エレキギターの総合情報サイト

ギブソン・レスポール・スペシャル徹底分析

ギブソン・レスポール・スペシャル

「Gibson Les Paul Special(ギブソン・レスポール・スペシャル)」は、前年デビューしたレスポール・ジュニアのアップグレード版として開発されました。レスポール・ジュニア同様に新しいパーツを開発することなく、当時ギブソン社が保有しているパーツのみで組み上げるというコンセプトに基づいていますが、フロントピックアップが加わったことで本家のレスポールにひけをとらない多機能なギターになっています。


カルマ/BUMP OF CHICKEN
多重録音を駆使した壮大なハードコアの旗手。大ヒットとなったデビューシングル「天体観測」は、その後の音楽シーンに大きく影響しました。レスポール・スペシャルをトレードマークとする藤原基央氏は歌詞の評価も高く、このカルマではゲームのタイアップだったにもかかわらず「数えた足跡なぞ、気付けば数字でしかない」と強烈な皮肉を披露しています。

レスポール・ジュニアとの違い

レスポール・ジュニアとスペシャルの比較 レスポール・ジュニアがP-90ピックアップ1基なのに対して、レスポール・スペシャルでは2基搭載となっている

レスポール・スペシャルの歴史

1954年に高級機レスポール・カスタムと共にデビューした入門機レスポール・ジュニアの売れ行きが好調となり、翌1955年にフロントピックアップを装備したアップグレード版として、レスポール・スペシャルはデビューします。1958年にはジュニアとともにダブルカッタウェイ仕様にモデルチェンジしますが、レスポール自体の売り上げ不振により、1960年に生産が終了します。その後1974年から再生産が始まり、時代に応じたアレンジを重ねて現在まで生産されています。

ダブルカッタウェイのレスポール・スペシャルはギタービルダーであるポール・リード・スミス氏のお気に入りで、後にギブソン/フェンダーと肩を並べるギターメーカーにまで成長を遂げるPRSギターの原型になっています。
ポール・リード・スミス

グレード的な立ち位置

レスポール・スペシャルは「スペシャル(特別)なジュニア」として開発されましたが、1958年の資料では、

  • $120:レスポール・ジュニア(TVイエローは10%アップ)
  • $179.5:レスポール・スペシャル(ジュニアのほぼ1.5倍)
  • $247.5:レスポール・スタンダード(ジュニアのほぼ2倍)
  • $375:レスポール・カスタム(ジュニアのほぼ3倍、スタンダードのほぼ1.5倍)

このような価格が付けられており、レスポール・ジュニアとレスポール・スタンダードの間を埋めるモデルとして開発されていたようです。

当然フロントピックアップを増設するだけではこのような価格差はつけられず、
ジュニアの

  • デカールのヘッドロゴ、黒1Pロッドカバー、指板バインディングなし

という仕様に対し、スペシャルでは

  • パールインレイのヘッドロゴ、黒白2Pロッドカバー、指板バインディングあり

というように、装飾面でもグレードを上げた仕様になっていました。

楽器としての基本性能

レスポール・スペシャルは、フロントピックアップが追加されることによりサウンドバリエーションが増えており、より幅広いジャンルで使えるギターになっています。

楽器としてのレスポール・スペシャルは、先輩であるレスポール・ジュニアとかなり近いキャラクターを持っています。レスポール・スペシャルについて知るためには、レスポール・ジュニアに関する記述もぜひ参考にして下さい。
レスポール・ジュニア徹底分析!

ドッグイヤーとソープバーは取付け方法が異なるだけでピックアップとしては同一なので、人間の耳でサウンドを聞き分けることはほぼ不可能です。ただしフロントピックアップを収めるピックアップキャビティ(取付け穴)を空けているぶんだけネックジョイント部の構造がジュニアと異なりますから、アンプを通さない生の音ならジュニアとスペシャルを聞き分けることができるかもしれません。

lespaul-p90 左:ドッグイヤータイプのP-90、右:ソープバータイプのP-90。伝統的なバーブリッジ

同じP-90でも、ジュニアで採用されている「ドッグイヤー」ではなくレス・ポールに搭載される「ソープバー」が採用されており、レス・ポールと同じピックアップが付いている(当時)というプレミアム感、また比較的簡単に設置できるドッグイヤーに対してソープバーはピックアップキャビティの加工など設置に一手間かかるので、この意味でもレスポール・ジュニアより一つ上のグレード、という立ち位置になります。


リライト(live)/ASIAN KUNG-FU GENERATION
アジカンの後藤正文氏もスペシャルの使用率が多いギターボーカルです。後藤氏の製作するアニソンは、単独の楽曲としてもきちんと成立する格好良さがありながら、歌詞で原作の内容をきちんと踏襲しているところが神がかっています。

バーブリッジについて

オクターブ調整、おおまかな弦高調整、弦の張力の調整までを可能とした高機能ブリッジいわゆる「チューン・O・マチック(略称はTOM。正確には「ストップテールピース&チューン・O・マチック・ブリッジ)」がレス・ポールに採用された1956年(カスタムではデビューした1954年から)以降も、レスポール・ジュニアとレスポール・スペシャルでは伝統的なバーブリッジが採用されてきました。メーカーとしてはグレードの違いを明確にすると云う意向があったものと思われます。しかしこの1ピースのパーツでできているバーブリッジのシンプルな構造により、弦からボディへの振動伝達の効率がよく、ピュアな響きが得られると云うジュニア/スペシャルのキャラクターが立つ結果となりました。

Les Paul Junior Special P-90 ブリッジがチューン・O・マチック、P-902基に4ノブのLes Paul Junior Specialというラインナップも存在する

Les Paul Junior Specialを…
R楽天で探す 石橋楽器で探す YYahoo!ショッピングで探す

ジュニアに対する上位機種という立ち位置から、レスポール・スペシャルにはチューン・O・マチックが採用された時期がありましたが、現在のモデルでは現代版にアップグレードされたバーブリッジに回帰しています。これまでバーブリッジはシビアなオクターブ調整ができず、これを可能としたバダスタイプ(B.C.リッチなどで使われています)のブリッジに交換される例が多くありました。しかしバダスは利便性と引き換えに、パーツ点数が増えることでシンプルな美観を損ねるというデメリットがありました。現代版のバーブリッジは、オクターブ調整をあらかじめ済ませた位置にサドルの役目を果たす「爪」が立っているほか、振動伝達に優れるザマック(亜鉛合金)を採用することで、美観を損なうことなく正確なチューニングを可能とし、さらにブリッジとしての性能を向上させています。

レスポール・スペシャルのラインナップ

カスタムショップモデル

レスポール・スペシャル・カスタムショップモデル

旧モデル「ヒストリックコレクション(ヒスコレ)」から、

  • 1960 Les Paul Special Single Cut (シングルカッタウェイ、2ピックアップ)
  • 1960 Les Paul Special Double Cut (ダブルカッタウェイ、2ピックアップ)

がリリースされていました。当時の設計をそのままに、現代の職人のクラフトマンシップによって名機が再現されています。

ギブソンUSA2015年モデル

ギブソンUSAレスポール・スペシャル

現行(2015年)モデルのレスポール・スペシャルは、
・Les Paul Special Double Cut 2015
としてダブルカタウェイモデルがリリースされています。ジュニアに対する上位機種であった名残として指板にバインディングが施されていますが、

  • シングルカッタウェイ、ピックアップ1基:レスポール・ジュニア
  • ダブルカッタウェイ、ピックアップ2基:レスポール・スペシャル

というシンプルな理解で大丈夫です。ダブルカッタウェイはハイポジションのプレイアビリティが良いので、ストレートなサウンドを指向しながらもリードプレイを多用するというスタイルのギタリストには、レスポール・スペシャルがお勧めです。

  • 自動チューニングシステム「G Force」
  • 高さをシビアにセッティングできる「ゼロフレット・ナット」
  • よりストレートなサウンドを得るため内部配線を太いものに変更
  • PLEK処理による高精度なフレット

などの2015年モデルの特徴を一通りそなえている他、基本仕様のマイナーチェンジによって新たな姿を与えられています。伝統的にレスポールと同様だった操作系はマスターヴォリューム、マスタートーン、トグルスイッチという仕様にシンプルにまとめられました。またピックガードが廃止され、つるんとしたルックスになっています。

従来モデルと2015年モデルとの違い

レスポール・スペシャルのジョイント部分 上半分:1960 Les Paul Special Double Cut VOS、下半分:Les Paul Special Double Cut 2015

楽器としての最も大きな仕様変更は、ボディのジョイント部です。レスポール・ジュニア/スペシャルのダブルカッタウェイは22フレットまでボディから出ているのが伝統でしたが、2015年モデルからは19フレットより先がボディに埋まっている形になっています。この仕様変更によりジョイント部分の剛性が向上して調整が安定しやすくなるほか、ボディから出ている「竿」の部分が短くなるためネック自体の剛性が増したことで、鳴りがタイトになります。

また、レスポール・ジュニア/スペシャル共に、マウントされるP-90の仕様が変更されています。P-90は伝統的にポールピースの先端に溝が切ってあり、ドライバーで回転させることで高さの調節ができるようになっていました。これにより弦ごとの感度をシビアに調整できたのですが、2015年版には溝はなく、ポールピースの高さは固定されており、一般的なシングルコイルに近くなっています。トーンについてはブライトさが増し、またこのスペシャル用のP-90はフロントとリアでコイルを逆に巻いているため、センターポジション(フロント+リア)で使用する際にはシングルコイル特有のノイズをカットできます。またアッセンブリの改造により、フロントとリアをシリーズ(直列)でつなげると「疑似ハムバッカー」サウンドを得ることができます。