多弦ギターのチューニング・データベース

[記事公開日]2013/8/13 [最終更新日]2019/6/2
[編集者]神崎聡

7弦ギターって、どのくらいヘヴィ?

7弦以上の「多弦ギター」は、今や当たり前の存在になっています。これら多弦ギターの扱い方や演奏法についてはまだまだノウハウが十分にできていませんが、ここではひとまずチューニングについて見ていきましょう。

チューナーの表示について

多弦ギターを使用したり変則チューニングを使用したり、またギターとベースを使い分けたりする人は、弦を検出する「ギターチューナー」より、楽器の都合を離れて音の高さを検出する「クロマチックチューナー」を使用することをお勧めします。ギターチューナーでもたいがいのチューニングはできますが、目的のチューニングモードにいちいち設定しなければならないわずらわしさがあります。
初級/中級/上級別、オススメのクリップチューナー

現代の標準的なクロマチックチューナーには、

  • 検出する音によって#(シャープ)表記とb(フラット)表記を使い分けているもの
  • #表記に統一しているもの

このように2つのタイプがあります。「D#にしたいのに、Ebとしか表示されない!?」なんて疑問に思ったことはありませんか?さまざまなチューニングをチェックする前に、「異名同音」について知っておきましょう。

C# = Db
D# = Eb
F# = Gb
G# = Ab
A# = Bb

異名同音リスト

7弦ギターのチューニング

現代7弦ギターのパイオニアであるスティーヴ・ヴァイ氏は、普通のギターに低音弦を1本追加する形で7弦ギターを使用しています。ここでは典型的なものと色モノ的なもの、7弦ギターのさまざまなチューニングを見てみましょう。
轟音のマストアイテム「7弦ギター」特集

Name 7弦 6弦 5弦 4弦 3弦 2弦 1弦
STD. B E A D G B E
STD.+↓A A E A D G B E
1/2↓ Bb Eb G# C# F# Bb Eb
1/2↓+↓G# G# Eb G# C# F# Bb Eb
1↓ A D G C F A D
1↓+↓G G D G C F A D

7弦ギターの典型的なチューニング

スタンダード・チューニング(STD.)、半音下げチューニング(1/2↓)、一音下げチューニング(1↓)と、それぞれ第7弦を1音下げたものが、典型的なチューニングだと言えるでしょう。


7弦ギターってどれくらいヘヴィな音が出るのか、確かめてみた!
スタンダード/半音下げ/一音下げ、そしてそれらの7弦をドロップした、計6種類のチューニングで同じフレーズを弾き比べている

Name 7弦 6弦 5弦 4弦 3弦 2弦 1弦
STD-B + Hi E B E A D F# B E
STD-Bb+Hi Eb Bb Eb G# C# F Bb Eb
STD-A + Hi D A D G C E A D
STD.+↓G+↓D G D A D G B E
1/2↓+↓F#+↓C# F# C# G# C# F# Bb Eb
1↓+↓F+↓C F C G C F A D

7弦ギターの色モノ的なチューニング

上の3つは「6弦バリトンギターに高音弦を追加した」という設定のチューニングで、ものすごく低い音のオープンコードを奏でることができます。
下の3つは、「ドロップDの6弦ギターに、さらに低音を追加した」という設定のチューニングです。第7弦と第6弦、そして第6弦と第5弦のパワーコードが指一本で押さえられるというメリットがあります。

8弦ギターのチューニング

通常の8弦ギターは、6弦ギターに低音弦を2本追加しています。ダウンチューニングのセッティングで出荷されるものも多くありますが、弦の張力を確保するために弦長を長く取ってあるものがほとんどです。「1音下げ」までいくと4弦ベースの音域を全てカバーすることができ、「ギターとベースを持ち替えるのが面倒くさい」という人向けのチューニングになります。

Name 8弦 7弦 6弦 5弦 4弦 3弦 2弦 1弦
STD. F# B E A D G B E
1/2↓ F Bb Eb G# C# F# Bb Eb
1↓ E A D G C F A D

8弦ギターの標準的なチューニング

8弦ギターはまだ新しい楽器なので、さらにクリエイティブなチューニングが発明されるかもしれませんね。いまのところ、多弦ギターの低音弦はベースと同様に、「完全4度チューニング」になるのが一般的です。
更なる深淵へ「8弦/9弦ギター」特集

9弦ギターのチューニング

8弦ギターに、さらなる低音を追加したのが9弦ギターです。一音下げチューニングすると、5弦ベースの音域を全てカバーすることができてしまいます。

Name 9弦 8弦 7弦 6弦 5弦 4弦 3弦 2弦 1弦
STD. C# F# B E A D G B E
1/2↓ E F Bb Eb G# C# F# Bb Eb
1↓ B E A D G C F A D

9弦ギターの標準的なチューニング

10弦ギターのチューニング

かつて「10弦ギター」といえば、「禁じられた遊び」の演奏であまりにも有名なクラシックギター奏者、ナルシソ・イエペス(1927-1997)氏のトレードマークでした。氏の10弦ギターは倍音を稼ぐために弦を増やしたというもので、追加した低音弦を積極的に弾くタイプのものではなかったようです。
いっぽうエレキギターの多弦化は、どんどんエスカレートしていく様相を呈しています。普通のギターに低音弦を4本追加する「10弦ギター」、またそれ以上の弦数を誇るギターも登場しています。

Name 10弦 9弦 8弦 7弦 6弦 5弦 4弦 3弦 2弦 1弦
STD. G# C# F# B E A D G B E

10弦エレキギターの標準的なチューニング

第10弦の「G#」は5弦ベースの第5弦よりも低く、自然な弦振動を得るのが物理的に難しいところに至っています。ですからここからもっと下げるダウンチューニングについては、考えない方がいいでしょう。

B.C.リッチの10弦ギターは第1弦~第4弦が「複弦」となっており、ギラギラした高音を奏でることができるようになっています。

コース 6 5 4 3 2 1
音名 E2 A2 D4+D3 G4+G3 B3+B3 E4+E4

B.C.リッチの10弦ギターのチューニング

便宜上、電子楽器で使用される「オクターブを数字で表示する書き方」を採用しています。複弦の楽器は、「弦」の代わりに「コース」という言い方をします。B.C.リッチの10弦ギターは、第6&第5コースが単線、第4&第3コースがオクターブ、第2&第1コースがユニゾン(同じ高さ)でチューニングされます。

12弦ギターの場合

いわゆる普通の「12弦ギター」は、全ての弦が複弦となっている「6コース12弦」のギターです。これは複弦の独特なサウンドを出すためのギターであって、音域を広げるために弦を追加する「多弦ギター」とは区別されるのが普通です。しかしここはざっくりと、「弦の本数が多いギター」というくくりで仲間に入れておきます。

コース 6 5 4 3 2 1
音名 E3+E2 A3+A2 D4+34 G4+G3 B3+B3 E4+E4

12弦ギターのチューニング

第6~第3コースがオクターブ、第2と第1コースがユニゾンになっています。ストロボチューナーなど高性能チューナーでビシっと合わせると、えもいわれぬ響きが得られます。複弦のピッチが若干狂っているとコーラスのエフェクトがかかったように聞こえてしまいますが、それを逆手にとって意図的に複弦のピッチをずらし、コーラス効果を狙うというアプローチが採用されることも、まれにあります。

同じ音名の弦が2本並びますが、通常は音が高い方の弦が低音弦側に配置されます。ですからダウンストロークすると、音が高い方の弦から先にピッキングされることになります。いっぽうリッケンバッカーの12弦ギターは逆になっており、ダウンストロークすると音が低い方の弦が先にピッキングされます。人間の耳は一瞬でも先に鳴った音をきちんと捕えることができますから、どちらが先にピッキングされるかは、意外とサウンドに反映されます。


以上、多弦ギターのチューニングについて紹介しました。あまり極端なダウンチューニングについて触れることは避けましたが、今回紹介した典型的なチューニングから大きくかけ離れたダウンチューニングを採用しているアーティストも相当数います。
弦長を延長した多弦ギターが多くリリースされていますが、こうしたギターはダウンチューニングに耐えられる張力を確保する設計になっています。ですからレギュラーチューニングでは逆に、弦が硬くて弾きにくく感じるかもしれません。また逆に弦長によっては、ダウンチューニングによって弦の張力が足りなくなってしまうかもしれません。こうした場合でも弦を太くしたり弦高を上げたりするなど、楽器本体のセッティング次第で良好なコンディションに持っていくことができますよ。

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