Fender CORONADO Guitar について

[記事公開日]2015/8/29 [最終更新日]2021/7/3
[編集者]神崎聡

フェンダー・コロナド

「フェンダー・コロナド」は、ソリッドボディで成功を収めたフェンダーが、敢えてそこからの脱却を目指しリリースした野心的なギターです。エピフォン・カジノに対抗すべく大きめのシングルコイルを搭載、左右対称の薄いボディを持ったフルアコとしてデビューしました。フロント1基のコロナドI、リアを増設したコロナドII、12弦仕様のコロナドXII、そしてベースというラインナップで1966年から生産が始められましたが、販売がふるわず1972年には廃盤となっています。続いてリリースされたホロウボディのStarcaster(フェンダー・スターキャスター)も振るわず、こちらも短命に終わっています。

あのエルヴィス・プレスリー氏がコロナドを演奏する貴重な動画はこちら! – Youtube

一時は「CBS期の大失敗」とまで揶揄されたコロナドですが、現在ではその希少性からヴィンテージ市場で再評価されているほか、近年注目されている独特なルックスの古い楽器(=ビザール)という流行もあり、発表当時は酷評された設計が他にはない特別な個性だと認められ、また低域/高域が豊かに響くエッジの効いたトーンバランスが評価され、フレイミング・リップスやレディオヘッドなど、オルタナティブ/ポストロック/ポストパンクのアーティストに支持されています。この状況を受け、コロナドは現代的なアレンジを加えられ「Modern Player Series」のひとつとして、スターキャスターとともに復活を果たしました。

Fender CORONADOギターの特徴

外観

Fender CORONADO外観

コロナドの開発は、リッケンバッカーの立ち上げにも関わったというドイツ人設計者ロジャー・ロスマイルズ氏がチーフとして進められました。ホロウ構造もそうですが、フェンダーにおいて左右対称のボディシェイプは極めて珍しく、「固定化しつつあるフェンダーのイメージからの脱却」というコンセプトがいかに真剣だったか、また売り上げの不振という結果からそれがいかに失敗だったかを感じさせられます。

アーチトップの定番仕様である大きなFホールがルックス上の大きなポイントになっています。しかしアーチトップを見慣れた方にとっては、どことなく違和感がある配置です。ギブソンやギルド、グレッチなど一般的なアーチトップのFホールは、「F」の横線部分がブリッジの大まかな位置を表しているのが普通です。これに対してコロナドのFホールはそれを大きく外れ、横線部分がリアピックアップ近辺を指しているからです。否定的に見れば設計ミスとも言えるFホールですが、逆にこれがコロナドの外観上の大きな個性になっています。

Fender Colonadoヘッド部分

フェンダー・ストラトキャスターのヘッドを若干太らせたオリジナルのヘッドシェイプはいかにもフェンダーというルックスですが、ピックアップはグレッチ的であり、またヴォリューム2、トーン2、トグルスイッチという操作系はギブソン的でもある、いろんな要素の組み合わさったギターです。

独特の構造

Fender CORONADOバック

ホロウボディでありながら4点止めのボルトオンネック、というところがこのギターの最大の特徴です。この構造ゆえの立ち上がりの鋭いサウンドがコロナドの魅力ですが、残念ながらギブソンの独壇場だったジャズのプレイヤーに受け入れられる事はなかった、というのが売り上げ不振の理由だったと言われています。ちなみにソリッドギターを中心に生産していたフェンダーに、木材をラミネートしたり曲げたりといったアーチトップボディを生産するノウハウがあったのか、という疑問がわきますが、内実としてはボディの製造を他社に依頼したということがあったようです。

Fender CORONADOギターのサウンド

オリジナルのコロナド用に開発されたピックアップは、グレッチでも採用された実績のある「DeArmond(ディアルモンド)」のシングルコイルでした。そのためコロナドにはルックスにもサウンドにもグレッチ的な要素が入っています。
現代版では「Fideli’Tron(フィデリトロン)」が採用されています。グレッチの代表的ピックアップ「フィルタートロン」を彷彿させるルックス、また太さときらびやかさを併せ持つトーンを持っており、これもまたグレッチ的なイメージを持っています。ホロウ構造のボディと相性がよく、ボディに由来するエアー感にシャープなキレを付加したトーンで、バンドアンサンブルではコードプレイに特に良好です。フィデリトロンは、他にもフェンダーのCabronita(カブロニータ)Telecasterに採用され、ソリッド/シンラインの両面でラインナップを展開しています。


Menoz / 未来少年
MENOZのギタリスト木下哲氏愛用のコロナドは、60年代のヴィンテージです。コロナドの持ち味であるコード感の気持ちよさをいかんなく発揮させ、また各種エフェクトにより様々なトーンを奏でています。コロナドの難点である「ハウリング/フィードバックが暴発しやすい」という点も、持ち味として音楽表現に使っています。

Fender CORONADOギターのラインナップ

現在コロナドはギターとベースが「CORONADO GUITAR」、「CORONADO BASS」としてリリースされていますが、ここではコロナドギターについて紹介します。

CORONADO GUITAR

Fender CORONADO GUITAR

エピフォン・カジノに対抗したフルアコとしてデビューしたコロナドですが、復刻版は合板メイプルのボディにアルダーのセンターブロックを持ち、ハムバッカーピックアップを2基搭載するというアレンジが施されています。セミアコは甘いトーンを持つフルアコにソリッドのパンチ力を加えるので、現在コロナドが注目されているオルタナティブ/ポストロックといったジャンルで使いやすく、またハムバッカーはノイズが減るため、エフェクタを遠慮なく使用することができます。

採用されている「Fideli’Tron」ハムバッカーピックアップはグレッチの「フィルタートロン」を意識した設計で、キレのあるトーンを持ちながら、並んだコイルの効果でノイズをカットしています。

Cシェイプグリップのメイプルネックにブロックインレイをあしらったローズ指板はかつてのコロナドを継承しています。現代的なミディアムジャンボフレットが採用されていますが、高音域は21フレットまでで、伝統的なフェンダーのスタイルが残されています。

フェンダーの頭文字「F」が刻まれたテールピースが、レトロな風合いを演出しています。オリジナルでは板バネを利用して専用に開発されたトレモロが搭載された事もありましたが、復刻版にトレモロモデルはありません。

オリジナルのブリッジは伝統的なアーチトップを踏襲しており、ボディに固定されていませんでした。今回の復刻版ではボディトップにネジを立てることで位置が容易に変わってしまわないようにしており、激しいプレイでも位置がズれてしまわずしっかり受け止めてくれる安心感があります。

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