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《トラッドの誇り》Navigatorのギターについて

「Navigator(ナビゲーター)」は株式会社ESPが保有する、同社のESPに並ぶ高級ブランドです。1975年にESP社の設立された当時からギターを作り続けており実に40年以上、こだわりの強いプレイヤーのために高品位なギターを作り続けています。現在ではESPがオリジナルモデルをリリースしているのに対し、ナビゲーターは伝統的なスタイルのギターに特化したラインナップを展開しています。今回は、このナビゲーターをピックアップしていきましょう。


Hi-STANDARD – Stay Gold [OFFICIAL MUSIC VIDEO]
パワフルなサウンドと突き抜けるビート感、Hi-STANDARDは今なおロックシーンをリードする存在です。ギタリスト横山健氏は現在さまざまなギターを使い分けていますが、ナビゲーターの「ガムテを貼ったレスポール」は長らく氏のトレードマークでした。

Navigatorの特徴

「コピーモデル中心」と言われることもあるナビゲーターですが、作られているギターはただお手本を追いかけているだけのものではなく、ヴィンテージ市場で人気の高いギブソンおよびフェンダーのギターの雰囲気を大切にしながらも品質と音に細かくこだわりぬいた頼れる楽器になっています。まずは、その特徴を見てみましょう。

1) 最高の素材を駆使し、最高の技術を傾注したトラディショナルモデル

ナビゲーターのギターにはホンジュラスマホガニーやホンジュラスローズ、スワンプアッシュなど、評価の高い木材が使われ、日本国内のESP工場にて、ESPブランド同様に丁寧に製造されます。選定される木材についても加工技術についても、搭載されるパーツについても最高水準のものが注がれます。
ギターのボディ材について

独自色を追求するESPがネックの補強やジョイント法など性能面でのオリジナリティを追求しているのに対して、ナビゲーターは「トラディショナル(伝統的)」であることを追求しています。楽器本体がヴィンテージギターの仕様を踏襲して作られているので、ブランドイメージを打ち出すような尖った個性を持っているわけではありません。そのため、ある程度ギターを弾いてきた人なら、ほぼ抵抗なく弾きこなすことができる親しみやすさがあります。

トラディショナルの追及ゆえに、大まかな外観からピックガードが単板なのか多層構造なのか、ネジが何本かといった細かなポイントまで、お手本となっているヴィンテージギターの年代に応じた仕様をある程度押さえており、かつ経年変化を模した意匠を施すことによってオールドギターの帯びる雰囲気が醸し出されています。それでいて精度の高さで世界的に知られるGOTOH(ゴトー)製のペグやトレモロシステム、プロ仕様大定番となっているセイモア・ダンカンピックアップなど、パーツ類にプロミュージシャンが必要とする性能を備えたものがセレクトされており、現場のミュージシャンを支える「道具」としての高い性能を備えています。

2) セットネックモデルは「ディープジョイント」が基本

レスポール・タイプSGタイプ共に、ネックの末端がフロントピックアップの下にまで達するジョイント法「ディープジョイント」が採用されています。これは50年代までのレスポールの製造法を受け継いだものですが、ネックを深く挿入するぶんだけネック材に長さが求められること、ボディの穴開け加工が多くなって手間がかかることなどで、現在の一般的な工法から見ると余計にコストがかかる高級仕様です。

ネック&ボディが接する面積が大きいことからジョイントが強固で、サスティン(音の伸び)に優れていると考えられていることからも、現在では高級機御用達のジョイント法になっています。しかしだからといって、「これはディープジョイントだからこそのサウンドだ」と言い切れるほどサウンドに明らかな影響があるという訳ではありません。あくまでも「ヴィンテージギターと同じ構造になっている高級な仕様」である、というところに高い価値があります。

考察:「ディープジョイント」は本当に良いのか?

ディープジョイントのメリットとして

  • 深く挿入されるぶんだけ強固にジョイントされる
  • ボディに接する面積が増えサスティンに優れる

というものが挙げられているのは先に述べたとおりです。ディープジョイントが高級仕様なのは間違いありませんが、「だから良い/悪い」というような偏見に陥ってしまわないために、敢えてここに切り込んでみましょう。

そもそもディープジョイントは、「ボディに対して真っすぐにネックを仕込むための工法」です。50年代の設計はネックブロック(ネック側)が大きかったために、ネックポケット(ボディ側)も大きく切削する必要がありました。浅いジョイントではカッタウェイのぶんだけネックポケット1弦側の強度が不足するため、セットしたネックが傾いてしまう可能性があります。これがフロントピックアップ付近まで来るとネックポケット両側の強度を充分に確保できるため、セットしたネックが傾かないというわけです。しかし現在の加工技術では、そこまで深く挿入しなくても真っすぐ強固にジョイントすることができます。高精度で評価される日本製ならなおさらであり、今やディープジョイントはきちんとした製品を作るために必須の工法ではなくなっています。

では、サスティンはどうでしょうか。「音の伸び」すなわちギターでいう「弦振動の持続」は、振動のロスが少なくなることで向上します。振動を吸収してしまうような柔らかく軽量な素材や構造ではサスティンは伸びず、反対に振動を跳ね返すような硬く重い素材や剛性の高い構造でサスティンは伸びます。ジョイント法よりも楽器本体の剛性が、サスティンにとっては依存度が高いと考えられるのです。「ディープジョイントのギターはサスティンが豊かである」という意見が多数派ですが、「ディープジョイントを採用するほどの高級ギターだからしっかり作ってあるので、音が伸びる」というのが本当のところのようです。「僕のギターはディープジョイントだから音が伸びる」や「ディープジョイントじゃないから音が伸びない」というわけではありません。

3) 全モデル「ニトロセルロースラッカー」塗装

ナビゲーターのギターは、全モデル共通してニトロセルロースラッカー塗装が施されます。1920年代初頭に開発されたニトロセルロースラッカーは、それまでの塗料に比べて色のバリエーションと速乾性に優れ、以後30年間にわたって自動車の外装で使用されました。現代では溶媒の揮発性と毒性が問題視され取り扱いが難しい塗料になってしまいましたし、強度と安定性は新しい塗料の方が優れています。何度も重ねて塗る作業に手間がかかることから現代の感覚ではコストもかかりますが、「当時はラッカーだった」という事実こそが重要です。トラディショナルであればこそ、塗装はラッカーである必要があります。

またラッカーは木目が浮き出てきたり割れてきたり、また長年の使用で欠けたり剥がれたりするなどの「経年変化」を楽しむことができます。出荷されてからもじわじわと乾燥を続けることから、音が変化していく過程を味わうこともできます。他の塗装に比べて補修が比較的容易であることもメリットの一つです。

4) 高品位定番「セイモア・ダンカン」ピックアップ搭載

ナビゲーターのギターには全機種共通してセイモアダンカンのピックアップが採用されますが、そのラインナップの中でも特にグレードの高い物やスタンダードとなっているものがセレクトされます。同社はいち早く交換用ピックアップの製造を開始した、この分野での老舗中の老舗です。今なお多くのプロミュージシャンが自身のサウンドのよりどころにしており、この分野では大定番となっています。

手巻きシングルコイル「ANTIQUITY」シリーズ

セイモア・ダンカンの「アンティクイティ」シリーズは、
50年代のレプリカ:ANTIQUITY


Antiquity Texas Hot
エレキギターの音はピックアップ単体で決まるわけではありませんが、「Hot」という名の通り、カラッとしながらも太さのあるサウンドですね。

60年代のレプリカ:ANTIQUITY II


Antiquity II Surfer
「サーフミュージックにフィットする」ことに由来するネーミングですが、鋭く立ち上がるトーンはさまざまなジャンルで使えそうです。

の二つで構成されます。いずれもヴィンテージピックアップと同様の工程で手巻きされ、当時のサウンドに肉薄することに成功しています。またエイジド処理により、使い込んだ雰囲気が演出されています。手巻きの作業には細心の注意が払われ、磁極や巻き方など製法と構造が忠実に再現されています。
エフェクタを多用する現代的なアプローチに対応するため、リア用のみパワーを増強した“Custom Bridge”も作られていますが、ナビゲーターのギターでは非採用となっています。

ギブソン系のギターに搭載されるピックアップ

ギブソン系のギターに対しては、グレードの高い物から安心のスタンダード機まで、それぞれのコンセプトに相応しいピックアップがセレクトされています。

「Seth Lover model」SH-55


Seth Lover SH-55 Guitar Pickup
素直に「こんな音出したい!」って思わせるサウンドですね。

レスポールタイプ「N-LP-STD」及び「N-LP-CTM」に採用されているピックアップ「SH-55」は別名「セス・ラバー・モデル」と呼ばれています。セイモア・ダンカン氏とセス・ラバー氏(ギブソンのオリジナルP.A.F開発者)の共同開発によって、オリジナルP.A.Fが仕様、構造ともに完全に再現されています。オリジナルP.A.Fの再現に挑むハイエンドピックアップは数あれど、開発者本人による完全再現はまさに究極と言えるでしょう。

「’59」SH-1&「JB」SH-4

フロントにSH-1、リアにSH-4という組み合わせはあらゆるジャンルで使用できるオールマイティーなものとして、多くのブランドのさまざまなギターで採用されています。ナビゲーターではVタイプの「N-FV-LTD」、及びエクスプローラータイプの「N-EX-LTD」に使われます。
1959年製レスポール・スタンダードにマウントされていたP.A.Fの再現に挑んだSH-1は「’59 model」と呼ばれ、暖かさと明瞭さを併せ持つ伸びのあるサウンドが持ち味です。SH-4の別名「JB」はジェフ・ベック氏を由来とし、倍音が豊かでオーバードライブやディストーションが特に気持ちよく使用できるのが特徴です。


さて、次のページではいよいよナビゲーターのギターラインナップについて見ていきます。