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《楽器は耳で作る》東京恵比寿「Psychederhythm」のこだわり

Psychederhythm 訪問インタビュー

Psychederhythm(=サイケデリズム)は、恵比寿に本拠地を置くギターショップです。同名ブランドでリリースしているギターは、キャラの立ったルックスと現代のポピュラーミュージックにマッチしたプレイアビリティ、豊かに響くサスティン、プレイヤー次第で千変万化する柔軟なサウンドを持ち味としています。愛用者にはプロミュージシャンも多くファンの多い注目のブランドですが、いまだ情報が少なく謎めいたブランドでもあります。

お客さんから寄せられるギターの調整や製作など大変忙しい中ではありましたが、サイケデリズムを統括する石田紀之さんが、エレキギター博士のインタビューに快く応じてくれました。石田さんが熱く語る楽器に対する思いやこだわるポイントから、サイケデリズムのアイデンティティを感じて頂けると幸いです。※サイケデリズム・ギターのラインナップについてはこちらのページから↓↓Psychederhythmのギターについて


──今回は宜しくお願い致します。まず始めに、石田さんの、このショップでの仕事内容を教えて下さい。

石田紀之さん(以下、敬称略) 店長として販売、楽器の修理や製作、あとは掃除やゴミ出しなど、この店のことなら何でもやっています。

──ギターブランド「サイケデリズム」を立ち上げるきっかけは何でしたか?

石田紀之 サイケデリズムを立ち上げてから16年強になります。それ以前からギターショップをやっていましたが、これまで扱ってきたヴィンテージギターの価格が高騰して入手しにくくなってきたり、新品でも為替の変動によって求めやすい価格での仕入れ・提供が難しくなってきたり、という状況になっていました。
新品でもヴィンテージでも、ギターは買ったばかりの状態では、自分のこだわりを強く持つオーナーさんが充分気に入る状態だ、ということが殆どありません。その楽器本体の更なるプレイアビリティを引き出す為、ナットを含めたネック周りの調整からPUの出力バランスを修正したり、また好みに合わせたパーツに交換したりといったセットアップを施していくことで、はじめてオーナーさんに合った弾きやすい状態になります。楽器本体の価格が上がっていく中、既存のギターでも改造/調整で更にお金を注ぎ込んでしまうのであれば、弾き手の好みに合った楽器をウチが製作しリリースした方が、改造/修理に余分なお金を掛けなくて済むのではないか、と考えたのです。それで製作したギターが多くのユーザーさんの元へ渡った訳なんですけど、その様なギターを扱うのはショップとしては当然の事かな?と。それがウチのオリジナルを立ち上げた理由の1つでもあります。

──サイケデリズムにはどんな特徴があり、どんなところにこだわっているとお考えですか?

石田紀之 一言で言えば、「質」です。演奏性、1音1音の立上がり、コードの分離感、どのポジションを弾いてもピッチが良くブレない安定感、中低域の出方などバランスの良い質を大切にしています。サウンドについては、「音質」を大事にしています。ギターがあって音楽があるのではなく、音楽をやるツールとしてギターが在るはずです。「音色」はその時の流行や出したい音などを判断した上で、弾き手が機材やピッキングなどで作るものだと考えています。サイケデリズムのギターは、比較的弾き手に染まりやすいと思っていますが、このサウンドが自然なものに感じるのか、クセのあるものに感じるのかは、人それぞれの感じ方にあると思います。

CDなど音源を聴いた際に、「あ、これはウチのギターの音がしているな」と判ります。それにはピッキングのアタック感だったり音の伸び方だったり、いろいろなポイントがあります。ギターは手先で作ると言うよりも、「耳で作るもの」だと考えています。完成形を思い描き、こういう音に持っていくためにはどうすれば良いのか、というところが重要だと思うからです。例えば膨大な種類のピックアップがありますが、この中からどれをチョイスするか、といったところも耳で選びます。その他、なぜわざわざこのパーツを選ぶのか、といった強い拘りは持っており、自分達が気に入るものであれば、国内外とパーツの取引先を一社に絞るということはしていません。

また、キャラの立ったルックスでいかにアピールするかも重視し、手に取ってみたくなるかっこいいギターを作りたいなと常に思ってます。カラーリングには当店の特徴でもある中間色を多く採用していますし、バインディングのあるモデルでは敢えてボディトップ/バックで塗り分けツートンカラーにしています。ピックガードの文様やコントロールノブなどのパーツも全体との相性を気にし選択してます。

Psychederhythm:テレキャスター・タイプ 独特の文様が施されたピックガード:ルックスにもアピールがある

──サイケデリズムのギターには、モデルが違っていても共通しているサウンドキャラクターがありますね。特にクリーントーンの「プリッ」とした感触が印象的でした。

石田紀之 販売価格をある程度押さえ供給したいと考えてますので、木材の入手先などコスパの良い所を探し、1社にこだわらずこれまでに何度も変更しますが、それでも最終的にはサイケデリズムの音になります。自然とそうなってしまいます。この音が、音数が多かったりシンセや同期モノを利用したりと言った現代のミュージックシーンにマッチしたらしく、おかげさまで支持を頂いています。フェンダーやギブソンのギターで音楽が作られたという歴史があるように、サイケデリズムのギターで新しい音楽が作られる、という未来が来ることも目指しています。
例えば同じジャーで炊いたご飯でも、自分のお母さんが握ったおにぎりと友達のお母さんが握ったおにぎりとでは不思議と味が違いますよね?ギターでも同様なことが言え、全く同じ杢目で質量の木材を使い同一パーツを採用したとしても、これまで培って来た経験や癖からセットアップに違いが出て、作者が違えば自然と異なる音のするギターになりますし、おにぎりであればどっちが美味しいかは味の好みで、ギターならどっちが寄り好みの音がするかは弾き手が判断するところですから、サイケデリズムこそ至極の逸品、と言っている訳では決してありませんが、それこそ、ギターは「音」が良いことが一番なんですが、それは弾き手が判断することだと思うんです。

フェンダーではジャガーやジャズマスターが、ストラトキャスターやテレキャスターの上位機種として発表されました。ギブソンではレスポールカスタムがレスポールスタンダードの上位機種として発表されています。しかしながらいずれの場合でもメーカーの思惑通りにはいかず、ストラトキャスターやテレキャスター、レスポールスタンダードの人気が高く、ヴィンテージ市場でもこちらの方が高額になっています。これは、多くの弾き手がこういったギターの音を認めて愛用し音源を制作した結果なんです。
こういうこともあって、どこで作っているか、また誰が作っているかといった作り手側の情報なんて、ギターの「音」に比べたらどうでもいいことだと思っており、サイケデリズムではそういったプロモーションをしておりません。

psychederhythm-jazzmaster

──ギターを作る上で、最も気を使っているところはどこですか?

石田紀之 もともといろいろなミュージシャンのギターを修理したり調整したりしていたところがスタート地点でしたから、作業としては組み込み/セットアップというところに一番気を使います。一言で「弾きやすい」と言っても、プロミュージシャンは一日8時間演奏なんていうスケジュールも当たり前の仕事としてこなさなければならないことがあり、極めて高い水準のシビアなセットアップが求められます。

──どんな人に弾いてもらいたいですか?

石田紀之 サイケデリズムのギターは、どんな方にも御満足頂けるようにセットアップしています。ですからどんな方に弾いて頂いても、嬉しく思います。比較的フラットな特性になるように作っていますが、過去に製作したモデルによっては、狙いでうっすらと非対称なネックグリップのものがあったり、またローポジションでは厚みがありハイポジションに向けて徐々に薄くなっていくグリップ、また敢えて特定の周波数帯に特徴を持たせているモデルもあって、決して無個性だということはありません。

同じ形でも材質や厚みの異なるピックを持ち替えるだけでも、出音は変わりますしね。音は弾き手が作るものなんです。多くの人が話題にする「あのギターは良い」「あのギターは悪い」というのは、実際にはギターの品質じゃない部分が多く含まれていると思います。「あのギターは自分には合わない」「このギターは自分に合う」といった弾き手それぞれのフィーリングに依拠した意見も多いのではないでしょうか。サイケデリズムは決して生産本数の多いブランドではありませんので、お住まいの地域によってはなかなか試奏できないという方も多いと思います。でも百聞は一見にしかずですので、ぜひ一度実際に弾いてみてほしいと思います。

──いろんなミュージシャンが来店するそうですね。ファンとしては気になる所ですが、サイケデリズムを愛用しているミュージシャンについて思い出話やエピソードはありますか?

石田紀之 エピソードや思い出話は、それこそ鬼のようにありますw。サイケデリズムには愛用者さんの紹介で来店するというミュージシャンが多く、お客様同士の横のつながりや人と人とのつながりによってご愛顧頂いています。ですから例えば一人をフィーチャーしようものならその方を紹介した人、またその方を紹介した人、というように10年以上さかのぼって話さなければなりません(来店アーティストについては、ブログやTwitterで公開しています)。

Psychederhythm-3 来店した様々なプロ・ミュージシャンが、実際に弾いているのかもしれない

石田紀之 ミュージシャンの紹介ばかりではなく、ローディーさんやPAさん、エンジニアさんによって「サイケデリズムのギターがよかった」とか「調整ならサイケデリズムに」というように広めて頂いたこともあります。こういった音に厳しい「現場のプロ」から色々な屈託の無いご意見を頂くことで耳や感性を磨くこともでき、ギターに反映させてもらってます。またサイケデリズムでは、「エンドース契約」を誰とも結んでいません。愛用くださるミュージシャンは、サイケデリズムのお客様としてギターを購入頂いてます。だから実際に現場で演奏したミュージシャンからも率直な感想や意見もたくさん頂いて、ギター作りに反映させています。

──ありがとうございました。


以上、お忙しい中ではありましたが、サイケデリズムのギターに対する深いこだわりを聞く事ができました。実際に弾いて感じる質と音にこそこだわるべきで、生産者や製造過程でギターを判断するのはナンセンス、という意見には大変意義深いものを感じました。それゆえ今回の取材では、スタッフさん及び作業風景は撮影しておりません。こういった姿勢もサイケデリズムの魅力に反映されています。

サイケデリズムではレギュラーのラインナップのほかに、比較的リーズナブルな価格でオーダーメイドも受け付けています。人と人とのつながりを大事にし質を追求して作られたギターは、ライブや録音で頼りになります。