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SAITO GUITARSのギターについて

SAITO Guitarsのギター

「SAITO GUITARS(サイトー・ギターズ)」は、2014年に始動したばかりの若いギターブランドです。しかしそれ以前に立ち上げた手巻きピックアップブランド「SAYTONE(サイトーン)」の製品が Crews Maniac Sound の製品に採用されるなど成功をおさめており、ギターブランド立ち上げ以前にすでに注目されていました。SAITO GUITARSはこのピックアップを使った品質の高いギターを、手作業にこだわりながらも合理化した生産体制によって低価格で展開することから一気に話題を集めています。今回は、この新進気鋭のギターブランドをチェックしていきましょう。

埼玉県川口市「齋藤楽器工房」の沿革

SAITO GUITARS を統括するサイトウマサアキ氏は、都内楽器店でリペアを担当してキャリアを積み上げ独立、1991年にリペアショップ「齋藤楽器工房」を立ち上げます。楽器店や一般客から寄せられる楽器のリペアを続けながら、オリジナルのギターやベース、アンプ、ピックアップなどを開発していきます。

ヴィンテージピックアップの作られ方を研究した末、手巻きピックアップブランド「SAYTONE Hand Winding Pickups」をたちあげます。この製品がCrewsのギターに採用され、単品での販売も開始していきます。

2012年に工房を埼玉県川口市に移転、2014年にSAYTONEピックアップを搭載したオリジナルのアーチトップギターを製作します。これに手ごたえを感じ、リペア業から製造業へ転身を果たしました。

2014年の楽器フェアにて、オリジナルのアーチトップギター「M」シリーズとミニラップスチールギター「LS-4」を発表し、オリジナルギターブランド「SAITO GUITARS」としてデビュー。翌年にはソリッドギター「S」シリーズを発表、狙いどころを絞って洗練した設計によりヒット作となりました。
男の意地と執念が生み出した革新的ギター:SAITO GUITARS訪問インタビュー

S-622 Morning Glory 人気カラー:S-622 Morning Glory

原点に立ち返った手巻きピックアップ「SAYTONE」

SAYTONEピックアップ

SAITO GUITARSのギターには、同社ブランド「SAYTONE」のピックアップが搭載されます。SAYTONEは「手巻き」製法を売りにしていますが、ヴィンテージギターのトーンを復刻することが第一の目的ではなく、ピックアップの性能を突き詰めていった結果、機械化によって省かれてしまった「手巻き」こそがベストの製法であることに行きついたのだといいます。
SAYTONEピックアップ

SAITO GUITARSのラインナップ

SAITO GUITARSのラインナップは、

  • アーチトップモデル「Mシリーズ」:フルアコをメインに、セミアコも
  • ソリッドギター「Sシリーズ」:ストラトタイプが中心

の2タイプを中心に展開しています。いずれも仕様を選択できる「セレクトオーダー」ができ、好みに合わせたギターを手に入れることができます。
ソリッドギター/フルアコ/セミアコの違いについて

アーチトップモデル「Mシリーズ」

SAITO GUITARSのMシリーズには、

  • M35:ボディ幅13.5インチ
  • M38:ボディ幅15インチ

の2種類があります。13.5インチのM35はレスポールよりわずかに大きめというサイズ感で、15インチのM38はフルアコとしては小さめの部類に入りますが、ジャズギター色の強化された余裕のある鳴りを持ち、「SAITO GUITARSの集大成」と言われています。一般的な16インチや大きめの17インチには行かず、近年一般化しつつあるコンパクトなボディサイズで弾きやすいところを狙ったラインナップになっています。

Mシリーズの特徴

一言でフルアコと言っても、Mシリーズはレスポールタイプのエレキギターを出発点としてフルアコへとアレンジしていったモデルであり、Gibson L-5、Gibson ES-175 など、アコースティックギターを出発点とした従来のフルアコと異なっています。その証拠としてあげられるのが、「ネックジョイントとフレット数」です。一般的なフルアコのネックはアコギと同様、14フレット地点でボディとジョイントされ、フレット数は20です。これに対してMシリーズのネックはレスポールと同様、16フレット地点でボディとジョイントされ、フレット数は22です。カッタウェイが大きく切られていることもあってハイポジションの演奏性が大いに高まるのに加え、レスポールなどソリッドギターからの持ち替えがスムーズにできるメリットがあります。 ポイントを絞ったラインナップ展開がSAITO GUITARSの特徴ですが、このMシリーズにおいては ・24.625インチネック、シャーラー製ペグ。 ・ポジションマークを排した10インチR(250mmR)エボニー指板のシンプルかつ精悍なルックス ・自社製の木製ブリッジ、テールピース、ロッドカバー。 ・高級感のあるニトロセルロースラッカー塗装。 ・全機種にSAYTONE「Sledge α」ピックアップ搭載。 といった多くの共通点があり、ボディやネックの材木、またバインディングやカラーリングの意匠などでバリエーションを出しています。さらには外観のまとまりを重視し、指板とテールピースは同じ一枚のエボニー材から切り出されるという渋いこだわりが込められています。 Fホールに採用された楕円形の思い切ったデザインも大きな特徴で、正面から見るとピックガードの描く曲線とうまく一体化するようになっています。

M35/M35D/M38

M35D Cherry M35 Sunburst

M35 Sunburst M35D Cherry

この3機種は、ネック、ボディトップ&バックを希少なホンジュラスマホガニー単板で統一したモデルです。マホガニー特有の温かみのあるトーンを持っていますが、この仕様のフルアコはありそうで他にはなかなかない、本機の大きな特徴になっています。M35Dはリアピックアップ搭載モデルで、サウンドバリエーションが広がることでさまざまなジャンルの音楽に対応できるようになっています。またカラーリングに応じてボディ外周を覆うバインディングも変えており、外観上のカッコよさを演出しています。

M35SMM/M38SMM

M38SMM Tea Burst M38SMM Tea Burst

「SMM」はネックにホンジュラスマホガニー、ボディトップにシトカスプルース、サイド&バックにカーリーメイプルを採用しています。この仕様は ES-175 を代表とする伝統的なフルアコを踏襲したモデルになっていますが、オールマホガニーモデルと比べて透明感のあるトーンになります。ボディのバインディングはブラック&アイボリーの2層で、シックな高級感を演出します。

M35C/M38C

M38C Maple Syrup M38C Maple Syrup

「C」は「Custom」と表記されることもあります。Mシリーズの最高グレードで、ネックにハードロックメイプル、ボディトップにAAAAヨーロピアンスプルース、サイド&バックに最高級のハードロックメイプルが使用されています。サウンドは立ち上がりが早く、かつ豊かな表情があり、弾いているうちに時間を忘れてしまうほどだと言われます。

ボディ、ヘッド、指板にとどまらず、ピックガードとテールピースに至るまで美しいメイプルバインディングと赤青のラインで彩られており、「芸術品」と呼べる仕上がりになっています。最高グレードゆえ、このモデルだけは製作期間が特に設定されません。工程ごとに寝かせる木材の都合に合わせて作られるため、時間と手間のかかるモデルとなっています。

M35S

m35s_trans-blue-burst M35S Trans Blue Burst

「M35S」Mはシリーズ唯一のセミアコで、ネックとボディサイド&バックにホンジュラスマホガニー、ボディトップにフィギュアドメイプルという組み合わせで、ブリッジはES-335同様のTOM(チューン・O・マチック)となっています。内部に仕込まれるスプルース製のセンターブロックは、ネックジョイント部からブリッジ下まで達しています。センターブロックがボディの末端まで行かないことでボディ内の空洞が確保されているため、小さめボディでありながらセミアコとしての充分なエアー感が感じられます。

ソリッドギター S Series

「機能美」を帯びた「道具」を作るというコンセプトで開発されたSシリーズは、大変シンプルかつ合理的なバリエーションを展開しています。ハイエンドモデルでありながら驚異的なコストパフォーマンスがあり、デビュー直後から多くのファンを獲得しました。楽器としての機能と弾きやすさにポイントを絞ったシンプルなデザインは、ジャンルやプレイスタイルを選ばず演奏に集中できます。また1弦0.010インチからのゲージで出荷されますが、シビアな調整が施してあるため快適に演奏することができます。

モデル名も大変合理的で「弦の本数」と「フレット数」で表されますが、それぞれのコンセプトに従った仕様でまとめられています。現在ディンキータイプがメインとなっていますが、新たにジャズマスタータイプが加わったことで、今後のモデル展開が期待されています。

  • S-622:6弦22フレット
  • S-622JMC:6弦22フレット、ジャズマスタータイプ
  • S-624MS:6弦24フレット、マルチスケール(ファンフレット)
  • S-722:7弦22フレット
  • S-724MS:7弦24フレット、マルチスケール(ファンフレット)

それでは、Sシリーズの特徴を追ってみましょう。

合理性と独自性が共存した、カジュアルな外観

Sは全機種、ボディトップに緩やかなアーチ状の加工が施されます。光を当てた時の美しさと共に、演奏時のフィット感が向上する工夫です。トップが曲面なのでピックガードをつけることができませんが、「フェンダースタイルなのに、ピックガードモデルがない」ことが個性を演出しています。 「カジュアルなルックス」を重視しており、マットな感触の塗装、ナチュラルに統一されたサイド&バック、ブラックのバックプレートが、既存の価値観に囚われない、シンプル且つカジュアルなスタイルを演出しています。ただし、指板面にポジションマークを持たないこと、またメイプル指板では指板とネックの間にローズの薄板を挟んでアクセントをつけるなど、クールな一面も持っています。 Sシリーズの指板 メイプル指板とネックに挟み込まれた薄板がオシャレな存在感を放っている

演奏性のための設計

ボディバック S-624MS のボディバック マットなフィニッシュはネック裏にも施され、サラサラとした心地よい感触です。標準的なCタイプのネックグリップはどんなプレイヤーにもフィットします。 ハイポジションについては標準的なストラトよりも大きなカッタウェイ、左手に優しいヒールカットに加え、厚さ5mmのジョイントプレートをヒール部分に落とし込んでおり、ストレスのない弾き心地になっています。ジョイントプレートの厚さが5mmもあるのは、ネックをジョイントする4本のネジのしめこみ具合を均一にする狙いがあります。

長年の使用に耐えるための工夫

SAITO GUIATRS ヘッド部分 弦のヘッドへの突入角度が緩やか、というかほとんど真っ直ぐだ 長年リペア業を営んできた齋藤楽器工房だけあり、Sシリーズには長らく使用する道具に必要な、耐久性を重視した工夫がたくさん注がれています。最も個性的なのはヘッドの設計で、指板の高音弦側が緩やかな角度でヘッド面に達するようになっています。これはこの部分で厚みを確保することで、将来的にヘッドがねじれてしまう可能性を軽減させる狙いがあります。 指板の外側を残す形で溝を切り、フレットはここに収まるようにタング(指板に埋め込まれる部分)の両サイドをカットして打ち込まれます。これは見た目の美しさを演出することに加え、ネック痩せが起こった場合のフレット「バリ」を防ぐ狙いがあります。 ネックはネジを受け止めるスタッドを打ち込まれてジョイントされますが、これはしっかりジョイントするためだけでなく、ネックの着脱を繰り返してもネジ穴が耐えられるようにする工夫です。

S-622/S-622JMC/S-722

Sの22フレットモデルは、アルダー2Pボディに弦長647mmのハードメイプルネックという現代では標準的な組み合わせで、クリーンは煌びやかに響き、歪ませるとザクザク感のあるトーンを持っています。22フレット仕様のギターはフロントピックアップがリアから離れて設置されることにより、フロントポジションで甘さの引き立つトーンになります。

S-622 Black 標準&定番仕様:S-622 Black

S-622」はSシリーズの標準機となっていますが、いろいろな要望に応えられるようになった結果、「SSH、HSH、SSSというピックアップ配列が選べる」など多様性を持たせたモデルです。

ペグと2点支持トレモロについては S-622 のみ両方ともGOTOH製が採用されていますが、「パーツの構造はシンプルな方が振動の伝達効率が良いため音が良い」という考え方から、ペグは敢えて普通のクルーソンタイプが採用されており、ロック機能は付いていません(オプションで GOTOH製 MGT ロックペグの選択が可能)。

S-622JMC Carrot Orange S-622JMC Carrot Orange

S-622JMC」は S-622 の流れをくんだジャズマスタータイプのギターで、基本的な仕様を S-622 から受け継ぎつつ、SAYTONEのジャズマスター用ピックアップ「Flat Head」が2基マウントされます。弦振動を受け止める大きめのボディとパワーのある大きなシングルコイルの組み合わせにより、パンチがありながら澄んだ音になっています。

s-722_august-blue S-722 August Blue

多くの7弦ギターがトンガったルックスで24フレット仕様ヘヴィ志向であるのに対し、S-722は「ジャンルを選ばない柔軟性を持った7弦」というコンセプトで、S-622 同様のカジュアルなイメージをそのままに、ピックアップには7弦仕様である「Seven Sledge」が採用されています。ただし S-622 と異なり、ヒップショット製の堅牢なロトマチック式ペグと固定式ブリッジが使われています。また弦をボディ裏から受け止める金属製バックプレートを自社開発しており、従来のスタイルに比べて弦振動の伝達効率を向上させています。

S-624MS/S-724MS

S-624MS Rose Hip S-624MS Rose Hip

S-724MS Naked 定番 S-724MS Naked

Sシリーズの24フレットモデル「S-624MS/S-724MS」は、ハードメイプルネック、ライトアッシュ2Pボディという組み合わせです。3キロに近い軽量な本体は長時間の演奏でもプレイヤーの消耗を軽減します。テクニカルなプレイヤーに向けて弦高の低いフラットな指板を採用しており、ドライブサウンドと相性の良い「Bore Up」ピックアップを搭載することで、エッジの効いたサスティン豊かなトーンになっています。

最大の特徴は近年流行している「マルチスケール(ファンフレット)」を採用していることです。1弦から低音弦に向けて扇状に広がっていくように配置されるフレットは、その外観から「ファン(扇状)フレット」と言われたり、25.5インチから27インチまで弦それぞれに弦長が設定されることから「マルチ(複合)スケール(弦長)」と言われたりします。

この構造は低音弦の張りが強くなることからコードの響きやパワーコードの刻みがクリアになり、それでいて高音弦はこれまで同様に弾きやすいというメリットがあります。フレットの広がり方も人間の腕の構造に対して理にかなっており、「ちょっと弾けばすぐ慣れるし、むしろ弾きやすい」と言われます。

このモデル専用のブリッジは自社開発で、弦長に応じ斜めに配置したサドルは指板Rに合わせた配置になっており、弦高の低いシビアなセッティングがストレスなくできます。弦を裏から支える金属製のバックプレートも自社開発で、伝統的な裏通しのものよりも弦振動を伝達する効率が向上しています。

小型ラップスチールLS-4

Saytone LS-4 SNBL Saytone LS-4 SNBL

Saytone LS-4 DRD Saytone LS-4 DRD

ウクレレサイズのかわいらしい4弦ラップスチールギターですが、齋藤楽器工房のギターメーカーとしてのデビューを飾った歴史的なギターのひとつでもあります。小型で弦が少ないことからラップスチールの経験がないプレイヤーでも気軽に挑戦できる親しみやすさがありますが、SAYTONEの専用ピックアップによる本格的なトーンを持っており、いろんな場面で活躍できるポテンシャルを秘めています。