ディマジオ(DiMarzio)ピックアップの種類と特徴

[記事公開日]2023/9/17 [最終更新日]2024/4/18
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

ディマジオ

「ディマジオ(DiMarzio)」は1975年、ラリー・ディマジオ(Larry DiMarzio)氏により設立されたブランドです。ギターメーカー純正のピックアップしかなかった時代に交換用ピックアップを世に広め、「ギターを自分用にカスタマイズする」という新しい常識を作り上げたほか、B.C.リッチ、シャーベル、アイバニーズら新興ブランドの隆盛にも大きく貢献しました。創業から40年以上を経た今なお、ギタリストやギターメーカーの夢を具体化させるサポーターとして、世界中で支持されています。今回は、そんなディマジオのピックアップに注目していきましょう。


Kiss – Psycho Circus
エース・フレイリー氏がKISSで放つディストーション・サウンドが高く評価され、名ハムバッカー「Super Distortion」は大いに名を上げた。ディマジオ氏はKISSのベーシスト、ジーン・シモンズ氏と同窓生で、ミュージシャン仲間でもあった。KISS結成以前のシモンズ氏に演奏の仕事を紹介したこともあり、KISS結成以降も付き合いが続いていた。


  1. 創設者ラリー・ディマジオの略歴
  2. ディマジオ・ピックアップの特徴
  3. ディマジオ・ピックアップが標準搭載されたギター
  4. ディマジオ・ピックアップのラインナップ

創設者ラリー・ディマジオの略歴

ディマジオについて見ていく前に、同社を設立して今なお活躍を続けているラリー・ディマジオ氏について見ていきましょう。

音楽好きの家庭に生まれ、ロック好きの青年になる

ディマジオ創設者ラリー・ディマジオ氏は1948年8月、ニューヨーク市の外れにあるスタテンアイランドに生まれます。6歳のころ叔父に連れられたオペラ鑑賞から音楽への興味が芽生え、13歳でギターを始めました。その後ブルックリン工科大学(米国トップクラスの公立高校)に進学し、電子工学を学ぶかたわらバンドを始めます。週末には学校の近くにあったロック系ライブハウス「フィルモア・イースト」に入り浸り、ミュージシャンと交流していきます。ジーン・シモンズ氏(KISS所属)と友達になったのもこの頃です。

リペアマンとして名を上げていく

社会人となったディマジオ氏でしたが、それまでリペアマンとしてのキャリアを積だわけではありませんでした。しかし、ディストーション回路を内蔵するなどご自身で魔改造を施したストラトキャスターが高く評価され、のちにベース職人として大成するカール・トンプソン氏の後任として、当時ギブソン/フェンダー両社の認定修理センターだったリペアショップ「Guitar Lab(ギター・ラボ)」に就職します。

ピックアップにのめり込んでいく

箱一杯の壊れたピックアップを修理した時に、一つの転機が訪れます。ディマジオ氏は修理とその結果に関してのデータをすべてメモし、可能な限りサンプルを集めてノウハウを蓄積していきます。その過程で、ファズに頼らずに太いディストーション・サウンドを得るためには、パワフルなピックアップが必要だという結論に達します。またディマジオ氏にとって、そのピックアップは純正品と互換性があり、ギターを加工せずに装着できる必要がありました。
Guitar Labがギブソン/フェンダー両社の認定修理センターだったことから、ディマジオ氏はピックアップの純正パーツを入手できました。これを使えば、ギブソンやフェンダーのギターと互換性のある新しいピックアップを作ることができるわけです。

世界初の交換用ピックアップ「ファット・ストラト(FS-1)」

ストラトキャスターのリアピックアップに不満を持っていたディマジオ氏は、アンプで歪ませるのに良好な出力を持ったリア用シングルコイル「ファット・ストラト」を開発、これが世界初の交換用ピックアップとなりました。ファット・ストラトは多くのプレイヤーに愛用され、「FS-1(DP110)」のモデル名で今なおラインナップされています。

「Super Distortion」の成功から会社設立

Dimarzio Super Distortion Super Distortion(DP100)
ディマジオの名を世界に知らしめた歴史的名機にして、ディマジオのアイデンティティ。フルサイズのハムバッカーを基本とし、ストラト用、テレキャスター用、ソープバー各タイプでも再現されている。

ファット・ストラトから得た知見を利用し、ディマジオ氏はハムバッカーの開発に着手します。手元にあったセラミック磁石を使用することから始め、良い音色で高出力な、アンプの歪みとサスティンを長く持続できるピックアップを目指して1971年、遂に名ハムバッカー「スーパー・ディストーション(Super Distortion)」が完成します。スーパー・ディストーションはKISSのエース・フレーリー氏、アル・ディ・メオラ氏、デヴィッド・ボウイ・バンドのアール・スリック氏らが愛用し、評判を呼びます。
この時点では、ディマジオ氏はまだ個人事業主だったようです。このあとディマジオ氏は1975年に会社を設立、ピックアップメーカーとしてさまざまなアーティストのピックアップを開発し、また新興ギターメーカーから注文を受け、業績を伸ばしていきました。会社創設者ラリー・ディマジオ氏は今なおディマジオ社のプレジデントとして、ピックアップの開発を続けています。

ディマジオ・ピックアップの特徴

ディマジオのピックアップは音の分離感が良好で、ディストーションをかけても音が潰れず、コードがハッキリ聴き取れる高い解像度を持っていると言われます。パワーと繊細さを兼ね備えていることが、ディマジオ製品最大の特徴です。

数々の独自設計

ディマジオはヴィンテージ系のサウンドに敬意を払いつつ、ヴィンテージスペックの再現よりも新しい設計の採用に積極的です。いろいろなモデルにディマジオ独自の設計が採用されています。

ヘキサポールピース

ヘキサポールピース ヘキサポールピースを採用したシングルコイル、SDS-1(DP111)。コレがあれば、各弦の音量バランスのバラつきなどオサラバだ。
6角形の孔が掘られた「ヘキサポールピース」は、ディマジオ製品の多くに見られる同社を象徴する設計です。オーソドックスなPAFタイプで使用されるマイナスネジのポールピースと比べると磁界の出方が異なって、違ったニュアンスが得られると言われています。しかしそれより、多くのギタリストが携行しているであろう6角レンチで高さ調節できるのが、最も大きなメリットです。

エアバッカー・テクノロジー

AIR NORTON 7 AIR NORTON 7(DP793)。7弦ギターでヴィンテージ系のサウンドが得られる。
「Airbucker(エアバッカー)テクノロジー」は、磁石とポールピースの間を僅かに離す独自設計です。これによってピックアップ上の磁場がやや弱くなり、弦への影響が軽減されます。そのため、ヴィンテージ・ハムバッカーに見られるピュアでオープンなサウンド、また豊かなサスティンが得られます。
従来の設計でアルニコ2や経年劣化したアルニコ5を採用しても同様の弱い磁場が形成されますが、サスティンの高域が削られて濁って聞こえてしまいます。安定した最大強度の磁石で作為的に弱い磁場を展開することでこの欠点が克服され、高域の削られないクリアなサスティンが得られます。

バーチャル・ヴィンテージ

DP402 VIRTUAL VINTAGE BLUES(DP402)
本国ではさまざまなカラーリングが楽しめるらしい。

モデル名にも使用されている「Virtual Vintage(バーチャル・ヴィンテージ)」は、ディマジオの保有する特許技術の一つです。具体的にどういった技術なのかは公開されていませんが、現代的な構造を採用しながらヴィンテージそのもののサウンドを得ることができる技術だと考えられます。

デュアル・レゾナンス・コイル

DP155 THE TONE ZONE(DP155)
ブラックメタルカバーとゴールドポールピースの組み合わせ。

「デュアル・レゾナンス・コイル(dual-resonance coils)」は、ハムバッカーを構成する二つのコイルを相互補完的に機能させることで狙ったサウンドを作る、ディマジオの特許技術です。ゲージの異なる銅線を巻いたり巻き数を変更したりと、さまざまな組み合わせが使われます。ヴィンテージPAFではコイルの個体差によって魔法のように音の良いハムバッカーが偶発的に作られていましたが、ディマジオはそれを狙ってやってのけているわけです。
また、それぞれのコイルが異なる周波数レンジと出力に調整されているため、両方のポールピースを調節できるモデルでは弦の出力だけでなく音色まで微調整できます。

弦間ピッチへの対応

DP286F DARK MATTER 2 BRIDGE(DP286F)。アーティストモデルなどでは、Fスペース仕様のみのモデルも多い。

弦同士の距離を「弦間ピッチ」と言います。エレキギターの弦間ピッチにはフェンダー系とギブソン系の2種類があり、フェンダー系の方が僅かに広くなっています。フェンダーのストラトにギブソンのPAFを載せると、弦がポールピースからはみ出してしまうわけです。それでもフロント位置では弦の振幅が充分に大きいので有意な影響はありませんが、リア位置では振幅が小さいので各弦の音量バランスが崩れてしまいます。
そこで、リア用ハムバッカーではギブソン系に「スタンダード・スペース」、フェンダー系に「Fスペース」という二つのタイプが選べるようになっています。なお、リアピックアップ位置で1弦から6弦までが約49ミリならスタンダード・スペース、約52ミリなど50ミリ以上ならFスペースが推奨です。

ラインナップはパッシブ・ピックアップのみ

DP220 D ACTIVATOR BRIDGE [DP220]。アクティブ特有のサウンドをパッシブで達成し、さらに性能面で上回ったという野心的な製品。日本の公式サイトでは「アクティブ・ピックアップにありがちな”無個性でコシの無い音”」という表現まであり、アクティブを敵視しているとさえ感じられる。

ディマジオ・ピックアップのラインナップにおいて、アクティブ・ピックアップが存在しないのは注目に値します。本国の公式サイトにおいても短く、「All DiMarzio® pickups are passive and do not require a battery.(ディマジオのピックアップは全てパッシブであり、電池を必要としない)」と述べられており、ベースやアコギのピックアップにおいてもこれは徹底されています。とはいえアクティブ・ピックアップの利点はしっかり研究していて、これを越えるものをパッシブで作ることに並々ならぬ熱意を持っているようです。

アメリカンなカラーバリエーション

DP110 コレ、ぜーんぶSuper Distortion(DP110)。ボビンとポールピースの組み合わせがいろいろある。

ディマジオのハムバッカー第一号「Super Distortion(DP100)」は、両方ともクリーム色のボビン「ダブルクリーム・ボビン」を使って、ルックス面でもギブソンと差別化しました。その歴史あってか、ディマジオ製品にはピンクやブルー、パープルなどアメリカンなカラーバリエーションが驚くほどたくさんあります。オーソドックスな色に人気は集中しがちですが、日本国内でもアーティスト仕様のギターなどで採用例が散見できます。


スティーヴ・ヴァイ氏シグネイチャーモデルIbanez「UV70P」。アーティストモデルのギターなどで思い切った色のピックアップを見かけるとびっくりするが、ディマジオは最初からこうした強烈なカラーバリエーションを提供する準備ができている。

ディマジオ・ピックアップが標準搭載されたギター

ディマジオは、立ち上げ当初から新興ギターメーカーにピックアップを供給していました。ギターメーカーの意向を反映したピックアップを開発することもあり、現在でもさまざまな一流メーカーとの強いつながりを持っています。アーティストモデルだけでなくレギュラーモデルとしても、ディマジオ製ピックアップを搭載したギターが多くリリースされています。「Super Distortion(DP100)」で名を馳せたディマジオだけにそのイメージは強く、レギュラーモデルにおいてはハード/ヘヴィ志向のギターに採用される例が多く見られます。

ERNIE BALL MUSIC MAN「AXIS」

MUSIC MAN AXIS

ERNIE BALL MUSIC MAN「AXIS」は、エドワード・ヴァン・ヘイレン氏のシグネイチャーモデル「EVH」を祖先とする同社の定番機種です。初号機からディマジオ製ピックアップを採用した歴史にならい、今でもこのモデルのためのディマジオ製カスタム・ピックアップが採用されています。

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Ibanez「RG」

上:RG8020G、下:RG421HPAM
両機とも、DiMarzio「Air Norton」&「The Tone Zone」の王道の組み合わせ。4倍近い価格差で同じピックアップを搭載するこの2本、弾き比べしてみたい。

Ibanez(アイバニーズ)は、代表機種「RG」をはじめとする多くのモデルにディマジオ製ピックアップを採用しています。シグネイチャーモデルをリリースしているアーティストの多くがディマジオを愛用し、またIbanez専用のピックアップが開発されることもあり、両社の連携は強固に保たれています。

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Jackson「MJ SERIES DINKY DKR」

Jackson MJ SERIES

ジャクソンの日本製モデル「MJシリーズ」は、ボルトオンモデル「Dinky」のラインナップが厚く、ボディ材やカラーリングに加え、ピックアップにもバリエーションが設けてあります。12フレット地点にのみシャークフィン・インレイをあしらった新しいルックスが特徴の「DINKY DKR」には、リアに「Super Distortion(DP100)」、フロントに「PAF Pro(DP151)」というヘヴィ系王道の組み合わせが採用されています。

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ディマジオ・ピックアップのラインナップ

では、ディマジオが誇る膨大なラインナップのピックアップをチェックしていきましょう。なお、非常にモデル数の多い「ハムバッカー」と「ストラト用」については別記事でまとめています。リンク先を参照してください。

ディマジオのハムバッカーについて
ディマジオのストラト用ピックアップ

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