幻のギター「フェンダー・スウィンガー(Swinger)が、日本製クオリティで復刻!

[記事公開日]2019/11/20 [最終更新日]2023/10/8
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

フェンダー・スウィンガー Made In Japanシリーズで復活したSwinger

別名「Arrow」とも呼ばれるスウィンガー (Swinger) は1969年にフェンダー社が作ったショートスケールのエレキギターです。元々スウィンガーは売れ残りのパーツを集めて作られた在庫処分としての役割が大きく、同じくフェンダー社のブロンコのように安価でスチューデントタイプ(ギター初心者向け)のモデルでした。製造本数も大変少なく、フェンダーのカタログには1度も載ることもなく、結果的に人気も得られませんでした。

しかし時は流れ、スウィンガーの評判にも変化が現れました。生産台数は多く見積もってもせいぜい600台で、そのため現在ではレア度が極めて高い、資金があっても手に入れることのできない「幻のギター」とまで言われています。今回は、このスウィンガーに注目していきましょう。


The Regrettes – Seashore [Official Music Video]
メンバー全員10代でデビューを果たしたパンクロックバンド「The Regretts」。2019年にはサマーソニックにて来日公演も果たしています。この動画でスウィンガーを奏でるリディア・ナイト女史は、2歳の時に父親の経営するナイトクラブのサウンドチェックでラモーンズの「Beat on the Brat」を歌っており、ライブ活動のキャリアをスタートさせたと言われています。この動画の時点で15年ものキャリアがあるというわけですよ。

「スウィンガー」とは、どんなギターだったのか?

フェンダー・スウィンガー:ヘッド

発表当時のスウィンガーは、

  • 世界初の5弦ベース「BASS V」のアルダー製ボディを加工して使用(ベース用ピックアップのキャビティは、ピックガードで塞いでいる)
  • ステューデントモデル「ミュージックマスター」のブリッジを流用
  • フェンダーらしからぬボディ&ヘッド形状(工程を簡略化できるヘッド形状、重量調整のためにボディエンドを大胆にカット、という「必要」が生んだ奇跡)
  • 弦長22.5インチ(現在ではミニギターに相当)、メイプルネック、ローズ指板
  • フロントピックアップ、ボリューム、トーン、各1基

というもので、既存モデルのパーツをうまく組み合わせて作ったギターでした。ベースVは世界初の楽器ではありましたが、時代に対して早すぎたためか受け入れられず、短命に終わりました(いっぽう、ミュージックマスターは1982年まで存続)。大量に余ってしまったBASS Vのボディを何とか使いきろうとして生み出されたのが、スウィンガーだったのです。
ピックアップ1基、トレモロ無しという超絶にシンプルな設計、ショートスケールのネックという構成はまさにミュージックマスターの仕様そのものでしたが、フェンダーの他のどのギターとも違う独特なルックスは異彩を放ち、またどのカタログにも掲載されていないミステリアスな存在でした。

Fender Limited Swinger Fender Limited Swinger

近年ではそのシンプルさ、ショートスケール&シングルコイルピックアップという仕様に起因するサウンドの軽さ、シルエットだけでそれとわかる独特のルックスが特定のジャンルには絶妙にフィットすると評価されています。ヴァンザントからはコピーモデルがラインナップされており、「KAMINARI GUITARS」はスウィンガーを元にハイエンドに蘇らせたギター”KAMINARI Swinger”をリリースしたこともあってじわじわと注目度が上がり、フェンダー社内でも評価が改まってきました。

特徴的なブリッジ

「ミュージックマスター」から流用したスウィンガーのブリッジは、「一枚の鉄板を2回折り曲げて穴を開ける」という大変シンプルな設計で、当時は当たり前に付けられていた金属製のカバーもありませんでした。パーツの製造コストがかなり抑えられる上に、ブリッジで弦を固定する「トップロード」型なので、ボディへの加工も最小限で済みます。工程の合理化を常に追求してきたフェンダーらしい設計だと言えるでしょう。

このブリッジに付けられる3連サドルは、60年代のテレキャスターにも見られる「ネジ付き」タイプです。現代の感覚で3連サドルはオクターブ調整に不利ではありますが、このネジ付きサドルは「弦を受け止める場所を選択できる」という面白さを持っています。この特徴は特に1弦と6弦において面白みがあり、均等に配置する通常のセッティングはもちろん

  • ビブラートをかけやすいように、1弦をネックの端から遠ざける
  • 親指で押さえやすいように、6弦をネックの端に近づける

といったセッティングをカンタンに試すことができるわけです。

「幻のギター」スウィンガーが、日本製クオリティで復刻!

2019年末、このスウィンガーが「よっちゃん」の愛称で知られる野村義男氏所蔵の1969年製スウィンガーから詳細にデータを取り、フェンダーの日本製ラインより復活を果たして話題となりました。

  • 詳細に復刻させた限定版
  • 使いやすくアレンジを施したレギュラーモデル

の2タイプがリリースされましたが、どんなギターなのかを見て行きましょう。

「Fender LIMITED SWINGER」

Fender LIMITED SWINGER

限定生産のスウィンガーは、リリース当時の仕様をかなり忠実に再現し、若干のアレンジを加えて現代のギターとして復刻させたマニアックなギターです。

  • ボディ:斬新な形状をしっかり再現したアルダー製
  • ネック:弦長を24インチ (610 mm)に延長したメイプル製。ナット幅40mm(かなり細い)
  • 指板:ローズ指板。指板Rは7.25インチ (184.1 mm)
  • フレット:旧式の細めなフレット。フレット数は22に拡張
  • 塗装:ボディ、ネック共にラッカー。オリジナルに準拠したカラーバリエーション
  • ブリッジ:3連サドルのスウィンガー専用ブリッジ
  • 電気系:ムスタング用シングルコイル・ピックアップ1基、ボリューム/トーン各1基

ボディ形状、ヘッド形状、ブリッジの設計など多くの部分をしっかり再現させつつ、弦長とフレット数を拡張して現代の音楽で使いやすいギターへとまとめています。指板Rとフレットワイヤーに旧式の仕様が残されており、プレイするたびに「昔のギターっぽさ」を実感できます。この「弦長24インチ」は現代仕様のムスタングやジャガーと同じ寸法で、現代のショートスケールにおける定番仕様です。

本来ならヘッドに掲げられるモデル名「Swinger」のロゴは、貼られることなく出荷されます。このロゴはステッカーとして同梱されますが、69年当時のスウィンガーもこのように出荷されていました。なお、ピックガードで覆い隠した「ベース用ピックアップのキャビティ」までは再現されていないようです。

レギュラーモデル「Fender SWINGER」

Fender SWINGER

レギュラーモデルのスウィンガーは、上記の限定モデルからさらにもうちょっと現代のニーズを意識した設計です。

  • ボディ:斬新な形状をしっかり再現したバスウッド製
  • ネック:弦長24インチ (610 mm)のメイプル製。ナット幅40mm
  • 指板:ローズ指板。指板Rは9.5インチ (241 mm)
  • フレット:幅の広いフレット。フレット数は22に拡張
  • カラーバリエーション:上記の限定モデルと異なる5タイプ
  • ブリッジ:3連サドルのスウィンガー専用ブリッジ
  • 電気系:ムスタング用シングルコイル・ピックアップ2基、ボリューム/トーン各1基、セレクタースイッチ

指板Rとフレットで現代の標準的な仕様を採り入れていること、リアピックアップを追加していることが使い勝手の大きな違いです。9.5という指板Rはフェンダーが現代的なモデルに採用している、平たすぎにも丸すぎにもならない、フェンダーらしい寸法です。リアピックアップとセレクタースイッチが追加されたことから、このスウィンガーは「ムスタング」や「デュオ・ソニック」にかなり近いギターになっていると言えるでしょう。

Fender SWINGERを…
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他モデルと比べてみよう

フェンダーからは、ショートスケールのギターがいくつもリリースされています。メイドインジャパン・トラディショナルの60年代式ムスタング、60年代式ジャガー、そして現代版のデュオソニックをピックアップし、これらとレギュラーモデルのスウィンガーを見比べてみましょう。どんな違いが見つかるでしょうか。なお、

  • 弦長は全て24インチ、フレット数は22
  • くびれ位置をずらした「オフセット・ウェスト」ボディ形状
  • ボリューム/トーンは各1基
  • アウトプットジャックはボディトップに設置

といったところが共通点です。

今回の主役
「Swinger」
MIJ Trad 60S
Mustang
MIJ Trad 60s
Jaguar
Duo-Sonic(SS)
指板 ローズ、9.5R ローズ、7.25R ローズ、7325R メイプル、9.5R
フレット Fat Fret Vintage Style Vintage Style Medium Jumbo
ナット幅 40mm 41.2mm 42mm 42mm
ピックアップ ムスタング ムスタング ジャガー デュオソニック
ピックアップ切替 トグルスイッチ 二つのスライドスイッチ 二つのスライドスイッチ トグルスイッチ
ブリッジ ミュージックマスター、3連サドル ダイナミック・トレモロ シンクロナイズド・トレモロ ハードテイル、6連サドル
おおむねの重量 3kg未満 3kg近辺 3.5kg近辺 3kg近辺

表:フェンダーのショートスケール比較

スウィンガーとデュオソニックは現代の楽器「モダン・スタイル」、ムスタングとジャガーは旧式の楽器「ヴィンテージ・スタイル」というコンセプトで仕上げられており、指板Rとフレットにその違いが反映されています。ナット幅の差異に起因するネックの太さは興味深く、握り心地にこだわりたいに人はぜひショップで確認して欲しいところです。

モデルごとにいちいちピックアップとブリッジを開発していくのがフェンダーの矜持ですが、スウィンガーではムスタングのブリッジを流用、廃盤とはいえミュージックマスターのブリッジをそのまま使っている(現在のパーツ名は「スウィンガー・ブリッジ」)ところに、「既存モデルの部品を組み合わせて作った」という出生の名残りを感じさせます。
本体重量には個体差がありこそすれ、スウィンガーのみボディにバスウッドが使われていることもあって、おおむね軽量のようです。

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