アッパー・ストラクチャー・トライアド:その3「コードにおけるUST」

[記事公開日]2015/9/19 [最終更新日]2016/9/19
[編集者]神崎聡

前回、前々回に引き続き、アッパー・ストラクチャー・トライアド(UST)です。

今回は各コードにおけるアッパー・ストラクチャー・トライアドを見てみましょう!

各コードに対するUST

USTはコードトーンとそのテンションとで決まるのでコードのテンション・ノートごと(スケールごと)にわけて覚えるようにしてください。

① メジャーセブンス・コード

・M7(9,13)
メジャー・キーにおけるⅠM7、マイナー・キーにおけるbⅢM7等

アイオニアン・スケール

ust_3_01 ×はアボイド・ノートを意味します

UST : Ⅴ△、Ⅵm△
(それぞれのコードに対するUSTを覚えやすくするためにUSTを階数表記しています。階数表記とは?
この場合はコードのルートをⅠとして、USTのルートの音程を

ust_3_19

としたものです。
また、△はトライアドを示し、音名と区別しやすいようにするものです。)

M7(9,#11,13)
メジャー・キーにおけるⅣM7、マイナー・キーにおけるbⅥM7等
(M7コードではアイオニアンよりもリディアンのほうが多く使われます。)

リディアン・スケール

ust_3_02

UST : Ⅱ△、 Ⅴ△、Ⅵm△、Ⅶm△
リディアンとアイオニアンとの違いは第4音です。アイオニアンの場合は第4音はアボイド、リディアンでは#11のテンションになります。
そのテンションの違いでアイオニアン上にできるUSTに加え、Ⅱ△とⅦm△ができます。
この違いを覚えてください。

② マイナー・セブンス・コード

m7(9,11)
※これらはアボイドになる音が違うスケールなのでテンションは同じですメジャー・キーにおけるⅡm7・Ⅵm7、マイナー・キーにおけるⅠm7・Ⅳm7
ⅡーⅤ進行での一時的なⅡm7

ドリアン・スケール、エオリアン・スケール

ust_3_03 譜例中の(b)が付いたものがエオリアン、無いものがドリアンになります

UST : Ⅴm△、bⅦ△

m7(11)
メジャー・キーにおけるⅢm7、マイナー・キーにおけるⅤm7

フリジアン・スケール

ust_3_04

UST :無し

③ セブンス・コード

・7(9,13)
メジャー・キーにおけるⅤ7、マイナー・キーにおけるbⅦ7、ブルースにおけるⅠ7・Ⅳ7
※セブンス・コードはノンダイアトニック・コードとしても多用され、コードごとにテンション、スケールが変わります。
ここでは主なコードのみ例であげておきます。
他のコードに付いてはギター音楽理論のページを参照してください。

ミクソリディアン・スケール

ust_3_05

UST : Ⅴm△、Ⅵm△

・7(9,#11,13)
ウラコードとしての7th

リディアン・フラットセブンス・スケール

ust_3_06

UST : Ⅱ△、Ⅴm△、Ⅵm△

・7(b9,b13)
マイナー・キーにおけるⅤ7

フリージアン・メジャー・スケール

ust_3_08

UST : bⅡm△

・7(b9,#9,#11,b13)
メジャー、マイナー各キーでのⅤ7におけるエクステンション

オルタード・スケール

ust_3_07

UST : Ⅰm△(※)、bⅡm△、bⅢ△(※)、bⅢm△、#Ⅳ△、bⅥ△
これらはUSTの中にコードの完全5度の音を含んでいます。
オルタード・スケールはスケール上には完全5度の音を含みませんが、コードトーンとしては含まれています。
スケールとして使われる場合は完全5度を入れると半音が連続してしまい、スケールらしくないからです。
よってここではUSTを考えるのに完全5度の音も含んだもの、としています。

7(b9,#9,#11,13)
メジャー、マイナー各キーでのⅤ7におけるエクステンション

コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール

ust_3_09

UST : Ⅰm△、bⅢ△、bⅢm△、#Ⅳ△、#Ⅳm△、Ⅵ△、Ⅵm△

・7+(9,#11)

ホールトーン・スケール

ust_3_10

UST : 無し

④ マイナー・セブンス・フラットファイブ・コード

・m7(b5)(11,b13)
メジャー・キーにおけるⅦm7(b5)、マイナー・キーにおけるⅡm7(b5)
ⅡーⅤ進行における一時的なⅡm7(b5)

ロクリアン・スケール

ust_3_11

UST : Ⅳm△、bⅥ△

m7(b5)(9,11)
マイナー・キーにおけるⅥm7(b5)

ロクリアン・シャープトゥー・スケール

ust_3_12

UST : bⅦ△

・m7(b5)(9,11,b13)
ⅡーⅤ進行における一時的なⅡm7(b5)

ロクリアン・シャープトゥー・スケール

ust_3_20

UST : Ⅳm△、bⅥ△、bⅦ△

⑤ マイナー・メジャーセブンス・コード

マイナー・キーにおけるⅠmM7、ラインクリシェでのmM7

ust_3_13

UST : Ⅴ△

USTの使い方

① フレーズの一部として使う

ust_3_14

コードトーンのみでできるトライアドや二つ以上のUSTを連結することもあります。

ust_3_15

② コードに加える

コードにUSTを加える場合は、ルートの上に加える

ust_3_16

注:譜例中の左側のコードネームが元となるコードで、ルートの上にUSTを載せると右のように表記される事もあります。

他のコードトーンの上に加える

ust_3_17

注:3度音、5度音、7度音のいずれかの上にUSTを載せたものは別のコードの形になるものがありますが、コードネーム自体は変わりません。
左は元のコード、右は結果的に出来たコードです。

③ 複数のUSTでパターンを作る

コードトーンのみでできるトライアドや一つのコードの中で使えるUSTを組み合わせて、バッキング・パターンを作ります。

ust_3_18


USTは慣れるまで時間がかかりますが、使えるようになるとバッキングやアドリブの際に有効なアイデアの元となってくれます。
一度に覚えようとせず、少しづつ使えそうなものから使ってみてください。

 

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