「LACCO TOWER」ギタリスト細川大介インタビュー

[記事公開日]2016/6/18 [最終更新日]2021/10/23
[編集者]神崎聡

細川大介-2

バンドLACCO TOWERのメンバーであるギタリスト細川大介さんにインタビュー、第一回に続いて第二回では、細川さんの音楽遍歴や音作り、使用機材、フレーズの考え方などをうかがいました。

「やっぱりギタリストはギタリストとして目立つ、というようなバンドをしたい」

──改めて細川さんの音楽遍歴などをおうかがいできればと思います。先程のお話では、中学時代に見た先輩バンドから受けた衝撃が大きく影響されているとのことでしたが、それからどのような音楽遍歴を経られたのでしょうか?

細川大介さん(以下、敬称略) 高校に入った最初のころまで、やっぱりGLAYのコピーとかをやっていたんですけど、18,19歳くらいのころにやっていたバンドが解散して、その後に一気にJazz/Fusionの方に行っちゃったんですよ。Pat Methenyとか、Larry Carltonとか。その時はバンドをやめて、スタジオミュージシャンになりたいと思っていたんです。

──そちらの方に行ったのは、何かきっかけみたいなものがあったのでしょうか?

細川 ちょうどそのころ、スタジオで働きだしたんですけど、そのスタジオがJazz/Fusionしか流さないみたいなところだったんです。そこでひたすらビデオなんかも流されて、最初はすごく面白くなくてすぐ寝ちゃっていたんですが(笑)、毎日スタジオに行って聴いているとだんだん「いいな」って思えるようになってきました。

その時流れていて好きだったのが、「Night Music」っていう海外番組のビデオ。ホストがギターは Hiram Bullock、ベースが Will Lee で、彼らがまだ若い時のものでした。毎回ゲストを呼んでセッションをするという番組なんですけど、それを昔撮っていたのを見せてもらっていて、それがすごく好きだったんです。それこそまだ Stevie Ray Vaughan が生きていてバリバリにプレーしているような回もありました。その中でもやっぱり Hiram Bullock はロック色が強いプレーで、すごくそこに惹かれましたね。

──なるほど。そうすると例えば細川さんのギターヒーローというと、そちらのJazz/Fusionのミュージシャンの方が名前を挙げやすいのでしょうか?

細川 うーん、それは一概には…難しいですね。最初の僕のヒーローといえば、やっぱり LUNA SEA の SUGIZO さんと、GLAY の HISASHI さん。中学生の時の影響がすごく大きくて。初めてギタリストとして、プレーとして好きになったのは Hiram Bullock と、Steve Lukather はすごくはまっていましたね。ギターも彼のミュージックマンのモデルも持っているし。日本では今剛さんもすごく好きで、メチャメチャ研究してましたね。

──スタジオミュージシャン系が勢ぞろいですね(笑)わりと個人で活躍されていた時に、バンドとして活動することにもあこがれがあるけど、ギタリストという部分で自分を出したい、という欲もあったのでしょうか?ギターヒーローになりたい、みたいな…

細川 ありますね、それはすごくあります。やっぱり僕の好きだったバンド像って、メンバーそれぞれの顔が出てくるんですが、最近のバンドって「バンドは知っているけど、ギタリストの顔を知らない」って、結構多くあると思うんです。でも僕はそういうのよりは、やっぱりギタリストはギタリストとして目立つ、というようなバンドをしたいと思っていました。だからギターソロがいつも多い傾向でもありますが(笑)

──譲れませんね(笑)。バンド活動の方はやられなかったのでしょうか?

細川 いえ、バンドもやっていました。そのころ、初めてインディーズバンドのサポートをやったのが、少しだけど売れていたバンドで「キャー!キャー!」って言われるんですよ(笑)。そこで改めて「バンドって面白いな!」って思ったんです(笑)。

──「昔を思い出した」という感じでしょうか?

細川 そう、「あのころよりヒーロー感あるじゃん?」って(笑)。やっぱりバンドの規模が上がっていたし、それこそCOCK ROACHさんとか、上の先輩たちとツアーに回らせてもらっていたんですよ。そこで、「お前、バンドをやった方がいいよ」って言ってもらって。そこで当時大学生だった僕は、大学卒業と同時にもう一回バンドをやろうと思ったんです。その後やっていたのが”ステューパ”っていうバンド。

2MCのミクスチャーブームの時で、そこにオーディションで入れてもらって、それでいろいろCDを出させてもらったり、ツアーに行かせてもらったりとかしていました。このバンドを、25、6歳くらいまでやっていましたね。その後は先程も言ったとおり、一度講師業に進みながら…という格好で。

21歳の時に手に入れた、momoseのギター「どれを弾いても、結局あれに戻ってきちゃうというか」

──バリバリのバンド活動ですね。ちなみに初めて持ったギターってどんなものでしたか?

細川 初めて持ったのは、Aria Pro IIのマグナシリーズ。一番安いシリーズで、楽器屋の外に掛かっていたもの(笑)。その時はやっぱりSUGIZOさんが好きだったので、SUGIZOさんのモデルを買いに行くつもりだったんです。でもそもそも、そのモデルがどんなものだったかもちゃんと知らずに「黒だ」という印象だけで買いに行って、その黒いギターを定員さんに「これ、SUGIZOさんっぽくないですか?」って聞いたんです。

そうしたら店員さんも「あ~そうっすね」って(笑)。で、それを買って帰って、よく見たらそれはストラトキャスタータイプだったんですけど、SUGIZOさんはレスポール(笑)。「全然違ぇーじゃん!」って、ブン投げてやろうかと思いました(笑)。まあ、あのころは楽器屋さんも適当な時代だったんで、まあいいかなって(笑)。

──忘れられないエピソードですね(笑)。でも、楽器屋さんの一番前に飾っているギターって、すごく気になりますよね(笑)。

細川 そう、気になるんですよ。まあその当時はみんなAria Pro IIからスタートしてましたね。音楽雑誌の付録にある通販のコーナーに載っていたのがそれだったし(笑)。今はストラトがメインですけど、当時はレスポールカスタムも弾いていました。でもやっぱりどうしても重たいのと、ミディアムスケールだからこそのチューニングの甘さが自分に受け入れられなくなって、21歳ぐらいの時に今でも使っているmomoseのストラトキャスターを手に入れて、そこからはずっとストラトですね。

細川大介:サウンドシステム 細川大介さんのサウンドシステム全景:
PRS-Custom22、momose ストラトキャスター

──それは今でもずっと使っているものですか?

細川 ずっと使っています。どれを弾いても、結局あれに戻ってきちゃうというか。その間にMUSICMANのLUKEモデルもレコーディング用に買ったけど。

──その他には?

細川 メジャーデビューが決まり、新しいギターを買おうと思った時、「メジャーデビューを機に、変わりたい」と感じる自分がいて…。自分に変に凝り固まったものがあったら、この先通用しないと思ったんです。それで、一番「自分には馴染みが薄い」と思ったメーカー、PRSのギターを買ったんです(笑)。PRSって優等生すぎるし、自分には合わないかなと思っていましたし。

──まるで試練ですね(笑)。

細川 そう(笑)。そのころは本当にずっと同じストラトのギターを弾いていたから、次に買うものがもしかしたらメインになるかも、って考えると結構覚悟がいる。でもここで少し冒険しないと、あまり変わらないかなとも思っていたんです。心配していましたが…でも実際弾いてみると思いのほかしっくり来たんですよ。今は意外にもメインギターと半々くらいで弾いています。

──なるほど。ちなみにmomoseのギターは、リアピックアップは載せ替えられているんですか?

細川 そうですね。もともとは3シングルで、全部RIO GRANDEが入っていて。そこに一回ザグリを入れて、ずっとTom Holmesを入れていました。で、最近DimazioのJohn Petrucciモデルに入れ替えたんです。Dream Theaterが好きだし、パンチを出すためにそれに替えて。

──ソロの時はどのピックアップを使われているんですか?

細川 曲調によって変えています。ギターソロ中に頻繁にピックアップを変えたくはないので、例えば曲調がセンターで作った曲なら、ソロもセンターで弾くとか、意識することはあります。

──ピックアップの載せ替えは結構行われるのでしょうか?

細川 そうですね…そんなに度々やるわけじゃないですけど、結構変えたりしますね。あのmomoseのギターは、昔から結構改造していたんです。僕はすごくきれいなギターより、ボロボロのギターって好きで、傷がついている方が「一緒にやってきた」っていう感じがあるし、あんまりきれいにピカピカにして、というタイプじゃないですね。

──確かに愛着がわきますよね。その他アンプやエフェクターなど、使われている機材を教えていただけますか?

細川 それはレコーディングとライブでメチャメチャ分けていますね。レコーディングの時は、Custom Audio ElectronicsのOD-100、Scott Hendersonモデルと、BognerのCustom Marshall、Custom Audio Electronicsの3+SEというプリアンプとVHTのパワーアンプ2150、そのあたりのラインナップでやってますね。どちらかというとハイファイなアンプが好きなので、結構そっちになっちゃって。そこにコンパクトエフェクターでFulltone Fulldrive2とか、揺れものだったらstrymonとか、定番のものを使っています。

sohosaka-recording レコーディング時のセッティング

──セッティングは時々に全く変わりますかね?

細川 そうですね、レコーディングによって全く変わります。コンパクトエフェクターも、レコーディングでは使うんですけど…ライブではFractal Audio SystemsのAxe-FxⅡXLをVHT2150で出していて、あれで全部できちゃうんで、ライブでコンパクトは使わないんです。その方がすごく楽なんですよね。例えばディレイとかはタイムなんかも曲ごとに細かく設定したいし、それだと一台の方が本当に楽。歪みの音なんかは、生アンプにはかなわないというところはありますが、それを補える利点がありますしね。

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sohokawa-effect ライブ時のエフェクターボードの様子

本当の意味でのリズム感を出すことが大事

──なるほど、音へのかなり強いこだわりがうかがえますね。次にプレーについておうかがいできればと思います。先程アルバムのお話をうかがった際にも言いましたが、ソロなどではかなりコードを意識するとか、幅広いスキルが感じられるのですが、そういうパターンみたいなものは、普段はどのような練習で身につけられているのでしょうか?

細川 そうですね…以前やっていた練習としては、それこそJazzのプレーヤーの方と一緒なんですけど、スタンダードジャズを弾いて、そのコード進行に合わせてアドリブをとっていくというのは今でもやっていますし、その中で「コードトーンしか使わない」みたいなこともやっていますね。

──いろんな曲でプレーできますか?

細川 たぶん結構いろんな曲で、アドリブでは弾けると思います。やっぱり19歳くらいのころにはまったJazz/Fusionの影響で、スケールなんかも相当勉強していたので、ストレートなロックではあまり弾く機会がない、例えばメロディックマイナースケールを使うようなこともやっています。

LACCO TOWERは結構ノンダイアトニックコードを使うことが多いんですけど、聴き手にはそう感じさせないようにしています。そこはちゃんとスケールを理解して使わないと、逆に浮いてしまう。そういう意味では、スケールをしっかり勉強しておいて良かったなと思っています。アプローチ的には…例えば7thコードのところで半音上のディミニッシュスケールを使うとかいうのはよくやっていますね。

──なるほど、かなりテクニカルでもありますね。一方で、細川さんのやられている練習で「これは他の人はあまりやらないと思うけど」というような練習ってありますか?

細川 そうですね…例えば誰かの曲を一曲コピーする時に、最初はCDに合わせて弾くんですけど、最後はクリックとギターだけでやってみるんです。一曲まるまる。それを動画に撮っておいて、後で見直して本当にノリが出ているかを確かめるんです。やっぱりCDに合わせていると”弾けている風”になっちゃうんで、本当の意味でのリズム感が出ないんです。だからドラムやベース、リズムマシンも使わない状態、クリックだけでノリが良く弾けるかどうかが大事だと思うので、コピーした後は大体最後にそれをやっていますね。

──映像で撮りますか?

細川 そうですね。僕は映像で自分の姿を見て、手の振りはどうかとか、常にチェックしています。それと僕の持論なんですけど、自分がギターを弾いている姿を鏡や映像で見てカッコいいと思えないとしたら、それは良くない弾き方だと思うんです。やっぱり自分の中での理想像があって、鏡の中の自分を見ているのだから、その理想像と違うのであれば、やっぱりどこかが違うんだと。

──そこまでやられる方は、なかなかいませんね。

細川 よくナルシストっぽいと人に言われることがあるんだけど、「そんなのじゃないんだ!」って、言いたくなるんですね(笑)。その中でそういうことを常に考えてプレーしています。今でもそれこそ今(剛)さんの動画は毎日のように見て、手の動作なんかを確認して、実際に家でやって確認することもあります。

──特徴的な練習ですね。でも確かに大事なことかもしれません。では最後に、このサイトの読者であるギターキッズへのアドバイスと、今後の活動への意気込みをコメントいただければと思います。

細川 アドバイスですか?そうですね…僕がそうだったということもあるんですが、ギターキッズには「好きなギタリスト」を見つけてほしいですね。好きなバンドというよりは、ギタリスト。最初は「その人になりたい」という感じでいいと思うんです。そしてまずはギターを持って、鏡の前に立って、「ギターを持った自分がカッコいいんだ」ということを認識することが大事。カッコいいからこそ「じゃあ練習しよう」「もっとカッコよくなるためにはどうするか?」と思えてきますから。

最初は本当に好きな風に弾いていいと思うんです。それこそ音楽は自由、「ギターはこうじゃなきゃいけない」なんて話はありません。好きな風に練習すればいい。その上で自分が「こんな風になりたい」「うまくなりたい」と思えば、自然と自分で勉強するようになるし。まずは鏡を見て、カッコよくなってほしいですね。

自分として、バンドとしては、まずは日本武道館!僕らのあこがれの聖地なので、必ず日本武道館には行ってみせます!当然、それを自分たちが納得できる音楽で。流されないというか、自分たちの音楽を信じて続けているので、自分たちの音楽で日本武道館に絶対に行きたいと思います!

使用機材

エレキギター:momose ストラトキャスター、Ernie Ball Music Man[LUKE]、PRS-Custom22、        Fender テレキャスター、Martin D-18 エフェクターFulltone[Fulldrive2]、Rockbox [Boiling Point]、Xotic[AC Booster]、        Xotic[RC Booster]strymon[Mobius]strymon[TIMELINE]、        ARION[SCH-Z]、E.W.S[WAH]、BUDDA[WAH]、Digitech[Whammy2]        Keeley[Compressor]、etc…(レコーディングで使用) アンプ   :Fractal Audio Systems[Axe-FXII XL]        AVID[Eleven Rack]        Custom Audio Electronics[OD-100](Scott Henderson Model),        Custom Audio Electronics[3+SE],        Bogner Custom Marshall,        VHT[2150],        VHT[2502],

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