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LINE 6 のエレキギター「Variax」について

Line6 Variax

「ライン6(LINE 6)」は名機のサウンドをデジタル技術で再現する「モデリング」を得意とするブランドで、1998年に登場した代表機種「POD」シリーズの成功により、「ギタリストの音楽環境を変えてしまった」とまで言われています。

LINE6のエフェクター – Supernice!エフェクター

モデリング技術を駆使して開発されたモデリングギター「Variax(ヴァリアックス)」は、早くも2002年にデビューします。デビュー当時のものは現在でも中古市場で見かけることができますが、マグネットピックアップを持たないつるんとしたスタイルは、インパクトのある斬新な存在でした。

現在のVariaxは数多くのヴィンテージギターを再現するサウンドバリエーションと、いくつものチューニングへと一瞬で変更できる「オルタネート・チューニング」機能を備え、また専用ソフトウェア「Variax ワークベンチHD」によりかなり自由な設計のギターをモデリングでき、さらに普通のエレキギターとしても使えるという、「全てを手に入れた」と言っても過言ではないギターになっています。今回は、そんなVariaxに注目してみましょう。


Line 6 Dream Rig Plus — James Tyler Variax Guitar, Pod HD500, DT Series Amps | Full Compass
普通のストラトタイプとはとても思えないサウンドバリエーション。これこそがVariaxの真骨頂です。LINE6のエフェクタと連動させることで、足元の操作だけで全ての設定を切替えることができます。

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1: Variaxの仕組み 2: Variax の特徴 2.1: 総額いくらになるかわからないギターコレクションが手に入る 2.2: アコギの音や、珍しい楽器の音も出せる 2.3: 変則チューニングを再現できる 2.4: 自分好みの設定を瞬時に呼び出せる 2.5: 専用ソフトで夢のギターを作ることができる 2.6: Variaxのメリット 2.7: Variaxの注意点 3: Variaxのラインナップ 3.1: Variax STANDARD 3.2: Variax SHURIKEN 3.3: JTVシリーズ 3.3.1: JTV-69S 3.3.2: JTV-59 3.3.3: JTV-89F 3.4: James Tyler Variax US Custom 4: Variaxギター本体の比較 4.1: オルタネート・チューニング一覧 4.2: ギターモデル・セレクタ―仕様

Variaxの仕組み

Variax STANDARDのブリッジ。一見何の変哲も無いブリッジだが…

現在のVariaxシリーズは一見すると何の変哲もないエレキギターのように見えますが、まずはブリッジに秘密があります。Variaxのブリッジは、各サドル内に「ピエゾピックアップ」が仕込まれていて、各弦バラバラに検出した音が本体の電気回路に送られます。

Variax Shurikenのボディ裏 Variax Shurikenのボディ裏:専用電池スロットが備えられている

Variaxの背面には大きなバッテリーボックスと電気回路が収められており、ピエゾで検出した弦振動は電気回路内でデジタル処理され、さまざまなギターサウンドになってアンプへと送られます。コントロールノブやセレクタスイッチも電気回路につながっており、モデリング音を使用する「Variaxモード」では、プログラムの切り替えやパラメータの変更など、さまざまに機能します。

またスイッチ操作ひとつで「Variaxモード」は解除され、Variaxは普通のエレキギターになります。この時は電源を必要とせず、操作系は通常のボリューム、トーン、ピックアップセレクタとして機能します。

Variax の特徴

総額いくらになるかわからないギターコレクションが手に入る

Variaxの開発では、ヴィンテージ楽器における著名なディーラー、アルバート・モリナー氏の協力を得ることに成功しました。開発チームは氏のコレクションから選びぬいた数多くのヴィンテージギターを使い、また「Variax HD テクノロジー」を駆使して、ボディや電気回路、金属パーツなどあらゆる面の反応を分析、お手本のギターを正確に再現できるまでの詳細なデータを取っています。ヴィンテージギターには個体差が付きもので、厳しく見ると当たりもあれば外れもあり、状態も様々です。モデリングギターを作るためには、モデリングするにふさわしいサンプルの存在が不可欠でした。しかし著名なコレクターの所蔵品を物色することで、効率よくサンプルを選出することができています。

JTV-59のコントロール・ノブ JTV-59に搭載されるコントロール・ノブ:ギターのタイプが選択できる

その結果、Variaxはつまみ(ギターモデル・セレクタ)をひねるだけで

など、当サイトでもおなじみのギターの音を一台のギターでまかなうことができるようになっています。サウンドの再現度はプロミュージシャンをも納得させるクオリティを誇り、「ちょっと音が伸び切らない感じ」など、お手本の楽器本体に由来する特徴まで仔細に再現しています。

これらのヴィンテージギターは単体でも100万円を超え、3,000万円を超える個体もあります。全部買おうとしたら、何千万円かかるかわかりません。Variaxは初心者が最初に手に入れるにはちょっとハードルの高い価格かもしれませんが、「音」だけで考えるならば「世界最強レベルでコストパフォーマンスが優れているギター」だと言えるでしょう。


Line 6 JTV69 USA James Tyler Custom – part 1
ギブソン・スーパー400の音を出しているところですが、ピックから親指に変えたらちゃんと音色が変化し、ブラッシング音もそのまま再現されていますね。高度なモデリング技術によって、名機の表現力がそのまま再現されているのだということが分かります。

アコギの音や、珍しい楽器の音も出せる

ギターのモデリングは、エレキギターにとどまりません。ギターモデル「Acoustic」では、ヴィンテージのマーチンギルドギブソンのアコギの音を出すことができます。マーチンの定番機種D-28とギブソンの定番機種J-200を選べるというぜいたく設計であるほか12弦も2種類あり、バリエーションについては充分だと言えるでしょう。アコギを選択している時には、トーン回路の操作でマイクの位置を変更することができ、音色の印象を自分の好みに合わせることができます。

ギターモデル「Reso」では、ドブロやバンジョー、シタールといった比較的珍しい楽器の音を出すことができます。こうしたモデリングは今のところ金属の弦を使用する楽器に限られていて、クラシックギターやウクレレ(ナイロン弦)の音はありません。日本人としてはここに琴や津軽三味線(絹やナイロンの弦)が欲しいところですが、これは今後の技術革新に期待しましょう。

変則チューニングを再現できる

「オルタネート・チューニング・ノブ」の操作によって、プリセットされたさまざまなチューニングに一瞬にして変えられるのも、Variaxの大きな特徴です。「半音下げチューニング」や「ドロップD・チューニング」など代表的なもの、「DADGAD」や「GBDGBD」といったオープンチューニングなど、10種類のプリセットが準備されています。これに「ノーマルチューニング(STANDARD)」とPC上で作成するための「MODEL」が加わる全12種類のチューニングを、ペグを実際に回すことなく使い分けることができます。

Variax STANDARD:コントロール・ノブ Variax STANDARDに搭載されるコントロール・ノブ:DADGAD、OPEN Dなど様々なチューニングに素早くアクセスできる

10種類のプリセットは、PCが無くてもギター本体の操作で自分の好きなチューニングに設定し直すことができます。可調範囲は1オクターブもありますから、

  • 全弦1オクターブ下げた「フェンダー・ベースVI」のチューニング
  • カポタストを使用した時のチューニング
  • 自分で考案したオープンチューニング

など、さまざまなチューニングを記憶させることができます。

ただし、これはあくまでもアンプに送られる音の高さが変わる機能なので、弦自体のチューニングはそのままです。ですから自宅練習などで弦の生音が耳に入ってくるような環境でチューニング変更機能を使用すると、非常に気持ち悪いことになるでしょう。ヘッドホンを使用するなら、外部の音をシャットアウトできる「密閉型」がおすすめです。
夜にギターを練習するのにオススメのヘッドフォン


Line 6 Variax Shuriken Electric Guitar – New From NAMM 2017
NAMMショウにて、MacKay氏ご本人がSHURIKENを紹介しています。ヘヴィサウンドからメロウなアコースティックサウンド、ギロギロのダウンチューニングと、簡単に切り替えていますね。

自分好みの設定を瞬時に呼び出せる

多機能なギターで陥りがちなのが、「操作が複雑でプレイに支障が出る」ということです。Variaxのギターモデル・セレクター・ノブとオルタネート・チューニング・ノブはいずれも「12点式」のロータリースイッチになっていて大変な多機能ですが、演奏中に7番目や8番目のバンクに合わせるのにはかなり神経を使うことでしょう。

そういうことから、ギターモデル・セレクター・ノブを右に回しきったポジションと逆に回しきったポジションは、それぞれが自分の設定を記憶できるバンクになっています(Shurikenでは、頭から4つ)。各バンクに5つずつ、ギターの種類とチューニングの組み合わせで自分の設定を記憶させることができますから、ストレスなく設定を切り替えられるように準備することができます。

また同社のエフェクター/ギター・プロセッサー「Helix」などとVariaxを連携させることで、

  • イントロとAメロはリヴァーブをかけたマーチンD-28で、3フレットにカポタスト
  • BメロとサビはクランチのストラトキャスターでドロップDチューニング
  • ソロでは、オーバードライブとディレイのかかったレスポール

というように、ギター、チューニング、エフェクトの持ち替えや切り替えを、一発で行うことができてしまいます。


Amazing Line 6 Medley with FIREHAWK FX & Variax Standard Winter NAMM 2015 ’15
Variax STANDARDをLINE6「FIREHAWK FX」と連携させて、さまざまな設定を次々と切り替えていきます。演奏中にチューニングが変更されることもあったようですが、気が付きましたか?

Line6 HELIX – Supernice!エフェクター
LINE6 Helix LT – Supernice!エフェクター

専用ソフトで夢のギターを作ることができる

Variaxはギター単体の操作でも、ギターモデルとチューニングの組み合わせでさまざまな設定を保存することができます。しかし専用ソフト「Variax Workbench HD(ワークベンチ)」を使用することで、さらに追い込んだセッティングを作ることができます。

Variax Workbench Variax Workbenchの画面

ワークベンチでは、

  • ギター本体の種類
  • 搭載するピックアップの種類とマウント位置、そして角度
  • 各弦のチューニングと音量
  • ボリューム・ポットの抵抗とテーパー(=変化の仕方)
  • トーン・ポットの抵抗とコンデンサの静電容量

という微に入り細に至る設定ができます。

ギター本体はギターモデル・セレクター・ノブで選択できるものが全て使用できるほか、まさかの「ボディなし」も選ぶことができます。ピックアップのマウント位置は、フロント、リアといった大雑把なものだけでなく、「ちょっとだけ後ろ」などの微調整が可能です。各弦のチューニングはほんの僅かだけずらすような調整も可能で、音量は「ゼロ」にもできるため、例えば6弦の音量を0にしたら、キース・リチャーズ氏の使用で名高い「5弦ギター」を作ることもできますし、全弦の音量を0にして、擬似的にキルスイッチを作ることもできます。


たかはし愛用ギター紹介「James Tyler Variax JTV-89」
ワークベンチを使い、さまざまな設定で音がどのように変わっていくのかを実演してくれています。とってもカンタンそうですね。

Variaxのメリット

さまざまなヴィンテージギターをとっかえひっかえ鳴らすことができて、ペグをいちいち回さなくてもチューニングを変更できて、なおかつもっと細かな設定もできるというVariaxには、さまざまな可能性が考えられます。普通に楽しく演奏する以外に、Variaxにはどんなメリットがあるのかを想像してみましょう。

さまざまなギターの音を確認できる

ギターの音を覚えるためには本物を実際に触った方がいいのでしょうけど、代表的なブランドのギターを借りてきて長時間弾き倒したり、実際にライブで使ってみたりするのはなかなかできることではありません。Variaxは一台でさまざまなギターの音を出すことができますから、「ストラトキャスターとは、どういう音か」「マーチンD-28とギブソンJ-200の音の違いは」など、ギターそれぞれのサウンドについてじっくり勉強することができます。

さまざまな曲を演奏するときに有利

世の中にはレギュラーチューニングで演奏するバンドも、半音下げチューニングを基本とするバンドも、もっと違うチューニングを使用するバンドもありますね。曲によってはアコギを使うかもしれません。レギュラーチューニングも半音下げチューニングも、アコギもあって、という演目でライブをやろうと思ったら、ギターを何本も運ばなければなりませんし、ライブ中に何度もギターを持ちかえなければなりません。しかしVariaxなら、一本持っていけば用が済んでしまいます。とくに公共交通機関を利用するバンドマンにとっては、これほどありがたいことはないのではないでしょうか。


Line 6 JTV-59 James Tyler Variax
動画サイトで検索すれば、Variaxのデモ演奏動画はかなりたくさん確認することができます。大多数の動画で真っ先にアコースティックギターやシタールの音色でのプレイが始まりますが、やはりこのようなルックスのギターから本格的なアコギの音が得られるのは、衝撃と言うしかありません。音色の変更、チューニングの変更も実に素早く行うことができます。

ライブに強い

フルアコセミアコ、アコースティックギターはボディが豊かに振動することから、大音量で鳴らすとハウリングが起こる可能性が高まります。しかしVariaxはソリッドボディなので、「箱モノ」のサウンドでもハウリングを恐れることなく、ライブ会場で爆音を響かせることができます。
ソリッドギター/フルアコ/セミアコの違いについて

また、終盤で半音上などの転調が起こる曲でも、あらかじめ「全弦半音上げ」などのチューニングを設定しておけば、楽勝で対応することができます(プロミュージシャンを目指している人は、この機能に頼らなくても転調できるようにしましょうね)。

レコーディングに強い

いちいち持ち替えなくて済む、何本も持っていかなくてもよい、というメリットは、レコ-ディングでも同様です。特に何本もギターを重ね録りする場合には、同じギターで何回も録音するより違ったギターを重ねた方が、サウンドが豊かになることは多くあります。

また、弦ごとに音量を調節できる機能を利用すれば、「カッティングをキレイに録音するため、5弦と6弦の音が出ないようにする」など、不要弦のミュートを気にしなくてもよくできる、ちょっと卑怯な技もできます。

数々の不可能にチャレンジできる

Variaxは様々なギターの音を出すことができますが、当然のことながら楽器本体の形状や寸法、また弦高の本数が変わるわけではありません。ですから、

  • グレッチ1620やギブソンES-175など、ストラトよりハイポジションが弾きにくいギターで、ハイポジションをやたらと弾く
  • 12弦ギターでチョーキングする
  • アコースティックギターでアーミングする

など、お手本のギターではとてもできないプレイもできるわけです。アイディア次第で、従来のギターの常識を根底から覆す「新しいギターサウンド」を作ることができる可能性があります。

楽器の特徴を考慮する

ただし、演奏に制限が無くなるのは注意点にもなります。ギターはさまざまなボディ形状、ネック形状、寸法、重量バランスを持っていますから、プレイアビリティも様々です。Variaxは「常に同じ弾き心地で、違うギターの音が出せる」のが大きなメリットですが、逆の価値観として、ギタリストはギターを持ち替えることでフィーリングが変化し、プレイ内容が変化するものです。

それは気持ち的な側面だけでなく、

  • ストラトとテレキャス、レスポールでは、座って構えた時のネックの位置が異なる
  • フルアコでは、15フレット以上は実用的ではない
  • 細めのネックでは、チョーキングをしたくなる
  • シンクロとFRTとビグズビーでは、可変域が異なる

など、ギター本体の形状や仕様から導き出されるプレイ内容があるわけです。プレイに制限がないからと言ってあまり無茶なことばかりすると、耳の肥えたリスナーにとっては不自然に聞こえてしまうかもしれません。

達人ならばVariaxで「いかにもそのギターそのものを弾いているかのように弾く」という芸当もできるでしょう。「楽器の特徴を考慮する」というのは、エレクトーンの演奏やDTMでの打ち込みなどでは当たり前のように行われていることですが、遂にエレキギターでもこうしたスキルが必要になる時代が到来したわけです。

Variaxの注意点

さて大変便利なVariaxですが、使用するにあたって気をつけておかなければならないことがあります。第一に、電気回路のコンディションです。電池切れや回路の故障には細心の注意を払っておく必要があります。

電源の確保

Variax Li-Ion Battery Variax Li-Ion Battery

Variax専用のリチウムイオン電池は、フル充電で12時間の使用に耐えますから、たいがいのライブステージでは途中で電池が切れることはありません。またHELIXなどLINE6のエフェクタから電源を供給することができますから、何十時間と連続して演奏することも可能です。万が一演奏中に電池が切れても、「Variaxモード」を解除すれば普通のエレキギターとして演奏を続行することができます。スペアの電池と充電器も付属されているので、片方の電池を使用している間に充電を済ませることができます。

Variaxに限らず、例えばEMGなどアクティブ・ピックアップを使用する場合においても、電池が切れたら音は出なくなってしまいます。電池のコンディションには、じゅうぶんな注意が必要です。

故障への対処

セレクタスイッチやボリューム・ポットに至るまで、電気部品はすべて心臓部の基盤と連携する特殊な部品ですから、普通のリペアマンの手には負えません。そのため仮に故障が発生してパーツ交換が必要になった場合には、現状ではメーカーに送る以外の対処法がありません。Variaxで活発な音楽活動を展開しようと思ったら、保険でサブのVariaxを一台持っておく必要があるでしょう。

また、メーカーが修理を請け負うのも永遠ではありません。デビュー当時のVariax(生産終了)については、メーカーのサポートも終了しています。高温多湿な環境に保管、悪天候の野外ライブなど、電気回路に負担をかけるような扱いは避けるのがいいでしょう。

Variaxのラインナップ

では、Variaxのラインナップをチェックしていきましょう。それぞれにギターとしての個性がしっかりあり、なおかつ操作法やチューニングなどで、電気部分にも違いを確認できます。