、実機アンプのサウンドやレスポンスを忠実に再現でき、数千種類のリグ(アンププロファイル)やエフェクトを利用可能。最大5種類のエフェクトを同時使用でき、歪みから空間系まで網羅します。

USBオーディオインターフェイス機能によって、PCやiOSデバイスに直接接続して高音質なステレオ録音やリグ編集が可能。DAW録音ではレイテンシーの少ないモニタリング環境も構築できます。外部フットスイッチやMIDIコントロールにも対応し、ライブ・宅録・配信を1台でカバー。Kemperサウンドをより手軽に、持ち運びやすく使いたいギタリストにとって、非常に魅力的な選択肢です。

数多く存在するオーディオインターフェイスF機能付きのマルチエフェクター。現在では付いていないものの方が珍しいぐらいになってきており、特に録音を試したことのない初心者には機能が付いているものがおすすめです。市場に出回るマルチエフェクターの種類だけでも膨大ですが、オーディオインターフェイス機能の有無も、製品を選ぶ際のポイントとして一つ加えてみてはいかがでしょうか。

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