LACCO TOWER細川大介氏インタビュー《レフティギタリストへの転身、そしてベストアルバム「絶好」の発売》

[記事公開日]2022/12/10 [最終更新日]2022/12/10
[ライター]林慶一郎 [撮影者]益若賢人 [編集者]神崎聡

ギタリスト細川大介として、特に思い入れのある5曲をセレクト

──それではベストアルバムについてのお話を聞かせていただこうと思います。全50曲に思い入れがあると思うのですが、その中でも細川さんが選ぶ5曲とその理由をお聞かせいただけますでしょうか。

細川 どれも思い入れはあるので5曲選ぶのは中々難しいですが、、そうですね、まずはDisc4の2曲目「柘榴(ざくろ)」という曲で!

──2012年5月16日発売の「心枯論」に収録されているインディーズ時代の曲ですね。

細川 そうです。この曲はLACCO TOWERでサポートをする時に一番最初に聞いた曲なんです。初めて聴いた瞬間に衝撃を受けるくらい格好良くて、でもなぜだか僕が弾いた方が良いものになるんじゃないか」って思ったんです。その時ちょうど29か30歳くらいの時だったんですけど、既にギターで生計を立てられている状況だったので、バンドに入ったら全部一度捨てなきゃだなという葛藤もありましたが、それでもやりたいって思ったので、相当好きだったんでしょうね。そういう意味で「柘榴」は外せないなって。

──良いエピソードありがとうございます!2曲目はいかがでしょう。

細川 2曲目はですね、Disc3の12曲目「告白(こくはく)」です。

──2013年7月17日発売の「続・短編傷説」収録曲ですね。

細川 僕が加入してから初めてレコーディングを経験したアルバムだったのですが、この曲を録っている時は本当に苦しくて大変でした。ある程度ギターが弾けるっていう自信はあったんですけど、メンバーはみんな先輩だし、特に真一ジェットがすごく厳しくてめちゃくちゃ喧嘩していて。後から聞いた話だととにかく早く独り立ちして欲しいから厳しくしていたと言ってたんですけど、本当に厳しくて。「告白」をレコーディングした帰りに、2徹して眠いし、疲れてるし、もう朝だったんですけど、車を道脇に停めて1時間くらい泣いていましたね。

──苦しさが伺えますね、、

細川 悔しいというのもあるんですけど、持っていた自信を砕かれたっていうか、ほぼほぼ泣きながら録ってたと思います。Aメロの大して目立たないアルペジオなんですけど笑 あれが本当に決まらなくて、いつまでもOKが出なくて、朝になるまで何回も繰り返して録っていました。次のアルバム「狂想演奏家」の時はそこまで怒られなくて、多少自由にやらせてもらえて。で、その次のメジャー1作目の「非幸福論」、僕にとっては3枚目のアルバムの時からはもう任せるっていう風になりました。色々鍛えていただいたんだなと。真一ジェットはLACCO TOWERに入る前から知り合いで、サポートの現場で一緒になったこともあって一番先輩感が強いですね。そういう意味でも一番厳しかったと思います

──真一ジェットさんとの絆を感じられるエピソードですね!3曲目はどの曲でしょうか。

細川 2人の思い出の曲かもしれない笑 3曲目はDisc1の1曲目「薄紅(うすべに)」です。アニメ、ドラゴンボール超のエンディングテーマにもなった曲です。

──2016年2月3日発売のシングル曲ですね。初めてのタイアップだったんですか?

細川 いや、インディーズ時代にもタイアップ自体はありましたが、アニメという点では初めてでしたね。しかも僕が一番好きなアニメのタイアップ曲ということで、決まった時めちゃめちゃ嬉しかったですね。ここで何か変わるんじゃないかっていうのも感じてて、実際これがきっかけでLACCO TOWERの名前も広まったと思いますし、色んな人にドラゴンボールの人ですよね!って言われることも多くて、そういう意味では転機になった曲ですね。あとは自分の中でも1つ達成したというか、一番好きだったアニメの歴史に自分のバンドの名前を残せたっていうのは嬉しかったです。サントラも出ているんですけど、僕らの曲は「薄紅(うすべに)」と「遥(はるか)」の2曲が入っているので、もうご褒美ですよねこれは笑 夢に向かって走っている途中で大きなプレゼントをいただいたっていう感覚でした。自分にとっても大好きな曲ですし、でも実は最初に候補になっていたのは別の曲だったんです。もっとハードなナンバーの「奇々怪々(ききかいかい)」が決まっていたんですけど、もう1曲良いのが出来たから送ってみたんです。そしたらどっちも良い曲だからこちらサイドで決めてくださいとなって。

──最終的にはバンドメンバーで決めたんですか。

細川 今までのラッコらしさを押し出した曲にするか、今までにないキャッチーでポップな曲にするかで、バンドの未来も変わってくるんじゃないかとかなり悩みました。メンバー間でも色々な意見が出たんですけど、でも最終的にはこれからメジャーシーンでやっていくにはポップな方向でたくさんの人に聴いてもらった方が良いんじゃないかという結論になりました。多分奇々怪々を選んでいたら違う未来になっていたのかなと。

──岐路になった思い出の曲ですね!では、4曲目お願いします。

細川 4曲目はですね、実はどっちの曲にしようか迷っている2曲があるんですが、、いやどっちにしようかな笑 うーん、よし、これにしよう!Disc1の「雪(ゆき)」っていう曲で。

──2021年12月8日発売の「青春」収録曲ですね。

細川 このベストアルバムに収録されている曲はMVだったり、タイアップがついている曲がほとんどなんですが、この曲は特に何もついていなくて、でもそれでも選んだのはそのくらい大事な曲だからです。この時はアルバム制作のディレクションを僕がやっていて、この曲は初めてコンセプトも自分で決めて作った曲なんです。次のラッコの曲は冬をテーマにしようって決めて、頭の中には構想があって、それを真一ジェットとケイスケに相談して、こういう曲をやりたいんだと。それで僕の理想通りにできた曲です。大元はもちろん真一ジェットなんですけど、イメージ通りに作っていただきました。歌詞も奇を衒っていない歌詞にして欲しいっていうのもありましたね。最近の冬の曲ってストリングスがメインになっているイメージがあったんですけど、僕が昔聴いていた冬の曲はそうじゃなくてギターが引っ張っていくような、それこそ「L’Arc〜en〜Ciel」の「winter fall」みたいな。最近ではそういうバンドがいなくなっちゃったからギターが曲全体のイメージを作る曲にしたいなって思っていたんです。それでギターのアルペジオが引っ張っていくような曲になりましたね。ギタリスト目線というよりかはディレクター目線で作った初めての曲だったので、思い入れが強いですね。

──ちなみに「青春」でも、Disc1でも最後の曲になっていますが、選曲は細川さんが?

細川 「青春」も「絶好」も僕と真一ジェットの二人で選曲と曲順を決めています。最初「絶好」のリストを僕が作った時に外されるかと思ったんですけど、真一ジェットからも「雪」は外せないでしょって。

──ジェットさんも細川さんの思い入れがあるのっていうのも分かってたのかもしれないですね!では最後の曲お願いします。

細川 そうかもしれないですね笑 最後に選ぶ曲は、やはり最新作の「棘(とげ)」を推させていただきたいなと思います。

細川 やはり僕が思うのはミュージシャンだったらどの曲が1番好きかって聞かれた時に新曲です!って答えられなかったらダメだと思うんですよ。そう答えられないなら出さないほうが良いと思ってるくらいなので。今の僕たちがやりたい曲を作れたっていう意味で「棘」は大事な曲ですね。ずっとお世話になっている伊勢崎オートレースさんとのタイアップソングにもなっています。タイアップの場合、自分たちのエゴ+タイアップ先のイメージをリンクさせるっていうのが重要だと思っていて、色々なチャレンジをしています。ギターの話をするとこの曲はAメロになった瞬間に大げさにフェイザーとディレイをかけたサウンドにしているんですが、あれはレースの始まる前にエンジンをふかして煙がブワーってなるところをイメージしているんですね。Bメロに入ると霧が晴れた感じでバイクが走り出すみたいな。そういうのをイメージしてギターアレンジしていきます。

──それを聞くとちょっと曲の聴き方も変わってきますね!ちなみにDisc2の1曲目にした理由はありますか?新曲だしDisc1の1曲目になりそうな気が、、

細川 物語調にして作っているんですが、そういうのってタイアップじゃないと中々やらないんですよ。Disc3、4(インディーズ時代)の時にはできなかったことがこの5年間でできるようになったという意味でも大事な曲ですね。2曲目にした理由は、、実は僕は最初Disc1の1曲目にしていたんです。でも真一ジェットがDisc1っていうのは僕たちの曲を初めて聴く人もいるかもしれないから、自分たちの一番代表だなって思う曲を1曲目にした方が良いって言ったんですね。それでこの曲順になりました。僕もそれに異論無いよって。

──さすがジェットさんですね!素晴らしいエピソードありがとうございました!

新しいライブの楽しみ方を模索している今、そしてこれからの展望

──最近ではコロナが少し落ち着いたとはいえライブへの影響はまだありますか?

細川 ちょっとずつ変わってきましたけど、昔と同じみたいに戻るとは思っていなくて、新しい形が生まれてきたのかと思います。お客さんも多分マスク外しても良いですよと言っても外さない人の方が多いと思うんですよ。前回の公演から少し声を出せるようになったので、やってみたらやっぱりそれはそれで気持ち良いんですけど、マスク外す人はいないし、それがある意味スタンダードになっているのかなって思いました。だから新しいやり方を考えていかなきゃいけないんだなと感じているのが今回のツアーですね。それこそ打ち上げだったり、ツアー中の移動だったり、ライブハウスのキャパシティだったり、今まで当たり前と思っていたことを見つめ直すきっかけにはなっているのかなと思います。

──実際に影響が出ている部分としてライブの延期などもありましたが、振替公演に関してお聞かせください。

細川 今回、ボーカル松川の体調不良もあって何本か延期になってしまったのですが、みんなライブは絶対飛ばしたくないって想いがあるんです。それこそ何年か前までは一回も飛ばしたことがなかったので。お客さんはライブのために休みを取ったり、日程調整をして来てくれている事を僕らも重々承知しているし、それが無くなってしまう、0になってしまうのは相当な絶望感を与えてしまうなと思っています。せめて延期にする、中止には絶対したくないっていうのはありますね。この前の大阪公演も延期になってしまったんですけど、実はみんなで大阪に行ったんですよ。そこで急遽サイン会をやらせていただいて。お客さんは延期にしたからといって次必ず来れる訳ではないですよね。また仕事とか休まなきゃいけないかもしれないし。だからせっかくその日空けてくれた方達の気持ちを大事にしたいっていう意味でせめてサイン会だけでもと。お客さんの立場になって考えた時にどうやったら嬉しいかっていうのはいつも考えています。好きな人が体調不良だったら無理しなくて良いって言ってくれると思うけど、本当は心のどこかで会いたかったって感じると思うんですよ。これは20年バンドやっているからかもしれないですね。今の自分があるのは本当にファンの皆さんがいるおかげです。ファンの方がいなかったら、ギターだけで生活できていないですし、支えられているというのはめちゃめちゃデカい。だから少しでもやれることはやってあげたい。ずっとLACCO TOWER好きで良かったって思ってもらいたいなって気持ちが大きいですね。

──ライブはやはりファンのためにやっているということですね。

細川 もちろんです。ライブでどう魅せるのかという部分は僕たちのエゴがあって良い、でもライブをやるっていうのはお客さんのためですね。自分たちのためにやるものとお客さんのためにやるものっていうのは意識的に変えています。自分たちのためにやるならとことんわがままに、お客さんのためにやるならとことんお客さん目線になりたいと考えています。

──ありがとうございます!それでは今後の展望をお聞かせください。

細川 バンドとしての展望はちょうど今20周年を迎えて、一つ大きな区切りがあった訳ですが、これからどういう風に進んでも良いなって思っています。ここまでである程度の第一章は出来上がったかなと思っていて、でもそこであえて新曲を入れたっていうのは僕たちの意気込みの表れっていうか。まだまだここで止まるつもりはないよって。

──ここからがまた始まりということですね。

細川 そうそう。これからどういう風に進んでいくかは僕らもまだ分かっていないけど楽しみですよ。ずっとリーダーの啓示が言っていますけど武道館っていう目標は変えずに、どういう道順で行くかはフィーリングというか、色んな道筋があると思うので1個ずつ選んで行って武道館に辿り着きたい。でも無理は絶対にしたくないなっていうのは思っていて、昔は体を酷使してたし、休めないっていうのがありましたけど、長く続けていくっていう目標もあるから無理して潰れるっていうのは違うかなって思います。無理はせずに純粋に音楽を楽しみながら夢に向かっていくというのが一番ですね。これは20年続けてきたから辿り着けた答えかもしれないですね。

──では、ギタリスト細川大介としての今後の展望はいかがですか?

細川 今、一番ギターを弾いてて楽しくてしょうがない状態なので、もっともっと色々なことをやってみたいと思っています。来年は武者修行的な感じで色んなところでギターを弾きたいと思っていて、友達のバンドで弾かせてもらったりとか、サポートだったり、お仕事してやるっていうよりかは修行したいんだっていう感じですね。それこそライブじゃなくても、スタジオで合わせるとかでも良いし、あとはセミナーとかもやってみたいですね。今までは格好つけて安売りしたくないなっていう部分もあったりして、セミナーとかサポートとかもあまりしてこなかったんですけど、今は逆にやってみたいと思っているんですよね。弾ける時に弾いておかないと。

またいつ弾けなくなるか分からないし、今もやっぱり怖いんですよね。同じことが起きるかもしれない恐怖心はあります。その時にもっとこうしておけば良かったっていうのをなるべく無くしたくて、だから今はやりたいことをちゃんと口に出すようにしています。そういう風にやっていけば、色んなところで刺激をもらって、そこで得られた経験を最終的にバンドにも還元できるんじゃないかなって思います。

──教則本とか出さないんですか?

細川 あー!実は教則本を出すことはずっと考えていたので、それもやってみたいですよね。ギターだけをしていく2〜3年にしたいと思っています。

──そしていずれ日本一、世界一のレフティギタリストになると。

細川 そうですね。そうなれるように頑張っていきます!

──これからも応援しています!長時間のインタビューにお答えいただき本当にありがとうございました!

細川 こちらこそありがとうございました!

細川氏の使用機材紹介

インタビュー時に使用しているレフティギターやエフェクターボード、ラックシステム、アンプなど機材も見せていただきました。気になる方は是非調べてみてください。

HISTORY / TH-SV/R/LH(3TS)

現在、メインで使用しているレフティギター。

Fender Mexico / Standard Stratcaster

細川さんが初めて買ったレフティギター。

ESP / Throbber

「TOTALFAT」のギターボーカル「Jose」氏から譲り受けたレフティギター。

Crews Maniac Sound / Bottom’s Up

細川さんが自身で初めてギターをセットアップ、カスタムを施したレフティギター。

Takamine / PT-106 LH

自宅で弾く用のアコースティックギター。

Fractal Audio Systems / Axe-Fx II XL

Pacific / 1×12 Cabinet

ペダルボード

Fractal Audio Systems / MFC-101

Crews Maniac Sound / CMX-3

VOODOO LAB / Pedal Power 2 Plus

BEHRINGER / Q1002USB XENYX

Sonic Research / Turbo Tuner ST-200

LINE6 / RELAY G70

LINE6 / RELAY G50

BOSS / FV-500

SOURCE AUDIO / SA161 Dual Expression Pedal

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